2025年     めにうへ

●2025年1月11日(土)晴れ

朝起きてラジオをつけたら、ピーター・バラカンさんの番組がはじまっていた。
もう7時だ!
今朝はよく晴れて、きのうよりもずっと暖かい。
一昨日は、『空気が静かな色をしている』の取材で、京都新聞の行司千絵さんがいらっしゃった。
汗をかきながら、坂を上ってきてくれた。
もう15年以上も前に、いしいしんじさんと池袋の書店でトークショーをしたとき、いしいさんがとても珍しい服を着てらして、それが、とっても似合っていて。
行司さんのお名前は、そのときにはじめて聞いたんだと思う。
そのあと、「クウネル」や「暮しの手帖」の記事を読んで、なんだかおもしろそうな方だな、いつかお会いできたらいいなあと思っていた。
ついこの間、「ホホホ座」の山下さんの本『君はそれを認めたくないんだろう』にも登場してらして、ますます興味が湧いたのだった。
だから、アノニマの村上さんから依頼メールが届いたとき、びっくりした。
行司さんは、やっぱりとてもおもしろい方だった。
インタビューでこちらが話すことを、ひとことですーっと分かってくださる。
審美眼を持っている方という感じがした。
ご自分が話しているときは、下を向いてなかなか目を合わせてくれないのだけれど、私が話しはじめ、本筋に入っていくと、じっとみつめられた。
目の奥でどこか遠くの方を見ているような、独特の眼差し。
その目つきは、私の知っている誰かにも似ているのだけど(確か、ものを書く人だったような気がする)、誰なのかどうしても思い出せなかった。
インタビューもそこそこに、お昼ごはん(ゆで卵入り牛すじ大根煮、薄味のひじき煮、菜花のお浸し柚子みそのせ、ひたし黒豆、蒸しさつま芋とクリームチーズのサラダ、大根の皮の黒酢醤油漬け、赤蕪漬け、おにぎり)を一緒に食べた。
そして、行司さんが今作っている本の話を聞いたり、私の縫った服や手編みのセーターを見せたり。
そうそう、インタビューのときだったかな。いちど窓が真っ白になって、盛大に雪が舞った。
2階に駆け上がり、窓から雪が入ってくるのもかまわずに、ふたりで見ていた。
行司さんと私はちっとも似ていないけれど、どこか外国の辺鄙なところをふたりで旅したら、おもしろいだろうなあと思った。
今日は、原画展のための絵を額縁に入れて、紐をつけたり、値段をつけたり、梱包したりをずっとやっていた。
きのうも私は、ペイントした額縁に、フックをつけていたのだけれど、小さなネジを小さなドライバーで回すのに手こずり、自分の指はどうしてこんなに不器用なんだろうと呆れてしまった。
それでも時間をかけてゆっくりすれば、うまくいく。
料理やお裁縫だったら、細かいことも得意なのにな。
ネジやドライバーは硬いからだろうか。
今月の末、私は『毎日のことこと』のトークイベントのために、仙台と盛岡へ出かける。
仙台では、「エマオ」という施設でお話し会をするのだけれど、すぐ近くの「book cafe 火星の庭」で、原画展も開くことになった。
『毎日のことこと』の原画が中心なのだけど、細かいものが多いので、『日めくりだより』や『帰ってきた 日々ごはん⑥』、NHKのテレビ番組『高山なおみさんの神戸だより 海の見える小さな台所から(夏編)』で使われた絵も飾ることにした。
詳しいことは、「ちかごろの」でお知らせしますので、ご興味のある方はぜひ遊びにいらしてください。
と、ここまで書いていたら、陽が落ちてぐっと寒くなってきた。
西陽が街に当たって、黄色く光っている。
夕方、中野さんからメールが届いた。
きのうお父さんは、辛いカレーをおかわりして食べたそう(中野家の金曜日はカレーの日)。
今日のお昼もカレーがいいというので、カレーにしたんだそう。
そして、晩ごはんはホタルイカと牛カルビ。
ホタルイカ(醤油漬け)はきっと、お粥さんにのせるんだろうな。おいしそうだな。
私の夜ごはんは、ノブさんの手打ちうどんで、野菜たっぷりの鍋焼きうどん(大根、人参、椎茸、小松菜、伊達巻き、落とし卵、ねぎ)にする予定。

●2025年1月8日(水)晴れのち曇り

8時に起きた。
ゆうべは9時半くらいに寝たのに、ぬくぬくの布団から出られず、いくらでも眠れる。
このごろの夜はいつも、電気を消したベッドの中で『中学生の基礎英語1』を聞きながら、ぶつぶつと英文を繰り返す。
そして、FMにチャンネルを合わせ、『朗読の世界』を聞いて眠りに落ちる。
今週の月曜日から、川上弘美さんの『センセイの鞄』がはじまったので、毎晩楽しみにしている。
ゆうべは「月と電池」という章だった。
本で読むのとはまた違う、朗読の時間。
耳障りがいい声だと毎晩聞き、そでない声だと、寝際の頭に沁み入ってこないので、自然と聞かなくなる。
いろいろな回があって、そういうところもいいなあと思う。
きのうは、亜由美さんが七草(西区の浅川さんの畑で採れた、間引き野菜を集めたパック。菜花、赤大根、大根、人参、芽キャベツ、プチヴェール、ほうれん草)を持ってきてくださった。
ちょうどそのとき、文子さんも来ていたので、夕方のひとときをおせんべいなど齧りながら3人で過ごした。
私は、中野家から柚子(お兄さんの実家の庭で採れたもの)をたくさんもらってきたので、柚子みそとジャムにしようと、座卓の上で支度をしていた。
ふたりともめっちゃ関西弁で楽しそうに話していて、それを聞きながらゆっくり柚子の皮を刻んでいるのは、なんだかいい心地だった。
夜ごはんは、できたての柚子みそをのせて七草粥にした。
まだあどけない色とりどりの野菜。昔ながらの七草とは違うけれど、自由で可愛らしい七草粥になった。
今朝は、メールのお返事や小さな仕事をしながら、柚子ジャム作り。
きび砂糖が足りなかったので、文子さんのところにもらいにいった。
お礼にみかんをふたつ持っていったら、文子さんもまた、みかんふたつとウイロウをくださった。
子ども会で配られるお菓子みたいに、ビニール袋に詰めて。
うれしいな。
今日は、文子さんの仕事が終わり次第、買い物に出かける。「無印」で買いたいものがあるので、御影「クラッセ」に連れていってもらう予定。
それまで私は、仙台の「book cafe 火星の庭」で開かれる原画展の支度をしよう。
4時くらいに出て買い物。
塩や砂糖、ケチャップ、マヨネーズ、ヨーグルト、牛乳など、重たいものをいろいろ買えた。お父さんの真似をして、「ごはんですよ!」も買ってきた。
夜ごはんは、七草粥の残り、ししゃも、ひじき煮(いつぞやの)、浸し黒豆、牛すじ大根煮、たくあん、「ごはんですよ!」。

●2025年1月6日(月)雨

ゆらゆらと眠って9時に起きた。
目が覚めたとき、一瞬どこにいるのか分からなかった。
電線の雫が光っている。
今日は雨か。
中野さんの家からは、きのう帰ってきた。
とてもいいお正月で、2泊のつもりが3泊になった。
病気のお父さんが中心の、家族のお正月に、私も混ぜてもらった。
小野(中野家のあるところ)は、とても寒かった。
二日目の朝、コーヒーを持って庭に出てみたら、六甲とは違うキンと冷たい空気。息を吸うと鼻の奥まですーっと通るような。
夕焼けも六甲と違った。
六甲は空や海が雄大で、夕焼けも遠くにある感じがするのだけれど、小野は近くにある。
近くで濃く広がっている。
毎日、楽しかったな。
楽しかったというより、よかった。
よかったというのとも少し違う。
ぴったりくる言葉がない。
お父さんは居間の隣の部屋のベッドで寝ていて、いつもラジオがかかっていた。
文字盤の大きな、時計つきの白いラジオ。
寝ている部屋の引き戸は少し開けてあるので、ユウトク君やソウリン君とこたつで冬休みの宿題をしたり、お手玉をして遊んでいると、ラジオ特有のくぐもった音が聞こえてきた。
話している内容までは分からないのだけど、ニュースや天気予報、交通情報が聞こえてきたり、加山雄三の歌やクラシックがかかったり。
お父さんのベッドから見える居間の柱には、赤い三角屋根の小さな鳩時計がかけてあり、時間がくると、ぽこっと音がして鳩が飛び出し、ぽっぽーぽっぽーと鳴いた。
台所で料理をしていると、鳩時計のぽっぽーと、用のあるときにお父さんが鳴らす、「チン」という呼び鈴の音がする。
とても小さな音なので、私にはほとんど聞こえないのだけど、みんなすぐに反応し、様子を見にいく。
ときどき「今、お父さん5回連続で鳴らしたで」と、お姉さんが笑う。
お父さんは口をぽっかりと開け、ほとんどの時間眠っている。
でも本当は、目を閉じているだけで、いろんな音を聞いているみたいにも思う。
中野さんもそう言っていた。
ごはんの時間になると、お盆に並べたいろんなおかずとお粥さん、デザートの果物を、お母さんかお姉さんが運ぶ。
お粥さんには必ず、「ごはんですよ!」をのせること。硬くて大きいものは食べにくいので、料理は何でも3センチ長さに切ること。お汁はとろみをつけたらのどを通りやすいこと。
いくつかの小さな決まりを覚え、私もごはん作りを手伝った。
そしてときどき、お盆を運ばせてもらった。
それが、すごく嬉しかった。
お父さんも、家族とほとんど同じものを食べる。
1日目の夜ごはんは、茶碗蒸し(椎茸、花人参、銀杏、おせちに入っていた紅白かまぼこ、百合根の代わりに茹でた長芋、結び三つ葉)と、おせち料理(ほとんどがお姉さん作)。デザートは苺(亜由美さんにいただいた)&ホイップクリーム。
2日目のお昼は、ノブさんの手打ちパスタとミートソース(私作)。お父さんはパスタを食べられないけれど、小さな器にミートソースを入れ、チーズをちらしてチンして出したら、お粥にのせて食べていた。「お父さん、どれがいちばんおいしかった?」と中野さんが聞いたら、これを指差したそう。
夜ごはんは、南瓜の煮物(私作)、唐揚げ4種(お姉さん作。鶏肉、ナンコツ、砂肝、ブリ、せんキャベツ添え)、ご飯、なめこ汁(私作。豆腐、三つ葉、柚子皮)。お父さんには、鶏とブリの唐揚げを小さく切り、ほうれん草のお浸しをプラス。なめこ汁のでき立てを私が持っていったと、低い声で「おお」とつぶやいた。
3日目のお昼は、ノブさんのキツネうどん、椎茸と水菜の煮浸し。お父さんはキツネうどんが好きなので、お揚げさんもうどんも3センチに切って薄いとろみをつけ、汁物がわりにした。あとはお粥さん’、ほうれん草のお浸しと即席塩鮭のほぐし身(私作)。デザートは缶詰の白桃。
夜ごはんは、ホットプレートで焼いた日田焼きそば(帰省していたお義兄さんのお土産。せんキャベツの残り、もやし、人参)、辛子明太子のおにぎり、冷凍のカニ爪(さっとゆがいて殻をむいた)、かき卵汁(お父さんのはとろみつき)。
「チン」と鳴って、お父さんはカニをおかわり。
もういちど鳴って、けっきょく8本食べた。お盆を下げるとき、「今日は、何がいちばんおいしかったですか?」と私が尋ねたら、間髪おかずに「カニ」と答えた。
お父さんはとてもよく食べる。
ゆっくりと時間をかけ、3食すべてきれいにたいらげ、食後の果物を食べ終えたら、「チン」と鳴らす。
すると、中野さんが食後のおやつのキャラメルコーンを出してあげる。
中野さんはほとんどの時間、お父さんのそばにいて、「ソウリンがサンタさんにもらった自転車、何色やったと思う?」とか、「前に渋谷のNHKに行ったなあ。お父さん、覚えとるやろ?」とか、小さな話を投げかけていた。
10時と3時のおやつもまた、お楽しみ。
「ぜんざいが食べたい」とつぶやいた日には、中野さんと材料を買いにいって私が作った。
お父さんは、食事をするだけでもとても疲れるらしく、すぐに横になってしまうけれど、ときどき中野さんがリハビリの先生みたいになって、足の屈伸運動をしたり、寝室から居間を通ってゆっくりと歩き、ベッドに戻ったりしていた。
いちど、陽の当たる縁側の腰掛けに座り、ソウリン君とボール投げをしていたっけ。
中野さんが審判になり、5回連続で勝ち負けを決めるじゃんけんもした。
いつもだったら私はすごく弱いのに、お父さんに勝ってしまった。
思い出すときりがないなあ。
さあ、今日からまた、ひとりの生活がはじまる。
朝、洗濯物を干すときに、なんとなくお父さんの真似をしてAM(NHK第一)のラジオをつけてみた。
日記を書きながら、今もずっとつけている。
静かな雨。
霧が出て、窓が真っ白だ。
窓辺のテーブルの上をふと見ると、消しゴムのカスがある。
きのうここで、ソウリン君が冬休みの宿題ドリルをしていたから。
そう。きのうは、お義兄さん、お姉さん、ユウトク君、ソウリン君がうちに来た。
子どもたちがお年玉でラジコンカーを買いたがっているそうで、三宮のおもちゃ屋さんに連れていくというので、私も車に乗せてもらった。
最初は、三宮駅まで送ってもらったら、ひとりで帰ってこようと思っていたのだけど、けっきょく「大丸」の地下でお姉さんと買い物し、お昼ごはんはうちで食べることになった。
メニューは、フライドポテトとハンバーガー(粗びきの合挽肉でパテを作り、具はトマト、レタス、紫玉ねぎ、フライパンで溶かしたチーズ。パテを焼いた肉汁でとんかつソースを煮詰めたもの、ケチャップ、スイートチリソースにケチャップを混ぜたもの、フレンチマスタード。お姉さんに手伝ってもらいながら大皿に並べ、それぞれが好きなものを挟んで食べられるようにした)。
フライドポテトは文子さんと同じフライヤー(年末に私もAmazonで買ったのだ!)で揚げたら、最高にうまくいき、あっという間になくなった。
ユウトク君はパテを丸めたり、レタスをちぎって洗ったりのお手伝い。その間、ソウリン君はお義父さんと窓辺のテーブルに座り、宿題をしていた。

一日中降り続いた雨は、夕方には止んだ。
今は夜景が光っている。
夜ごはんは、ひとつだけ残しておいたきのうのパテで、イングリッシュマフィンのハンバーガー(トマト、紫玉ねぎ、レタス)、チキンポテトサラダ(いつぞやの)、ミルクティー。『ムーミン谷のなかまたち(字幕版)』を見ながら食べた。
新年早々、とっても長い日記になってしまった。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。

●2025年1月1日(水)快晴

新年、明けましておめでとうございます。
9時に起きた。
ゆうべは文子さんたちのところで、お蕎麦を食べながら日本酒もご馳走になったので、ちょっとだけ二日酔い。
そして、初詣から帰り着いたら、お風呂にも入らずバタンキューだった。
今朝はゆっくりと浸かり、髪も洗った。
初、お風呂。
朝ごはんはヨーグルト(洋梨)と紅茶だけ。
ゆっくり、ゆっくり動いて、ささやかな元旦のご馳走を支度した。
今年のはご馳走とも呼べないものだけど。
浸し黒豆、伊達巻き、赤蕪漬け、紅芯大根のサラダ(お皮ごとせん切りにして塩をまぶし、柚子胡椒ドレッシングをちょっと、ちりめんじゃこ。おなますのかわり)、蒸しきぬかつぎ(白みそ)、お雑煮(白菜、大根、里芋、水菜)、磯辺巻き。
記念に写真を撮った。
お正月って、どうしてこうちょこちょこと豆皿に盛ったのを、いろいろ並べたくなるのかな。
NHKのドラマ「正月時代劇」の『いちげき』がとてもおもしろく、夢中になって最後まで見てしまった。
そのあとは、テレビもラジオも消して、コートのボタンつけをしたり、鍋つかみに紐をつけたり。
柱時計がカチコチ鳴っているだけの、静かな正月。
どういうわけか、小鳥たちの声もあまり聞こえない。
明日から中野さんの家に泊まりにいくので、荷物の支度をしたら、あっという間に夕方だ。
夜ごはんは、紅芯大根のサラダ、ひじき煮、磯辺巻き、鍋焼きうどん(ノブさんの手打ちうどん、卵、伊達巻き、水菜、麩、ねぎ)。

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