2002年2月下

●2002年2月28日(木)

きょうのクウクウは大忙しだった。明日からの春メニューの準備で。
リーダーはふだんホール係の娘なのだが、週にいちど厨房に入って研修のようなことをやっている。
新人さんといっしょなので、厨房の仕事を細かく教えながら料理を作らなければならないのでたいへんだけど、私はなんとなく、リーダーといっしょに働くのが気に入っている。
なんというか、良い空気が流れていて、心地いいのだ。
それは、リーダーの心がまじめだからだと思う。
にんじんをきざむのも、きれいに切ろうとまじめだし、後かたずけも、早く終わらせようとするのではなくて、 きれいにかたずけようとしているので、まじめなのだ。
そういうのって、几帳面というのともまたちがうような気がする。どんな世界においても、 もの作りをしている人共通の、ベースラインの意識という気がする。
同じ仕事の時間を過ごすのでも、いいかげんに器用にやってしまうのと、 のろまに見えてもまじめにやるのとでは、得るものの中身がうんとちがう。
その時はたいして気がつかなくてやりすごせても、後々、身についてくるものは雲泥の差っていう気がする。
私は、亀のようなまじめさんの生き方の方が好み。
春メニューの海老の蒸しもの用のタレがおいしくできたので、ここに書いておきます。
ナンプラー1カップ、レモン汁2個分、おろしにんにく1片分、 にんにくオイル(にんにくを揚げて香りをつけた油)1/4カップ、黒胡椒少々、 青唐辛子の酢漬け大さじ1。以上を混ぜ合わせる。
こういうタレは、作ってすぐよりも2〜3日たってからの方が、なじんでおいしくなるようです。


●2002年2月27日(水)

クウクウから帰って来たら、カレーが作ってあった。
豚肉とキャベツとじゃが芋のカレーだ。スイセイが作ったサラッとしたカレー。
「みい、これほんとにおいしい」とりうが言うのでひと口もらった。うまい。和風な感じ。
同じカレールーを使っても、作る人によっていろいろだ。これはスイセイ風カレー。
仕事をしているスイセイに、グレープフルーツをしぼってジュースにしてやる。
ジュースをしぼる時、いつもペルーを思い出している気がする。
だから私のジュースはいつもペルー風だ。氷を入れない。
みかんのようなオレンジを半分に切って、レモンしぼり器の大きいので、無造作にどんどんしぼるインディオの三つ編みの女の子。マチュピチュの遺跡だったかクスコの市場だったか、 だだっ広い広場の片隅で、フーゴ!フーゴ!って叫んでいた。ジュースのことだ。
ペルーの高級ホテルでも、朝ごはんの前に必ず小さいグラスに入ったフーゴが出てきた。
国内線の小型飛行機の中でも、ゼリーのカップみたいなのに入ったフーゴが出てきた。
そのどれもが、すごくおいしかった。

●2002年2月26日(火)

ドキュメンタリーのロケハンのために、らくだの目の煙草谷さんが来た。
いっしょに自転車で出勤。
とちゅう、いつも行くクリーニング屋のおばちゃんに、撮影の許可を取る。
なんでかわからないのだが、私の好きなおばちゃん。
ふくよかで、いつもきれいにしていて、下町っぽいおばちゃん。
いちど、おばちゃんが夢に出てきて私にごはんを作ってくれたことがある。
なすの炒めものが、ピカピカとしてすごくおいしそうだった。
なんか、あんまり知らない人なのに、この人の料理はおいしそうだなと思う人っている。
かっぽうぎが似合いそうな。

●2002年2月25日(月)

陽がさんさんと入るリビングで、いい調子でゆっくり、ひとつひとつ進んでゆくレタスクラブの撮影。
日置さんと池ちゃんと藤原さんと私は、のんびりムード。
だけど、日置さんがカメラをかまえると、すっと緊張がおとずれる。
キッチンで次の料理を作りながら、一瞬、しあわせだーと味わった。
まだ明るいうちに終わったので、私とスイセイは昼寝。
今夜の飲み会にそなえて。
銀座の高級やきとり屋「バードランド」に、今日の撮影のメンバーと現地集合なのだ。
バリバリに酒が強い、レタスの本澤さんもいっしょ。
「バードランド」はすごいおいしさだった。
しいたけの軸や舞たけまで、肉づくり。肉の味がするという意味。
ものが良いのだ。
しかし、おいしすぎて胸がいっぱいになりすぎると思ってしまう私。

●2002年2月23日(土)

きのう、お茶の入った飲みかけのグラスが、りうの部屋に置きっぱなしになっているのを3ケ発見。
しかもひとつは白い膜がはっていて、いつの?ってゆう感じだったので、 「出かける前に流しの所に持ってくるように。洗わなくてもいいから」と注意しておいた。
きょうはちゃんと流しに置いてありました。
そして、夜中にケイタイで長電話をしていたので、それもゆうべ注意した。
りうの部屋は、下の階の家族の寝室だから。
そういう時りうは、「うんわかった。ごめん。そうだね」と、すぐにあやまる。
ほんものの親子って、そういう時けんかになったりするんだろうなーとよく思います。
編集者の人にりうを紹介する時、「娘です」って言うのはいいけど、 「その後みい(私のこと)はいつも、スイセイの娘。私のじゃない。かわいいでしょ」って言うのやめて欲しいと、 この間はりうに注意されました。傷つくのだそうです。「娘とだけ言えばいいじゃん」だって。
りうは私のことを、母だよ、って友達に言ってるらしい。
りうの母親とは会ったことがないけれど、電話で声を聞いたことがある。
そして、りうの部屋にはゴミを捨てに行く母親の後ろ姿の白黒写真がはってある。
学校の宿題でりうが撮って引き伸ばしたもの。
私とりうの歳の差は、ちょうど20歳です。
さあ、そろそろ私も宿題をやろう。
あさっての撮影のレシピと仕入れをまとめること。
そして来週の撮影の仕入れをまとめておくこと。
もうひとつは、きのう来た企画書を読んで、4ページ分のメニューを決めること。
あと、クレソンについてのコラムを書かないと。
きむらやの黒糖レーズンパンはうまし。
甘いパンには無塩バター派の高山です。
スイセイが自分のとついでにインスタントコーヒーをいれてくれる。たのんだので。
夜ごはんは、鶏の酒蒸ししたのに片栗粉をまぶしてカリッと焼いたのに、ねぎソースをかけた。
下にキャベツをたくさんしいて。あと、菜の花の辛し和えと冷やしトマトと大根の味噌汁。
私は味噌汁を作る時、こんぶとにぼしでだしをとるが、にぼしの頭は取りません。
取ったのと取らないのとでは味が違うけれど、残った頭の使いみちがないし、 私は苦味も味のうちと思っているので。そんなに苦くないし。
りうが、もう「花子」をみて来た。ユーロスペースでやっているらしい。

●2002年2月22日(金)

1週間ぶりで鍼に行く。
「忙しかったんですね」と先生に言われる。
ここのところ、また左背中がしびれいたかった。
やっぱり先生は、さわっただけでわかるのだ。
夜ごはんは、さんまの干物としじみの味噌汁とゆでブロッコリーと玄米。
この手抜き粗食を、3人が食べたい時にそれぞれで食べた。
家には今、チンしてあたためる枕のようなものがあります。
それを腰にあてたり背中にあてたりして眠る。
最初は熱かったのが、だんだん冷めてきてほかほかとしてきたら腹にのせる。
猫と寝ているようなつもりになって、腕の中にほかほか枕を抱いて眠ろうとする。
それでも眠れないので、私は目をつむりイメージすることにした。
それは「波動干渉と波動共鳴」安田隆著に書いてあったやり方。実践するのは初めてだ。
今まで会った人の中でいちばん「やさしさ」を感じた人のことを想い浮かべる。
または、「やさしさ」を感じた瞬間やそのシーンのことを。
波照間島の良美ちゃんが、エンジンのかからないおんぼろ自家用車に向かって、 「ごめんね、良美が悪かったさ。ほっといてごめん暑かったんだよねー。がんばって、うーんお願いさー」と本気で話しかけていた時のことを思い出しました。おどろいて涙と鼻水が出た、あの時の感じ。
そういうことを声に出して言ってもいいんだな、思ったまんまの声と言葉で。
それは子供の時によく私がやっていたこと。
「あんたばかじゃない」と姉にののしられていたので、だんだんやらなくなったことだ。
そして、あの時の自分の感じを色にしてみる。
そのぴったりくる色が、あなたのラッキーカラーなんだそうだ。
それは、しあわせを感じる色とゆうことだろうか。
じーん、と眠りながら良美ちゃんの声の感じを体感しているうちに、紅茶が出てきた。
ミルクティーだ。そしてさらにビスケット。
え?腹がすいているのか私はとも思いながら、気がつくと眠りかけていた。
スイセイがふすまを開けて目が覚めたその直前、目の中の天井がサーモンピンクになっていた。
私はその色を感じながら眠っていたことがわかった。
ホームページの地の色はサーモンピンクにして欲しいと言うと、スイセイは「だめ、黄色にしてって言って」とつぶやいて寝てしまった。

●2002年2月21日(木)

早起きして合羽橋に行って来ました。
行くたびに思うのだが、あそこは好きだなあ。
業務用のさまざまな道具というのは、じょうぶそうなところもすがた形も、 実にムダがなく美しく健全。
ひとつ困ることは、同じような店がたくさんありすぎることだ。
だから私は、お気に入りの店を2軒ほど決めている。
そのうちのひとつは、おじさんふたりとおかみさんでやっている、小さな店。
ここの3人のかけ合いがいかにも下町っていう感じ。
おかみさんは奥で伝票を書く役で、おじさんふたりはたいがい店の入り口や中でうろうろしている。
うろうろしているから、お客さんは気軽に声をかけやすく、どんな質問にもすぐ答えてくれる。
質問だけして買わなくてもいやな顔をしなさそうな、いつも同じ態度のおじさんたち。
「これください」とおじさんに言うと、伝言ゲームのように奥にいるおかみさんに伝わってゆく仕組だ。
「これもねー」とどんどん追加しても、すぐに奥さんのところに伝わる正確さ。
気に入ったものをさっさと選んでさっさとお金を払うのが好きな私には、ぴったりのスピード。
銀行は近くにあるか?聞くと、3人全員が寄って来て口々に教えてくれる。
アジアの市場っぽい。
しこたま買って配達の手続きをし、夕方からクウクウへ。
いちばんの収穫は、持ち手も金属の出刃。その重たさも形も、強くて無垢な青年って感じ。
どっかの外国製だったような気がするけど忘れてしまった。
オザケンの新しいアルバムも予約しました。タワーレコードで。
その時、「ニューアルバムを」と言えばいいのに言葉が出なくて「新発売の」と私は言った。
店員の女の子は笑わずにふつうの顔で「はい」と答えてくれました。
人間て気持ちの余裕がだいじだよなやっぱしと思う。
クウクウに行ったら、かぼすが5個で750円のをリーダーがわからなくて買って来ていた。
しかも、しなびかけたものが。ふーっと悲しい寒気がする。
かぼすの時期はやっぱり遅くても1月までだ。忘れないようにここに書いておく。
明日からレモンに変えるように、しおりちゃんと決める。


日々ごはんへ めにうへ