2024年     めにうへ

●2024年12月7日(土)快晴

朝ごはんのヨーグルトを食べているとき、ヒ、ヒ、ヒ、ヒと、とぎれとぎれに鳴く小さなさえずりが聞こえた。
きのうも同じくらいの時間に聞こえた。
きのうは、もっと小さな声だった。
2階に駆け上って見ても、どこにいるのか分からない。
しばらくして、ひゅっと飛び立った。
電信柱のてっぺんで、海の方を向いたり山の方を向いたりしながら鳴いている。
双眼鏡で見ると、ぷっくりとした丸いお腹。
ヒ、ヒ、ヒと鳴くたびに、ぴょこん、ぴょこんと尾羽を揺らす。
ジョウビタキのメスだ!
私が見ているのを知っているみたいに、こちらに飛んできた。
くすんだ卵色のお腹、尾羽のつけ根のオレンジ色、翼の白い斑もくっきり見えた。
目の前の電線で、こちらを見ている。
かわいいなあ。
きのう鳴いていたのと同じ子だろうか。
さあ、洗濯物を干したら、今日は経理のことをしよう。
しばらく休んでいたから、腰を落ち着けて。
ご褒美は、川原さんのセーターを編むこと。
おとつい、丹治君と美佳ちゃんが送ってくれた大きなシュトレンを、きのうも今日も薄く切って、朝ごはんに食べている。
シュトレンは白いお砂糖がたっぷりかかっているところが苦手だったのだけど、これにはかかっていない。
シナモンやメースみたいな甘い香りがほんのりして、ドライフルーツもみずみずしく、濃厚でとてもおいしい。
シュトレンって、クリスマスに食べるものかと思っていたら、アドヴェントの時期に、クリスマスを待ちわびながら大切にいただくものだと知った。
アドヴェントというのは、キリストの誕生を待つまでの4週間。
子どものころ、12月に入るとよく母の口から「アドヴェント」という言葉が出てきた。
「今日の礼拝で、1本目の蝋燭を立てたのよ」などと。
あんまり興味なく聞いていたけれど、日曜学校で教会に行くと、濃い緑の葉でこしらえた大きなリースが、天井から吊るされていた。
クリスマスツリーみたいに華やかではなかったけれど、白い蝋燭には赤いリボンが巻いてあって、なんだか外国みたいだなあと思った。
4本目の蝋燭が灯ったら、クリスマスだ。
今年の私のクリスマスの飾りは、とても質素。
小さな家々(中野さん作)、アコーディオンを弾いている兄弟の人形、雪の結晶のボタン、きれいな色の蝋燭(丹治君たちからの贈り物の箱に入っていた)。
けっきょく今日は、経理のことを1日中やっていた。
春からずっと記録していなかったので。
調書と通帳を見比べながら、私が何の仕事をし、どのくらいの収入をいただいたのか、ひとつひとつノートに書き込んでいった。
年の暮れの、心落ち着く時間。
夜ごはんは、クリームシチュー(いつぞやの残りに、蒸したカリフラワーと椎茸を加えた)、パン。

●2024年12月6日(金)晴れ

ゆうべはなんだかよく眠れなかった。
不安の種が、心に引っかかっていたんだと思う。
6時半にカーテンを開けた。
陽の出は雲の上から。
きのうだったかな、靄がかかっていたせいか、大阪の山の上から昇った太陽はびっくりするほど大きかった。
見ていると、反射板のようにぐるぐると光って、白くなったり、黒くなったり。上に昇っても、まだ大きなままだった。
今朝は少し風が強く、木の葉の一枚一枚がぴかぴか光っている。
猫森は今、いろいろな色に染まっている。
臙脂色、辛子色、エビ茶、オレンジ色、緑色。
朝、ゴミを出しにいったら、山の紅葉もずいぶん進んでいた。
もこもこと膨らんで、すごくきれい。
紅葉って、常緑樹の緑色があるから映えるんだなあと思いながら見ていた。
今日の海の光は、さざ波立っている。
風が吹き、木の葉が揺れると光もちらちら揺れる。
早めの時間から、お昼ごはんをゆっくり支度した。
レンコンと鶏肉の甘辛炒り煮、塩鯖(大根おろし)、生ゆば(亜由美さんのお土産)、味噌汁(油揚げ、椎茸、かぶの葉)、新米。
さ、しっかり食べたら、毛糸を買いに三宮に出かけよう。
今編んでいるのは、川原さんのセーター。
今年は何度も泊めてもらい、打ち合わせで夜遅くなったりして、とってもお世話になったから。
クリスマスに間に合うといいな。
2時くらいに出かけた。
桜の赤い葉っぱは、もうほとんど落ちていた。
郵便局に寄って、バスで三宮へ。
毛糸だけ買って六甲へ。軽く買い物し、タクシーで帰ってきた。
夜ごはんは、豆もやしのゆで汁のスープ(豆もやし、生湯葉、生湯葉が浸かっていた豆乳、塩、味噌少し、白ごま油)、おにぎり(ちりめん山椒、焼き海苔)。

●2024年12月4日(水)うっすらとした晴れ

6時半に目覚めた。
まだ薄暗いけれど、カーテンを開けると空にオレンジ色の帯が伸びていた。
雲が山脈のようになって、その上に帯がある。
陽の出は雲の上から。
ベッドに寝そべって空を見ていたら、びっくりするほど大きな蜂が窓をふらふら横切った。
冬は蜂が休む時期だと思うのだけど、どうしたんだろう。
今朝のヨーグルトはとっても豪華。
蜜たっぷりの長野のりんごとキンカン(両方とも亜由美さんにいただいた)、洋梨、バナナ。
いつものように、海の光を見ながら窓辺で食べた。
眩しいなあ。
洗濯物を干そうとして2階に上がったら、ハンガーにかけてあった私の黒いスウェットに、朝見たあの大きな蜂がとまっていた。
わー、こっちを見てる。
物干し台をゆっくり回し、蜂の頭が窓の方にくるようにしてみたら、すぐにブーンと飛んでいった。
また戻ってこないように、レースのカーテンを引いて網戸のようにし、洗濯物を干した。
雲は多いけれど、海が白く光っている。
雲間から差している光は、大きなカーテンのよう。
今日は、窓辺で編み物。
海の光が西に移っていくの眺めながら。
お昼近くなって、晴れてきた。
窓を開けていてもちっとも寒くない。
こういうのを小春日和というんだろうな。
きのうで取材の仕事がすべて終わり、原稿の締め切りもまだもう少し先。
今年の年末は、いつもよりのんびりしている。
そんな時間をひとりで味わえるのが、じんわり嬉しい。
来週は、「ギャラリーVie」で中野さんの展覧会がはじまるので、また賑やかになるだろうから、今のうちにゆっくりしておこう。
夜ごはんは、白菜と豚肉のミルフィーユ鍋(大根おろし、ポン酢醤油、七味唐辛子)、ご飯、キムチ、エゴマのキムチ、自家製なめたけ。

●2024年11月30日(土)快晴

今朝も晴れ渡り、海が眩しい。
洗濯物を干していたら、強い風が吹いて、猫森の紅葉の葉を揺らした。
葉っぱの1枚1枚が、ざわざわざわざわと身をよじらせて揺れた。
見ている私の体にも、ざわざわが移ってくる。
さあ、今日も窓辺で『空気が静かな色をしているー日々ごはん2021 7→12』にサインをしよう。
2箱目の、52冊をするつもり。
終わったら、編み物をしよう。
夜ごはんは、大根入りお粥(半熟ゆで卵、ちりめん山椒、自家製なめたけ、白菜キムチ、エゴマのキムチ)だけ。
お昼にちょっと食べすぎたので。

●2024年11月29日(金)快晴 

やけに眩しい朝。
海が盛大に光っている。 あちこち掃除をして清めたら、窓にテーブルを向け、『空気が静かな色をしているー日々ごはん2021.7→12』のサインをしよう。
ゆうべは8月まで読み、今朝、起き抜けに続きを読んだ。
本の中の私は、息を吹き返したように元気で、あたたかな世界にいた。
凛とした、静かな色をした空気。 ひとりでいることの悲しみや切なさ、喜び。 言葉で表されてはいないのだけど、ちゃんとそういう本の形になっていた。
新しく生まれた人々との関係。 ひとりだけれど、ひとりではない自分。 神戸に来て6年目。ようやく自分はここにいていいと思ったころの巻が、リニューアルに重なったんだなあ。
脇田あすかさんのデザインは、硬質なガラスのように繊細で、どこにサインをしたらいいのか迷ってしまう。 大扉が透けて見えるところはもちろん、小さな蝶がぽつんといる見開きページも、しんと静まり返っていて、とても書き込めない。
どうしよう。
『空気が静かな色をしているー日々ごはん2021 7→12』が本屋さんに並ぶのは、12月に入ってから。
この本は、長い間、『日々ごはん』シリーズを遠くから見守ってくれていたみなさんへの、クリスマスプレゼントのように思う。
どうか、楽しみになさっていてください。
夜ごはんは、カリフラワーのピュレとレンコンのグラタン(レンコンを塩ゆでしてホワイトソースで和え、ピュレの上にかぶせた。グラナ・パダーノをおろしてオーブンへ)、にんじん塩もみサラダ(白ワインビネガー)。

●2024年11月28日(木)晴れ

8時に起きた。
わざと寝坊した。
カーテンを引くと、あちこちきらきらして、光の粉が降っているみたいだった。
ゆうべは、ファビオと文子さんがテーブルのまわりを動きまわり、アクションつきで冗談を言っていた。それがおかしくて、おかしくて。
私はお腹を抱えて笑った。
おかげでぐっすり眠れ、2日続きの取材の疲れが吹き飛んだ。
風が強く、空気も冷たいのだけど、洗濯物を干していると海が眩しくて顔だけ暑い。
さあ、今日は「となりのオハコ」の書籍化について、オンラインで打ち合わせ。
私のパソコンは zoom がちゃんと繋がるかどうか、10時半になったら川添さんにテストをしていただく。
火曜日に、茨城のりうから霞ヶ浦のレンコンが届いた。
六甲ムーミン村のみんなで分けても(「六珈」さんにもあげた)、まだたくさんあるので、中野家に送ろうと思う。
レンコンはのどや鼻の風邪にいいそうだから、お父さんに食べてほしくて。
それで、朝から段ボールを切って、ちょうどいい大きさの箱を作った。
それにしても、鼻水が出っ放しだ。
私もあとでレンコンの節をすり下ろし、甘くして葛湯のようにいただこう。
1時からはじまった zoom の打ち合わせは、3時には終わった。
とても楽しかった。
それぞれが言いたいことを伝え合い、まとめ役はデザイナーの川原さんだった。
夕方、西陽が当たって、猫森がますます「キリン秋味」になっている。
りうのレンコンで、甘辛い味つけの炒り鶏を作った。
ほくほくしておいしいなあ。
半分に切って丸ごと蒸しただけのカリフラワーも、ねっとりしておいしい。
これは、蒸したじゃがいもと合わせてピュレにする予定。
夕方、『空気が静かな色をしているー日々ごはん2021 7→12』のサイン用の本が届いた。 
段ボール箱4つ。
明日、リビングの掃除をし、清めてから箱を開けよう。
そして、太陽の光で眺めよう。
と思っていたのに、やっぱり待ちきれなくて開けてしまった。
カバーの空色が、眩しく見える。
寝る前に読もう。
夜ごはんは、カリフラワーとじゃがいものピュレ(牛乳、ナツメグ)、ツナトーストサンド。
『あらいぐまラスカル」を見ながら食べた。
カリフラワーとじゃがいものピュレがやさしい味で、たまらなくおいしかった。

●2024年11月27日(水)ぼんやりした晴れ

ぐっすり眠って、8時に起きた。
海が白く光っている。
きのうの取材は、宮下さん、よしこちゃん、東京の編集者さんと4人で、京都を旅しているみたいだった。
宮下さんに連れていってもらったお蕎麦屋さんで、お昼に天丼(黒穴子の天ぷらがたっぷりのっていた)と、小さなかけ蕎麦のセットを食べた。
すごくおいしかったし、家族でやっているとってもいいお店だった。
「ホホホ座」の山下さんとの取材は2時からだったので、宮下さんのお友だちの西淑さんのアトリエにちょっとお邪魔した。
淑さんがお茶をいれてくれて、おしゃべりをしているうちに、淑さんは以前、中野のカルマで働いていたことがあるという話になった。
「へー、そうだったんだ」と私。
そしたら、「あ、ハヅキちゃんだ」と淑さんがつぶやいた。
なんとなく振り向いたとき、アトリエの前を通り過ぎた黒っぽい人影がちらっと見えた。
しばらくたってから、もしかしてと思い、「ハヅキちゃんて、あのハヅキかなあ?」と聞いてみた。
淑さんがハッ!とした表情になった。
私は駆け出し、ずいぶん離れたところにいる黒いジャンパーの金髪娘の背中を追いかけた。
角を曲がっていく金髪娘。
私も曲がり、いちかばちかで「ハヅキー」と叫んでみた。
すぐに振り向いた彼女は、やっぱりハヅキだった。
「クウクウ」時代に可愛がっていた、ホール係のハヅキ
京都に住んでいるらしいのは知っていたから、もしかしてと思ったのだ。
みんな、アトリエの前まで出て、私たちの様子を見守ってくれていた。
神戸に来てからいちど会ったことがあったから、7年ぶりくらいだろうか。
一緒に戻ってきて、淑さんが淹れてくれたおいしいお茶を飲んだ。
みんなからは「わー、よく分かりましたね」とか、「引き寄せ合っていますねえ」とか口々に関心されたけれど、私はそれほど驚かなかった。
なんか、ギフトっていう感じ。
天上の人からの、気の利いた贈り物だ。

今日は午後から文子さんとお買い物。
この間ひとりで行った、「たこ一」へ。
ビッグで安い品揃えに、文子さんはとっても喜び、野菜や魚や貝をいろいろ選んで、「なおみさん、今日、アペリティーボせえへん?」ということになった。
5時半から文子さんのキッチンへ。
白ワインを呑みながら私もお手伝い。
有頭海老の殻をむいてアメリケーヌソースを作り、つぶ貝をオリーブオイルとにんにくで炒めて白ワイン蒸しにした。
海老のシェビーチェ(文子さん作。レモン汁、紫玉ねぎ、セロリの葉)、鰯とじゃがいものグリル(文子さん作。ローズマリー、柚子、オリーブオイル)、つぶ貝のワイン蒸し(私)、白ワイン、ハイボール。
つぶ貝のワイン蒸しは、ちょっと泥臭いようなワイルドな味だった。
やっぱり、関西の人たちがよくするみたいにに、甘辛く煮て食べるのがいちばんおいしいんだな。
文子さんの鰯とじゃがいものグリルが、しっとりとした身で最高においしかった。
頭つきの鰯のお腹に柚子とローズマリーを詰め、まわりにゆでたじゃがいもを並べたら、オリーブオイルをまわしかけ、300度のオーブンの下段で焼くのだそう。
鰯が新鮮だから、短時間で。絶対に焼きすぎないように。

●2024年11月26日(火)晴れのち雨

5時半。まだ暗いうちに起きて、朝風呂。
京都に出かけるので。
今日は「メリーゴーランド」と「ホホホ座」を取材する。
朝陽が昇るのを見ながら、柿とバナナのヨーグルトを食べた。
今、日記を書きながら、黄色がかったオレンジの光に包まれている。
太陽が出ると、温かいなあ。
確かに雲は多いけれど、午後から雨になることが信じられない。
大きな傘を持っていこう。
きのうは、須磨の「自由港書店」を取材した。
はじめて行ったのは、丹治君と『毎日のことこと』のサインをしに伺ったとき。
やっぱり大好きな本屋さんだった。
店主の旦さんに薦められた『にほんご』と『こどもがつくるたのしいお料理』、井戸川射子さんという方の小説『この世の喜びよ』を買った。
取材のあとは海岸を散歩し、宮下さんとふたりでバスに乗って長田に行った。
お母さんと息子さんがやっている小さなお好み焼き屋さんで、オムそばと、月見豚天を食べた。
おいしかった!
前に文子さんたちと行った、蒸し豚とキムチのお店にも行き、白菜キムチ、エゴマキムチ、自家製ヤンニンジャンを買った。
風もなく、海がきらきらしていた日に、 宮下さんとてくてく歩いて、小さな遠足みたいで楽しかったなあ。
夜ごはんは、おでん(日曜日に煮込んでおいた残りに、だし汁とはんぺんを加えた)、お稲荷さん(十三の駅で買った)。

●2024年11月24日(日)曇りときどき晴れ

6時半に起きてカーテンを開けた。
空には茜色の帯。
雲が厚く、太陽が顔を出したのはずいぶん上の方からだったけれど、とても眩しい。
目をつぶると、オレンジの光が体じゅうに広がっていくみたい。
起き抜けにまた、「暮しの手帖」のエゾアムプリンの記事を読んだ。 「毎日おんなじ、それがいい アムさんとカトキチさんの18年」。
ゆうべも寝る前に読んだのだけど、もういちど。
すごくいい。
クリスマスがくる前に読みたくなる、絵本みたいだ。
私は前から、ふたりは奇跡のカップルだと思っていたけれど、奇跡なんかじゃない。
大切な人とずっと一緒にいられるように、お互いがちゃんとやることをやっているんだ。
アムもカトキチも、私は知っているつもりで、知らないことがまだたくさんあるかもしれない。
すごいなあ。 もっともっと、ふたりのことを読みたくなる。
青い時間をふたりで見ている窓辺の後ろ姿と、極寒の外の写真が重なっているページ、しーんとして大好きだ。

きのうのうちに美容院と買い物に行っておいたので、今日はあちこち念入りに掃除機をかけた。
沖の方の海が、白く光っている。
部屋が薄暗いなあと思っていると、ぱーっと明るくなる、その繰り返し。
そういうとき、窓は切り取ったみたいに真っ白に光る。
2階に駆け上がって見ると、三宮の海がすごく光っている。
あの上に太陽があるのだ。
きのうからの計画で、昆布と鶏手羽のだしでおでんを煮ている。
夜ごはんは、おでん(手羽スペアリブ、大根、じゃが芋、うずらの卵入りさつま揚げ、厚揚げ、ゆで卵)、ご飯はなし。
明日は、須磨の本屋さんに出かける。
8時半に家を出るので、早めにお風呂に入ってしまおう。

●2024年11月21日(木)晴れ

明け方は小さな夢をみては目覚め、また夢をみるの繰り返し。
あまり覚えていないけれど、同じ場所の夢だった気がする(起きたときは覚えていた)。 続きものではないけれど。
7時半に起きた。
カーテンを開け、太陽でいっぱいにする。
またうとうとしかけ、ゴミの日だったことを思い出し、エイッと起きた。
朝のヨーグルトはりんご(トキと青いりんご)。
ひさしぶりにパンも焼き、栗ジャムと有塩バター。
洗濯槽はきれいになったみたい。
洗濯物を干すとき、海が眩しくて、まともに見たら目がくらみそうだった。
やっぱり冬の光は違う。
午後から、夏ものと冬ものの衣替えをする。
来週の月曜日と火曜日は、書店を巡る雑誌の取材なので、着ていく服を決めた。
急いでやることがない日って、なんてのんびりのーびのーびなんだろう。
海もきらきら光っているし。
4時くらいから、塩豚と小粒じゃが芋のポットローストを作りはじめた。
今は、ビールをちびちび飲みながら、2階の窓から夕暮れを眺めている。
猫森はずいぶん紅葉が進み、「キリン秋味」みたいになってきた。
つまみはグリーンオリーブ。
ラジオからは、ピーターバラカンの『ウィークエンドサンシャイン』の再放送。
夜ごはんは、塩豚と小粒じゃが芋のポットロースト、ライ麦パン。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。

●2024年11月20日(水)快晴

とてもいいお天気。
空気が冷たい。
海の光り方も変わってきた。眩さが違う気がする。
多気での疲れは、ようやく取れたみたい。
そして、お土産の「まつかさ餅」も「おきん餅」も「ときび餅」も、きのう「MORIS」に持っていって、一緒に食べた。
「まつかさ餅」は、ファビオが「マグマ!」と言ったのがおかしくて、文子さんがしてくれたみたいにじっくりと焼いた。
お餅が硬くなる前に、六甲ムーミン村(ヒロミさん、今日子ちゃん、文子さん、ファビオ)のみんなに届けられ、ようやくほっとした。
同時に私の足も、地面に着いた気がする。
このところ詰まっていた仕事も、すべて終わったし。
なので、洗濯槽の掃除をしながら(洗濯機に酸素系漂白剤を混ぜたお湯を張ってしばらく回し、しばらくたってからゴミをすくうのを延々繰り返した)、切れたままになっていた電球を交換したり、扇風機の掃除をしてしまったり。
窓を開け放しているとけっこう寒いのだけど、空気がキンとして気持ちがいい。
足元が冷えるので、タイツと厚い靴下。
上はヒートテックにカシミアのセーター。
何度も鼻をかみながらやった。
なんだか山小屋にいるみたい。
夜ごはんは、ごろごろ野菜とソーセージの簡単ポトフ(玉ねぎ、大根、ビーツ、じゃがいも、ソーセージ。仕上げに豆乳を加えた)、イングリッシュマフィン・チーズサンド(フライパンでマフィンを焼きながら隙間でチーズを溶かし、チーズがカリッとしたらマフィンをのせ、ひっくり返す。ツナマヨネーズ、レタス、スライスしたミニトマトをサンド)。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。

●2024年11月18日(月)快晴

ゆうべ遅くに、多気から帰ってきた。
六甲駅に着いたら、木枯らしがぴーぷー吹き荒れていた。
昼間の料理教室はぽかぽか陽気を通り越し、七分袖のティーシャツでも汗をかいたから、急に冬の国に来たみたいだった。
待っても待ってもタクシーが来なくて。
スゥエットのフードをかぶって待っていた。
今朝は、9時半に起きた。
目覚めたとき、どこにいるのか分からず、多気でのことは夢のなかの出来事だったのかもという感じがした。
はじめは中野さんと車で出かけるつもりだったのだけど、行けなくなってしまったので、六甲から電車を乗り継ぎひとりで出かけた。
そこから旅がはじまったのだけど、方向音痴の私が、よくそんなに遠くまで行って帰ってこれたなあと思う。
「sana village」着いた日は、やりたいことがどんどんみつかってしまい、トイレに行きたいのを我慢するほどだった。
楽しくてトイレを我慢するなんて、小学生のときぶりくらいかも。
多気駅まで迎えにきてくださった橋本さん(去年もとってもお世話になった、中里さんの同級生のおじさん)。
「sana village」の前に立ち寄り、畑を見せてくださった「六月(ろくつき)農園」さん。
作業場の手前にあった、大粒の金柑の木。
青くて小さな金柑と、熟していない黄色い金柑の匂いをかいで、味見をしてみた。
そしたらまるで、スダチやレモンみたいでびっくりしたこと。
畑に生えているのをちぎって食べた、人参の間引き菜、野生的なディル。
1日目はオープニングだったので、「sana village」で展示をしている作家たちが集まった。
お店で売っている餃子やだし巻き卵、たこ焼き、ポテトチップスやチーズのおつまみ、お茶など、みなさんがいろいろ持ち寄ってくださったので、私はゆっくり料理ができた。
「六月農園」さんが展示で使った残りの野菜を、どんどん使っていった。なんて贅沢なんだろうと思いながら。 慣れない台所で、そこにあるものを使って作る即興の料理は、興奮する。
おかげで料理教室の試作ができ、何がおいしかったとか、珍しかったとか、みんなの意見も聞くことができた。
2日目は、スタッフたちのお昼ごはんを作ったり、台所を使いやすくしたり、通路を掃除したり。
夕方になって図書館に出かける感じは、なんだかいそいそとしていて、クリスマスに教会へ行く子どものころみたいだった。
中里さんとのお話会では、ちっとも緊張せずにいられた。楽しかったなあ。
料理教室もハプニングだらけで、とってもおもしろかった。
レシピは用意せず、その場でどんどん作っていった。
多気の食材で何を作ったかというと、水菜(紫の茎の)と柿のサラダ(柚こしょうドレッシング、すりごま)、ミニケバブ(松坂豚の粗びき肉、玉ねぎすりおろし、ヨーグルト、花椒、クミン、コリアンダー、フェンネル、一味唐辛子。焼き汁の残ったフライパンで、生徒さんのご主人が育てている朝採れ椎茸を焼いた)、じゃが芋(ニシユタカ)と人参の葉のインド風かき揚げ、3種のさつま芋のマッシュ(紅はるか、なると金時、安納芋)、多気のきのこご飯(肉厚椎茸、白ひらたけ)。
教室の間は、スマートフォンで写真を撮ったりせずに、自分の目で、耳で、鼻、指で確かめ、覚えて帰ってくださいとお伝えしたら、生徒さんたちみんなの感覚が、どんどん開いてくるのが分かった。
切ったり、手で裂いたり、ちぎったり、みんながやりたがり、手伝ってくれた。 ミニケバブ(スパイス入りの小さな肉団子)は、半分はヨーグルトを加えずに作ってみたのだけれど、加えた方はラム肉みたいになり、ジューシーでだんぜんおいしかったこと。
たまたま刻んでおいた人参の間引き菜とミニケバブを合わせて食べてみたら、ぴったりの組み合わせで、香菜いらずだったこと。
きのこの炊き込みご飯には、柚皮のかわりに未熟な金柑の皮を細く切ってのせた。
食べながら、生徒さんたちが口々に正直な感想を伝えてくれたのもとても嬉しかったし、私もふだん何気なくやっていることなので、自分でも特別気にとめていなかった言葉が、教えようとするとぐんぐん出てきた。 それをそのまま生徒さんに伝えると、弾むように反応が戻ってきたり。
ワークショップって、そういうことなんだなあと思った。
料理教室が終わったのは、5時ちょっと前。
また3時間もやってしまった。
ひとつひとつ教えていくと、どうしてもこのくらいの時間がかかってします。

ここまで日記を書いて、お昼寝。
まだ、興奮冷めやらず。
眠れないけれど、風の音を聞きながらベッドにもぐっていたら、元気が戻ってきた。
多気のお土産の「まつかさ餅」を食べなくちゃ。
文子さんにメールをしたら、アペリティーボに誘われた。
夜ごはんがわりのアペリティーボは、まつかさ餅(文子さんがフライパンでじっくりと、まわりをカリカリに焼いてくれた。中のあんこはヤケドしそうなくらい。ひと口かじったファビオは「マグマ!」と言った)、ときび餅(ファビオがチョコレートみたいだと言った。きなこが木の実の味なのだそう)、チキンハム(文子さん作)、グラナ・パダーノ(バルサミコ酢かけ)、グリーンオリーブ、クラッカー、ランブルスコ、日本酒ちょっと。
キッチンの窓からの空が藍色で目が離せず、文子さんとお喋りしながらついそちらに目が行くので、ファビオに何度も笑われた。
青い空気のなか、紅葉した山々の上にかかる黒っぽい雲が、山脈のように連なっていたのだ。
7時半に部屋に戻り、お風呂。
今夜は、ぐっすり眠れそう。

●2024年11月13日(水)快晴

6時前に目が覚めた。
雲が厚く、陽の出の瞬間は見られなかったけれど、猫森の上から昇ってきた。
カーテンを開け、寝室を光でいっぱいにしてから起きた。
風もなく、ぽかぽかと暖かい。
穏やかな朝。
さっきから小鳥が1羽だけ鳴いている。
チューイ、チューイと可愛らしい声。
『あらいぐまラスカル』のラスカルと同じ声。
アノニマの村上さんからのメールによると、今日は東京もぽかぽか陽気なのだそう。
「昨日と今日とあたたかく、陽射しがやわらかくて、なんだかのんびりとした気持ちになるなあ、『空気が静かな色をしている』を校了したからかな、と思っていました。そしたら『インディアンサマー』という言葉を見かけ、調べてみたら、『晩秋から初冬にかけての穏やかであたたかい日和』とあり、まさにこの感じ」とのこと。
同じ瞬間に、神戸もそっくりな陽気なのが、なんだか嬉しい。
そんななかメールの返事をゆっくり書いたり、終わった仕事の箱を片づけたり、多気への旅の支度をのんびりやる。
うちのリビングのカーテンが、新しくなった。
細かなレースの縦縞になっていて、ハンガリーやルーマニアの古い家の窓辺みたい。
前のカーテンよりも光が遮られ、朝も、昼間も、夜も、いろいろな表情になる。
中野さんがいたときは、夏の終わりみたいに窓辺が暑かったからというのもあるけれど、部屋の真ん中にテーブルを置き、カーテンを眺めながらごはんを食べた。
そこからだと街のごちゃごちゃしたところが隠れ、空だけが見えた。
2日目には、夜ごはんのイカ墨パスタを食べながら、『あらいぐまラスカル』や『母をたずねて三千里』の話になり、ランブルスコを1本開けてしまったっけ。
子どものころにリアルタイムで見ていた中野さんに、「じゃあなおみさんは、小さいころどんなアニメを見ていたんですか?」と聞かれ、『鉄腕アトム』と『マグマ大使』と答えた。
「なおみさん、そんなに長く生きているんですね。すごいなあ」と呆れられたり。
いかに私たちの年が離れているかを思い出し、私は大笑いした。
中野さんのお父さんは、二度目のコロナにかかってから、体調がすぐれずに入院をしていた。
退院してからは、家族みんなで助け合いながら介護をしている。
そんなときに、お母さんが縫ってくれたカーテンだ。
中野さんは介護の資格を持っているし、部屋を改造したり、便利な道具も手作りできる。それに、毎日少しずつ違うお父さんの様子を観察するのが楽しいらしい。
お父さんが声を出さずに笑うときのこと、家族の様子、インコのぴーちゃん、小さなあたたかい話を、カーテンを眺めながらたくさん聞いたんだった。

今日は、旅の支度をしながらメールを書いたり、電話をしたり。
ビーツをゆでながら、合間をみて窓辺でお裁縫。
4時になっても、カラスの集まりはまったくなかった。
いったい、どういう決まりになっているんだろう。カラスに聞いてみたい。
夜ごはんは、お昼ににぎっておいた新米のおにぎり(おかか)、ゆで卵、ほうれん草のおひたし(ごま、薄口醤油)、ビーツとじゃがいもと玉ねぎのスープ(ごく薄いコンソメ仕立てにし、中野さんのお姉さん作の甘口味噌をちょっと入れたら、大成功のおいしさだった。明日は豆乳を加えてみよう)。
お父さんは、少しずつ体調を取り戻しているのだそう。
長いことお粥や雑炊しか食べられなかったのに、中野さんが家に帰った日には、「トンカツが食べたい」と言って、夕ごはんにみんなで食べたのだそう。
お湯で体を拭いてあげると、声を出さずに笑いをこらえていて、おもしろいのだそう。
ああ、本当によかった。

●2024年11月12日(火)曇りのち快晴

香ばしいような秋晴れ。
ゆうべは、ちょっといやな感じの夢をみた。
お財布を盗まれたり、大切にしていた物を盗まれたり、忘れ物をして「わー、やっちゃった!」という夢。
ああ、夢でよかったと、覚めぎわの夢のなかで思うような夢。
明け方は曇っていたけれど、ぐんぐん晴れて、眩しい朝。
ちょっと暑いくらいになってきた。
さあ、今日は歯医者さんだ。
15日(金)から17日(日)まで、三重県多気の「sana villeg」に泊まる予定なので、兵庫県知事の期日前投票に行ってこよう。
風もなく、お出かけ日和だ。
日傘を差していった方がいいかもしれない。
帰ったら、お裁縫の続きをするつもり。
歯医者さんのあと、六甲の街を歩いていたらヒロミさんにバッタリ会った。
ご近所さんの嬉しい偶然。しばし、立ち話。
ついこの間もこんなことがあったなあ。
そうそう、美容院の帰り道で会ったんだった。
投票のあとで、六甲道に新しくできたスーパー、生鮮「たこ一」をのぞいてみた。
魚が新鮮で、大きな切り身が売っていて、朱実ちゃんと樹君がよく行っている若松の「RAMU」を思い出した。
九州の野菜もいろいろ安く売っていた。
ずいぶん元気のあるスーパー。
さんざん迷って、ミニトマトやほうれん草、ラーメン、ホッケ、青リンゴと大きな洋梨も買った。
けっきょく大荷物になり、六甲からタクシーに乗って帰り着く。
4時ごろに、なんだかカラスがやけに騒がしいなと思ったら、向かいの建物の屋上に10羽以上集まっていた。
カラスの集会、今年はあるかな。
3年前にテレビ(「高山なおみの神戸だより”六度目の冬”」)の撮影をした年がいちばんすごく、翌年からはパタっとなくなっていたのだ。
どうなんだろう。
5時にはもう静かになった。
窓辺に腰掛け、手元が暗くなるまでお裁縫。
夜ごはんは、じゃがいものドフィノア(生クリームのかわりに豆乳で作ってみた。なかなかおいしい)、水菜と柿とミニトマトのサラダ(柚こしょうドレッシング、すりごま)。

●2024年11月11日(月)曇りのち晴れ

朝ごはんを食べ、中野さんは帰っていった。
束の間だったけれど、楽しかったな。
昼間は、2日とも車で買い物に出かけた。
1日目は「コーナン(ホームセンター)」に車を停め、三宮まで電車に乗って「ユザワヤ」さんで画材を買い、戻ってきて「コーナン」で買い物し、住吉の「コープさん」に行った。
2日目は、調子の悪かったCDデッキを中野さんが分解してくれて、「コーナン」にゴムバンドを探しにいった。そしてまた、住吉の「コープさん」へ。
同じ道路を走り、同じ駐車場で車を止め、同じ警備員さんたちに会った。
毎日暑いくらいで、ドライブをしていると、この間の夏の続きみたいだった。
『毎日のことこと』にサインをしていた日々。
ブルーハーツをよく聞いていた夏だ。
今日はまだ、体の隅に楽しかった小さな余韻が残っている。
それを感じながら、たまっていた仕事をした。
夕方は、暗くなるまで窓辺でお裁縫。
プルオーバーの丈を伸ばすために、布をはぎ合わせた。
明日はステッチをして、裾をかがろう。
夕焼けがきれいだなあと思いながら縫っていて、トイレに行って戻ってきたら、幕を落としたようにストンと暗くなった。
5時半なのに、もう夜みたいに真っ暗。
ちょっとふくらんだ半月が、ぴかぴかしている。
夜ごはんは、ロールキャベツの残りを温めた。パンのかわりにフライ衣(ミルフィーユカツをした残り)をひとつにまとめ、オリーブオイルでカリッと焼いたお焼き。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。

●2024年11月8日(金)曇り

ゆうべは寒くて、夜中に毛布を出した。
きのう、関西では木枯らし1号が吹いたそうだけど、秋を通り越して、冬のはじまりに突入したのだな。
さて、今日は何をしよう。
撮影も終わったし、「気ぬけごはん」も書き上げ、きのう島崎さんにお送りすることができた。
衣替えでもしようかな。
先月の現金出納帳をつけようかな。
けっきょく、美容院に行くことにした。
郵便局や銀行の用事もすませ、「MORIS」に寄って、今日子ちゃんとヒロミさんにも会ってこよう。
3時半くらいにバスに乗って帰ってきた。
帰りの坂道は、荷物がないのでスイスイ。
桜の葉っぱがずいぶん赤くなってきた。
六甲山も、少しずつ秋の色。
夜ごはんの支度をしていたとき、すじ雲が茜色に染まった。
空は水色と茜色のだんだら。
正面には、白い半月。
空気がきーんとして、気持ちがいいこと。
夜ごはんは、『あらいぐまラスカル』を見ながら。
肉豆腐鍋の卵とじ(撮影の残り)、キャベツの味噌汁(ロールキャベツを作った残りの、ゆでたキャベツをたっぷり入れた)、ご飯。
ごはんのあとに、現金出納帳をつけてしまう。
お風呂上がりに窓を開けると、寒空に突き刺さりそうな三日月。
夜景もぴかぴかしている。
明日は、ひさしぶりに中野さんが来ることになった。

●2024年11月5日(火)快晴

6時半に起きたら、ちょうど朝陽が昇るところだった。
今朝は猫森の木々の間から。
強烈なオレンジの光。
今日のはでっかいぞ。
ベッドに立ち上がって見たら、ぐんぐん昇るのが見えた。
大きいー!
カーテンを開け放ち、しばらくベッドに寝そべって真っ青な空を見ていた。
ラジオからはバッハのカンタータ。
白い雲が、しゃっしゃっと刷毛で描いたよう。
今日は、「きょうの料理」の撮影。
10時になったら、ちよじと新しい編集者の奈良さんが東京からいらっしゃる。
朝ごはんの前に、掃除機をかけてしまおう。
撮影は4時半くらいに終わった。
亜由美さん、文子さん、ファビオがやってきて、お疲れさまの乾杯。
亜由美さんのお土産の大粒落花生を圧力鍋でゆでたり、水炊きの支度をしたり。
ちよじと奈良さんは新幹線の時間があるので、6時半くらいに帰っていったのだけど、しばらくの間一緒に過ごせた。
ちよじも楽しそうにお喋りしていたし、奈良さんもファビオとよく話していた。
文子さんとファビオと3人で過ごすのはとても楽しいのだけど、そこに誰かが加わると、いつもと少しだけ違うふたりの新しいところが見えてくる。
それがおもしろくて、嬉しくて、台所で支度をしながら遠くから眺めていた。
そういうこと、これまで私はずっとできなかったかも。
昔は、いつだって輪の中に自分がいたかったし、いられなくなると、のけものにされたような悲しい気持ちになった。 煮えくり返るような嫉妬心が湧いてきたりもしたなあ。
夜ごはんは、水炊き(撮影の残りで作った。鶏手羽中、鶏もも肉、豆腐、えのき、椎茸、白菜、水菜)、締めの卵雑炊。ビール、日本酒(ファビオが持ってきてくれた)。

●2024年11月3日(日)晴れ

ひさしぶりに陽の出を見た。
猫森の上からだったけれど、ずいぶん海の方に近づいた。
オレンジ色の燃える玉。
昇ったとたん、部屋じゅうがぱーっと明るくなった。
朝ごはんの前に、あちこち掃除機をかけ、冬用の絨毯も敷いてしまう。
来週の火曜日は、「きょうの料理」の2月号の撮影だから。
洗濯物を干していたとき、太陽が顔に当たって汗ばむほどだった。

海が眩しい。
きのう、サインが終わったときに、『日々ごはん』のゲラの束が届いた。
いよいよ入稿とのこと。
コーヒーをいれ、じっくり確認をしよう。
楽しみにしていた京都でのイベントも終わってしまったし、『毎日のことこと』のサインも終わった。
ためていた現金出納帳の入力も終わった。
ひとつ、またひとつと終わり、送り出す。
そうするとまた、新しいことがはじまる。
ここでお知らせを。
『日々ごはん』は12巻、『帰ってきた 日々ごはん』は15巻まで続けてきましたが、次からは巻ごとの数字をつけず、1冊ごとにタイトルをつけることになりました。
記念すべき1冊目は『空気が静かな色をしている』。
サブタイトルは、日記を書いていた時期の「2021年7月〜12月」となります。
このまま順調に進めば、12月中旬の発売予定だそう。
新しくなった『日々ごはん』を、みなさまどうか、楽しみになさっていてください。

4時ごろ、「コープさん」に買い物にいった。
木の葉はすっかり秋の色合い。
ススキも、いつの間にこんなに増えたんだろう。
カセットボンベや牛乳、ポン酢醤油など、重たいものをけっこう買ってしまい、なかなかの大荷物だったけれど、せっせせっせと坂を上って帰ってきた。
きついのは最初の坂だけ。
だんだん慣れてきて、はずみがつくみたい。
風がひんやりしていて、それほど汗をかかなかった。
もう完全に秋になったのだ。
夜ごはんは、『まる子』を見ながら。ワンタン沖縄そば(沖縄で買ってきたインスタントの。冷凍しておいたワンタンと、椎茸、豆苗を加えた)、大根のぬか漬け(京都で買ってきた)。

●2024年11月2日(土)小雨のち嵐のち曇り

朝、カーテンの隙間の光が薄暗くて、5時くらいかと思ったら、もう7時を過ぎていた。
窓を開けると霧が出ていた。
静かな朝。
目に見えないくらいの雨が降っている。
えいっ!と起きる。
いろいろとやることがあるので。
朝ごはんのあと、現金出納帳をパソコンに入力(きのうの続き)。
次号の「気ぬけごはん」のメニューを、島崎さんにメール。
そのうち雨が強くなり、気づけば大嵐になっていた。
風はびゅるびゅる。
バケツをひっくり返したような雨。
窓ガラスが、水族館の水槽みたいになっている。
そんななか、ひたすら『毎日のことこと』にサイン。
1冊1冊に、名前と四葉のクローバーを描いていると、心がどんどん落ち着いてゆく。
ありがたいなあ。
お腹をこわしているので、夜ごはんは雑炊(ゆうべのほろふき大根を小さく切って、ゆで汁に冷やご飯を加えた。仕上げに豆乳と白みそ、青ねぎ)、ししゃも。
今は6時。
雨はすっかり止んで、夜景がきらきら輝いている。
海の向こうの山裾も、黄色にオレンジに緑に青の小さなちかちか。

●2024年11月1日(金)曇りのち小雨

6時くらいに目覚め、ラジオをつけた。
『古楽の楽しみ』を聞きながらうとうとし、けっきょく8時まで寝てしまった。
今日から11月だなんて、びっくりしてしまう。
京都でのトークイベントは、扉野さんと話すのが楽しくて、楽しくて、まったく緊張しなかった。
『ためさるる日』のこと、日記を書くこと、文を書くということ。
まだまだずっと話していたかった。
私が緊張しなかったのは、徳正寺に漂う、歴史の靄のようなものに包まれている感じがしていたからだと思う。
参加者の方々も、みなつやつやとした表情をしていた。
徳正寺に照らされているような感じがした。
お話し会の前と翌日に、丹治君と書店さん巡りをしたのも楽しかった。
京都の街をひたすら歩きながら、コーヒーを飲みながら、ランチを食べながら、いろいろな話をした。
今日は、しとしとと雨が降るなか夏服をしまったり、現金出納帳をつけたり。
とちゅうで霧も出た。
ずいぶん寒くなったこと。
『マルコ』は、きのうが最終回だった。
悲しい終わり方だといやだなあとずっと気になっていたので、ハッピーエンドで本当によかった。
ああ、またひとつ、終わってしまったなあ。
こんどは何を見ようか。
夜ごはんは、ほろふき大根(柚こしょうとごま油、生姜入り鶏みそ)、マコモダケの白ごま油焼き、おにぎり(海苔)。
けっきょく、またはじめから『マルコ』を見ながら食べた。
マルコがパスタをゆでているお鍋や、パスタにかけるチーズが入った壺、木のスプーン、ワインを詰め替えるための空きビンなど、いろんな細かいところが見えてくる。

●2024年10月27日(日)雲の多い晴れ

朝から『日々ごはん』の校正。
きのう村上さんから届いた原稿と、付き合わせをした。
カバー、大扉、扉のデザインが上がっているから、本の姿を想像しながら。 
3時半には終わり、選挙会場へ。
お化粧もせず普段着のまま海を眺めながら選挙に行けるって、なんていいんだろうと思いながら坂を下りた。
人にもほとんど会わないから、見えるのは大きな海と神戸の街並みだけ。
きのうも海を見た。
須磨海岸でファーマーズマーケットの小さなお祭りがあり、文子さんとファビオと電車で出かけたから。
スズキコージ君、大畑いくのさん、植田真さんのライブペインティングを見ながら、ワインを呑んだり、ピザを食べたり。
約束もしていないのに、会いたい人たちに会えた。
今校正をしている『日々ごはん』には、ちょうど3年前の須磨海岸でのお祭りの日記が出てくる。
あのころ私は、亜由美さんや農家の方たちと出会ったばかり。
どうしていいか分からず、マスクをはめたままおずおずとそこにいた。
あれから3年が経ち、文子さんやファビオとそこにいる不思議。
ファンの方からもたくさん声をかけられ、恥ずかしいけれど、じんわりと嬉しかった。
さて、選挙の投票をすると、なんだかいいことをしたような気持ちになる。
パン屋さんで買い物し、坂を上って帰ってきた。
半袖で行ったのだけど、大粒の汗。
帰りつき、明るいうちにお風呂に入ってしまう。
夜ごはんは、卵ときゅうりのサンドイッチ(パン屋さんの)、ポテトサラダ(きのう作った)、グリーンオリーブ、人参の塩もみサラダ。
ひさしぶりに『マルコ』ではなく、『まる子』を見ながら食べた。

●2024年10月25日(金)晴れのち曇り

6時半に起きた。
カーテンをいっぱいに開け、『ためさるる日』を読んだ。
陽の出は雲の上から。
眩い太陽を、本で隠して読み続けた。
朝ごはんのあと、ひさしぶりにあちこち掃除機をかけた。
すっきりしたところで、『毎日のことこと』にサインをし、『日々ごはん』の校正の続き。
3時半くらいに、ついに終わった!となったら、ピンポンが鳴って、表紙まわりの色校がアノニマから届いた。
わあ、すごいことになっている!
そうかあ、こうなったのか。
まだ、もう少し詰めていくようだけど、私には新しい『日々ごはん』の産声が聞こえた。
夜ごはんは、辛い鶏鍋(鶏手羽中、ごぼう、キムチ、木綿豆腐、ニラ、豆苗)、ご飯。

●2024年10月24日(木)晴れ

爽やかな朝。
電線のところにハクセキレイが1羽とまっていた。
チチンチチンと小さな声で鳴いている。
「おはよう」と声をかけると、しばらくこちらの様子を伺って、海の方に向き直った。
飛び立つ瞬間、翼がパッと白くはためいた。
洗濯物を干していたら、ちょっと汗ばむくらい。
雲は多いのだけど、太陽が顔を出すと夏みたいに暑い。
今日は中野さんの誕生日。
家族の用事で来られなくなってしまったけれど、また日を改めてお誕生会を開く予定。
プルオーバーは中野さんへのプレゼント。もう少しでできる。
ゆうべ、黒豆のシチューのことを、ファビオがとても喜んでくれた。 
白い器の端っこにこんもりとよそり、手前にパン(文子さんが一昨日焼いたハンバーガー用のバンズを4つに切ったもの)を置いて、ちぎりながら煮込みをつけて食べていた。
里芋のフライもとてもおいしかった。
普通のフライドポテトが薄力粉だとしたら、全粒粉みたいなフライだとファビオが言っていたけれど、ほんとにそんな感じ。
素朴で、食べ応えがあって、皮も香ばしかった。
食べながら『マルコ』の話になった。
文子さんも子どものころに見ていたし、ファビオもイタリアで見ていたんだそう。
子どもたちもワインを飲むのか?と尋ねると、「大人が飲むときにグラスに注がれて、ちょっと飲んだり、水で薄めて飲んだりは、わりと普通のこと」とのこと。
『母をたずねて三千里』はずいぶん昔に日本で放送されたのに、それを忠実に表していたんだなあ。すごいなあ。
そしてきのう、私はなんだか前よりも少しだけ英語が分かるようになっていた。
ファビオの言っていることが、映像として浮かぶ場面が何度かあった。
喋るのはちっともなんだけど。
さあ、今日からまた『日々ごはん』の最終校正。
ゆっくりと落ち着いて向かおう。
3時半くらいに半分が終わった。
3度目の校正なので、きれいになっている原稿を、少しずつ読み進めていくのはとても気持ちがいい。 
あとは、明日のお楽しみ。
夕方、文子さんの仕事が終わり次第、一緒に買い物に出かけようと約束している。
お裁縫をしながら待っているところ。
街の灯りがちらほらつきはじめ、船の汽笛がヴォ、ヴォ、ヴォーッと鳴った。
いい時間だな。
夜ごはんは、チーズのかりかり平パン&ライ麦入りのパン(パン屋さんの)、黒豆のシチュー(ゆうべの残り)。

●2024年10月23日(水)曇り一時雨

朝起きて窓を開けたら、電線にたまった水滴が光っていた。
ゆうべは雨が降ったんだな。
陽の出は見られなかったけれど、太陽が昇ったらぐんぐん晴れてきた。
海が発光している。
白銀の池だ。
だんだん広がって、今は湖。
今年も海が光る季節になってきた。
今朝は、10時から「きょうの料理」のオンラインでの打ち合わせ。
さ、朝ごはんを食べたら支度をしよう。
湿気を含んだ空気がみずみずしく、植物みたいないい匂いがする。
黒豆をゆではじめた。
打ち合わせは、とてもよかった。
「ティームス」というのではじめてやったのだけど、4人の顔が同じ大きさで映るのも、なんかいい。
人との交わり方が、平らな気がした。
さっきから雨が降ったり曇ったり、晴れ間が出たかと思ったら、また降ってきたり。
今日は、雲の流れが早いんだろうか。
夕方、また晴れ間が出てきた。 西から風が吹き抜け、どこかで虹が出ていそうな空の色。
3時ごろ、ゆで上がった黒豆でシチューを作りはじめた。
チョリソーと、冷凍してあった塩麹漬けの豚肉。島さんが送ってくれたにんにくと玉ねぎで、今煮込んでいるところ。
水は加えず、黒豆のゆで汁だけで煮る黒い煮込みだ。
亜由美さんにいただいた里芋の親芋は、蒸し器で蒸したら、キャッサバみたい。
賽の目に切って、少し加えてみた。
文子さんにラインをし、3人で一緒に食べることになった。
仕事が終わったら、文子さんが下りてきてくれる。
お鍋を持って6階へ。
久しぶりのアペリティーボだ。
里芋は、フライドポテト用に角切りにして軽く下ゆでしておいたのを、文子さんのキッチンで揚げさせてもらう。
夜ごはんは、フライド里芋(皮も揚げた)、まこもだけのフリッター(衣は文子さん)、黒豆のシチュー(黒豆、豚肉、チョリソー、クミンシード、オレガノ)とパン、カブァ。

●2024年10月20日(日)晴れ

5時半過ぎに目覚め、カーテンを開けた。
上と下に雲がある。
陽の出は見られないかなと思っていたら、大きな雲のひとつが茜色に染まってきた。
そのうちみるみる黄色がかって、ずいぶん上の雲の隙間から、太陽のお出ましとなった。
もう白っぽいけれど、強烈な光。
ベッドに大の字になり、部屋の中を光でいっぱいにしてから起きた。
天井のガラス玉に光が当たり、小さなプリズムを作った朝はいつだっけ。
秋になってはじめての光だった。
そして今日は、足が冷たいのではじめてスリッパを出した。
蒸し暑い日もあるけれど、季節はちゃんと進んでいるのだ。
今日はこれからお出かけ。
美容院、図書館、「神戸ファッション美術館」、住吉のお肉屋さんと「コープさん」で買い物をして帰ってきた。
出かけるときには暑いくらいだったのに、夕方は寒くてびっくり。
夜ごはんは、蒸しあなご弁当(住吉の「コープさん」の)、サッポロ一番味噌ラーメン(もやし)。
『マルコ』を見ながら食べた。
船旅の間も、アルゼンチンに着いてからもいろいろあったけれど、マルコはやっとペッピーノ一座に会えた!
フィオリーナとの再会の場面もすばらしかった。

●2024年10月19日(土)雨

朝から雨が降っては止み、また降って。
霧が出て窓がまっ白になり、止むとまた、霧が晴れたり。
蒸し暑いような、肌寒いような。
なので、窓も開けたり閉めたり。
それでも洗濯物を干し、朝からずっと原稿を書いていた。
新しい『日々ごはん』のための書き下ろしで、ちょっとまとまったエッセイ。 この間から、ずっと書いている。
夕方までがんばって、さ、お裁縫の続きをやろう。
夜ごはんは、じゃがいも入りフジッリ(ゆうべの残りに小松菜の蒸しゆでを加えた)、ババガヌーシュ、南瓜のサラダ。『母を訪ねて三千里』を見ながら食べた。
マルコ少年はちょっと怒りんぼうで、早口なところが気になるけれど、旅芸人の内気な娘フィオリーナがとてもいい。声も話し方も動きも好き。
辛いことがあると、何でも歌にしてしまうお兄さんも好青年だし、お父さんも、隣の奥さんも、出てくる大人たちがみんないい。
マルコはよく市場に買い物にいき、仕事で遅くなるお父さんのために料理を作る。
太陽を浴びたおいしそうな野菜や、魚や貝、タコを買って帰ったり、お昼にはおろしたチーズをからめた素パスタが出てきたり。
イタリアの話なので、私の夜ごはんもつい洋風になる。
もうひとつ気になるのは、マルコたち子どもも赤ワインを飲むこと。
大人が注いであげて、乾杯したりする。
イタリアではよくあることだったのかもしれないけれど、アニメーションでもちゃんと表していて、おもしろいなあと思う。
『母を訪ねて三千里』は、これから『マルコ』と呼ぼう。
夜、びゅーるるるとものすごい大風。
夜景が眩しいくらいに光っている。

●2024年10月18日(金)曇り一時晴れ、のち小雨

陽の出前の薄暗いうちに起きてしまった。
なんだか寝ていられなくて。
窓を開けたら、金木犀の匂い。
地面の湿ったような、緑が湿ったような匂いもする。
新しい『日々ごはん』の書類は、明日届くようなので、今日はしばしの休日。
心が落ち着かないときには、ひと針ひと針お裁縫だ。
窓辺でちくちくやっていたら、2時過ぎくらいに小雨が降ってきた。
どうりで湿気がすごいはずだ。
スイカが食べたくなるような蒸し蒸し。
雨は、静かに静かに降りつのる。
霧もうっすらかかっているけれど、暗くはない。というか、薄明るい。
明るい霧という表現、あるんだろうか。
夜ごはんは、じゃがいも入りフジッリ(にんにく、玉ねぎ、間引き大根と葉、椎茸、バジル、グラナ・パダーノ)。
『母を訪ねて三千里』を見ながら食べた。

●2024年10月17日(木)晴れのち曇り

今朝の陽の出は、猫森の木々の間から。
あんまりよく見ていると、目の中に太陽の光の玉が残って本が読めなくなるので、とちゅうでベッドに戻った。
『ためさるる日』の続き。
女学生の正子さんは、14歳になった。
遠足でよく山道を歩き、しびれた足をのばして寝たというのが日記に出てくるけれど、たぶん下駄で歩いているんだと思う。たいへんなことだ。
ときどき出てくる景色の描写がとてもいい。
とくに大好きな描写があった。
ここに、引用させていただきます。

一九二〇年(大正九年)
九月十五日 水曜日 気象 晴 雨 起床六時 就眠十時
今朝目を覚むれば烈しき雨の音が聞こえた。庭に面した縁側に暫く硝子戸に身を寄せて見ていると、敷石に穴をもあけよとはげしく降り、南天は前にしなっと意気地なくおじぎをしている。あまり長く見つめていると雨がぼんやりして何にも前は見えなくなってしまうのだった。

14歳の女の子の、見えたままを伝える混じり気のない言葉。
いいなあ。
うちには今、金木犀がある。
おとつい、あゆみさんが秋の野菜と一緒に持ってきてくださった。
朝起きると、ふわーっと香る。とってもいい匂い。
もう秋の最中だと思うのだけど、洗濯物を干しているときに暑かった。
掃除機をかけていても、汗をかく。
風はひんやりしているのだけれど、なんとなく蒸し蒸し。
今日からお裁縫をはじめた。秋冬用の、かぶる形のプルオーバーだ。
きのは、「ユザワヤ」さんに生地を買いにいったら、フラノのいいのがあったので。
朝から型紙をとったり、生地を裁断したり。
午後からは、窓辺でちくちく縫いはじめた。
暑いのか涼しいのか、よく分からないけれど、涼しいのが少し勝っているかな。
顔が火照る感じ。そして、とってものどが渇く。
4時ごろ、文子さんに誘われてティーターム。
中国のおいしい紅茶と、青森の昔ながらの餅菓子をいただきながら、しばしおしゃべり。
ファビオは風邪ぎみだそうで、ちょっと離れたところに腰掛けていた。
文子さんのキッチンの窓から見える緑は、かさかさとして、秋の色になりはじめていた。
夜ごはんに肉豆腐鍋(牛こま切肉、しめじ、椎茸、絹ごし豆腐)を作った。
きのことお豆腐がたっぷりなので、ご飯はなし。粉山椒をふりかけて食べた。食後にみかん。
食べはじめる前に、文子さんにおすそわけ。
薄味なので、風邪っぴきのファビオにもいいかなと思って。
お鍋を抱えて下りてきた文子さんに、ミズの昆布だしに浸けをいただいた。
シャキシャキして、生姜がきいていて、おいしいなあ。

●2024年10月14日(月)晴れ

朝風呂に浸かって身支度し、窓を開けたら、ちょうど文子さんが大阪に出かけるところだった。
「おはようー」「行ってらっしゃい」と手を振り合う。
こういうのがとても嬉しい。
きのうの夕方は、ふたりが青森の旅から帰ってきて、うちでおかえりなさいの乾杯を小さくしたのだった。
キンカンブラザースも引き取られ、1階の窓際はひろびろ。
なんだかほんとに、やけにスッキリして見える。
ちょっと淋しいな。姫白丁花とバジルも、兄弟がいなくなって淋しそうだ。
でも、ふたりが帰ってきてくれて、ようやくいつもの日々が戻ってきたなあと感じる。
今日は朝から、「きょうの料理」の次の撮影のアイデアスケッチを描きながら、エッセイも書いているところ。
夏が戻ってきたみたいに暑いので、扇風機を回しながら。
レシピの下書きもした。
夜ごはんはまだ明るいうちに、『母をたずねて三千里』を見ながら食べた。
島さんの玉ねぎスープ(粒マスタード)、ラムのスパイス焼きの白パンサンド2種(グリーンソース、紫玉ねぎ&ババガヌーシユ、紫玉ねぎ)。
ババガヌーシユと紫玉ねぎって、よく合うな。

●2024年10月12日(土)晴れ

7時半に起きた。
朝方眠れなくて二度寝をしたので、ちょっと寝坊。
海はもうきらきらだ。
朝ごはんの前に、熟しすぎたバナナが1本あったので、いつもの半量でバナナケーキを作った。
焼きながら、モロヘイヤのだし浸しも作った。
風はひんやり気持ちがいいけれど、なんとなく暑い。
あれ、もうお昼だ。
寝坊をすると、午前中の短いこと。
午後から、きのう試作をした「おまけレシピ」の仕上げ。
『日々ごはん』の校正の仕上げをし、書類をすべてまとめて荷物を作った。
4時前には坂を下り、コンビニへ。
パン屋さんでパンを買い、坂を上る。
桜の葉が心なしか黄色くなってきている。
坂のとちゅうで、今年はじめてのどんぐりを拾った。 汗をいっぱいかいたので、先にお風呂に入ってしまう。
気の抜けたビールをグレープフルーツジュースで割り、氷を浮かべて飲む。つまみは柿ピー。
今日の夕暮れは、ぼんやりした茜色。
地味だけどきれいだな。
木の葉がかさかさと乾いた音を立て、真上の空には少しだけ膨らんだ半月が光りはじめている。
夜ご飯は。焼きカレーパン(きのうスパイス屋さんで買った、グリーンチャツネをつけて食べた)、チキンハムとババガヌーシュ、ボルシチ(ゆうべの)。
『七つの海のティコ』の最終回を見ながら食べた。
ああ、またひとつ終わってしまった。
こんどは何を見ようか。

●2024年10月10日(木)晴れ

ゆうべから読んでいる『ためさるる日』が、おもしろくてたまらない。
今朝は5時に起き、ベッドの中で続きを読んでいた。
この本は、こんど徳正寺で対談をする扉野さんが送ってくださった。
お寺の片付けをしていたら、大伯母さんが女学生のころに書いた古い日記が出てきて、1冊の本にまとめているという話は、前に扉野さんから聞いていたけれど。
扉野さんはよくこんな本を作ったなあ。
およそ100年前に記された、正子さんというひとりの少女のつつましい日々。
日記の中には家族や親戚、女中さん、学校の友だちなどの名前が現れては遠のき、また現れる。
学校のこと、遠足のこと、お稽古のこと、すぐに熱を出す弟のこと、スペイン風邪の流行。
名前というのは不思議なものだな。
知らないはずの人たちなのに、私はいつの間にか彼らの姿を思い、ぼんやりとした物語も抱いている。
世の中の動きを背景に、また物語が動く。 それを少しずつ読み進める喜び。
うーん、すごくおもしろい。
このところ私は、日記を書くことについて、ああでもないこうでもないと考えていたのだけれど、この本のなかには私が知りたいと思っている答えが、折り重なるように潜んでいる気がする。
とても美しい創りの本なので、ベッドで読んでいると、心がしんとする。
前に、渡邉良重さんと松田素子さんの対談を聞きにいったとき、徳正寺の奥の間での打ち上げに入れていただいた。
すみずみまで掃除がゆきとどいた、床や柱の深い色、建具、窓の桟、ガラスの向こうの庭。
そのときに感じた、お寺という建物の奥ゆかしさ。
暮らし続けることで、さらに磨きがかかる建物の頑丈さ。
本を読んでいて分かったのだけど、徳正寺は正子さんが家族とともに暮らしていた100年前から、ほとんど変わっていないそうだ。
扉野さんに尋ねたいことも、たくさん浮かんできた。
29日のトークイベントのテーマは、「言葉のこと、本のこと、暮らすこと」。
日記についても、扉野さんと話したいな。
まだお席があるようですので、ご興味のある方はぜひ遊びにきてください。
さあ私も、自分の日記のことをがんばろう。
新しい『日々ごはん』。校閲さんの朱を確認しながら、もうひとまわり見直しをしているところ。
ぎゅっと集中し、午後から三宮に買い物に出かける予定。
街中は、外を歩いているときは涼しいのだけれど、お店に入ると暑かった。
北野のスパイス屋さんをハシゴし、「FARMSTAND」で野菜とパンを買った。
帰ってきたら、新しい『日々ごはん』のいろいろな書類が届いていた。
明日もまた励もう。
夜ごはんは、翡翠ナスの米油焼き(結晶塩)、水菜のサラダ(焼き油揚げ、焼き椎茸)、ババガヌーシュ、南瓜のサラダ(ゆうべの)、白パン。 
『七つの海のティコ』を見ながら食べた。
今夜はぴかぴかの半月。
夜景もよく光っている。
空気がよほど澄んでいるのだ。

●2024年10月9日(水)晴れ

今は夕方。
ひさしぶりに缶ビールを飲んでいる。
夕暮れの空が、あんまりきれいなので。
対岸の山の形に沿って連なる、雲の行進。
茜色に染まった西の雲は、こちらに向かってやってくる大きな亀の形。
見ているうちに色が変わる。
じわじわとではない。すとんと変わる。
夕陽がたった今、山に沈んだんだと思う。
今朝は寝坊して8時半に起きたのだけど、窓を開けたらあちこちがきらきらしていた。
木々の緑も、電線も、もちろん海も。
きらきらというより、ぴかぴかという感じだった。
やっぱり秋の光は特別だな。とくに朝が見逃せない。
お昼前に、島さんから荷物が届いた。
玉ねぎ、にんにく、じゃがいもにりんご、小さな南瓜も入っている。
私は酸っぱくて硬いりんごが大好きなので、箱を開けてすぐ、待ちきれずに皮ごと半分食べた。
うーん、おいしい!
ちょっと野生的な味と香り。
お昼ごはんを食べてからは、蒸し器で南瓜をゆでた。
辛子とフレンチマスタードを効かせたサラダにしようと思って。
今日は一日中、なんだかんだと仕事をしていた。
誰にも会わずにひとりで家にいると、時間はるるるるると流れていくばかりで、区切りがない。
なので、4時半にきっぱり終わりにし、ビールを飲むことにしたのだった。
ああ、もう空が蒼くなってきた。
白かった三日月も光り出した。
夜景が灯ると、秋の虫たちが鳴きはじめた。
夜ごはんは、豚の生姜焼き(島さんの玉ねぎを大きく切ってたくさん加えた。お肉よりも玉ねぎの方がおいしかった!)、南瓜のサラダ、くずし豆腐の味噌汁(だしを取ったあとの昆布も小さく切って加えた)、根菜のパリパリ醤油漬け(島さん作)、ご飯。

●2024年10月6日(日)晴れ

もう7時だ!と思って起きたら、6時だった。
ゆうべは肌寒く、夜中に薄がけ布団を出した。
朝の天気予報によると、これから気温がぐんぐん上がり、30度を超えるのだそう。
ヨーグルトを食べているとき、海がきらきら光り、眩しくて見ていられないほどだった。
キンカンの土を触ると、乾いている。
ファビオからは4日に1度あげればいいと言われていて、それは明日の朝なのだけど、自分の判断で水やりをした。
今日は、午後から「神戸ファッション美術館」に出かける。
東京の仕事仲間と会う約束。
いいお天気でよかったな。
住吉からの六甲ライナーは、いつもみたいに山側の先頭に乗ろう。
その前にひと仕事。
きのうから書きはじめた、「日々ごはん』のまえがきの仕上げをしよう。
夜ごはんは、三宮の呑み屋で食べる予定。
ここでひとつお知らせです。
『毎日のことこと』の刊行記念に、10月29日(火)の夕方から、京都の「徳正寺」にて、住職で詩人の扉野良人さん(絵本のお店「メリーゴーランド」の鈴木潤ちゃんの夫)とトークイベントを開きます。
詳しくは「ちかごろの」をご覧ください。

●2024年10月4日(金)雨のち曇り

6時に目覚め、「古楽の楽しみ」を聞いて、起きた。
このごろはすやすやと、とても気持ちよく眠れる。
夏の間は暑くて眠りが浅かったから、取り戻しているみたい。
朝ごはんを食べているとき、雨がぐんぐん強くなり、向こうが見えないほどのざーざー降りになった。
文子さんとファビオの出発の時間だったから、案じていたのだけど、ざーーーっとひとしきり降って、やんだ。
よかった!
ふたりは今日から青森へ。
私は新しい『日々ごはん』の校正の続きと、アルバムのキャプションに集中。
3時には仕上がり、キャプションを村上さんにお送りできた。
校正は明日、もうひとまわり見直すつもり。
「コープさん」へ。
休み休み坂を上って帰ってきた。
上りはじめよりも、最後の方が慣れて楽になるみたい。
それでも汗をいっぱいかいた。
夜ごはんは、ホッケ(ムニエル風に焼いた)、ブロッコリー添え(無水鍋でやわらかくゆでた)、ご飯はなし。 Amazonプライムのアニメを見ながら、ナイフとフォークで食べた。 今夢中になっている「カルピス世界名作劇場」は、『七つの海のティコ』。
おもしろくて、気づけばもう20話を超えてしまった。

●2024年10月3日(木)雨のち曇り

朝から雨。
とても静かな日。
新しい『日々ごはん』の校正とアルバムのキャプション。
薄暗く、電気をつけてやっていた。
ぐっと集中し、3時には11月までが終わった。
そのあとで村上さんから電話。
表まわりについて、ひとしきり打ち合わせをした。
ここでお知らせをひとつ。
新しい『日々ごはん』と書いたのは、じつは『帰ってきた 日々ごはん』は15巻で終わり、次の巻から新しいシリーズがはじまるのです。
デザイナーも変わって、心機一転。
このことは、1年近く前から村上さんと相談し、進めてきました。
みなさんのもとに届くのは、多分今年の終わり。
どうか、楽しみになさっていてください。
もうじき5時半。
雨はやんだようだけど、霧に包まれている。
そして、肌寒い。
薄墨を流したような空と海、きれいだな。
文子さんとファビオが青森に旅に出るので、きのうから預かっているキンカンブラザースは、枝葉を伸ばし、喜んでいるように見える。
夜ごはんは、茄子のごま油焼き(辛子醤油)、マコモダケのオリーブオイル焼き(塩)、しじみ入りさつま揚げ(文子さんにいただいた)ワンタンスープ(大根の間引き菜)。
夜、雨が上がって、夜景が煌めきはじめた。

●2024年10月1日(火)晴れ

きのう、中野さんちから帰ってきた。
なんだかぎゅっと濃縮したような2泊だった。
紅葉はまだだけれど、どこもかしこもなんとなく黄金色で、秋の色合い。
焚き火をしているような、香ばしい匂いがしていた。
地面が多いからかなあ。はっきりと秋を感じた。
帰ってきたら、六甲も季節が動いていた。
夜は、窓を開けたままだと寒くて眠れない。
今日から10月。
次の『日々ごはん』の再校正をはじめよう。
アルバムのキャプションも。
栗をゆでながらやった。
この栗はきのう、中野さんちの近所の「ひまわりの丘公園」にある直売所で買った。
2ヶ月分が終わったところで、今日はおしまい。
ゆでたての栗の実をかき出し、栗ジャム作り。
ゆでたての栗、すごくおいしい。
栗は年にいちどの秋のおいしさ。
合いびき肉にスパイス(クミンシード、フェンネルシード、コリアンダーシード)とおろしにんにくをちょっと、ヨーグルト、チーズ(グラナ・パダーノ)を練り混ぜ、シガラ・ボレイも作った。
夜ごはんは、シガラ・ボレイ(グリーンソース)とパン。

●2024年9月30日(月)曇り

6時半起床。
ゆうべもぐっすり。
中野家のみんなが出てくる夢をみた。どこか旅に出かけている夢。
朝方は、文子さんとファビオが出てきた。
ユウトク君とソウリン君は学校。
7時半にお見送り。
(この日の日記はここまで)

●2024年9月29日(日)晴れ

6時半起床。
ぐっすり眠った。
六甲ではまだタオルケットだけれど、中野さんの部屋はとても涼しく、薄い肌がけ布団がちょうどよかった。
朝、ユウトク君と自転車でスーパーに行った。
お昼ごはんに米粉のパンケーキを焼くつもりなのに、豆乳を買うのを忘れてしまったので。
大きく焼いて、チーズやハムを巻こうと思う。
田んぼではどこもかしこもお米が実り、頭を垂れた稲穂が黄金色になっている。
あぜ道を走ると、干し草みたいな香ばしい匂い。
スーパーの帰り道に、「青い鳥のいるところ見にいく?」と聞かれた。
それは、カワセミのこと。
前に、どこかの池でカワセミを見た日のことを、中野さんから聞いたことがある。
私が行きたいと答えると、「もっと早く走るで。なおみさんついてきてな」。
その池は、田んぼのあぜ道をまっすぐに走り抜けたところにあった。
奥の方では水面が光り、鴨が泳いでいるのだけれど、手前の半分は若草色の水草でびっしり覆われている。
ユウトク君は「なんか、アメリカみたいやない?」と何度も聞いてくる。
じっと見ていたら水草の表面が動き、ときどき跳ねる生き物がいる。
ハゼかと思ったら、ウシガエルの子どもなのだそう。
静かにしていると、あちこちで跳ね出した。
緑がかった茶色いカエル。500円玉くらいの大きさ。
池のへりに向かって、ユウトク君が歩いていった。
「なおみさん、こっちに来て。静かにな」
忍び足で行ってみると、陸に潜んでいたらしく、ウシガエルたちが何十匹もいっせいに池の方に向かって跳ね、ポチャンポチャンと飛び込んだ。
こんなの、はじめて見た。
地面と同系色で気づかなかったのだけど、ユウトク君には見えていたらしい。
しばらくそこでじっとしていたら、カエルたちがまた戻ってきた。
私たちの方を伺いながら、水辺からいっせいにこっちを見ているカエルたち。
私はおもしろくて鳥肌が立った。
帰ってから、お姉さんとパンケーキの生地を作って(混ぜるだけだけど)、発酵させた。
お昼ごはんは、チャーハンと(冷蔵庫にあるもので中野さんが作った)、米粉のイースト入りパンケーキ(焼き上がりにチーズをのせ、溶けたところにハム。くるくる巻いてブリトーみたいにした)。
ソウリン君はお義兄さんとUFOキャッチャーをしに行っていて、まだ帰ってこない。
中野さんの部屋で日記を書いていたら、車の音がした。帰ってきたみたい。
階段を下りるとき、ソウリン君の声が聞こえてきた。
「なんで、なおみさんがおらんの?ユウトクばっかり一緒に遊んで、ずるいで」なんて言っている。
うれしいなあ。
UFOキャッチャーで、ものすごく大きなシャチのぬいぐるみを取ってきたから、私に見せたかったんだ。 「何これ?」とか言いながら、パンケーキをくるくる巻いているソウリン君。 ケチャップをつけてひと口食べたら、何も言わずにガッツポーズをした。
やった!おいしかったらしい。
そのあとは、中野さん、ソウリン君、私とお宮さんでキャッチボール。
キャッチボールといっても、ただ球を投げ合うだけれはなく、バットで打った球を取る。
私もピッチャーとバッターをちょっとだけやらせてもらった。
球を拾いにいくとき本気で走るので、首の後ろは汗びっしょり。
とちゅうからユウトク君、お母さんも参加。お父さんも出てきてピッチャーになった。
夜ごはんは、馴染みの焼肉屋さんへ。
おいしいお肉をお腹いっぱい食べ、帰ってきてすぐに花火。
家族みんなで1本づつ順番にやった。
夏の終わりの線香花火は、とても静かだった。

不知火の花火をくださった村上さん、ありがとうございます。

●2024年9月28日(土)曇り

今朝、電線のところにとまっていたのは、お腹が橙色の小鳥。
顔に黒いラインが入っているのは、ジョウビタキだっけ、ヤマガラだっけ。
しばらくの間羽繕いをし、猫森の方に飛んでいった。
島さんの焼きしめの大鉢を、メキシコの腰掛けの上に置いて、ヨーグルトを食べながら眺めた。
「焼きしめはすり鉢にもなるから、とろろをすってそのまま出してもいいかもね」と、島さんが言っていたっけ。
とろろご飯、いいなあ。
片口のつけ根のところが、流れるように少し歪んでいるところが大好き。
じゃがいもや蓮根、人参なんかがごろごろと入った和風の煮物ももちろんだけど、マッシュポテトやモロッコの赤いシチューなんかも似合いそう。
ブリヌイの生地を作って発酵させたり、ひき肉を練ったり、外国の壺(ボウルだろうか)のようにも使ってみたい。
どんどん使って、食べ物が染み込んでいくといいな。
さて、洗濯物を干したら、中野家に出かけよう。
今月は頑張って仕事をしたから、遅い夏休みだ。
村上さんにいただいた、不知火の線香花火も持っていく。今夜か明日の夜、ユウトク君、ソウリン君たちとできるといいな。
夜ごはんは、ブリの照り焼き(大根おろし)、茄子と獅子唐の炒め煮、南瓜の含め煮、鰯のお寿司(スーパーの)、お寿司。

●2024年9月27日(金)曇りときどき晴れ

ゆうべはちょっと蒸し暑かった気がする。
まだ、夏と秋が行ったり来たり。
でもクーラーをつけるほどではないから、秋の方が目方がずっと多い。
6時くらいにイソヒヨドリの声が聞こえたので、もう起きてしまう。
窓を開けると、電線にとまっている。
私がくちゅくちゅと鳴き真似をしたら、またこちらに飛んできた。
ちょっとぽっちゃりしたイソヒヨドリ。この間の子が大きくなったんだろうか。
8時から朝ドラの最終回を見た。
大好きな番組が、また終わってしまった。
きのうは、チーズが残っているのが気になっていたので、ジョージアのハチャプリを焼いてみた。
フライパンで焼く、自分の丸パンのレシピで。
とろける」チーズと刻んだ青唐辛子を包んだら、丸くするつもりだったのだけど、四角い座布団みたになった。
原稿もいい感じに書けたので、Amazonプライムで『ベルリン天使のうた』を見ながら、窓辺で食べた。
きゅうりの丸かじりと、セミドライトマトのオリーブオイル漬けと、グリーンソースで大満足。
『ベルリン天使のうた』は、とってもいい映画だなあ。
昔いちど見たことがあったのだけど、あのころにはよくわからなかった。
続いて、『パリ・テキサス』も見はじめた。
ヴィム・ベンダースはいいなあ。途中でやめておいたので、続きが楽しみだ。
さて、今日は午後から美容院。『家守奇譚』の仕上げた原稿を持っていき、また図書館で推敲をするつもり。
クリーニング屋さんと「MORIS」にも寄って、ひと目ぼれして買った島さんの大鉢を持って帰ろう。
街は湿気があり、夏が戻ってきたみたいに暑くて、歩いているだけで首の後ろにたくさん汗をかいた。
今日子ちゃんのおいしいケーキ(米粉とアーモンドのケーキに、ジャムとふわふわのクリームが挟まっていた)をごちそうになり、新装開店した「いかりスーパー」で買い物をして帰ってきた。
夜ごはんは、『パリ・テキサス』を見ながら。茄子とピーマンのバジル炒め、グリーンソース、いつぞやのカレー、アロス・ヴェルデ、ビール(氷入り)。
『パリ・テキサス』はとてもよかった。8歳の息子が可愛くて、英語の勉強にもなりそうだった。
主人公はぽつんぽつんとしか話さないし、ゆっくりなので、何を言っているかよく分かる。
受け答えのセンテンスもとても短い。
普段、私の日本語はゆっくりだし、長いセンテンスも話さない人格だから、こういう英語を覚えたらいいのかも。
こんど、『パリ・テキサス』をストップモーションにしながら、会話を書き出して勉強しようと思う。

●2024年9月25日(水)晴れ

朝、薄明かりが漏れてきたので、カーテンを開けた。
曙の空。
雲が薔薇色に光り、猫森の木の葉の間から陽の出。
思っていたよりも、ずいぶん下の方から出てきた。
陽の出を見るのはとっても久しぶり。
空気もひんやり。本当に秋がやったきたのだ。
せっかく早起きをしたので、朝ごはんの前に続きの原稿を書いてしまおう。
「おまけレシピ」の仕上げもしよう。
午後にはずいぶん書けたので、あちこち掃除機をかけ、『毎日のことこと』にサイン。
夕方までには80冊が終わった。
『毎日のことこと』は、おかげさまで先週、増刷が決まったそうです。
みなさん、ありがとうございます。
夜ごはんは、鯖の味醂漬け、冬瓜の薄味煮、オクラのおかか醤油、ウニの塩辛、焼き海苔、ご飯。

●2024年9月24日(火)晴れ

きのうから、とっても涼しい。
ついに秋がやってきたのだ。
今朝はしっかり疲れが取れた気がする。まだ頭がぼんやりしているけれど。
「MORIS」での料理教室は、みなさんのおかげでとてもいい会になった。
午後1時のスタートだったのに、作り方をお伝えしては、できたての料理を食べてもらい、器を洗い(島さんとヒロミさんが手伝ってくださった)、また次の料理へと進むのを繰り返していたら、5時半くらいになってしまった。4時間半も続く料理教室って、あるんだろうか。
メニューはまず、ブリヌイとババガヌーシユ。小粒じゃがいもの黄金鍋焼き、ビーツの丸ゆでと手作りマヨネーズ、シガラ・ボレイ(トルコの春巻き・ラム肉と合いびき肉)とグリーンソース、鯵と真鯛のシェビーチェ(ライム、香菜、青唐辛子)、塩豚とパプリカの鍋蒸し煮とアロス・ヴェルデ。デザートは今日子ちゃんのコーヒーの香りのするふわふわロールケーキ。
外はしとしと雨が降っていて、私はときどき窓の色を見ながらも、夢中でやっていた。
やっぱり料理教室は、お客さん(生徒さん)の反応が直に伝わってくるからかな。たまらなく楽しかった。
私は昔、テレビに出るときに着ていた白衣のパンツと、白いTシャツ、厨房用のエプロンをきりっと巻いて挑んだ。
そのせいか、ちょっと「クウクウ」のころを思い出したりもした。緊張とワクワクを抑えながら、お客さんたちにできたての料理をサーブしていたときの感じ。
島さんとふたりで一緒に過ごせた時間も、とてもよかったな。
きのうは神戸空港までお見送りし、夕方「MORIS」に戻ってきて、今日子ちゃんが撮ってくれた教室の写真をまとめた。
今朝は、海を見ながら洗濯ものを干したり、小鳥の声がすると窓辺に立って探したり。
いつもの私の生活が戻ってきた。
さっき、今日子ちゃんから生徒さんの感想メールが送られてきた。
ああ、嬉しいなあ。
メールをくださった方、ありがとうございます。
ひとりひとりにお許しを得て、いくつかをここに引用させていただきます。

 ・・・・・
きのうはありがとうございました。 なおみさんのどの料理も美味しくて、島さんの器と合っていて、すてきな時間を過ごせました。ビーツの色の鮮やかさがまだ残っています。だんだんと外が暗くなっていって、部屋の灯も料理と合っていて、しみじみ良いなあと思っていました。
 ・・・・・
ビーツは一度食べてみたくて、父親に畑で作ってもらったのですが、ゆで時間が短かかったんでしょうね、食べたけど、硬くて、うーんという感じ。あのくらいゆでないとだめだとわかりました。ここ1年、私は体調が悪くて何を食べてもあんまり食欲が出なくて、なおみさん、モリス さん、島さんの作るおいしいもんとは!と知りたくて、参加しました。スパイシーで、どれも今まで食べたことのない味でした。材料をきちんと量ること、時間を置くこと、音を聞くこと、学びました。緊張していたけど、おうちに招かれてご飯をいただいてるようでした。普段生活に余裕がなく、慌ただしくしすぎてるんやなと、ちょっと料理の感想とは離れますが、思いました。もっと自分も労わらねばと。終わりに、六甲からのざっと吹いた涼しい風のなか、いただいたケーキは、めちゃくちゃ美味しかったです。
 ・・・・・
きのうは本当に楽しい、嬉しい、美味しい会を開催してくださり、ありがとうございました。高山なおみさんが料理を作られていく様を、目の当たりに見せていただきつつ、食べ、味わい…あっという間の時間でした。自分の五感を集中して、好きなことに向かえた、得難い時間でした。ほんとうに美味しかったです!楽しかったです!あの、るり子さんの黒い器にひと品ずつ…そして最後に裏返されて、緑のごはんと赤いパプリカとやわらかく煮込まれた塩豚。その出し方も、ひとつずつに集中できてよかったです。
 ・・・・・
まだまだ、あの幸せな時間の余韻冷めやらぬ私。心に大切に取っておいて、事あるごとにそっと取り出して、ああなんて素敵な夏の終わりだったのだろうと思い出したい、そんな瞬間のたくさん詰まった会でしたー!島るり子さんのあたたかくもすっきりとした器たちに、高山なおみさんの異国を感じる(語彙力の無さよ)、優しさ溢れるお料理。お二人のやりとりもどこまでも優しくて、何故かちょっと泣きそうになってしまいました。お料理やお菓子作りは、やっぱりやってみなくてはわからないことが多いですが、丁寧なレシピの文章は、ポイントを感覚的に捉えやすくて嬉しかったです!『溶けたアイスクリームのようになったら』ね、『トングでつかんだ時にブワッとつぶれるくらいになったら』だよ、と高山なおみさんが側で言ってくださっているみたいです。秋の夜長、コトコトゆっくり作りまーす!
 ・・・・・

午後からはコーヒーをいれ、『家守奇譚』についての文章の続き。
夜ごはんは、ちょっとお腹を壊しているので、お粥(ニラ、卵)、根菜のカリカリ醤油漬け(島さん作)、手作り海苔の佃煮。

●2024年9月21日(土)曇り

ゆうべは涼しく、クーラーなしで眠れた。
窓から風が吹き込み、レースのカーテンを膨らませていた。
きのう私は、お昼前に歯医者さんにいった。
そのままバスに乗って、「FARMSTAND」へ。
料理教室のために、香菜やじゃがいもを買いたくて。 
「FARMSTAND」では、伊那からやってきた島るり子さんと2年ぶりの再会。
朝どれの野菜が届くまで、島さん、今日子ちゃん、ヒロミさん、亜由美さんと一緒にランチを食べた。
茄子(米粉をまぶして揚げてあった)とじゃがいもの油淋鶏(鶏肉は入っていないけど)、伏見唐辛子のちょっと辛いきんぴら、冬瓜と梨のサラダ、冷や汁(厚揚げ、きゅうり、ごま)すべてがとってもおいしかった。
そして、亜由美さんが「MORIS」まで送り届けてくださった。
今日子ちゃんもたくさん買い物をしたし、島さんも旅の荷物があったので、本当に助かった。
「MORIS」では教室の支度をしたり、本にサインをしたり。
みんなで「ラジオ深夜便」の聞き逃し配信を聞きながら、島さんの栗の渋皮煮でおやつ。
ラジオのアナウンサーが朗読を終えたとき、ヒロミさんが「いいわねえ」としみじみおっしゃった。
そのとき私は、一瞬で小さい子どもになった。
バカでのろまな私が、親戚のおばさん(やさしいけれど厳しい人)にほめられたような気持ちになった。
久しぶりの料理教室で、私はこのところ試作をしたり、レシピを書いたり、よく眠れなかったかったりとずっとどきどきしていたのだけれど、おかげでぐんぐん楽しみな気持ちが湧いてきたのだった。
今朝は、朝ごはんを食べてすぐに仕込み。
茄子を焼いてババガヌーシュとグリーンソースを作った。
すごくおいしくできた。
お昼を食べたら、こんどは文子さんとファビオが「MORIS」に車で荷物を運んだり、買い物に連れていってくれる。
みんなに助けてもらって、ようやく教室ができる。
ありがたいなあ。
夜ごはんはちょっと早めに、大相撲観戦をしながら文子さん&ファビオと。
チキンハムとバジルペースト(文子さん作)、きゅうりスティック、手作りマヨネーズとババガヌーシュとトマトチリペースト(私作)、クラッカー、ホットドック&焼きそばパン(私作)、ビール、ジントニック。

●2024年9月18日(水)

イソヒヨドリの声が聞こえたので、5寺半に起きた。
もう明るい。
窓を開けると、1階の屋根の上にいる。
スマートで小さめなイソヒヨドリ。
私がくちゅくちゅと鳴き真似をしていたら、こちらを見上げ、窓のいちばん近くの屋根にとまって、首をかしげたりしている。
何年か前にもこんなことがあった。
イソヒヨドリって、人なつっこいんだろうか。
よく眠ったのでもう起きてしまう。
コーヒーをカップに入れて戻ってきた。
ベッドでそのまま、『家守奇譚』の続きを読む。
太陽が昇って、足もとが暑くなるころに読み終わった。
今度の原稿は、この本について書くので、注入完了だ。
洗濯物を干しているとき、海が光っていた。
朝に海が光る季節になってきたのだな。
今はまだ9時。 早起きをすると、午前中がやけに長いことを思い出した。 この感じは久しぶり。
メガネの鼻に当たるクッションが壊れてしまったので、今日は三宮の眼鏡屋さんに行ってこよう。
帰りの阪急電鉄の窓から山の方を見ていたら、まだ夏みたいな空。
まっ青な空に入道雲がもくもく。
2時前にお腹ぺこぺこで帰りつき、お昼ごはんは蒸し穴子の握り寿司(阪急デパ地下の)、ひじき煮、ゴーヤーときゅうりとモズクの酢の物と合わせ。 真夏みたいなお昼ごはんになった。
早い夕方に、日曜日に放送された『深夜ラジオ便』の聞き逃し配信を聞いた。 辻山さんの「本の国から」は、とても静かに時間が流れる番組。 海を見ながら、ビールを飲んで、ゆらゆらと。 『毎日のことこと』のこと、本当に深く読んでくださったんだなあと感じ、感謝の気持ちでいっぱいになる。 アナウンサーの朗読も、ひとつひとつの言葉が際立ってとてもよかった。 そして、辻山さんのお話を聞きながら、まるで誰か知らない人が書いた本のように客観的に聞こえたのもおもしろかった。 そうか私は、東京でよほど張り詰めていたのか。
そうだった、そうだった。
長いこと東京が活動の場で、伴侶とともに生きてきたのに、突然ひとりになって神戸に移住したときには、たくさんの人たちを驚かせてしまった。
『毎日のことこと』はそういう方々に向けた、神戸からの手紙のような本になったのだなあ。
夜ごはんは、カレー(粗びき肉、半端に残ったラム肉)、アロス・ヴェルデ(試作の残り)、キャベツと人参のコールスロー(ヨーグルトに手作りマヨネーズを混ぜてみた。爽やかでおいしい!)。
お風呂から出ても、まだ体が火照っている。
今日の三宮は、とっても暑かったから。特に駅が暑くてびっくりした。

●2024年9月17日(火)晴れ

涼やかな風。
今朝はきのうよりもちょっと涼しい気がする。
東京から帰ってきたのは、土曜日の夕方。
あっという間にもう火曜日だ。
日置さんのお通夜は、料理家やカメラマン、編集者が大勢参列し、10年ぶりくらいに会った仕事仲間もいて、なんだか同窓会みたいだった。
みんな涙を溜めながら、口々に、「日置さんのおかげで会えましたね」と言っていた。
私と村上さんは早めに行ったので、ゆっくりとお別れすることができたのも、とてもよかった。
まだあまり人が集まっていないとき、私はお桶に寝ている日置さんに何度も会いにいき、話しかけた。 「日置さんとみどりちゃんのおかげで、料理家になれました。ありがとうございます。まだまだ、私はがんばります」
その話を神戸に帰ってから今日子ちゃんにしたら、笑われた。
今日子「え、話しかけたんですか?」
私「小声でだよ」
今日子「そりゃそうです!」
戻ってからは、なんとはなしに本棚の前に立ち、これまでの料理本や雑誌のファイルをついめくってしまう。
そして思い出す。
プロセスカットの撮影のとき、日置さんが私の顔の近くまで寄ってカメラをかまえ、撮っていたこと(そんなに近寄る人はほかにはいらっしゃらない)。
そういうとき、いつもいい匂いがかすかにしていたこと。
そういえばこの間の日記に、『恋するスパイスブック』と書いてしまったけれど、『元気になるスパイスブック』の間違いだった。
でも、この本は「クウクウ」でバリバリ働いていた30代後半に作ったので、そういう感じのする本だ。
今、うちの祭壇には、日置さんのお水のグラスがひとつ増えた。
きのう中野さんがお米と一緒に送ってくださった、ルピナスの絵も飾ってある。
まるで、日置さんのために描いてくれたみたいな儚い感じのする絵(多分違うと思うけれど)。
さあ、今日は「MORIS」で開かれる、島るり子さんの器を使った料理教室の試作をしよう。
きのうもひとつやり、文子さん、ファビオと一緒に食べた。
今日も食べていただくので、完成したらお鍋とお皿持参で取りにきてもらう予定。
今、ふたりが下りてきた。
文子さんが、白玉だんご入りのみつ豆を作ってきてくれた。
夜ごはんは、ポルトガル風塩豚とパプリカの鍋蒸し煮、アロス・ヴェルデ(紫玉ねぎ添え)。
ひさしぶりに作ったのだけど、大成功のおいしさだった。
どこをどうしたらおいしくできるのかも、見極められた。
文子さんからは、「Wow! 驚きのおいしさ!!! ジューシーでやわらかい塩豚。ほんとパプリカの力もすごいですね。ふっくらしているのにうまみが染み込んで、香りよきグリーンライスにぴったり! ファビオとお鍋のジュースも、一滴残さず大満足の夕食。すごいなあ、ごちそうさまでした」とメールが届いた。
月を見上げながら、文子さんの白玉団子がまん丸だなあと思いながら食べていて、ようやく気づいた。
今夜は中秋の満月だからか!
9寺からのラジオ『朗読の時間』は、ばななさんの『キッチン』になった。
ゆうべも寝る前に聞いたのだけど、やっぱりとてもよかった。
朗読をしている女の子も、ぴったりくる。
今夜も聞くのが楽しみだ。

●2024年9月13日(金)晴れ

5時に目覚め、FMで『中学生の基礎英語レベル1』が聞けた。
カーテンを閉めたまま、うつらうつら。
6時半に起きた。
「古楽の楽しみ」はリクエスト特集。ミサ曲がかかっていたような気がする。
お風呂にたっぷり浸かったり、喪服(らしきもの)にアイロンをかけたり。
ゆっくり、ゆっくり支度する。
今日は、夕方から日置さんのお通夜がある。
私は1時半の新幹線で向かう。
駅に着いたら、アノニマの村上さんと待ち合わせ。一緒に参列する。
さっき、『今日のおかず』を本棚から取り出し、とても久しぶりにページをめくった。
日置さんは料理ができ上がると、すでにもう大テーブルのところでカメラを構えていて、たちまち撮影をした。
でき立てをカメラで食べているみたいだった。
私が、盛りつけのときに、ちょっと崩れたところがいいなあと思っていると、そこにピントが合っていた(上がった写真を見てわかるのだけど)。
お皿に飛び散った小さなハネも、ぬぐわなくても大丈夫だった。
みどりちゃんがいつも、「このままでいいよね、ヒオキ」と尋ねていたっけ。
それで私は自信がついたんだった。 料理のなまなましいところ、おいしそうだなあと思う視点。
そういうのは、日置さんとみどりちゃんに教わったんだと、今思い出した。
ありがとうございます。
さあ、12時半になったらタクシーを呼んででかけよう。
日置さんにお礼とお別れをしにいこう。

●2024年9月11日(木)快晴

5時半に目覚めた。
もう、外が薄明るい。
小鳥も鳴いている。
6時にラジオ。
FMではないチャンネルで、「中学生の基礎英語レベル1」が聞けた。
朝ごはんのヨーグルトを食べているとき、白い橋のところがきらきらと光っていた。
陽の出の位置が動いているんだな。
冷蔵庫に牛乳があるのが、とても嬉しい。
きのうがんばって買い物にいったから。
さあ、今日から新しい原稿を書きはじめよう。
窓側に扇風機を置いて回していると、外の空気がひんやりとした風になってやってくる。
海は青く、光る街。
まだ暑いけれど、もう夏とは確実に違う空。
現金出納帳をつけながら、大相撲の秋場所を見ていたら、中野さんから電話があった。
まだ完全ではないけれど、ずいぶんよくなってきているとのこと。
私は安心し、青い海を見ながら話した。とちゅうで冷蔵庫に立ち、缶ビールを開けた。
空に向かって献杯。
夜ごはんは、ソーセージ、キャベツと人参のザワークラウト風(塩もみしておいたのが冷蔵庫の中で乾きかけていたので、水を少し加えて煮、白ワインビネガーとバターをちょっと加えた。おいしかった)、手作りマヨネーズ。
食べ終わったころ、部屋の中まで紅くなるほどの夕焼け。
半月も光りはじめた。

●2024年9月10日(火)晴れ

夏の名残が半分、秋が半分。
もくもくと雲。
空は高く、風も涼しいけれど、2階の床が熱くてたまらず、つま先立って洗濯物を干した。
ゆうべはわりと眠れた。
みどりちゃんや昌ちゃん、日置さんも夢に出てきた。
料理を作って食べているような夢。
日置さんが、6日の午後2時31分に亡くなった。
日曜日の日記に書いたお世話になった方というのは、日置武晴さんのことです。
うちの本棚を見たら、日置さんが撮影してくださった本は、6冊もあった。
いちばん最初が『恋するスパイスクッキング』。
『帰ってから、お腹が空いてもいいようにと思ったのだ。』、『高山なおみさんの のんびり作るおいしい料理』、『うちの玄米ごはん』、『おかずとご飯の本』、『今日のおかず』。
ずべて日置さんのおかげでできた本。
トークはがんばってやったけれど、終わったら私はふわふわとしてしまい、ずっと何もできなかった。
今日から少しづつ動き出そうと思う。
お昼ごはんのためにひじきを煮、ご飯を炊く支度もした。
ちゃんと食べなくちゃ。
「となりのオハコ」の確認。
「おまけレシピ」をひとつ書き、現金出納帳をエクセルに入力。
昼下がり、たまらなく眠たくなってお昼寝。
目を覚ましたとき、漂白剤に浸けたような、真っ白に光る立派な入道雲がもくもくと立ち上っていた。
青空も翳りなく、境界線がやけにくっきりはっきりしていて、雲の形の白い紙を青い折り紙に貼りつけたみたい。
この世のものとは思えないほど。
ツクツクボウシがひとしきり鳴いて、止んだ。
さあ、坂を下りて買い物にいこう。
金曜日はお通夜のために上京するのだから、香典袋も買わなければ。
帰りは、タクシーがつかまらず、荷物はけっこうあったけれど坂を上って帰ってきた。
山からの涼しい風に応援されながら、何度も休みながら。
全身汗びっしょりで帰り着き、すぐにお風呂。
坂を上ぼって、足の方まで汗をかいたのは初めてかもしれない。
でも、体を動かしたかったから、よかった。
今夜はよく眠れるかも。
夜ごはんは、お弁当箱(お昼に炊いたのを詰め、桜の花の塩漬けといりごまをのせておいた)、ひじき煮(油揚げ、だしをとったあとの昆布、甘唐辛子)、豆腐入り炒り卵、ししゃも、鯖のみりん漬け。

●2024年9月8日(日)晴れ

きのうの「小さなマーケットとお話会」は、とてもいい会だった。
最初私は緊張してしまい、しどろもどろになってしまったのだけれど、集まってくださったみなさんのあたたい眼差しを見ながら話しているうちに、どんどん大丈夫になっていった。
対談相手の丹治君のリードも、とてもよかった。
私が道に迷いそうになると、ひろびろとした場所に、手を引いて連れていってくださった。 マーケットを開いてくれた農家の方々や、亜由美さんの方を見ると、いつでも私のことを見守ってくださっている感じがあって。
今日子ちゃん、文子さん、ファビオ、宮下さん、アノニマの村上さんも、チームのようになっていろいろ手伝ってくれた。
ああ、ほんとうにいい会だった。
今朝は、どうしても起きられず、10時までベッドの中にいた。
預けておいたメロンを、文子さんが届けにきてくれて、しばしおしゃべり。
遅い朝ごはんを食べ、洗濯物を干し、またベッドへ。
ミンミン蝉の声を聞きながら、寝たり覚めたり。
おととい、お世話になった方が亡くなった。
その人との思い出が、何度も蘇ってきながら、私はぼうぼうと眠った。
何を見ても、もういないんだなあと思う。
知らせが届いたのはきのうの朝。
ゆうべ、トークの打ち上げが終わり、今日子ちゃんとふたりで帰ってきて、「MORIS」で『毎日のことこと』にサインをした。
そのときにも、何の脈絡もなく、その人との記憶が蘇ってきていた。
そんな話をしたら、今日子ちゃんが言ったんだった。
「そういうときは本当に、なおみさんの近くに来ているんです。だってもう、びゅんびゅんいろんなところへ飛べるんですから」 「亡くなった人のことを思い出したり、話したりするたびに、その人のまわりに花が咲くんですって。だから、たくさん思い出したらいいんです」
夜ごはんは、ミートソースのパスタ(中野さんに作った日の残り)、小粒じゃがいもの黄金焼きとはんぺんのグラタン(おおとついの残り)、キャベツと人参のコールスロー。
『ちびまる子ちゃん』を見ながら食べた。

●2024年9月5日(木)晴れ

ゆうべは秋の虫の声がよく聞こえた。
窓からはクーラーみたいに涼しい風。
あんなに暑かった日々は、大暴れした台風を境にどこかへ行ってしまったみたい。
きのうの朝、窓を開けたときに、秋が来たんだなとはっきり感じた。
匂いがしたから。
起き抜けのベッドで「秋は綺麗に磨いたガラスの中です」と、思わずつぶやいた。
先週の日曜日は、明石公園にある競技場で兵庫の小学生の陸上大会があり、ユウトク君も走るというので見にいった。
中野さんの家族が応援にくるそうだから、みんなに会いたくて。
小学1年生から順番に走っていたらしく、私が着いたときは3年生だった。
女の子と男の子に分かれて走る。
ユウトク君たちの陸上クラブは、青いシャツ。
番がまわってきたとき、私はどきどきして彼しか見えなくなった。
スタートのとき、ラインの前で指を揃え、走りはじめる姿勢の美しさ。跳ねる黄色いスパイク。
ユウトク君はぶっちぎりに早かった。
あとで聞いたら、スパイクの紐が途中でほどけてしまったそうだけど、そんな様子はちっとも見えなかった。
100メートル13秒30だったか、40だったかな。
クラブの子の中にはさらに早い子がふたりいて、ユウトク君は3位。大会全体では4位だったそう。
その日は中野さんの車で六甲に帰ってきて、きのうまで一緒に過ごした。
家族が順番に風邪をひいて熱を出したのは、8月の中ごろから。
お父さんだけ病院に行って検査をしたら、コロナだったことが分かり、中野さんも40度を超える熱が出て、2、3日寝込んだそう。
解熱剤を飲んだらすぐに下がり、体調も戻ったけれど、まだ頭のまわりがぼんやりとして、匂いもないし味もしない。
絵を描いていても、いつもなら風の匂いとか、雨の匂いとかしてくるのに何も匂わない。
ユウトク君とソウリン君が学校から帰ってきても、ふたりの体から何の匂いもしない。
そんな話を聞きながら、どんなものにも鼻をクンクンさせて確かめようとしている中野さんのそばにいたら、私にもうつってきた。
何が香り、何がそうでもないのか。
どういう味だったら感じられるのか。
いちじくの葉の冷たいお茶は、とても微妙な香りなのに、甘味も苦味もちゃんと分かるそう。
そう聞いて飲むと、私も同じように感じた。
グレープフルーツの皮をむいていたら、遠くにいてもすぐに気づいた。
夏の終わりの3日間。
匂いと味を、少しずつ獲得しようとしている人の近くにいられたこと。
いろんな場面を思い出しながら、きのうから過ごしている。
さあ、今日は「気ぬけごはん」の続きを書かないと。
夕方、丹治くんから電話。
土曜日のトークイベントについて、青い海を見ながら話す。
ツクツクボウシが弱々しく鳴いている。
夜ご飯は、小粒じゃがいもの黄金焼き(塩をきかせた湯で軽くゆでたのを鍋に入れ、バターで転がし、オーブンで香ばしく焼いた)、納豆チャーハン(中野さん作)の残り、ピーマンの肉づめ(いつぞやの)、しらすとオクラのおろし和え(ポン酢醤油)。
小粒じゃがいもの黄金焼き、中野さんがいるときに作ってあげればよかったな。
食べたら、どう言っただろう。
あんなに繊細な味のする、ババガヌーシュ(焼きなすのディップ)をおいしいと言っていたんだから、この味も分ったかもしれない。
ちょっと長くなるけれど、何を作って食べたかメモをとっておいたので、そのまま書いてみます。
1日目(夜ごはん)焼き餃子、手作り海苔の佃煮(おいしいと言った)、ご飯。
2日目(朝ごはん・中野さん作)ぷりぷりソーセージ、ゆで卵は食べる前から硫黄の匂い。セミドライミニトマトのオリーブオイル漬け(甘いです)白パンの甘味。
(お昼)冷凍しておいたサモサを揚げて、いろいろ盛り合わせご飯(伏見甘唐辛子のきんぴら、カジキマグロの塩麹漬け、モロヘイヤのお浸し、ご飯)
お昼を食べてから買い物に行き、阪神西宮に行って商店街を散策。焼きたての大判焼きとソフトクリーム(とてもおいしい。冷たいものは味がよく分かる)を食べた。
(夜ごはん)ミートソースのパスタ(スパイシーミートソースに、バジルをちぎって加えた)。
3日目(お昼・中野さん作)私が「気ぬけごはん」を書いていたので、リクエストした。納豆チャーハンと出前一丁(ワンタン入り)。
(夜ごはん)ババガヌーシュとクラッカーをつまみながらハイボール。ご飯を炊いて、ハンバーグ(ピーマンの肉詰めの残りをハンバーグ型にまるめ、冷凍しておいたもので。しめじを香ばしく焼きつけたのを添えた)。ハンバーグもしめじもおいしかったそう。 果物の酸味、スパイスやハーブの香りは、私よりもずっと敏感に感じている様子だった。

●2024年8月31日(土)小雨のち晴れ

朝からイソヒヨドリが鳴いている。
ぴーちょょぴーちょ ぴーちょょぴーちょ。
とってもいい声。
どこにいるのだろう。森の方を探してもいない。
そしたら、目の前の電線にとまっていた。
嘴は閉じたままだけれど、胸の羽毛が膨らんだりしぼんだりしている。
双眼鏡で覗いたら、体中の羽をふわふわさせながら鳴いている。
こっちを見てずっと鳴いている。
ひとりごとを言っているみたい。
洗濯機をまわして戻ってきても、まだそこで鳴いている。
海の方を見たり、猫森の方を見たり、首を動かしながら鳴いている。
雨がちょっと強くなってきた。
羽を震わせ、ブルルッとした。
トイレに行って戻ってきたら、もういなくなっていた。
飛び立つところ、見たかったな。
ゆうべは神戸でも線上降水帯が発生するかもしれないというので、窓を閉め、窓辺に干しているいろいろもよけておいたのだけど、雨の音がしなかった。
もしかしたら、寝ていて気づかなかったのかもしれないけれど。
大したことにならず、よかった。
それともまだ、これからやってこようとしているんだろうか。
今朝は、めずらしくコーヒーをいれた。
ミルクを沸かし、粉寒天を溶かして牛乳寒天も作っておいた。
このごろは、こういうつるんとした冷たいものが食べたくなる。
ごはんを作ってもあまりうまくできないし、おいしく感じない。
きっと、夏の疲れが出てきているんだろうな。
でも、朝ごはんのヨーグルトと果物は、いつもおいしい。
さ、今日もまた仕事をがんばろう。
台風が日本中で低迷しているこんな日にも、仕事があることが、とてもありがたい。
今日は、これまで書いてきた原稿や記事をプリントアウトして、紙の上で確認したり、校正したり、ゆっくりと向かう日にしよう。
1時半にはすべて終わった。
雨が上がり、青空がのぞいてきたので、急きょ美容院へ。
どうやら台風の進路が外れたみたい。
図書館に行ってしばし絵本を読み、買い物をして帰ってきた。
夜ごはんは、太巻き(スーパーの)、モロヘイヤとワカメの冷たいお浸し。
デザートは牛乳寒天のバナナ添え。

●2024年8月30日(金)曇り

ゆうべは夜中にいちど大雨が降った。
でも、すぐに止んだみたい。
なんだか眠れなくて、2時くらいからずっと起きていた。
「ラジオ深夜便」を小さくかけながら。
私は、台風のことが気になっているみたい。
窓を開け、対岸の夜景を眺めた。
下の道の木は、葉っぱをなまめかしくはためかせ、体をよじっていた。
他の木の葉もみな同調し、ひとつの大きないきもののように、わらわらねろねろと動く。
それを何度か起き上がって見た。
朝方にちょっと眠ったみたいで、夢をみた。
7時に起き、朝ごはんの前に掃除機をかけた。
身も心も頭も、すっきりしたくて。
午前中に、アノニマの村上さんと電話。
午後には宮下さんと電話。
3時くらいに、もういちど村上さんと電話。 私が神戸に引っ越したからなのか、コロナ禍のあとだからなのか、打ち合わせや原稿のすり合わせは、いつの間にか電話やメールで済ませるようになった。
当然のようにそうなった。
でも、そういうことを続けていると、どこかがちょっとずつくたびれてくる。
iPhoneをスピーカーにして話していると、ときどき途切れたり、時差があったりして聞き取りにくいから、やりとりがうまくいっていないような気がして、大きな声ではきはきと話したり、執拗に質問したり、確認したりするからだろうか。
吉祥寺にいたころには、編集者さんが当たり前のように家まで足を運んでくださり、顔を見ながらやりとりをして仕事をしてきた。
雑誌でも本でも、そういうふうに作ってきた。
便利になったのか、そうでもないのか、いいのか悪いのかもよく分からないけれど。
お互いが時間を作って誰かに会い、気持ちをいったりきたりさせること。
目に見えない気持ちを、よーく見ようとすることで、体ごと心が動くこと。
そういうのを懐かしく思う。
夜ごはんは、ピーマンの肉詰め、自家製のりの佃煮、レタスとワカメと河知晩柑のサラダ、冬瓜の味噌汁、ご飯。

●2024年8月29日(金)曇りときどき雨

朝方、風が強く、カーテンが膨らんでいた。
おかげでとても涼しく、ちょっと寝坊。7時に起きた。
朝ごはんを食べ、六甲の山荘「ロコノマド」で取材をしたときの原稿を確認した。
とってもいい写真。
テキストも軽やかで、若々しい。
直すところはほとんどないのだけれど、レシピまわりにちょこちょこと赤を入れた。
風が吹き、木の葉がざわざわと揺れている。
台風が九州の方で大暴れしているようで、テレビをつけるとニュースが騒がしい。
関西の方も、これから大荒れになるとのこと。
海は穏やかで、セミたちも粛々と鳴いている。
夏の終わりを慈しんでいるみたいに。
ときどき風が吹き、思い出したように小雨が降る。
台風が来ることを何も知らなければ、なんとも静かな日。
そして、秋のようにひんやりとした空気。
亜由美さんからのメールには、台風のことがこんなふうに書いてあった。
「台風は、大気も海の水もぐるぐるかき混ぜて、気温や海水温を平均化してくれる必要なものと、漁師さんが言ってました。雷も空気中のチッ素(栄養素)を地面に打ち込み物してくれる、必要なもの」
なんだか心が落ち着いた。
4時くらいに、体を動かしたくなって散歩に出る。
ポストまでのつもりが、もっと歩きたくなって「コープさん」へ。
傘を持っていったのだけど、降られなかった。
帰り道、東の空には灰色の雲。
海からの風に背中を押されながら、とちゅうからは、山からの風に吹きさらされながら坂を上った。
風は冷たくて気持ちがよかったのだけど、湿気がものすごく、汗だくだくで帰ってきた。
お風呂に入ってしまう。
気分爽快なので、あのへんなロングカクテル(ビールをグレープフルーツジュースで割って氷を浮かべ、赤ワインを垂らす)を作り、夜ごはんのチキンを焼きながら今飲んでいるところ。
夜ごはんは、スパイシーチキン(ディル入りの塩麹に漬けておいた鶏もも肉に、ジョージアのスパイスをまぶして焼いた)、レタス、ババガヌーシュ(アラブ風焼きなすのディップ)、クラッカー。
チキンは塩麹が多すぎて、しょっぱかった。

●2024年8月27日(火)晴れ

ゆうべは寝苦しく、クーラーをつけた。
朝方、なんだかおもしろい夢をみた気がする。
5時過ぎに目覚め、ラジオをつけてうとうと。
英語の声が遠くなったり、近くなったり。クラシックの曲も遠くなったり、近くなったり。
さあ、今日は「となりのオハコ」のエッセイやらないと。
きのう書き上げたつもりでお送りしたのだけど、まだまだ未完成だった。それで、宮下さんがとてもいいアドバイスをくださった。
洗濯物を干し、向かう。
台風の前の空は穏やかで、セミたちが静かに鳴いている。
さっきから、とてもきれいな小鳥の声がする。
見ると、向かいの体育館の庇の下に、2羽の鳥が向かい合っている。
片方はじっとして動かない(こっちの鳥が鳴いている)。
愛のささやきを交わしているんだろうか。
ヒヨドリくらいの大きさだけど、何という鳥だろう。
2階の窓から双眼鏡でのぞくと、お腹がオレンジっぽい。
イソヒヨドリだ!
ほっと落ち着いたところで、さあ、エッセイの続きに向かおう。
午後、書けたかも。
プリントアウトをして、散歩がてら図書館へ。
中学生の男の子が自習している隣で、原稿を読み込み、推敲した。
帰りに「MORIS」に寄って、今日子ちゃんのおもしろ話をたくさん聞いて、涙が出るほど笑い、買い物。
駅の下のスーパーが、なぜかとっても混み合っていた。
夜ごはんは、パン屋さんの卵サンドとびわ茶だけ。「MORIS」でとってもおいしいケーキをごちそうになったので。

●2024年8月24日(土)晴れ

今日は記念日。
目と目を交わして挨拶し、2匹のうちの1匹を選んだマダイ。
漁師のおじさんが絞めてくださったのは、あまりに素早く、見られなかったけれど。
帰ってから自分で鱗を取り、内臓を出した。
お頭はスープをとった。
お頭の肉を味見したらまだおいしかったので、食べられるところをほぐし取り、目の裏のゼラチンと目玉を食べた。
最後に残った、額の硬い骨が喉仏みたいにきれいだったので、よく洗ってとっておいた。
身の方は今、蒸しているところ。
イエイ!

ここまで書いて、日記は終わり。
この日は、文子さんとファビオと垂水漁港の土曜市に行ったのだった。
「となりのオハコ」で三浦さんに教わった清蒸魚を、試作しようと思って。
前に、亜由美さんたちとの取材で垂水漁港の「ファーマーズマーケット」に行ったとき、朝上がった魚を生捕りにし、販売していたのを思い出したので。
まず、須磨の「ナナ・ファーム」という道の駅みたいなマーケットで、夏野菜や果物をいろいろ買った。
海沿いの道をドライブし、垂水漁港の2階の食堂でお昼ごはん。
そのあと行列に並んだ。私たちは8番目くらい。
私は、元気に泳いでいる、うちの蒸し器に入りそうな大きさのマダイを選んだ。
ぴかぴかで、淡紅色のマダイ。光によって青い小さな斑点が見える。
どうして記念日かというと、生きている魚を料理したのは生まれてはじめてだったから。
そして夕方、蒸し上がった魚にタレと熱した油をかけ、お皿を持って文子さんたちのところへ行った。
夜ごはんは3人で。清蒸魚(マダイ、長ねぎ、香菜、スダチ、台湾風味の醤油、米油)、ビール。
26日(月)に記す。

●2024年8月22日(木)晴れ

5時に目覚め、ラジオ。
朝からぐんぐん気温が上がっている。
涼しいうちに「となりのオハコ」の原稿を書きたくて、早く、早くと思いながらも、洗濯やら掃除やらいろいろあってなかなか向かえない。
宮下さんが書いてくださった小冊子の初校も、朝のうちに確認した。
明日から中野家に遊びにいこうと思って、仕事をぐんぐん進めていたのだけれど、家族が順番に風邪をひき、中野さんも具合がよくないとのこと。
夏休みばかりしていないで、「となりのオハコ」のことを真面目にやりなさい!ということかも。
あんまり日差しが強いので、仕事机に当たるところだけ白いカーテンで二重にした。
お昼ごはんに、ノブさんの冷たいおうどんも支度しておく。
それを楽しみに、集中してがんばろう。
「となりのオハコ」のエッセイは、はじめから書き直した。 書きたいことの見通しができた気がする。
中野さんちに出かけるまでに、ある程度まで書いておかなければと焦っていたんだと思う。
行かないことになったら、体のまわりが広々として、息も深く吸える。
身が軽くなり、頭も自由になった。
私の文章の書き方は、というか私の脳みそは、そういうことに大きく影響されるのだな。
手作りサワークリームが半端に残ってたので、イーストを発酵させ、パンケーキも焼いた。
ずいぶん書けたので、窓辺でお裁縫をちくちく。
前に縫った夏のワンピースの裾上げ。
夕方、風が出てずいぶん涼しくなってきた。
文子さんが来て、ガールズトーク。
近ごろ気に入っているロングカクテル(ビールをグレープフルーツジュースで割り、赤ワインちょっと。氷を浮かべる)を呑んだ。
パンケーキも食べてもらった。
サワークリームをまん中にのせ、アガペシロップをかけて出したら、ぱたんぱたんと小さな三角形に折りたたみ、尖った方からナイフで切り分けながら口に入れ、にっこり。
夜ごはんは、オムそば(いつぞやに作った焼きそばで)、きゅうり(味噌)。
デザートはパンケーキ(サワークリーム、アガペシロップ)。
7時前、夕焼けがきれいだなあと思って2階に上がったら、空の茜色が海に映っていた。
そうして、あっという間に暗くなった。
秋に向かって着々と日が短くなっている。

●2024年8月19日(月)曇りのち雨

ゆうべはちょっと蒸し暑く、クーラーをつけた。
夜中にトイレに起きたとき、リビングがむわっとしていた。
ここ数日はひんやりしていたけれど、また夏に戻った感じ。
朝、ゴミを出しにいったとき、マンションの玄関のところでアブラゼミが死んでいた。
踏まれたらかわいそうなので、草の上に戻してやった。
そういえば、今年はセミの亡骸をほとんど見ない。
あまりに暑くて、私が外に出かけないせいもあると思うけれど、セミ自体が少ないのかも。
今日は曇り。
湿気はあるけれど、わりに涼しい。
洗濯物を干し終わったら、「となりのオハコ」の写真がちょうど届いた。
きのうから書きはじめた三浦さんのエッセイ、今日からぐっと入り込もう。
お昼のお弁当も作っておいた。
それにしても、セミの声が弱々しいなあ。
去年の今ごろは、みんみんわんわん鳴いていたと思うのだけど。
原稿はなかなか進まず、お昼をしっかり食べたらなんだかぼんやりしてしまい、1時間ほどお昼寝。
寝返りも打たず、ぐっすり眠った。
涼しくて、気持ちよくて。
とろりとした眠気に体を委ねていた。
起きたら雨が降っていた。
そのあと、三浦さんの『食べたくなる本』をはじめて読んだときのことを振り返ろうと、『帰ってきた 日々ごはん12』を読んだ。
そのまま、母が再入院したところも読みはじめ、止まらなくなった。
いろいろ思い出し、涙がこぼれる場面もあったけれど、なまなましさはもうなかった。思い出は永久保存された。そういう気がする。
母の隣で過ごしたあの日々が、やわらかくて透明な結晶となって、本の中に閉じ込められた。
こんな日は、仕事はもう終わりにしよう。
夕方、ヘナ染めをした。
ヘアキャップをかぶって待っている間は、『楽しいムーミン一家』。
夜ごはんは、ハムと卵サンドの具の残り、レタスサラダ、トースト、チャッカ(ウズベキスタンの飲むヨーグルトサラダ。きゅうりの代わりにスイカの塩もみを汁ごと加えたら、おいしかった!)。

●2024年8月16日(金)曇りのち晴れ

6時に目覚め、ラジオ。
今週の「古楽の楽しみ」は、関根敏子さん。
オペラっぽいので、曲の感じはあまり好みではないけれど、関根さんの声が聞きたいから聞いている。
ゆうべは窓を開けて寝た。
とても涼しく、はじめてクーラーなしで眠れた。
朝もクーラーをつけずにうとうと。
やっぱり、自然の冷気はぜんぜん違うな。
すーっと体に入ってくる。
あんまり涼しいので、朝ごはんの前に3つある扇風機をすべて掃除した。
(ご苦労さま、まだもう少し頑張って)と、唱えながら。
朝ごはんのあとには、お鍋を磨いた。
いつも、ご飯を温めるためのセイロをのせるお鍋の底が、びっくりするほど黒ずんでいたので。
このところあまりに暑くて、お鍋の汚れなどまったく気にならなかった。
小さい方の片手鍋と無水鍋も磨く。
涼しいって素晴らしい。
午後からは、現金出納帳をつけた。
明日は撮影で、宮下さんとよしこちゃんがいらっしゃるので、お昼ごはんのおかずを作っておこう。
夕方、文子さんに誘われて、小さなアペリティーボ。
氷入りのビールを1杯だけ。
キッチンの窓から見える緑の濃いこと。
1枚1枚の葉っぱに西陽が当たり、風に裏返っている。
空も海も、くっきり。
そして涼しい。
夜ごはんは、大皿弁当(韓国風ごぼうとにぼしのきんぴら、ごぼうのごまマヨネーズサラダ、即席塩豚の焼いただけ(出てきた脂で炒めた小松菜添え)、ゆかりおにぎり。
韓国風のきんぴらに入れたにぼしがとてもおいしかった。甘辛味が染みて香ばしく、なんだか現地っぽい。
デザートはアイスクリームのヨーグルトかけ。
明日は撮影だから、早めに寝よう。

●2024年8月15日(木)晴れ、一時大雨

5時半に起きた。
きのう、おとついとゆっくりして、ようやくいつもの調子が戻ってきたみたい。
朝ごはんを食べ、原稿書きの続き。
お昼前には仕上がり、宮下さんにお送りした。
喜んでくださったみたい。
ああ、よかった。ほっとした。
午後からは、買い物へ。
今日はきのうに比べて、ずっと過ごしやすい。
気温も湿度も低いんじゃないかな。
急な雨の予報があったので、雨用の傘を日傘がわりに差して、ゆらゆらと坂を下りた。
涼しい風が吹いてくるなあ‥‥と思って、油断していた。
龍の神社の辺りで、急に暑くなるポイントがある。アスファルトの照り返しがすごい。
やっぱり私が住んでいるところは、山に近いぶんだけ涼しいのだ。
「いかりスーパー」で買い物し、お金を払っていたら、レジ係の人が「あら〜!」と声を上げた。
ものすごい土砂降り。向こうが見えないほど。
しばらく雨宿りさせてもらう。
なかなか止まないので、もうひとまわりじっくりと眺めてまわった。
ふだん見ないような棚まで。
まだ止まない。
ちょっと小止みになった間に銀行に走り、「MORIS」へ(そのころにはもう晴れ間が出ていた)。
今日子ちゃんとひろみさんは、とても元気だった。
夜ごはんにハムサンドが食べたくて、「いかりスーパー」でおいしそうなハムとレタスを買った。
卵サンドも作る予定。
今は6時。
山から海から涼しい風が吹き抜ける。
ヒグラシが静かに鳴く、いい夕方だ。
ビールの飲み残しのグラスに、グレープフルーツジュースと赤ワインの残りをちょっと注ぎ、氷を浮かべてみた。
うーん、これ、なかなかおいしいかも。色が分かれてきれいだし。
夜ごはんは、ハムサンド(今日子ちゃんのお土産のイギリスの辛子を塗った)、卵サンド。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。
ときどき光る雷。
音はしないのだけど、空が黄色くなったり、オレンジ色になったり。
遠雷というのだろうか。
風がひんやりして、夏の終わりの夜みたい。

●2024年8月14日(水)晴れ

東京から帰ってきたのは、おとついの夜。
次の日から私はお腹を壊し、まだよくならない。
お腹が空くのでちゃんと食べているけれど、体全体が時差ぼけみたいになって、ふわふわしている。
きのうは窓を開け、仕事机の腰掛けにどっかり座りながら、ひたすら海を眺めていた。
2時ごろから、夕暮れまで。
今日の午後はあまりに暑く、2階に避難した。
クーラーをつけ、本を読んでいるうちに寝てしまう。
まだ、くたびれが残っているみたい。
それでも午前中には、原稿の続きを書いた。
これは、東京に出かける前に書きはじめたもの。
少しずつ進んでいる。
夕方になって涼しくなってきたけれど、今日の暑さは格別だった。
そういえばきのうの夕方、ツクツクボウシの声がちょっとだけ聞こえた。
夜ごはんは、お昼の残りの焼肉弁当(焼肉用の牛肉が冷凍してあったので焼いて、お弁当箱に敷き詰めたご飯の上にのせた。みりん、醤油、実山椒のタレ)、塩もみ大根の梅和え、味噌汁(落とし卵、ワカメ)。  

●2024年8月11日(日)晴れ

9日の三浦さんの取材は、とてもとても楽しかった。
このことは、「天然生活」の「となりのオハコ」で書く予定。
ぶじ取材が終わり、由比ヶ浜の海の家でアルバイトをしている赤澤さんに会いにいったのもいい時間だった。
そしてそのまま赤澤さんの家に遊へ。
川原さんとふたり、終電間近の電車で吉祥寺に帰り着いた。
3人で飲んでいるとき、地震があった。 このときのことは、また落ち着いて書こうと思う。
今朝は、朝ごはんを食べ、洗濯物も干して川原さんと散歩。 近所のコンビニまでのつもりが、わりと涼しかったので。
公園の近くのコンビニでアイスコーヒーを買い、おしゃべりしながら玉川上水沿いの木漏れ日の小径を歩いた。
あの植物は何だろう。
みょうがのような葉に、茎がぐーんと伸び、先の方に白い小さな花がちちちちと咲き、ところどころ黒い実ができている。 私はこの花、好きだ。
帰ってきて、お昼ご飯。
すべりひゆのお浸し(みょうが、ポン酢醤油)、冷やしトマト、納豆チャーハン(川原さん作)、冬瓜の味噌汁。 川原さんのオハコの納豆チャーハン、ふわふわでおいしかった。
4時半くらいに出て荻窪へ。
7時からは「Title」にて、『毎日のことこと』刊行記念のトークイベント。
お客さんが30名ほど集まってくださった。
辻山さんと2人並んで、いつものようにトーク。
はじまりは神戸についての話、『毎日のことこと』について。
辻山さんのご提案で、それぞれが自分の好きなところを朗読し、最後は文を書く、言葉を綴ることについて。
辻山さんのリードの仕方はととてもゆるやか。
私の話が脱線しても、広く深く受け止めてくださる。
だから私は、ついいい気持ちになってしまい、ふだん心の奥に沈めているようなことまで、すーっと引き出してくださった。
楽しくて、あっという間の1時間半だった。
終わったら9時半。
丹治君、美佳ちゃん、川原さんと4人でタクシーに乗り、閉店間際の「ミロ」へ。
ラストオーダーの時間ははすでに過ぎていたので、ビール(丹治君)、南風荘ビール(美佳ちゃん)、生絞りレモンハイ(川原さんと私)で乾杯し、1杯だけ呑んで帰ってきた。
夜ごはんはなし。
川原さんちに帰りついたら、とてもくたびれていることに気づき、お風呂に入ってすぐに寝た。

●2024年8月8日(木)快晴

この日記は、新幹線の中で書いている。
もうじき京都に着くところ。
田んぼも緑、山々も緑、あちこち緑でいっぱい。
ゆうべトイレに起きたとき、カーテンを開けたら見事な夜景だった。
いつもよりもクリアーで、対岸に見える半島の端から端まで、小さな光のひとつひとつが瞬いていた。
しばらく眺め、またカーテンを閉めた。
夜景にはちょっと辛い思い出がある。
そのことを少し思い出した。
いつもではないけれど、夜景を見ると、ときどき上ってくる記憶。
こんなにも夜景がきれいなところに住むようになったのは、きっと、その思い出がやわらかなものになるように、天にいるどなたかがはからってくださったんだろうな‥‥と、思った。
さあ、2時前には吉祥寺に着く。
川原さんは今日用事があって留守をしているので、リーダーが鍵を持って、駅まで迎えにきてくれる。
夜ごはんは何にしようか。川原さんちに着いたら、冷蔵庫に何があるか確かめて、リーダーと買い物にいこう。
餃子がいいかな。
リーダーとふたりで支度をしていたら、川原さんは5時半くらいに帰ってきた。
夜ごはんは、すべりひゆのお浸し(ポン酢醤油、すりごま)、新潟八石ナスの塩まぶし(オリーブオイル)、焼き餃子、カレー&蕪のアチャール&スパイスカレー(リーダー作)、ビール、サングリアの炭酸割り。

●2024年8月7日(水)晴れ

5時に起きた。
今朝は読書をせずに、ゆらゆら。
明け方に海の夢をみた(形は湖なのだけど波があり、水も塩辛い。だから夢のなかでは海だということになっていた)。
私は海に浮かんで波をかぶったり、仰向けになったり、潜ったり。
空の上から女の人の歌声が聞こえていた。
海を抱く、女の神さまみたいな声。
とても気持ちのいい夢だった。
そうか。もしかすると私は、このところずっと、朱実ちゃんに歌ってほしいワルツの曲を書いているからかも。
明日から東京なので、なんとなく旅の支度をしながら、原稿を書いている。
締め切りはまだ先なのだけど、9日には「となりのオハコ」で鎌倉に住んでらっしゃる三浦哲哉さんを取材するので、終わったらきっと、三浦さん一色になりそうな気がして。
きのうは、「FARMSTAND」でランチを食べ、亜由美さんとふたり三宮で開くトークイベントの会場を見学にいった。
ランチを食べている間に雨が降ったらしく、地面が濡れていた。
雨上がりの道路は、暑さで湯気が立ちそうだった。
帰りにもちょっと雨が降り、すぐにやんだ。
よく知っている三宮なのに、どこか知らない海辺の街を歩いているみたいな気分になった。
今は5時半。
それにしても海が青い。
西陽が当たって、街が白く光っている。
サンフラワー号が、ゆっくりゆっくり進んでいく。
少し、涼しくなったみたい。
さっき網戸にミンミンゼミがとまったので、写真を撮った。そしたら、シャッターの音に驚いて飛んでいってしまった。
今にも鳴きはじめようとしていたらしく、悪いことをした。
夜ごはんは、キーマカレー&マッシュポテト(きのう文子さんからいただいた。北野のスパイス屋さんで買ったグリーンソース添え)、半熟蒸し卵、スイカときゅうりのヨーグルトサラダ(ディル)、人蔘の塩もみサラダ。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。

●2024年8月3日(土)晴れ

5時半に目覚め、読書。
『はるかなるわがラスカル』は、きのうアニメで見たのと同じ場面が出てきた。
本の中の主人公スターリンは、アニメの中のスターリン少年よりも腕白で、野生的なところがたくさんある気がする。
でも、繊細さを秘めているところは同じ。
ラスカルはまったく同じ。
そして読めば読むほど、本とアニメの主人公が近寄って、ひとつになろうとしているのを感じる。
不思議だなあ。
網戸の外を、アシナガ蜂がぶるぶるいいながら2度横切った。
パトロールをしているのだろうか。
迷い込んでこないように、網戸のない窓はレースのカーテンを閉めておく。
6時になると、セミが鳴きはじめる。
毎日、毎日暑くて、「危険な暑さ」とニュースでも繰り返しているけれど。確かに去年よりも暑くなってきているけれど、これが夏!
今年の夏を、充分に楽しもうと思う。
おととい私は、サインのしすぎで首がやられ、腕もしびれてきたので整体に駆け込んだ。
きのうはまだちょっとしびれが残っていたけれど、今日はすっかりいいみたい。
洗濯物を干したら、イギリス帰りの今日子ちゃんに会いにいこう。
来週は、8日から12日まで東京に出張なので、新幹線の切符を六甲道で買わなくちゃ。
美容院の前に時間があれば、図書館にも行こうと思う。
なので、朝ごはんをしっかり食べた。
暑さに負けないように。
今日子ちゃんはとても元気だった。
お土産話をいっぱい聞いて、『毎日のことこと』サインをして、今日子ちゃんが朝「ファーマーズマーケット」で買ってきた、オレンジ色の小玉スイカをごちそうになった。
4時前に帰りつき、ビールとババガヌーシュ(焼きなすのアラブ風ペースト。翡翠ナスで作ってみた)とクラッカーを持って、文子さんとファビオの部屋へ。
ランブルスコと生ハム、キムチ、クラッカーをご馳走になった。
文子さんと一緒に部屋に下り、私がゆうべ作った豚と冬瓜の煮込みをお裾分け。
お腹いっぱいなので、私のごはんはなし。
なんだか今日は、いい日だったな。

●2024年7月31日(水)晴れ

連日の猛暑でくたびていると思うのだけど、いつもと同じ5時くらいに目覚め、英語のラジオを聞いた。
6時半にはもう起きてしまう。
朝ごはんを食べたらあちこち掃除。
そして、サイン。
今日の応援ソングは、打楽器、笛、ギターやウクレレだけの、アフリカの音楽みたいな曲が延々とかかるCD。
ゆっくりで、涼しげで、サバンナの森の中を散歩しているような、空の高いところでトンビが鳴いているような、そんなCD。
これをかけていると無心になれる。
全体を流れるあるリズムがあって、延々とたどっていける。
サインをしていると、とても安心する音楽。
そして私は何曲目かで、いつも吹き出してしまう。
この間私がサインをしていたとき、ふと振り向いたらいつの間にか中野さんが2階から下りてきて、静かに腰を振って踊っていた曲。
ギターとピアニカとカリンバだけのメロディーが、流れるように繰り返され、その間はふわふわと歩くように踊っていたのに、サビのところでババババン、ババババババンとギターが鳴ると、音に合わせてハワイアンみたいに腰を振る。
控えめな腰振りだけど、リズミカルに。
そのときの、しらっとした表情と腰の動きがおもしろく、私はお腹をかかえて笑ったのだ。
今、CDブックを開いてみたら、「BABANBA!」という曲だ。
『Dinka Dunk2』というこのCDは、吉祥寺にいたころに郁子ちゃんからもらった。
もう20年近く前のCDだけど、沖縄在住の日本人のユニットみたい。
午前中の涼しいうちに、こうやってサインをするのっていいな。
夏休みの宿題みたいに、1日1箱毎朝やって、終わったらお昼ごはんを食べながら、『ちゅらさん』と『虎と翼』を見る。
夕方、朱実ちゃんの友人マリリンが送ってくださった丸ごとのスイカを、ファビオに切ってもらいにいった。
半分ずつ分けっこ。
切り立てを文子さん、ファビオと3人で食べた。
わー、めっちゃ甘くてみずみずしい。
スイカって、冷やさなくてもこんなにおいしいんだ。
帰ってすぐに、半分は冷蔵庫の野菜室へ。
残りは、朝のヨーグルト用に切ってタッパーに。
皮をむいた白いところは拍子木に切り、塩をまぶした。
ここ数日は、スイカ三昧だ。
マリリンご馳走さまです。
夜ごはんは、ちょっとお腹を壊しているので、お粥(梅干し、自家製のり佃煮)、切り干し大根の酢油和え、スイカ、豆乳寒天(パンに塗る用の塩バターキャラメルがあったので、プリンのカップの底にひとさじ、その上から豆乳の寒天液を流して固めてみた。食べてみたらプリンのカラメルにそっくりな味。合うだろうなと思ったくらいで、ここまでは予想していなかった)。

●2024年7月30日(火)晴れ

5時くらいに目覚め(多分。時計がないので分からないけれど、外の光でなんとなく)、うとうと。
さっきから、同じ小鳥が1羽だけ鳴いている。
ゆっくりゆっくり間を空けて、もう終わるかなと思うと、また鳴く。
私のいるところとは違う、はじめて聞く声。
なんという鳥だろう。
今、この日記は、六甲山の山荘「ロコノマド」のシェアオフィスで書いている。
窓辺のカウンターからは、森の緑と海と空しか見えない。
私の後ろでも、ぽつんぽつんと腰掛け、みな仕事をしている。
それぞれが集中しているから、私も同じよう集中できる。
こんなところに何日か泊まって仕事をしたら、どんな文が書けるだろう。
いつもと違うものが書けるかな。
絵本のお話や、物語もできそうな気がする。

ここまで書いて、3時くらいに帰ってきた。
亜由美さんが車で送ってくださった。
シャワーを浴びて、ちょっと横になる。
2日間にわたる撮影もぶじ終わったし、丹治君との書店さん巡りも終わったし。
明日から私はまたひとり。
しばらく、誰にも会わずにサインをしよう。
こんどは3箱、150冊。
夜ごはんは、切り干し大根のお味噌汁だけ。
「ロコノマド」で、野菜たっぷりのおいしいランチをお腹いっぱいいただいたので。

●2024年7月29日(月)晴れ

6時に目覚め、起き抜けに片山令子さんの『夏のかんむり』。
ぱっと開いて、そのページの詩を読む。
もうセミが鳴いている。
「夏のかんむり」は、最後のところを声に出して読んだ。

月日がくれた
夏のかんむり
わたしを待って
咲いていた永遠。
ヒマワリ ヒマワリ
ひかりの固まり。
かかとをあげて手をのばし
しおれた花びらが抱いている
ぎっしりならんだ
種にさわる。

令子さんの言葉は、ときどき生々しくてどきっとするのに、体を感じない。
体はいつも透き通り、血も汗も透き通り、森や昆虫、花々との境界線がぼんやりしている。
百合子さんも生々しいけれど、透き通ってはいない。
どういう違いなんだろう。
朝ごはんはスイカだけのヨーグルト。
中野さんのお姉さんが作った黒豆の甘煮を少しずつ食べていて、シロップだけになったので、少しの水と粉寒天を加えて固めてみた。
今、冷蔵庫に冷やしてある。
書店さん巡りはものすごく暑い日で、私たちは日傘を差して三宮と元町の通りを歩いた。
どの書店さんもあたたかく迎えてくださり、なんだか丹治君とふたりで、どさ回りをしているみたいだった。
とちゅうで「ギャラリーVie」に寄り、『毎日のことこと』に書かせていただいたお礼に1冊お届け。
本を渡したらすぐにおいとまするつもりだったのに、冷たいお茶と氷菓子を出してくださった。
村上さんも、奥さんの恭子さんも、本を開いたり表紙をなでさすったりして褒めてくれた。
「暑いなかをたいへんやなあ」とか。
うれしかったなあ。
しかも、丹治君が持っていた5冊を、その場で買ってくださった。
なんだか、親戚の家に立ち寄ったような感じ。
おかげでまた、またがんばって歩くことができた。
三宮の駅前の本屋さんでは、連絡をせずに突撃したので、まだ本が届いておらず、棚にあった『帰ってきた 日々ごはん』の全冊にサインをさせていただいた。
お昼は「KYK」のトンカツ! 丹治君がご馳走してくださった。
阪神電車に乗って、板宿の本屋さんと、最後はタクシーで「自由港書店」さんへ。
そこは、海の匂いのする小さな本屋さん。
本のことが好きでたまらないから本屋さんになった、という感じのする店長が、船の操舵室みたいなところに立っていた。
「わー、こんな本もある!」と驚くような、私の好きな本が並んでいた。読んでみたい本もたくさんあった。
私は、福音館書店の『ウンム・アザールのキッチン』という絵本を買って帰った。
近ごろよく作るようになった、ババガヌーシュ(アラブ風焼きなすのペースト)の絵があったので。
前の日と合わせると11店舗。
最後のお店が「自由港書店」さんで、本当によかったな。
今日は風があり、ずいぶん涼しい。
2階の窓を開けておくと、海から涼しい風が吹いてくる。
なので、クーラーはつけずに過ごしている。
3時になったら、亜由美さんたちが撮影でいらっしゃり、うちのキッチンで軽く料理をして六甲の山荘「ロコノマド」に出かける。
夏休みのお泊まり旅行みたいで楽しみだ。
追加のサイン本が届いているけれど、まだ開けない。帰ってきたら落ち着いて向かおうと思う。
夜ごはんは、ほとんどがヒロさん(亜由美さんの夫)作。
ハンバーガー・焼きアスパラガス添え(お肉屋さんで買ってきた生のハンバーグを焼き、トマト、紫玉ねぎを挟む)、カポナータ、ポテトサラダ(じゃがいもを丸ごとゆで、にんにくと塩、オリーブオイルで和えるだけだそう)、マッシュルームサラダ(私作・ベビーリーフの上にマッシュルームをたっぷりスライス、塩、レモン、手作りチリトマトペースト)、ビール、ロゼワイン。
「ロコノマド」のベランダにて。丸椅子を並べたテーブルで、夜景を見ながら食べた。

●2024年7月26日(金)晴れ

5時に目覚め、読書。
本は、『はるかなるわがラスカル』。
行きつ戻りつしながら読んでいるのだけれど、やっぱりとてもいい。
みすず書房や、新潮社クレスト・ブックスの佇まいで文字が組まれたら、静けさを湛えた本になるような気がする。
そういう空気が十分にある。
セミが鳴きはじめ、足もとがじりじり暑くなってきたので起きた。
7時半だ。
涼しいうちにと思い、朝から掃除機をかけた。
さあ、朝ごはんだ。
猫森の緑は、ますます緑が濃くなった。
まっ青な空に、つやつやの雲。
ヨーグルトを食べながら見ていたら、ラジオのクラシックの曲と雲が流れる速度がいっしょだった。
朝ごはんのあと、窓辺の壁の絵を、ひまわりの絵に取り替えた。
ついでに2階も掃除。
百合子さんの原稿は、きのう仕上げてぶじにお送りできた。編集さんも喜んでくださった。
やることがないって、素晴らしい。
現金出納帳をパソコンに打ち込み、続いて、ずっと気になっていたレースのカーテンの繕い。
扇風機を二つかけ、間に入ってちくちく縫っているだけで、汗が出てくる。集中するからだろうか。
今日は、夕方から丹治君とお待ち合わせし、芦屋川と六甲の本屋さんにサインをしに出かける。
3時になったらシャワーを浴びて支度しよう。
夜ごはんは、六甲の「愛蓮」で丹治君と。
中華風鯛のカルパッチョサラダ、四川風水餃子、春巻き、ピータン、生ビール。
六甲駅の本屋さんでサインをしているとき、首筋がピキッとなった(40冊もご注文くださった!)。
サインのしすぎは、やっぱり体にくるんだなあ。
書店さん巡りは明日が本番なので、お風呂上がりにストレッチ。

●2024年7月24日(水)晴れ

ゆうべは寝苦しく、朝方に窓を開けたらようやく眠れた。
クーラーをつけると寒すぎるし、消すと暑くて。まだ体が慣れていないのだ。
今朝もセミたちがうわんうわん。
洗濯物を干して、『毎日のことこと』のサイン。
「ブルーハーツ」をかけながらやった。
「1000バイオリン」の中で私がいちばん好きな歌詞は、「何度でも夏の匂いをかごう」。
聞きながらサインをしていると、まだ何百冊でもできそうな気がしてくる。
画材屋さんで買った色鉛筆は、3種類の緑色。Forest Green、Apple Green、そしてSurf Green。 この色鉛筆で小さなクローバーの絵を添えている。
描いていて気づいたのだけど、Surf Greenは『毎日のことこと』の表紙の色だった。
Surf の意味を調べてみると、打ち寄せる波、波乗りをする、だそう。サーフィンだ!
画材屋さんで私は、たくさんある緑の色鉛筆の中から、好きな色をじっと見て選んだのだ。
丹治君のメールによると、この間私がサインをした200冊は、問屋さんからではなく直接書店さんが「信陽堂」にお願いしてくださった分なのだそう。
先週、「ふくう食堂」の日記に書いたので、また新しい書店さんが注文してくださったり、直接「信陽堂」に注文をくださった読者の方もいるのだそう。
ありがたいなあ。
今私が書いているのは、そういう方々のためだそうです。
「信陽堂」から届くサイン本用の梱包も、いつもとても気持ちがいい。1冊1冊を交互に重ねた10冊が、プチプチに包まれて、余裕を持って段ボール箱に詰められている。
だから、ひとりでも荷解きがとても気持ちよくできる。
それからもうひとつ。
サインをしていて気づいたのだけど、表紙の紙に、ときおりピンクや黄色や赤の、小さな小さな点やスジをみつける。
これは何ですか? と丹治君に尋ねたら、色のついた古紙を粉々にしたものを混ぜて作った紙に、印刷をしているためだそうです。
「信陽堂」さんは、そういうところもいいなあと思う。
みなさんが手に取った本の表紙に、そんな小さな色彩をみつけたら、それは当たりです。
夜ごはんは、豚ロース厚切り肉のポットロースト(厚手の鍋で蒸し焼きにし、仕上げにいつぞやのラタトウユもどきの残りを加えた。仕上げにチリペッパーをふりかけてみた)、茄子の鍋焼き、サラダ(フジッリのトマトソース和えに、きゅうりとマヨネーズを加えた)。

●2024年7月23日(水)晴れ

目が覚めたら4時半。もう明るくなってきていたので、起きてしまう。
百合子さんの文の続きをやろうと思って。
今日は11時から歯医者さんだから。
きのう、ずいぶんいいところまで書けたのだけど、扇風機をふたつ回しながら夢中でやっていて、気づいたら手足がじんじんしていた。
1階はクーラーがないから、熱中症に要注意なのに。
危なかったなあと思って、すぐに2階に避難した。
クーラーをつけてベッドに寝そべり、保冷剤で首まわりや足のつけ根を冷やした。
すーっと治り、そのまま少しお昼寝。セミたちの声を聞きながら。 
夏のお昼寝は、いいなあ。
きのうの朝、中野さんが帰っていった。
やってきたのは土曜日の午前中。
その日は午後に段ボール箱二つ分のサインができ上がり、車でコンビニまで持っていった。そしてそのまま買い出しに。
「コーナン」の駐車場にとめた日は、どこに出かけたのだっけ。
阪神電車に乗って‥‥そうだ、大阪の画材屋さんに行ったんだ。
買い出しはまた次の日か。
私がサインで忙しいので、お昼にチャーハンを作ってもらったり、お刺身を買ってきて、お寿司屋を握ったり。もやしと卵の炒め物もおいしかったな。
残り3箱のサインをしている間、中野さんは上で何やらしていて、休憩がてら見にいくと、手帳に小さな鳥の絵をいくつも描いていた。
最後の日は、「小磯良平美術館」で開かれている絵本の原画展を見にいった。
ドライブ中は「ブルーハーツ」のCDがずっとかかっていて、赤いメガネ橋を渡り切ったとき、「1000のバイオリン」になった。
青空と入道雲。
海の方へと続くまっすぐな道。
なんという疾走感。
夕方になると、子ツバメたちが空を舞い、窓辺でビールを飲んだ。
2日続けて、オレンジの大きな丸い月が出た。
毎日暑くてたまらなくて、まるで夏を切り取ったような3日間。
楽しかったな。
午後、歯医者さんから帰り着き、お昼を食べてあちこち掃除。
また、次のサイン本を迎えるために。
夕方、1箱届いた。
明日もまた1箱届く予定だそう。今度は合わせて70冊。
百合子さんについての原稿は、締め切りまで間があるから、しばらく寝かせておこう。
今は5時。
子ツバメたちが電線にとまっている。
数えているうちに増え、ぜんぶで5羽だ。
みな盛んに羽繕いをしていたかと思ったら、ぱーっと飛び立った。
一羽だけ、チビ助が残っている。
私はそういう子が好きだから、じっと見守っていた。
ずいぶんたってから飛び立った。
短い翼を広げ、キュルッとカーブ。
ひゅいひゅいと飛んで、そのあとはけっこう風にのっている。
やるじゃん!
夜ごはんは、『帰ってきた 日々ごはん16』の「おまけレシピ」の試作。トンテキの焼きトマト添え、スイカの皮のサラダ、白パン。

●2024年7月18日(木)曇りのち晴れ

5時に目覚め、今朝も『富士日記』。
英語のラジオを小さくかけながら、窓の方に枕を持っていって読んだ。
6時からは「古楽の楽しみ」。
朝風呂に入る前に、「帰れソレントへ」がかかった。
いつものようにぬるめのお湯にゆっくりと浸かり、歯を磨いて出てきたら、まだ「帰れソレントへ」をやっていた。
男の声楽家が、声を張り上げている。
ミンミンゼミとアブラゼミも大合唱。
いいぞ、いいぞ!
身支度をすませて窓を見ると、小鳥が2羽電線にとまっている。
背中をこちらに向け、翼を広げたり閉じたりしている。
翼も尾羽もまだ短い。
今年巣立ったばかりの若ツバメだ。
双眼鏡で覗くと、翼のつけ根の背中の部分がオレンジがかった茶色で、産毛のように見える。
まだ羽が生え揃っていないんだろうか。
それとも、そういう種類なんだろうか。
インターネットで調べれば分かるだろうけれど、私は調べない。
そのうち一羽が、ぎこちない羽さばきでその辺を飛んでまわり、ふたつ上の電線にとまった。
もう一羽も飛び立った。
大人と変わりない飛び方で風に乗り、一直線に街の方へと降り立っていった。
百合子さんの文章を書きはじめた。
あんまり晴れ渡っているので、米粉のパンケーキの生地を醗酵させたり、ミニトマトを陽に干したりしながら。
お昼の冷やし中華の支度もした。
ピンポンが鳴って、『毎日のことこと』のサイン用の本が届いた。
なんと5箱分。200冊にサインをする予定。
お昼を食べたら、箱を開けよう。
あちこち掃除機をかけ、朝だくだぃとなり、シャワーを浴びて自分の身も清めてから向かう。
『毎日のことこと』は、息を飲むほど美しい本に仕上がっていた。
座卓にクロスをかけ、40冊を積み重ねた。
サインをしはじめてから、自分が息を詰めていることに気づいた。 
はーふーと深呼吸し、水を飲み、また向かう。
大切に大切に扱いたくなるような装丁なのだ。
この本が全国の書店(ご注文してくださっているところだけだそうです)に並ぶのは、7月の末。
みなさんどうか、みつけたら手に取ってみてください。
きっと、驚かれると思います。
詳しくは、「ちかごろの」から「信陽堂」のHPをご覧ください。
夜ごはんは、卯の花寿司(五目おから、薄焼き卵、河内晩柑、白ごま)、即席塩鮭のセイロ蒸し、味噌汁(ゆうべの残り。みょうが、オクラ、豆腐)。
今日もまたヒグラシ。
月がずいぶん膨らんできた。

●2024年7月17日(水)ぼんやりした晴れ

6時半に起きて、ラジオをつけた。
カーテンも窓も開け、読書。
『富士日記』を久しぶりに読む。
武田百合子さんのことについて書く宿題があるので。
いいなあ百合子さんは。やっぱり大好きだ。
空はもう青く、刷毛で描いたような雲。
7時半ごろに、足もとがじりじりと暑くなってきたので本を閉じた。
セミが鳴いている。
シャンシャンジャカジャカ。
きのうはまだ慣れない声で1匹が鳴いていて、すぐに止んでしまったけれど、今朝から本格的に鳴きはじめた。
梅雨明けももうじきなんだろうか。
布団を干し、夏用の敷きマットも洗濯した。
きのう私は、図書館に行きたくて出かけた。
風がなく、もわーっと暑くて、てくてく歩いて六甲道に着いたのだけど、図書館は休館日だった。
それで、電車に乗って住吉の図書館にも行ってみることにした。
やっぱりお休みだった。
月曜日が休館日なのにおかしいなあ。あれ?今日は月曜日だったっけ、と思いながら買い物。
あんまり暑かったので、六甲道から六甲までバスに乗った。
前に撮影のときにいただいて、また食べたいなあと思っていた「ケルン」の卵サンドを買えたし、らっきょうを漬けるための酢と白砂糖も買えたから、まあいいかと帰ってきたのだけど、帰り着いたらくったりとくたびれていた。
暑気に当たったのかも。
今日は、すっきりと元気。
図書館の休館日についてもういちど調べたら、月曜日が祝日の場合は火曜日が休みになるとのこと。
そっか。前にもそんなことがあったような気がする。
さて、午後からまた『富士日記』を読もう。
ビーツのマリネとラタトウユもどきを作っておいたので、夜ごはんの支度をしなくてもいい。
窓からはそよそよと風。
なんて幸せな。
夕方、青い船体の長い船が、色とりどりのコンテナを積んで、青い海をゆっくり進んでいく。
あんまりゆっくりなので、止まっているように見える。
でも、しばらくよそを見て、もういちど見ると、動いているのが分かるのだ。
空は青く、3人の大女が舞っているみたいな白い雲。
あんまり気持ちがいいので、私は炭酸をラッパ飲み。
夜ごはんは、卵サンド(「ケルン」の)、ビーツのマリネ(丸ごとゆでたのを熱いうちに皮をむき、塩、レモン汁、オリーブオイル)、ラタトウユもどき(白ズッキーニ、紫玉ねぎ、セミドライトマトのオイル漬け、ちょっと辛い自作のトマトペースト、鉢植えのバジル)、人参の塩もみサラダ(白ワインビネガー、オリーブオイル)。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。
7時ごろ、ヒグラシが少し鳴いた。
今年はじめてのこと。

●2024年7月13日(土)晴れ

6時に目覚め、カーテンを開けてベッドの中で読書。
本は『はるかなるわがラスカル』。
原作があるのを知って、アマゾンで注文した。
景色の描写もとてもいいし、何よりも、ラスカルや犬のハウザーの生態描写がおもしろい。
6月からはじまって、7月、8月と物語が進んでいくのもいいなあ。
楽しみがまたひとつ増えた。
午前中に、文子さんの運転で御影にお買い物。
野菜やドライイースト、豆乳など、ほしかったものがすべて買えた。
帰ってからはあちこち掃除。
中野家での日記を、メモを頼りに書く。
米粉のパンケーキや、ババガヌーシュ(茄子のペースト)も試作した。
冷蔵庫の中のものをいろいろ持っていって、文子さん、ファビオとひさしぶりのアペリティーボ。
キッチンの窓からは緑の山。
なかなか暗くならない空。
蚊取り線香の匂い、扇風機の風。
ああ、今年も六甲に夏がやってくる。
3人で迎える二度目の夏だ。
夜ごはんを兼ねたアペリティーボのメニューは、米粉のパンケーキ2種、フロマージュ・ブラン、ツナペースト(紫玉ねぎ、ケッパー、手作りマヨネーズ)、チリソース、ババガヌーシュ、イワシの詰め物焼き(文子さん作)。
ふたりはビール、私はきのう開けたというカヴァの残りをごちそうになった。
とちゅうで部屋の下り、私もオープンずみの赤ワインと、人参の塩もみサラダを持っていった。
8時半には戻ってきて、お風呂。
10時に寝た。
クーラーをつけなくても涼しい。

7月11日(木)雨のち曇り

6時前に目覚め、ラジオを聞きながらしばらくぼんやりしていたのだけど、もう起きてしまう。
ベッドに腰掛けながら、コーヒー豆を挽いた。
中野家では毎朝、このくらいの時間にコーヒーを飲んでいたので。
7時前から動きはじめる。
雨が降っているので、洗濯は軽めにし、すぐに『帰ってきた日々ごはん⑯』の校正の続き。
今回は、三年前の日記。
スイセイがガンの手術をし、無事に終わって恢復していったり。
テレビの撮影をしたり、亜由美さんにはじめてお会いしたり。
外に向かって大きく放たれていくような、そんな日々だった。
懐かしい気持ちで、1日1日をかみしめるように校正している。
それが、とても楽しい。
セミが鳴いた。
ミーンミーンミーン、本格的な鳴き方だけど、やけにゆっくり。
1匹だけで鳴いていて、そのうちに止んだ。
また、校正に集中。
11月までが終わったところで、急に亜由美さんが訪ねてきた。
米粉のパンケーキミックスを持ってきてくださった。
グリーンアスパラや翡翠ナス、らっきょう、露茜(梅とプラムの中間みたいな果物。ジャムにする用)、おいしそうな黒糖パンも。
露茜はひとまず冷凍し(亜由美さんのジャムの作り方は、冷凍してからだそうなので)、らっきょうを漬けることにした。
まずは塩漬けだ。
夜ごはんは、アスパラガスのじりじり焼き(オリーブオイルで)、南瓜のマッシュ(白ワインビネガー、塩、オリーブオイルを混ぜておいたものに、フロマージュ・ブランを加えた)、トマト、紫玉ねぎ、グリーンソース、黒糖パン。
『あらいぐまラスカル』を、もういちどはじめから見る。
1話目のラスカルはもちろんまだ赤ん坊だけど、主人公のスターリング少年も体が小さく、幼さが残っていて驚いた。
お父さんの仕事、親友のオスカーのお父さんのことなど、いろいろ見逃していたところが見えてくる。

●2024年7月10日(水)曇りのち晴れ、ときどき雨

中野さんの家からは、きのうの午前中に帰ってきた。
びっくりするほど暑かったけれど、すごく楽しかった。
いい夏休みになったな。
帰ってから、滞っていたメールのお返事と、「となりのオハコ」のやりとりを宮下さんとするので精一杯。
今日は、何はなくとも『帰ってきた日々ごはん⑯』の校正に向かわないと。
山から海から風が吹き抜け、とても涼しい。
今、7月分が終わった。
六甲でもセミが鳴きはじめた。
でも、すぐに止んでしまう。
お昼ごはんに、白ズッキーニと厚揚げ入りのひじきを煮ている。
たっぷり食べたくて薄味にした。
つゆだくにして、生姜も加えよう。
それにしても風が強い。部屋じゅうの紙が舞い上がった。
もうじき雨がくる気がする。
校正は、9月分まで終わった。
夜ごはんは、ツナトースト、ゆでとうもろこし、トマト、塩もみピーマン。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。
ついに今日で最終回。
きのうは、母の命日だった。
私はそのことを、一瞬忘れそうになった。
(お母さんごめんね)と思いながら、(そうか、もう忘れてしまえるくらいになったんだなあ)とも思った。

●2024年7月8日(月)晴れ

6時起床。
ユウトク君、ソウリン君は学校。
お姉さんによると、ユウトク君は今朝、「なおみさんがいるから、学校に行きたくない」と言ったそう。
まあ、うれしいことを。
クランヴェルツノガエルは今朝、ほんのちょっと体の向きが動いていた。
カジカガエルは、岩陰にもぐっていて見えない。
中野さんは、朝からお父さんの病院のつき添い。
私も帰る支度をしておいたのだけど、お父さんがハンバーグを食べたいそうなので、もう1泊することにした。
午後、中野さんと誰もいない滝へドライブ。
林の中を下りていくと、急に空気がひんやりした。
裸足になって、すべりそうになりながら岩の上を歩いた。
滝の水も川の水も澄んではいないけれど、まあまあきれい。
大きな玉虫が虹色の背中を光らせながら、せせらぎの方に向かって歩いてきて、水を飲みにきたんだろうかと思って見ていたら、そうではなく、枯れた草(橋のようになっている)の上を歩いて渡ろうとしているみたい。
けれど、そのままひっくり返って流されていった。
なんだか流されたくて、流されたみたいに見えた。
気持ちよさそうに、すいーっと。
ちょっと、『あらいぐまラスカル』の魚釣りの場面を思い出した。
そのあと、中野さんは滝に打たれていた。
私も腕だけ滝に当たった。
それだけなのだけど、私はすごく笑った。
やたらに楽しかった。
地もとの野菜を売っている、小さな「道の駅」みたいなところで小振りの桃を(10個くらい入って1000円だった)、向かいのスーパーでひき肉、じゃがいも、生クリームを買って帰ってきた。
4時くらいに、子どもたちが帰ってきた。
私がいるのを見て、ソウリン君は「なんで、まだいるの?」とニヤニヤし、「ユウトクがめっちゃ喜ぶと思うわ」と言った。
そのあとユウトク君が帰ってきて、私を見るなり「エ〜〜、ワ〜〜」と声を上げ飛び跳ねた。
「なおみさん、まだおったの?!やったー!作文の宿題をやらんとならんの。一緒にやりたい」。
私は、ものすごくうれしかった。
子どものころ、学校から帰ってきたら、横浜のおばちゃん(父の妹)がいて、すごくうれしかったことがある。
思ってもみなかったことが起こり、退屈な日常にぱーっと光が差したみたいになった。
お姉さんとハンバーグの支度。
とちゅうで、運動会のリレーのビデオをみんなで見た。
ソウリン君はクラスでいちばん足が早いらしく、先頭とラストの2回走っていた。
ユウトク君も早い、早い!
走り方が独特で、ぐいぐい走る。その力強さと真剣な表情。
ほかの子たちもみんな、誰ひとりとしていい加減に走っていない。
自分が持っていだけの力を出し切り、変な走り方、クセのある走り方などものともせずに、必死になって走っている。
「泣きそうになりますね」と、中野さんが言った。
夜ごはんは、ハンバーグ(冷凍庫にあった半端な牛肉を集めて刻み、普通の合びき肉に混ぜた。子どもたちはチーズ入り)&じゃがいものピュレ、コールスロー(キャベツ、人参、きゅうり)。
食後に庭を見ながら縁台で夕涼み。
私「子どもって夢みるの?」
ユウトク君、ソウリン君「うん」
私「覚えてるの?」
ふたり「うん、覚えてるで」
私「怖い夢みる?」
ふたり「うん!」
と言って、それぞれが怖い夢の話をしはじめた。
ソウリン君は、自分が黄色いひよこで、ゾンビみたいな変なおじさんに追いかけられる夢。とちゅうから白いひよこの中野さんと一緒に逃げた。
ユウトク君のは、何だっけ、忘れてしまった。
そのあと、4人で田んぼの畦道を散歩。
帰り道はお決まりの、中野さんの怖い話。

●2024年7月7日(日)改正

6時起床。
小鳥がピチュリピチュリ。
「百合が開きました。星の形です」。
中野さんが言うので、庭に見にいった。
ほんとだ!
きのう蕾だったのが、開きはじめた。
葉が枯れかけているのに、ちゃんと開いた。
1輪だけの百合の花。
何色というのだろう。臙脂色に黒みを帯びた紫色が混ざった、ベルベットの生地のような色。
朝、小豆の続き。
ゆうべのうちにやわらかく煮ておいたので、ひと煮立ちさせてグラニュー糖を1/3混ぜておく。
これから朝ごはんを食べに、お義兄さんの運転で、お姉さん、中野さん、子どもたちと「森庵」に出かけるので。
そこは、焼き立てのパンを庭で食べられるようになっているパン屋さん。
ビニールハウスもあり、鉢植えの植物をいろいろ売っている。
ユウトク君は食虫植物がほしいのだそう。
出かけるまでたっぷり時間があるので、お姉さんにお化粧をしてもらった。
メイクの仕事をしているので、いろいろ教えてくれる。
私の顔つきは、「ファンデーションを塗らなくても、気になるところだけちょんちょんとすり込めばいい」とか、「瞼の下に白いハイライトを入れるといい」とか。
「なおみさんの眉は、ブラウン系よりもグレーが似合う」とか、「目が十分にくっきりしているから、マスカラはつけなくてもいい」とか。
湿気で膨らんでしまう髪の毛に、ヘアーオイルをつけ(表面に塗るとぺたんこになるので、内側に)、まとめてくれた。
私はお化粧にあまり興味がないし、自分の顔を鏡で見てもよく分からないから、これでいいのかなあといつも自信がなかった。
お姉さんは、その人の印象に合ったメイクを教えてくれる。
それに、マッサージもしてくれるので、気分がすーっとする。
さあ、出かけよう。
帰ってすぐに小豆の味見をしたら、うっすらと甘味を含んでいた。
いい調子。
残りのグラニュー糖を加えて煮ながら、河内晩柑を房からはずしていたら、「カジカガエルが鳴いてるで」とユウトク君が教えにきた。
耳を澄ますと、口笛みたいな音がかすかにする。
フィ、フィ、フィ、フィというような。
すぐに止んでしまった。
今日もピーちゃんはラスカルの声。
中野さんと買い物へ。
夜ごはんは、アボガドのお刺身(お姉さん作・わさび醤油)、チンジャオロースー(たくさんいただいた畑のピーマンで。豚肉には塩、酒、醤油少々、おろしにんにく少々、片栗粉をもみ込んでおいた)、レモンチキン(文子さんに教わったレシピのなんちゃって版。手羽元に塩をしっかりめにすり込み、ポッカレモンとオリーブオイルをもみ込んでおく。しばらくおいてからフライパンでじりじり焼く(ホイルをふんわりかぶせて)。とちゅうからゆでたじゃがいもと、薄皮つきのにんにくをフライパンの端に加えて焼いた。
ユウトク君は、チンジャオロースーをご飯にのせてもりもり食べていた。すごくおいしいのだそう。
「ピーマンは嫌いなはずなのに」と、お姉さんが感心していた。
私が作っているとき、ワタを取るのをユウトク君に手伝ってもらった。
シシトウみたいに小さいピーマンも、素早くきれいに取ってくれた。
だからおいしかったのかな。
ソウリン君はチンジャオロースーは食べられなかったけれど、レモンチキンをもりもり食べた。
「じゃがいもの皮はイヤやけど、めっちゃおいしで」だそう。
食後に白玉団子をこしらえ、お姉さんに手伝ってもらいながら、フルーツみつ豆、アイスクリーム、大納言小豆のあんこ、マスカット、さくらんぼのデザートを作った。
お風呂の前に、みんなして『ダーウィンが来た』を見た。
「清流の歌姫?!カジカガエル」だ。
9時半就寝。

●2024年7月6日(土)快晴

もう明るくなっていたので、5時前に起きてしまった。
なんだか寝ていられなくて。
きのうも今日も、梅雨明けしたみたいにいいお天気。
窓を開けたら、ラジオ体操の朝みたいな匂いがした。
山から下りてくる新鮮な空気。
洗濯したり、軽く掃除したり。
まだ6時台だ。
今朝のヨーグルトは、河内晩柑とメロン。
玄関の通路で緑の山を仰ぎながら食べた。
今年は9年目の六甲の夏。
あっという間だなあと思いながら。
「となりのオハコ」、「気ぬけごはん」の宿題が終わったので、今日から中野家に出かける。
ひと足早い夏休み。
ユウトク君とソウリン君の友だちも、遊びにくるとのこと。
みんな大きくなっただろうな。
カジカガエルと、でぶっちょガエル(ソウリン君が世話をしているらしい)に会えるのも楽しみ。
9時半になったら出かけよう。
日記はひとまずここまで。
月曜日に帰ってきたら、また続きを書こうと思います。
あ、セミが鳴き出した。
またすぐに止まってしまったけれど。

(続き)
ユウトク君はまた背が伸び、肩幅も少し広くなった。
ソウリン君もひとまわり大きくなって、顔つきが変わっていた。どこがとかはうまく説明ができないのだけど、なんとなく顔つきが固まってきたような。
会うのは何ヶ月ぶりだろう。
遊びにきていたふたりの友だちも兄弟で、お兄ちゃんはユウトク君と同級生(違うクラス)、弟はソウリン君と同じクラス。
着いたときちょうどお昼ごはんの最中で、私も隣で食べた。お姉さんのカレーライス(ビーフカレーとタイカレーの2種盛り)。
このところ私は、『あらいぐまラスカル』にはまっているので、セキセイインコのピーちゃんの鳴き声が、ラスカルの声に聞こえて仕方がない。
そっくりというよりも、ほとんど同じ。
子どもたちが居間で遊んでいると、縁側の鳥カゴで盛んに鳴く。
ピーちゃんも一緒に遊んでいるつもりらしい。
ソウリンのでぶっちょカエルは、緑がかった体にオレンジ色の斑点。
同じ方向を見たままじっとしている。
クランヴェルツノガエルというのだそう。
カジカガエルは、岩陰にもぐっているとのこと。
外は、ものすごい暑さ。
六甲や三宮も暑かったけれど、暑さの種類が違う。
午後から、丹波の小豆(文子さんにいただいた大納言小豆)を炊きはじめた。あんこにしようと思って。
夜ごはんの茄子の煮物も作っておく。
最中の皮(マメちゃんにいただいた)をお土産で持ってきたので、中野さんとアイスクリームを買いにいく。
「なおみさん、夕陽見にいくやろ?」とユウトク君に誘われたのだけど、日が長くてまだまだ太陽は沈まない。
なので、夜ごはんの前に、子どもたちと縁台に座って夕涼みをした。
中野さんはビール、私は缶チューハイ。
夜ごはんは、お素麺(きゅうり、青じそ、薄焼き卵、生姜、ねぎ、茄子の煮物)、つけ麺(韓国の「サリ麺」で。トリがらスープの素とニラのタレなどを合わせ、つけ汁を作った)。
デザートはアイス最中(あんこは間に合わなかったので、バニラアイスだけ)。
お風呂から上がって、ユウトク君がカジカガエルにエサを上げるところを見た。
小さなコウロギ(生きている)を、ピンセットでつかんで水の上に落とすのだけど、なかなか食べようとしない。
岩陰から顔の先だけ出し、じっとしている。
ずいぶん長い間見ていたのだけど、岩に隠れてしまった。
ソウリン君のクランヴェルツノガエルは、依然として動かない。
9時就寝。

●2024年7月4日(木)曇りのち晴れ

5時半に起きた。
なんだかおもしろい夢をみた気がする。冒険チックだったような。
晴れてきそうなので、たっぷり洗濯。
かけ布団も干した。
さあ、今日も「気ぬけごはん」の続きを書こう。
午後、ずいぶん暑くなってきた。
温度計を見ると、34度。
今年いちばんの暑さだけれど、風が通るのでまだまだセーフ。
午後からは、保冷剤を包んだ手拭いを首に巻いた。
今は5時。書けたかも!
それにしても海が青いなあ。
凪なのか、風が止まっている。
すごく暑い。
夜ごはんは、素麺(めんつゆは、ドライトマトを煮てもどした汁に、醤油をちょっと。梅干し入りみたいですごくおいしい!文子さんに教わった)、みょうが、青じそ、生湯葉(塩とワサビ。亜由美さんにいただいた)、ししゃも。

●2024年7月3日(水)曇り

きのうは「kurasobi」という小冊子の撮影だった。
宮下さんとカメラマンのよしこちゃん、デザイナーと編集の方々。
撮影があらかた終わり、遅いランチは「ケルン」のサンドイッチと、「トレプチ」のパン。
窓辺のテーブルに6人で腰かけ、パンパーティーのようだった。
撮影中は「ええなあ」とか「めっちゃかわいい」など、密かに関西弁が飛び交っていて、ああ私、関西の方々と仕事をするようになったんだなあとちょっとじんとした。
撮影が終わって解散してから、宮下さんと「となりのオハコ」の写真選びをし、屋上でビールとハイボールを飲んだ。
霧が晴れてきた緑の山を見上げながら、ひさしぶりにいろいろおしゃべり。
難航していた「となりのオハコ」のエッセイが書けたのが、嬉しくて。
宮下さんはいちばん最初の読者さんだから。
「となりのオハコ」の、これからの打ち合わせみたいな話もできた。 6時くらいまで。
そうそう。
撮影中にセミの声が一瞬聞こえた。
みんな揃って気がついた。
六甲では今年はじめてのセミ。
ファビオも聞いていたらしい。
文子さんは山側の部屋で仕事をしていて気づけなかったけれど。
ファビオからのラインは、「For the first time today I heard the sound of cicadas. Summer is knocking」
cicadasはイタリア語でセミのこと。
夏がノックしているって、いい言い方だなあ。
たくさんの人たちが床の上を行ったり来たりしたから、今日は朝からあちこち掃除機をかけた。
さあ、「気ぬけごはん」を書きはじめよう。
午後、亜由美さんが沖縄のお土産のベビーマンゴーや夏野菜をいろいろ持ってきてくださった。
真っ赤な小さめトマトに、とうもろこし、島模様のズッキーニなど。
お見送りしようと外に出たら、もわーっと暑くて驚いた。
外がこんなに暑かったとは。
また「気ぬけごはん」の続き。
ずいぶん書けた。
夜ごはんは、蒸しとうもろこし(亜由美さんに教わった通り、薄皮ごと蒸してみた。甘くておいしい!)、カボチャのマッシュ(白ワインビネガー、オリーブオイル)&トマトサラダ(紫玉ねぎ、グリーンソース)、「プチブレ」さんのソーセージドッグとカレーパン。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。
大満足のごはん。
今は7時なのだけど、まだまだ明るい。

●2024年6月29日(土)曇り

きのうは、雨のなかを美容院に行ってバスに乗り、「御影クラッセ」までお刺身を買いにいった。
「となりのオハコ」の試作をしたくて。
帰りのバスに乗っているとき、文子さんにメールをしたら、ちょうど「コープさん」に来ているとのこと。
六甲で待ち合わせ、車に乗せてもらって帰ってきた。
試作は彼らのキッチンで。
ものすごく上手くいき、「スゴイ!アメージング!」とファビオにほめられた。
食べながら、沖縄でのことを話したり、ぜんぜん関係のないおしゃべりをしたり。
楽しくて、9時過ぎまで一緒にいた。
おかげで、エッセイで書きたいこと、どんなふうに表せばいいかが見えてきた。
今朝は6時にすっと目覚めた。
とてもすっきり。
梅雨の合間の洗濯をして、さあ、エッセイに向かおうではないか。
文子さんとファビオのおかげで、身も心も軽くなり、風が通った。
髪も切ってすっきりしたし。
文は、身も心も没入してでないと書けないし、私にとってとても大事なことだけど。
いったん忘れて外に出、ゼロになって眺めるのも同じくらい大切だな。
神経と肉という感じ。
夜ごはんは、鮭の塩麹漬け、南関揚げといんげんの甘辛煮、具だくさんのみそ汁(大根、南関揚げ、りうの南瓜、水菜)、ご飯。

●2024年6月28日(金)大雨

ゆうべはずいぶん強い雨が降っていた。
今朝も大雨。
このところずっと曇り空で、いつ降るか、いつ降るかという感じだったから、道路の植木たちにはうれしいシャワーなのだけど、あまりに土砂降りなので、朝、バジルだけ部屋に戻した。
これで安心。
さて、今日は「となりのオハコ」のレシピ書き。
エッセイの方は、ずいぶんいいところまで書けた気がするので。
少し寝かして、またとりかかろう。
雨は小止みになったけれど、窓が真っ白。霧に包まれている。
こんな日は原稿を書く日和。
午後から美容院を予約しているのだけれど、出かけられるだろうか。
あんまり雨が強いようだったら、キャンセルさせていただこうと思う。
夜ごはんは、文子さん&ファビオ宅で。
豆腐のチーズ仕立て(文子さん作)、ブラウンマッシュルームとパルミジャーノのサラダ(文子さん作。ベビーバジル、はちみつ、レモン 汁、オリーブオイル)、刺身和え2種(私)、カヴァ。

●2024年6月25日(火)曇りときどき小雨

ゆうべはぐっすり眠った。なんか、とってもおもしろい夢をみたような気がする。
前の道路の角のところに、鉢植えの植物がずらりと並んでいる。
それはファビオの金柑たち。
雨に当ててあげようと出してあげているのだ。
きのう私もその隣にちょこんと並べてみた。
ゆうべは雨が降ったし、朝方には霧にも包まれただろうから、私のバジルと姫白丁花も嬉しそう。
見るたびに、にやにやしてしまう。
中野さんはきのうのお昼前に、遅い朝ごはんを食べて帰っていった。
2泊3日の間、お父さんのウエストバックを探しに三宮に出て、あちこち見てまわったり(今使っているのは、ベルトの接続のところが固く、自力でつけたりはずしたりができなくなっているそうなので)、本屋さんで別行動、それぞれの好きな本を探したり。
阪神電車で戻ってきたときに、神戸新聞の担当の方に偶然お会できて立ち話。
車を置いていた「コーナン」で、洗剤やティッシュ、ずっとほしかったドライヤーのちょうどころあいのものをみつけ、買ったり。
霧に包まれた山を眺めながら、車で帰ってきたり。
早い夕方からビール。
ちょこちょことつまみを作り、中川ひろたかさんが送ってくださったCDを聞きながら、窓辺でいろいろな話をしたり。
そんな、ふつうの出来ごとのひとつひとつがみずみずしく、喜びもあった。
パスタもおいしかったな。
冷凍しておいた甘エビを頭だけ取って、殻ごとにんにくとオリーブオイルで炒め、この間作っておいたちょっと辛いトマトペースト(やわらかく煮て戻したドライトマト、韓国の甘唐辛子粉、一味唐辛子、にんにく、アンチョビフィレ、オリーブオイルを合わせた)と、大粒のアサリを白ワインでからめた。
気分はボンゴレロッソ。
さあ、今日からまたいつもの生活がはじまる。
「となりのオハコ」のエッセイに入り込もう。
目が疲れたり、集中が途切れると、外に出て植木を見にいったり、窓辺でお裁縫をしたり。
夕方、『毎日のことこと』の念校ゲラが届いた。
これで、最後の最後の確認。
ラジオでいい音楽がかかっていたので(「名演奏ライブラリー」の再放送。キース・ジャレットのバッハ)、聞きながら5時までやって、夜ごはんの支度。
夜ごはんは、白和風サラダ(紫玉ねぎ、青じそ、かつお節、塩、ごま油)、トマト、蒸しとうもろこし。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。ご飯を炊かずにとうもろこしだけ。ラスカルはとうもろこしが大好きだから、ぴったりの献立だった。

●2024年6月22日(土)晴れのち

5時に目覚め、ラジオをつけた。
クラシックの番組でいい音楽がかかっていたので、目を開けて聞いていた。
カーテンの隙間の空は、もう明るい。
天気予報を聞いて、6時には起きてしまう。
なんだか寝ていられない気持ち。
ゆうべは、「となりのオハコ」のエッセイのことを考えて寝ていたので。
ちょっとでも書いておこうと思って。
朝風呂から上がって2階に行ったら、窓から足長蜂が入ってきて、部屋の中を飛びまわっていた。
若くてとても元気そうな蜂。
びっくりするほど大きい。
しばらく離れて観察していたら、網戸の上を行ったりきたり、忙しなく動いている。
部屋から出ていきたいのに、出口がみつからなくなって困っているんだろうなというのが分かったので、そのへんにあった布で風を送ってみた。
網戸のない窓は、こっちですよというふうに。
そしたら、すぐに驚いた様子であたふたとし、窓からビューンと一直線に飛んでいった。
意志が通じ合えたのが嬉しかった。
お互いの生き方に敬意を払いながら、近づきすぎず、よく見て感じ、どうしてほしいのかを想像して、そちらにうながすようなことをする。
生きもの(人間も)とのつき合いは、こんな感じですればいいんだな。
きこちゃんのところに行ってきてから、そう思う。
さあ、今日は午前中に中野さんがいらして、車で買い物にでかけ、早い夕方から写真家の中里さんと打ち合わせをする。 会食のメニューは、ベトナムなますと河内紅晩柑(北九州の)、ビーツ(沖縄の)のマリネ、南瓜(りうが送ってくれた茨城の)のサラダ(さっぱりマヨネーズ)、人参とセロリの塩もみサラダ(シークワーサー)、じゃがいもとカレーリーフのかき揚げ、ヒレステーキ(中野さんが焼いた)、とうもろこしの炊き込みご飯、スイカの皮の塩漬け、きゅうりの辛子漬け&きゅうりのキューちゃん(中野さんのお姉さん作)。

●2024年6月21日(金)雨のち晴れ

ゆうべはざんざん降りだった雨も、朝にはやんで、洗濯物を干すころには晴れ間が出てきた。
玄関を開けると、網戸越しに涼しい風。
そのうちぐんぐん晴れてきて、海の青いこと。
朝から「となりのオハコ」のエッセイの続き。
よしこさんの写真を見ながら。
そして、『毎日のことこと』の校正をもういちど見直し、荷物を作った。
明日、宅急便にのせる予定。
エッセイの続きに向かうも、行きつ戻りつしてなかなか前に進まない。
夜ごはんは、ビーツと南瓜(りうが送ってくれた)とトマトのスープ&トースト。
とてもおいしくできたけれど、沖縄のビーツは神戸のものよりあっさりしている。
欲張って大きいのを買ったからだろうか。
今日は夏至、一年の間でいちばん昼が長い日。
まだ7時前なのだけど、海が青いなあ。
きこちゃんのところで会った絵描きの山田祐基君は、今ごろライブペイントをしているだろうか。
どんな絵を描くんだろう。
私は窓辺でお裁縫。
スカートのほつれを繕っている。
今、文子さんからのメールで知ったのだけど、大きな大きな丸い月が!
空から落っこちそう。
お風呂上がり、月の下の海が光っている。
全体的には金色に見えるのだけど、ひとことで金とは言えないような色。
いろいろな色の細かいスジがいっぱい入っている。
そして、ところどころに赤や緑の小さな船の光も瞬いている。
金色の海は、船の上からどんなふうに見えるんだろう。

●2024年6月19日(水)晴れ

ミニトマトを買いに、朝から「コープさん」へ。
セミドライトマトを作ろうと思うのだけど、晴れ間が続く今しかない!と思って。
久しぶりに坂を上って帰ってきた。
海の見える公園でひと休み。
その先でも立ち止まって、水を飲み飲み。
これから本当に梅雨がやってくるんだろうか、というくらい晴れ渡っている。
汗びっしょりで帰りつき、ミニトマトを半分に切ってざるに並べて干した。
そのあとで浴びたシャワーの気持ちいいこと。
お昼ごはんを食べてからは、『毎日のことこと』の最終校正の続きを夢中でやった。
丹治君とメールでのやりとりも、何往復か。
すぐにお返事が届くので、なんだか同じテーブルに並んで腰かけ、それぞれの仕事に集中しているみたいだった。
本づくりの最終段階になると、以前には編集者とテーブルに向かい合い、「つき合わせ」という作業をしていたけれど、コロナになってからか、いや私が神戸に越してきてからかな? そういうのもすっかりなくなった。
この間東京に行ったとき、「インド富士」で丹治君とゲラを確認していたとき、「ああ、つき合わせだ」と思って懐かしくなった。
今は4時半。
『毎日のことこと』の校正は、ひと通り終わった。
明日にもういちど確認しよう。
それにしても、海が青い。
ツバメが空をゆき交っている。
夕方が美しい季節が、今年もまたやってきた。
夜ごはんは、『あらいぐまラスカル』を見ながら。
しめじと人参のプルコギ(水菜をざくざく切って器に敷き、その上にプルコギをのせた)、大根おろし(黒酢醤油)、しらすの白和、ご飯。

●2024年6月16日(日)小雨のち晴れ

ゆうべは雨が降った。
窓を閉め、はじめてクーラーを入れてみた。
青白い灯りや音が気になって、とちゅうで消した。
新しいクーラーはいちばんシンプルなのを買ったのだけど、前に使っていたものよりも機能が増えているみたい。
そのうち慣れると思うけれど。
ぐっすり眠って6時半に起きた。
朝のヨーグルトは、北九州の紅晩柑と沖縄の島バナナ&パッションフルーツ。
なんて贅沢なんだろう。
あちこち久しぶりに掃除機をかけ、仕事に向かう。
『毎日のことこと』の最終稿が上がってきた。
丹治君のデザインはいいなあ。
これまでの私の本のなかで、いちばん静かで愛らしい本になりそうな気がする。
少しだけ読み込んだのだけど、これは腰を落ち着けてから向かわなければと思い直した。
今は、沖縄でのことが気になって、気になって。
早く書かないと、なくなってしまいそうで。
お昼ごはんを食べ、「となりのオハコ」のエッセイを書きはじめるも、とちゅうで眠気に襲われ、ベッドに倒れ込んだ。
お腹に手をのせ、仰向けのまま身動きせずに小一時間。
きのうもこのくらいの時間にそうなった。
目覚めると青空が広がっていて、みかんの房を逆さにしたような白い月。
それでもきのうは、じゃがいものかき揚げを試作して、文子さんとファビオのところに持っていった。
東京、九州、沖縄と、このところあちこちに出かけていたから、時差ボケみたいになっているのかな。
まだ、神戸に戻ってきていないんだ。
なんとなく体が重く、動くたびにどっこらしょという感じ。
夜ごはんは、じゃがいものかき揚げの残りを米油でカリッと焼いたもの、ぶっかけそうめん(北九州の塩トマト、沖縄のミニトマト)。
久しぶりに『まる子』を見ながら食べる予定。

●2024年6月14(金)快晴

ゆうべはどこかが昂っていて、よく眠れなかった。
それでも8時半には起き、旅の間の洗濯をした。
きのうは、那覇空港を7時発の飛行機で帰ってきた。
編集の宮下さん、カメラマンのよしこちゃんは関西空港着の便だったので、ひとりで乗った。
これまでずっと一緒に過ごしていたふたりと離れるのは、心細かったけれど。
飛行は、日暮の時刻にちょうど重なり、雲海の下から線香花火の玉のような太陽が見え隠れしたかと思ったら、オレンジと青の世界になった。
その色合いが刻々と変わっていくのを見逃せず、飛行の間中ずっと眺めていた。
着陸体制に入り、低空飛行になったとき、目の前に夜景がうわーっと広がった。
大きな橋、走る列車のビーズのような光の点滅。山の裾野に広がる家家の小さな灯り。
私はぽーっとし、最初はまだ確かにはわかっていなかった。
そして山に「KOBE」の電飾の灯りをみつけ、ああ、神戸だ。帰ってきたんだと思ったら、胸が熱くなった。
空港に着いたとき、たった2時間半あまりの飛行だったのに、とても遠い国から帰ってきた感じがした。
あまりに違う空気だったので。
家に帰りついてすぐ、お土産の島豆腐やソーセージを冷蔵庫へ。
ハンダナとモロヘイは水に放ってから冷蔵庫へ。
シシトウ(とても大きい)、モロッコいんげん(とても大きい)、島バナナ(みっちりと太い)、サーターアンダギー、紫いものムーチー(月桃に包まれた餅菓子)も冷蔵庫にしまった。キームム(毛桃)は素焼きの器の上に。

今朝は、朝ごはんの前に荷物が届いた。
「波羅蜜」で荷造りし、郵便屋さんに託した野菜や果物(ゴーヤー、ビーツ、パッションフルーツ、シークワーサー、板麩)。
ガムテープをはがすとき、南国の空気が漏れ出した。
ひとりで見ているのがもったいなくて、思わず文子さんにメールをし、しばしお喋り。
文子さんは仕事に戻った。
モロヘイヤをゆでているとき、ちょっとした手つきにきこちゃんの影が残っていて、自分でもほほお!と感心した。
その手つきのまま、文子さんをまた呼んで、お昼ごはんにゴーヤーチャンプルを作った。
炒める前の島豆腐を味見した文子さんは、「わあ、チーズみたい!」と叫んでいた。
とてもコクがあるとのこと。
そう言われてみると、本当にその通り。
どこかの国の、発酵前のチーズみたい。
普通のお豆腐よりも塩分があり、ほんのりとした酸味と濃いうまみを感じる。
ゴーヤーは2ミリ強くらいの薄切りにし、塩をまぶしておく。
しばらくおいて、出てきた水気を絞ってから炒めると、表面が油で覆われ、中はねっとり。
島豆腐を焼きつける前にゴーヤーだけ炒め(これだけでもすごくおいしい!)、いちど取り出して、焼きつけたとうふと合わせる。
きこちゃんに教わったとおりにしたら、とてもうまくいった。
文子さんとファビオのランチにお裾分け。
私はご飯も炊かずに、チャンプルだけをもりもり食べた。
午後、昼寝。
くたびれているのだけれど、眠れない。
沖縄は梅雨の最中で肌寒いくらいだったけれど、帰ってきたら、神戸はすっかり夏になっていた。
海の青いこと。
ゆうべはこの海の上を飛んで帰ってきたことを思う。
きこちゃんたちの家族のこと、「波羅蜜」でのこと、思い出しているというよりも、まだ心がそこにある。
私は、書けるんだろうか。
夜ごはんは、チャンプル炒飯(少し残しておいたチャンプルに、ゴーヤーと冷やご飯を加えて炒め合わせ、北九州のトマトを加えた)、モロヘイヤとワカメのポン酢醤油。食後に紫芋のムーチーと、完熟バナナケーキ。

●2024年6月10日(月)晴れ

窓が明るくなって、自然に目覚めた。
5時半。
『中学生の基礎英語』は後半の番組が聞けた。
起きたときの体の感じも、ようやくもとに戻った。
さあ、洗濯洗濯。
今日はあちこち掃除もしよう。
時間があったら、税務の仕事の続きもやろう。
このごろツバメがよく飛んでくる。
前の電線にとまって、ちゅくちゅくと鳴いている。
「親鳥が、餌をやる合間に、ストレス発散で休みにきているんです」と中野さんが言っていたけれど、ほんとかな。
中野さんちの子ツバメたちはもうずいぶん大きくなって、巣からはみ出しているんだそう。
旅の支度が終わり、ベッドで本を読んでいるうちに寝てしまった。
小一時間ほどお昼寝した。
今は4時ちょっと過ぎ、空はまだまだ明るい。
海が青いなあ。
明日から私は、あの海を超えて沖縄に行くのだ。
夜ごはんは、洋風ぞうすい(白ズッキーニのくったり煮の残り、新じゃがグリルの残り、冷ごはん)、豆腐サラダ(ワカメたっぷり)。

●2024年6月9日(日)小雨が降ったり、やんだり

9時まで寝て、旅の疲れもすっかり取れた。
きのうまで、頭のまわりがぼわーんとしていたのもなくなった。
ひじきと南関あげ(「いきいき村」で買った乾燥油揚げ)を薄味でたっぷり煮、お昼ごはんにもりもり食べた。
あと、オクラを刻み入れた納豆(「いきいき村」で買ったアジ節入り)と、しめじと豆腐のお味噌汁、ご飯はほんの少し。
旅の間の食べ過ぎ胃袋も、整ってきたみたい。
空は明るいけれど、目に見えないくらいの小雨が降っている。
緑が濡れるにまかせ、じっとしている。
窓を開けると栗の花の匂い。
ああ、いい気持ち。
そんななか、ゆっくりゆっくり支度する。
火曜日からいよいよ沖縄なので。
出発は明日ではなく、もう1日余裕があるのがとてもありがたい。
きこちゃんたち、みんな元気にしているかな。
午後から税務の仕事をちょこっとする。
『ペリーヌ物語』は、きのう最終回まで見てしまった。
今日から何を見ようか。
夜ごはんは、ビーツのマリネ、白ズッキーニのくったり煮(ゆうべの残り)、ひじきの薄味煮(お昼に作ったもの)、新じゃがグリル(「いきいき村」で買ってきた小粒のじゃがいもにオリーブオイルをまわしかけ、新にんにくと一緒にオーブンで焼いた)、フレッシュチーズ、パン。
『あらいぐまラスカル』を見ながら食べた。

●2024年6月8日(土)晴れ

目が覚めたとき、胃袋の上に手のひらをのせて眠っていた。
このところの食べ過ぎ&飲み過ぎで、お腹がくたびれているので、自然に手がのったんだと思う。
そのまま二度寝。
まだ眠れる、まだ眠れると思いながら9時に起きた。
今朝はちょっとひんやり。
先週の今日、大牟田に出かける朝もちょっと肌寒かった。
新幹線の新大牟田駅に着いたとき、日差しが強く、もんわりと暑くて肌にまとわりつく感じがあった。
大好きな感じ。
ここは南国なのだなあと思った。
イベントの日はちょっと気温が下がって、ちょうどいい陽気。 
お母さんたちにたくさん手伝ってもらったおかげで、カレーライス作りはとてもうまくいった。
ハウスバーモントカレーの甘口と中辛(粉のスパイスを持参して加えた)に、黄色いご飯に、ミニトマト。
野菜はすべて、山間にある物産店「いきいき村」で買った。
煮込んでいる間に溶けてしまいそうだったので、じゃがいもは別のお鍋で丸ごとゆでた。
カレールウは4箱分。
スタッフはふつうの器だったけど、振る舞い分はお椀くらいの器。
動物園の方にもアナウンスをし、けっきょく70人くらいの人たちが集まって、みんなで食べることができた。
中野さんも、子どもたちと絵の具まみれになっていた。 朱実ちゃんの家でも、毎日とても楽しかった。
1日に何かひとつ(友だちのマリリンの家に行ったり、海に行ったり、市場にお弁当を買いにいって埠頭で食べたり)をしたら、帰ってきてそれぞれお昼寝したり、夜ごはんの支度をしたり。
海もすごくよかった。
行ってみないとわからなかった。
海風に吹きさらされながら、みんなバラバラになって浜を歩いた。
中野さんは流木を拾っていた。
私はズボンの裾を膝までめくり上げ、波打ち際をずんずん歩いた。
ときどき立ち止まり、沖を見ながら立った。
波がやってきて足を洗い、足の裏の砂がくずれ、持っていかれる。
私は漂流しているワカメをとってきて、帰ってすぐに茎ワカメと分け、よく洗って砂を落とし、料理した。
茎ワカメは色が変わるまでゆで、包丁で細かくたたいておろし生姜。 ワカメは時季はずれでちょっと硬かったので、にんにくとごま油で炒めてナンプラー。
ナンプラーを加えたとたん、たぬちゃんとプリン(猫)が近くにやってきて、にゃあにゃあ鳴いた。
魚の匂いがしたんだろうな。
海はもちろん、そこでとってきたワカメも猫たちも、私にとっては野生。
屋根の上で、指を染めながら桑の実を収穫したのも野生。
潮風の匂いのするさびれた商店街を、朱実ちゃん、樹君とぷらぷら歩くのも小さい野生。
買ってきたお肉や、魚屋さんで買った小さなフグを竹串に差したり、火鉢で焼いて食べるのも、小さい野生の仲間。
楽しくて、いい気持ちで、ぼーっとしてしまう。
そんな日々だった。
いつもひとりでパソコンに向かい、言葉ばかり書いている私にとって、いきいきとしているものはみんな野生なのかも。
そう思うと、中野さんも野生だ。
体はとっぷりとくたびれたけれど、その分元気になった。
きっと、英気を養って帰ってきたんだろう。
今日は、朝起きてすぐに柱時計のお世話と、沖縄に出かけるための支度。
さらさらと風。
洗濯物がよく乾きそう。
きのう、「淡河生活クラブ」で白ズッキーニを買ったので、文子さんが前にごちそうしてくださったのを作ってみたくなった。
圧力鍋でこしらえる、ファビオのおばあちゃんノンナのレシピ。
文子さんにメールをしたら、すぐに下りてきてくださった。
揚げたてのエビのフリットのお皿を持って。
さっき、水道筋の魚屋さんで生きている頭つきの小エビを買ってきたので、セモリナ粉をまぶして揚げたのだそう。
おいしくてごはんの前にたいらげてしまった。
夜ごはんは、レモンチキン(いつぞやのを温めなおした)、白ズッキーニのくったり煮、ご飯もパンもなし。
白ズッキーニのくったり煮は、文子さんに教わった通りに作ったら、とてもうまくいった。
とろとろですごくおいしい。
煮汁の甘いこと、甘いこと。
白ズッキーニ2本分、ぜんぶ食べつくしてしまいそうなのをがまんした。
明日もぐっとおいしくなるそうなので。

●2024年6月7日(金)晴れ

ゆうべは深く眠れた。
体がバラバラになって、そのバラバラのひとつひとつが夢をみているようだった。
北九州の朱実ちゃんと樹君のところからは、きのうの4時くらいに帰ってきた。
帰ってきたら、神戸も夏になっていた。
もうじき沖縄に出かけるから、2泊か3泊だけさせてもらうつもりだったのだけど、中野さんの提案でけっきょく4泊した。
ほぼ1週間。
楽しかったなあ。
海に行ったのも、すごくよかった。
朝から洗濯大会。
スニーカーまで洗った。
遅い朝ごはんを食べ、中野さんをお見送りがてら六甲駅までタクシー。
私はそのまま日傘を差して、クリーニング屋さんへ。
「MORIS」にも寄った。
ひろみさんも今日子ちゃんも、とても元気そうだった。
帰ってからは、猛然とメールのお返事。
「きょうの料理」の校正について、電話でやりとり。
ああ、この1週間のことろ日記に書きたいのだけれど、今はとても無理。
余韻に浸っているだけで、いっぱいいっぱい。
夜ごはんは、ゆうべの夜ごはんに焼いた樹君作のアジの干物の残りをほぐし、冷や汁を作った。
冷や汁(アジの干物、白ごま、木綿豆腐、ゆうべの味噌汁の残り、青じそ、ねぎ)、冷やご飯、キムチ。

●2024年5月31日(金)小雨

ぐっすり眠って、今朝も早起き。
6時半には起き出した。
ゆうべのヘナは、とてもいい感じに染まっている。
生え際に少しだけ白髪が残っているけれど。
水と混ぜるとき、文子さんに教わった通り、粉がまわりに舞わないよう、静かに静かに混ぜた。
染めているときも、ずっといい匂いに包まれていた。
ヘアキャップをかぶり、『ペリーヌ物語』を2話分見て。
洗い流すときには、飛び散らないようにバスタブにはいつくばって、頭を下に下げ、弱いシャワーを当てた。
教えてくれたときの、文子さんの声や様子を思い出しながら。
なんだか、お祈りをしているみたいだった。
ヘナは黒いけれど、お湯ですっと流れるし、匂いも好きだし、シャンプーをして乾かしたら、髪がふんわりした。
なんだかとてもいい気持ちだった。
だからよく眠れたのかも。
文子さんにご報告したら、今、メールが届いた。
すごーくいい文なので、文子さんにお願いし、そのまま載せさせていただこう。

’’’’’’’
ブルックリンのアトランティックアベニューという駅に
小さな中近東の食品店や食堂が並ぶストリートがあります。

そこにはいろんなスパイス、ナッツ、オリーブ、チーズ、ドライフルーツ、お茶、香料、
ぶどうの葉っぱで巻いた前菜とかタブリ、ババガヌシュなどのお惣菜に
ハラルフード、イスラム教祭具などが売っていてこのプロダクトはそのレジの棚にあるんですよ。

  ハルちゃんにヘナを買いに連れて行ってもらったときは
「あら、こんなところに」と驚きました

(もしかしたらなおみさんに連れて行ってもらった北野のスパイス屋さんにあるかもしれないなあ。。)

レジのイエメン共和国のおばさんも「これはとても髪にいいの、家族で使っているの」と
私に合う色を選んでくれ、丁寧に使い方を教えてくれました。
「イスラムのお祈り姿勢で洗い流すのがポイントよ」ですって!

なおみさん すごい。

’’’’’’’’’
嬉しいメールだなあ。
そして今、この日記を書いていたら、文子さんが「なおみさーん」とやってきた。
ファビオは絵を描いているそうなので、ふたりで束の間のアペリティーボ。
わかめと茎わかめの当座煮、ビーツのマリネ(レモン汁、塩、米油でマリネしたものに、サワークリーム添え)、ビール。
明日から5日間くらい留守をするので、植木を預かってもらうことになった。
夜ごはんは、ちょっと肌寒いので、豆乳入り粕汁(大根、昆布、甘酒、味噌)、わかめと塩もみ人参(おろししょうが、ごま油)、ゆで卵、ゆかりおにぎり。
『ペリーヌ物語』を見ながら食べる予定。

●2024年5月30日(木)ぼんやりした晴れ

あまりよく眠れなくて、4時半に起きてしまった。
これからのことを思うと、寝ていられない感じ。
このごろは、このくらいの時間にはもう明るいのだな。
ゴミを出しにいって、5時からの『中学生の基礎英語1』も聞いて、ようやく眠たくなり、二度寝。
7時半過ぎに起きた。
東京から戻ってきたと思ったら、こんどは九州だ。
6月1日から、中野さんと大牟田に行く。
「ともだちや絵本美術館」の『たべたあい』原画展のクロージングイベントで、カレーを作る。
1日に向こうに着いたら仕入れをし、イベントは2日。
お母さんや子どもたちに手伝ってもらいながら、ふつうのカレーを作る予定。
その日のうちに若松に移動して、こんどは朱実ちゃんと樹君の家へ。
私は11日から沖縄に取材に出かけるので、2泊か3泊だけして戻ってこようと思う。
楽しみなことが目白押しだから、体調を整えておこうと思い、今日はゆっくり、ゆっくり動く。
荷物をまとめたり、滞っていたメールのお返事をしたりしながら。
午前中、文子さんがヘナのセットを持ってきてくれた。
染め方も丁寧に教えてくださった。
早めの夜ごはんを食べ、お風呂の前にやってみようと思う。
美容室ではいつも、ヘナで染めてもらっているけれど、自分でするのは初体験!
ちょっと楽しみ。
夜ごはんは、レモンチキン(出てきた肉汁で紫玉ねぎとしめじを焼いた。グリーンソース添え)、ご飯はなし。

●2024年5月27日(月)雨

とてもよく眠れた。
夢もみた。
私の背中は、平らではないという夢。
小さいころから、まわりの人と自分が違うことに、粉のようなものを感じ、その粉を体に取り込みすぎて、人とは違う背中になったそう。
夢だからおかしなところもあるのだけれど、なんだかやけに納得した。
6時過ぎに目覚め、ラジオを聞きながらうとうとして、起きた。
起きてすぐにやったのは、柱時計のお世話。
うちの時計は、ときどき振り子が自然に止まってしまう。
ちょっとした加減でそうなるみたい。
振り子を取りはずし、ぶら下げているフックの加減を指で探った。
何度やっても、うまくいかない。
振り子がちょっと傾いているせいか、へんな音がかすかに聞こえる。
しばらく休ませておこう。
朝ごはんを食べ、洗濯物を干し、もういちど試してみた。
振り子についている木の柄を、前に倒してみた。
おっ、いい音になった。
窓の外は霧。
ようやく戻ってきたひとりの時間。
今日は、税務のことをやろう。
柱時計は動いている。
夕方、文子さんのところで、軽くアペリティーボ。
いちど部屋に下り、お昼に食べたじゃがいものお焼きを持っていった。
鶏もも肉のハム、ビーツのマリネとランブルスコをごちそうになり、チリビーンズをお鍋にいただいて帰ってきた。タコチップスも。
文子さんに教わった通り、紫玉ねぎと香菜を刻んで上にのせ、タコチップスを添えた。
マギーブイヨンなど入っていない、チリビーンズ。
本物のチリビーンズ。
ものすごくおいしい。
『ペリーヌ物語』を見ながら、最高の夜ごはん。

●2024年5月26日(日)晴れ

ぐっすり眠って、5時に目が覚めた。
お腹の調子もよくなったみたい。
6時半までうとうとし、起きた。
日めくりカレンダーが、23日のままになっていた。
東京に出かけた日だ。
今回は、「ブロンズ新社書店大賞」の授賞式(本屋さんのディスプレイに贈られる賞)とパーティーのために、水道橋にある東京ドームホテルに行ってきた。
『おにぎりをつくる』と『みそしるをつくる』を飾ってくださった書店が、グランプリをいただいた。
有名な絵本作家さんたちの集まりに、自分がいる不思議。
パーティーが終わって、長野君が東京の仕事仲間にあちこち連絡をとってくださった。
私がひとりでホテルの部屋に戻るのを、淋しがるんじゃないかと思ったんだろうな。
やさしいなあ。
おかげで、「ともすけ」のふたりに会えた。
多分、10年以上ぶり。
ともすけも元気そうだったし、スイセイの作ったトイレの自動ドアがまだ元気に活躍していて、じんとした。
私の泊まった32階のホテルの部屋からは、高層ビル群がぎっしりと見えた。
こんなことは滅多にないので、朝起きて写真を撮った。
その日は水道橋の周辺で、アノニマの村上さん、丹治君&美佳さんと、それぞれ本の打ち合わせをした。
ランチをごちそうになった「インド富士」のカレー、めちゃめちゃおいしかったな。
ミントの葉をすりつぶしてあるらしい、緑色のミントレモンソーダもおいしかった(大きい方をと注文したら、本当にビッグなコップで出てきた)。
お店の中も、空気も、とてもよかった。
うまくいえないけれど、自分で開いたお店を、自分の力でやっている人の正直さがあった。
ソーダやカレーの味はもちろんのこと、あちこちで感じた。
休憩時間に、ホール係の男の子が「いただきます」と声を上げてから、賄いを食べはじめたこと。
店長の小城君も、「はい」と返事をしていたこと。
ここは、いいお店だなあと思った。
ちょっと「クウクウ」を思い出した。
窓の上の棚に古い本がずらりと並んで、自由に読めるようになっているところも、私はとても好き。
また東京に出かけることがあったら、こんどは夜の時間に行ってみたいな。
カレーのほかにも、気になるメニューがいろいろ並んでいた。
今朝は、あちこち掃除。
冷蔵庫で眠っていた完熟トマトと紫玉ねぎが気になっていたので、トマトソースを作りながら「きょうの料理」のエッセイを書いていた。
2時過ぎには仕上がり、千葉さんにお送りした。
風が冷たくて、窓を閉めた。
スカートの下にスパッツを履いていても、肌寒い。
夜ごはんは、『ペリーヌ物語』を見ながら。
えんどう豆のサヤの卵とじ、ししゃも、大根おろし、エゴマの葉の醤油漬け、お味噌汁(椎茸、豆腐、水菜)、ご飯。

●2024年5月25日(土)快晴

ゆうべは、海の上に桃色の丸い月がぽっかり出ていて、ああ、神戸に帰ってきたんだなあと思った。
と、朝起きて、ここまでは書いたのだけど、なんだかんだと忙しく続きの日記が書けなかった。
留守の間のメールのお返事をしたり、「きょうの料理」のイラストを描いたり、エッセイを書きはじめたり。
夕方、肌寒くなって窓を閉めた。
夜ごはんを食べ終わったら、お腹がぴーぴー。
東京の街は暑かったし、新幹線の中は寒かった。
私はくたびれているみたい。
今夜はお風呂に浸かってあたたまり、早めに寝よう。
夜ごはんは、ニンニクの茎と牛肉の炒め物(椎茸、ミニトマト、オイスターソース)、ご飯、キムチ。

●2024年5月22日(水)ぼんやりした晴れ

6時に目が覚め、玄関の通路に置いておいた大量のアサリを見にいった。
ゆうべ、撮影から帰ってきてすぐに塩水に浸けておいたアサリ。
新聞紙のふたを取ると、うごうごとうごめき、いっせいに首を長く伸ばしていた。
海の匂いがした。
ねぼけながら台所に運び、塩水を取り替えた。
アサリたちはとてもぬめぬめしていた。
生きものはやっぱりぬるぬるぬめぬめしているんだなあ。生きているなあと思って、二度寝した。
目を開けていられないほど、くたびれていたので。
このアサリはきのう、須磨海岸でとってきた。
亜由美さんたちと朝8時半から出かけて、帰ってきたのは夜の8時だったから、ほとんど12時間。
朝は、六甲山を越えて、北区にある山間の小さな畑に行った。
ビーツ、絹さや、えんどう豆、スナップエンドウ、新にんにく、にんにくの茎を収穫し、また別の農家さんの畑では、紫玉ねぎを収穫し、イチゴ狩りもさせてもらった。
うちに戻ってきてお昼を食べ、収穫した野菜で料理して、こんどは海へ。
長田区に引っ越してきたマメちゃんと、須磨海岸で潮干狩りをした。
そのあとビーチに移動して、夕陽が山に沈もうとしているところや海を眺めながら、料理とクラフトビールで乾杯。
マメちゃんを送りがてらお宅訪問し、トイレを借り、帰ってきたのだった。
山、海、マメちゃんが住んでいる街、「FARMSTAND」のある北野と、亜由美さんの大きな車でぐるりとまわったロードムービーのような撮影の旅。
どの場所も、どの場所も、そこにしかない景色と人、匂いがあった。
神戸に来なければ出会えなかった人たち、場所、空気、食べ物。
帰りの車の中で、私は胸がいっぱいになった。
というわけで、今日は冷蔵庫の野菜の始末。
明日から私は、東京に出張なので。
きのう収穫した野菜とアサリは、朝のうちに文子さんにお裾分けした。
「きょうの料理」の撮影の残りの食材や、ちよじと長田に行って買ってきたキムチ、焼き豚、青唐辛子にエゴマの葉。
なっちゃんもちよじも、次の日に泊まりにきた中野さんも、文子さんとファビオのところでひと晩づつおよばれしたので、買ってきたものを食べるのが追いつかなかった。
冷蔵庫の野菜をすべて取り出して何があるか確かめ、青唐辛子と新にんにくとパクチーでグリーンソース。
エゴマの葉は醤油漬け。
きゅうりは塩もみして梅酢をかけ、紫玉ねぎと和えた。
半端に残っていたニラは、ニラ玉に。
なすはくったり醤油煮に。
お昼ごはんにこしらえた、アサリのお味噌汁のおいしいこと!
濃厚な旨味と磯の香り。やっぱり海で生きていたから、精が強いのだ。
夜ごはんは、アサリとかぶのなんちゃってリゾット(冷やご飯で)、トマトのサラダ。

●2024年5月17日(金)晴れ

5時前に目が覚めた。
『ラジオ深夜便』のアナウンサーによると、今日の花はじゃがいもだそう。
花言葉は救済と恩恵。
『中学生の基礎英語1』を聞いて、6時半に起きた。
9年前の今日、私は吉祥寺から荷物をトラックに乗せて送り出した。
私が神戸にやって来たのは翌日なので、明日が本当の引越し記念日。
さあ、「きょうの料理」の撮影だ。
もうじき10時。
そろそろいらっしゃるかな。
撮影は4時過ぎに終わり、編集者の奈良さんを「コープさん」のバス停のところまでお見送りした。
ちよじとふたりで散歩をしているうちに、銭湯に行くことにした。
そこは、文子さんとファビオが好きな、水道筋の商店街の入り口にある灘温泉。
マメちゃんもいちばん好きな温泉だと言っていた。
そこは本当に、ひろびろとした空気のとってもいい温泉だった。
ちよじとふたりで、熱いお湯の湯船と炭酸水の湯船に順番に浸かる交互浴というのをやった。
それぞれ1分づつ11回すると、免疫力がついたり、自律神経に効くのだそう。
ちよじは8回目くらいから、顔に汗をかいたと言っていた。
こんど、仕事が詰まって肩がこったり、遊び疲れたりしたら、ここにひとりで来ようと思う。
たっぷり温まり、隣の居酒屋で夜ごはん。
ほたるいかの辛子酢味噌、生わかめのおでん、冷やしトマト、砂ずりのにんにく炒め、おから、ビール2本。
ほろ酔いで川沿いを歩き、コンビニでソフトクリーム。
しばらく待ってもタクシーが来ないので、坂を上って帰ってきた。

●2024年5月16日(木)雨が降ったり、晴れたり

5時に目が覚めた。
やることがたくさんあるので、6時半に起きた。
10時から美容院。
明日の撮影の仕入のために、六甲道と三宮を往復した。
なかなかいいセロリがみつからなくて。
お昼を食べそこね、2時くらいに帰ってきた。
お腹ぺこぺこで、お昼ごはん。
デパ地下のアジフライはおいしいな。
『ペリーヌ物語』を見ながら、撮影の支度。
出し汁をとったり、大根と人蔘を刻んだり、美生柑をフサから出したり。
台所でニョクチャムを作っていたら、ざざーーっと大きな音がした。
窓が白くなるくらいの大雨。
しばらく降って、また明るくなった思ったら、窓の真正面に大きな大きな虹が出ていた。
海のまん中から太いのが上っている。
こんなのはじめて。 
こうして日記を書いていても、まだ出ている。
もう6時半を過ぎたのに空は青く、真上に白い半月。
夜ごはんはなし。
お昼が遅かったし、食後におせんべいをポリポリ食べてしまったので。

●2024年5月14日(火)快晴

英語のラジオを聞いて、6時前に起き出した。
なんだか寝ていられなくて。
姪の夏深(なつみ)のことは、『日々ごはん』のなかではなっちゃんと書いていた気がする。
なっちゃんとの時間は、時計の針が2周ちょっと回っただけなのに、いろいろなことがぎゅっとつまり、過去のことも未来のことも、その一粒一粒が時間のなかを跳ね回っているみたいだった。
おもしろかったなあ。
私が18歳で上京したときに、3歳だったなっちゃん。
私は兄の家の近所のアパート(美容室の2階)に住んでいたので、よくお風呂を借りにいったり、洗濯機を借りにいったりしていた。
なっちゃんと公園に行って、ブランコしたり。
暗くなって「早く帰ろうよ」と言っても、なかなかいうことを聞いてくれなかったり。
お母さんの茂子さんは料理が上手で、美人で、憧れの人だった。
兄が茂子さんと離婚してからも、なっちゃんはことあるごとに静岡の実家に遊びにきていたし、大学生のころには私の吉祥寺の家にも泊まりにきた。
昔からなんとなくウマが合っていたし、なっちゃんは今でも親戚に変わりがないのだけれど、私も神戸に来てひとりになったし、彼女もひとりの人として会いに来てくれた。
だからなのかなあ。
なんだか、出逢い直したような感じがした。
これからも私たちのつき合いが続いていくのだろうと思うと、楽しみで仕方がない。
人生は本当におもしろい!
きのうは、三宮の電気屋さんにルーターを買いにいき、帰ってからセットアップをしてくれた。
おかげでようやく、Wi-Fiが繋がるようになった。
プリンターが繋がらなかったのも、解消してくれた。
新しいパソコンになって、小さな不具合がいくつかあったのだけど、ずいぶんよくなった。
携帯電話との連携もできたし、iCloudに加入したり、パソコンのキーボードでLINEの返事も打てるようになった。
実はなっちゃんが来る前に、私は自力で新しいパソコンのバージョンアップをし、壁紙も新しくした。
山並みのひろびろとした写真。
だからますます、新しいパソコンになった感じがする。
なっちゃんはパソコン関係の仕事をしていたので、技術的な知識もあるうえ、何か問題が発生してもひとつひとつ落ち着いてあきめずに対処してくれる。
パソコンだけではなく、機械全般に強いみたい。
たぶん、ものごとの仕組みを見る目が違うんだと思う。
そして、料理も上手い。
きのうは私が仕事をしている間に、お昼ごはんを作ってくれた。冷蔵庫にあるもので、アイデアを閃かせながら、ちゃちゃっと。
しかも、とてもていねいなのだ。
さすがは茂子さんの娘だなあ。
今朝、早起きをしてすぐにやったのは、これまでパソコンに繋いでいた有線の長いコードをはずしたこと。
あとは、プリンターの掃除。
インクが切れていることもわかったので、夕方、文子さんが電気屋さんに出かけるのに私もついていくことにした。
その前にひと仕事。
洗濯物を干し終わったら、『毎日のことこと』のあとがきに向かおう。
夜ごはんは、デパ地下の穴子寿司、アサリの味噌汁、焼きなす(みょうが)。

●2024年5月11日(土)晴れ

このところ、とてもいいお天気の日が続いている。
きのうも、おとついも気温は低かったのだけど、その分空気が澄んでいるのか、対岸の山の峰々までくっきりと見えた。
今朝はちょっと山が霞んでいるけれど、よく晴れ渡っている。
緑もきらきら。
もう新緑という感じではなく、もさもさと繁茂している。
朝ごはんの前に、寝室の床をセスキ水で雑巾がけした。
光が明るくなると、私は掃除がしたくなるみたい。
きのうの朝も台所のシンクをぴかぴかに磨き、床もセスキ水で拭いた。
おとといの朝だったかな。5時前に目が覚め、ラジオをつけたら、「今日という日は、もう二度とやってきません」と、「ラジオ深夜便」のアナウンサーが言っていた。
すごいなあ。過激なことをおっしゃるなあと思った。
そのあと「今日一日を大切に過ごしましょう。あなたにとってすばらしい日でありますように」と続くのだけど。
高齢者にとっては(私もその仲間だけれど)、一日一日がとても大切なのだ。
さあ私も、二度とやってこない新しい一日を過ごそう。
きのうは、「おふくろの味」という短文を仕上げ、ある小冊子の編集者にお送りしたら、すぐに感想のメールが届いた。
嬉しくて、涙が出そうになった。
いつもひとりで、どきどきしながら書いているから、はじめて読んでくださった他者からの言葉は、本当に励みになる。
励みというか、支え。
今日は、『毎日のことこと』の校正の続き。
丹治君と伴走しているつもりで向かおうと思う。
ぎゅっと集中し、最初から最後まで通しでやった。
目が痛くなったので、とちゅうでコーヒーをいれ、目薬を差したりして。
5時ごろに終わった!
荷物も作った。
明日は夏深(いちばん上の兄の長女。沖縄に一緒に行った翔のお母さん)が泊まりにくるから、六甲道まで迎えにいくときに宅急便で送るつもり。
なんだか、海が灰色がかっている。
雨がやってこようとしているんだろうか。
夜ごはんは、『ペリーニ物語』を見ながら。
プルコギ(牛こま切れ肉、新玉ねぎ、人参、ニラ、セロリ)、ゆかりのおにぎり、すまし汁(卵豆腐、えのき)。

●2024年5月7日(火)雨のち晴れ

5時に起きて英語のラジオ。
まだ雨の音がする。
今朝の天気予報は、久しぶりに萬木敏一さんだった。
やっぱりとてもいい。
萬木さんの声は力んでいないので、聞いていて心地いい。
ニュースがはじまってカーテンを開けたら、霧でまっ白。
ゆうべからの雨はまだやまない。
きのうは、文子さんが電気屋さんに車で連れていってくれた。
クーラーが壊れてしまったので、新しくしたくて、冷蔵庫を買った電気屋さんに行ってみたのだ。
だいたいの相場は分かったけれど、うちはマンションの4階だから、取りつけ工事がむずかしそうだった。
雨が上がって晴れ間が出てきたので、朝のうちに思い立って三宮の大きな電気屋さんへ行くことにした。
ここは前に、パソコンのときにもお世話になったところ。
エアコン売り場にはベテランのおじさんがふたりいて、とても親切に分かりやすく教えてくださったので、いちばんシンプルなのを決めてきた。
来週には見積もりの方が来て、その二日後に取りつけ工事もしてくれる。
さっと出かけ、お昼過ぎには帰ってこれた。
ああ、ほっとした。
これで落ち着いて仕事ができる。
今日は「気ぬけごはん」の続きを書こう。
夜ごはんは、セロリと牛肉の中華風焼きそば(ふわふわ卵焼きのせ)、すまし汁(卵豆腐)。
『ペリーヌ物語』を見ながら食べた。

●2024年5月4日(土)晴れ

カーテンの隙間が明るくなっていたので、ラジオをつけたらまだ5時前だった。
「深夜ラジオ便」でお誕生日の花のことを言っている。
今日はハナミズキ。
白や桃色の花びらに見えるのは、苞なのだそう。花は、まん中にある黄色い雌しべのようなところ。
カーテンを開けると、細くて白い三日月。
もう空も青かった。
窓を開けるとひんやり。
小鳥たちの声はまだしない。
6時半に起きた。
きのう、『毎日のことこと』の初稿ゲラが、丹治君から送られてきた。
ゲラのところどころに書き込まれた言葉が、手紙のように感じる。
さすがは丹治君だなあという、編集者としての冴えた提案が添えてある。
「気ぬけごはん」ともうひとつ、小さな原稿を抱えているけれど、今日から少しずつ向かおうと思う。
まだゴールデンウィークだけれど、私はもう充分に遊んだので。
ふと思いつき、座卓を海の方に向けてみた。
なかなかいい感じ。新しい気持ちで向かえそう。
4時半まで集中し、文子さんからアペリティーボのお誘い。
ビールとニョクチャム、ブンタンを持っていく。
ベトナム風の小さなおつまみにしようと思って。
文子さんとファビオのキッチンの窓から見える山は、いろいろな緑がもくもく、むんむん。
白いライラックも花盛り。
風が渡り、どこかから栗の花のような匂いがしてきた。
今日という日にビールで乾杯。
6時過ぎには戻ってきた。 
海がまだ青い。
夜ごはんは窓辺で。
エビカレー(いつぞやの。ゆで卵、紫玉ねぎのピクルス)、人参の塩もみサラダ。

●2024年5月2日(木)びんやりした晴れ

きのうは雨降りで寒いくらいだった。
今朝もまだ肌寒い。
でも緑は、もりもりもくもく元気そう。
姫白丁花もとても元気で、新しい葉が大きく育ち、蕾も4つある。
やっぱりファビオに教わった通りに、枝を剪定したのがよかったのだな。
中野さんの家から戻ってきたのは火曜日。
車で一緒に来て、2泊し、中野さんはさっき帰っていった。
さあ、また私ひとりの日常がはじまる。
中野さんの家ではツバメが巣作りのまっ最中で、私は勝手口のガラス戸の下を通るたびに見ていた。
朝は歯磨きをしながら。
昼間は、靴をはきながら。
ツバメののどは赤いと思い込んでいたけれど、どちらかというと金茶のような色で、1羽はお腹の白いところにも金茶の斑が入っているのだった。
頭はまっ黒ではなく、青光りした黒。
1羽はスマートで、もう1羽はちょっとふっくらとしていた。
土くれやワラを交代でくわえてきては、編み込むようにして巣を少しずつ大きく、丈夫にしていった。
相方が戻ってくると、ちょっと前からもう分かっていたみたいに飛び立つ。
そのときに、一声鳴く。
3泊をした間、少しだけメモをとっておいたので、遡って記してみます。

・・・・・・・
●4月27日(土)晴れ
夜ごはんの下ごしらえをし(アスパラの肉巻きフライはお姉さんが揚げてくれた)、中野さん、ユウトク君、ソウリン君と4人で、いつもの空き地に夕陽を見にいった。
空き地は今、シロツケクサがいっぱい。向こうにはピンクのレンゲ畑。
なかなか沈まない夕陽。
子どもたちはフライドポテト、私と中野さんはビール。
久しぶりに飲んだので、私は缶ビール1本ですっかり酔っ払ってしまう。
明るいうちに戻ってきて、夜ごはんは、アスパラの肉巻きフライ(島るりこさんが送ってくださった、伊那の極太グリーンアスパラで。オーロラソースは中野さん作)ミックスレタス添え、フライドポテト、ご飯。
夜ごはんのあと、ユウトク君と散歩。
かわたれどきの田んぼのあぜ道を、ふたりで歩いた。
草むらの方からガサガサと音がして、顔を見合わせた。
何かの生き物が草の間を動いた音。ヘビかもしれないとのこと。
帰り道はもうまっ暗になっていたので、懐中電灯をつけ、ヘビがいないか注意しながら歩いた。 「もし、ユウトクが走ったら、なおみさんもすぐに走ってくれる?」と、怖いことを言われる。
お風呂に入って、8時半に寝た。
ツバメは、夜の散歩に出るときにはもう寝ぐらに帰っていた。
彼らの巣作りは陽の出とともにはじまり、明るいうちだけせっせとがんばって、夕方にはもうお終い。
「いい時間割りだなあと思います」と、中野さん。
自分もツバメに合わせ、このところ5時前に起きて絵を描いているのだそう。

●4月28日(日)晴れ
6時半起床。
中野さんはとっくに起きて、絵を描く部屋で何かをしている。
ツバメももう巣作りをしている。
土くれやワラの混ざった泥をくちばしにくわえて取ってきては、できかかった巣に押し込む。
ただつけるだけでなく、ねじり込んでいる。くちばしを動かして、口から何かねばる液を出しているんだろうか。
もう1羽がやってくると、すぐに飛び立つ。順番にやっている。
神戸でソウリン君のサッカーの試合があるので、お義兄さん、お姉さんと3人で朝から出かけた。
お父さん、お母さんは法事で出かける予定。
なので、中野さん、ユウトク君、私は留守番。
午前中はカーテン屋さん(去年閉店し、片づけやリフォームをしている)の壁はがしを手伝ったり、2階の裁断台で卓球したり。
お昼ごはんは中野スペシャル。卵とハムのチャーハン&サッポロ一番塩ラーメン。
食後、ユウトク君がいろいろな種類のカエルの動画を見せてくれた。
チチカカ湖にしか棲んでいないチチカカミズガエルや、体全体が丸く膨らんだフクラガエル。
声も聞かせてくれたのだけど、やっぱり私はカジカガエルがいちばん好きだった。
2時くらいに3人で温泉へ。
そこは、山の裾野にある小さなお風呂。
私が入ったときには2人だけだった(いちどに5人くらいしか入れない)。
窓から、裏山に繁茂する自然の植物が見える。
私はしょっぱいお湯を顔に何度もかけた。花粉症の痒みが治りますように。
夜ごはん用にハンバーグの種(合びき肉1キロ分)を作っておいたのだけど、お頭つきの鯛の塩焼きと(明石の桜鯛だそう)、堀りたての筍をゆでたものをお母さんが持って帰ってくれたので、ハンバーグは明日焼くことにした。
残りのひき肉で、子どもたちの大好きなそぼろを作った。
夜ごはんは、鯛の塩焼き、筍の薄炊き、甘辛そぼろ、ご飯。
早めにごはんを食べたので、まだ明るいうちに散歩。
ソウリン君と中野さんも加わって、4人で。
あぜ道のとちゅう、ユウトク君が「カエルの声がする」と言って、みんなで聞き耳を立てた。
中野さんも「うん、今聞こえた」と言うのだけれど、私には何も聞こえない。
あぜ道に突っ立って、しばらくみんなで音を立てずに耳を澄ませていた。
帰り道は、中野さんが保育士のころに子どもたちに聞かせていた、桃太郎の怖い話バージョン。
おもしろいのだけど、それまでずっと静かに物語っていたのに、急に大きな声を出すので、びっくりして怖くなる。
温泉に入ったので、お風呂はなし。
寝る前まで4人でUNO(カードゲーム)をした。
8時に就寝。

●4月29日(月)曇りのち雨
6時半起床。
ツバメの巣は、もうほとんど出来上がっている。
それでも2羽は往ったり来たり。仕上げをしているらしい。
9時半くらいに出て、中野さん、お姉さん、子どもたちと杉原川にドライブ。
カジカガエルをつかまえに。
山の方に向かって、ずいぶん走った。
そこは、自然のままのとてもきれいな川だった。
「道の駅」でおにぎり(塩むすび、山菜の炊き込み)と鶏の唐揚げ、ちくわなどを買い、川沿いの石段で早めのお昼ごはんを食べた。
川には誰もいなかった。
ユウトク君は前にこの川でカジカガエルをつかまえ、しばらく家で育ててから、放しにきたことがあるのだそう。
川原に下り、石を渡りながら奥まで行って、岩陰をじっとのぞいたり。石をひっくり返したり。
カジカガエルはみつからなかったけれど、私は水辺に自生している野生のクレソンをたくさん摘んだ。
文子さんとファビオのお土産にしようと思って。
川から帰ってきたら、まだ1時過ぎ。
朝早くに出たので、1日の長いこと。
ユウトク君と手打ちパスタを作った。
ハンバーグのつけ合わせにするつもり。
カヴァッテッリと、竹串で作るマッケローニ。
ユウトク君はすぐに覚えてコツをつかみ、最初は私が教えていたのだけれど、そのうち「こうするといいで」と教わるようになった。
短く切った生地ができたので、親指で押さえながら引いて、耳の形のオレキエッテだよと教えたら、両方の親指でぎゅっと押さえて三角にした、カマキリの顔のパスタを作りはじめた。 「エブリギエッテやで。なおみさん知ってた?」と言う。 「へえ、すごいなあ。知らんかった」。
私はすっかりだまされた。
あとで分かったのだけれど、ユウトク君が考えたらしい。
手打ちパスタはすべてまとめてゆで、ミニトマト(法事のお土産)と新玉ねぎとケチャップのソースで和えた。
夜ごはんは、大きなハンバーグ(子どもたちはチーズ入り。つけ合わせは手打ちパスタ、人参グラッセ、川で摘んだクレソン、ミニトマト)、しめじとねぎのお味噌汁、ご飯。
食後にごろごろ豆大福を食べ、ものすごくお腹いっぱい。
夜ごはんのあとにUNO。
私がお風呂に入っている間、子どもたちは中野さんの部屋で怖い話を聞いていたらしい。
8時半に就寝。
中野さんの部屋は、雨の音がよく聞こえる。

●4月30日(火)晴れ
6時15分に起きた。
子どもたちは学校。
寝起きの顔で朝ごはんを食べているユウトク君に、「なおみさん、ネルソンまだある?」と聞かれた。
クレソンのことらしい。
私と中野さんは、10時くらいに家を出て六甲へ。
湖の道を通って帰ってきた。

・・・・・・・・・

今日は、次号の「気ぬけごはん」のメニューを島崎さんにお送りし、日記を遡って書いているうちに夕方になった。
夜ごはんは、ティッコ(ようやく食べ終わった。サワークリームとケチャップ添え)、川で摘んだクレソンときゅうりとミニトマトのサラダ(玉ねぎドレッシング)。
『ペリーヌ物語』を見ながら窓辺で食べた。

●2024年4月26日(金)晴れのち曇り

5時に起きて、『中学生の基礎英語1』を聞いた。
4月から番組編成が変わったので、5時からだった『古楽のたのしみ』が、6時に戻った。
だから、英語の学習をしたければ、早起きをすればいいんだ。
5時はもう明るいし、これからどんどん陽の出の時刻が早くなっていくのだから。
風邪はもうほとんど治った。
咳をすると、奥の方でまだタンが絡まるけれど。
鼻水もそれほど出ないし、鼻も詰まっていないから、夜中に目覚めることもない。
ヒノキ花粉の時季はもう、そろそろおしまいなのだろう。
明日から中野さんの家に出かけるので、今日のうちに「となりのオハコ」。
午前中から宮下さんと、写真とキャプションについて電話でやりとり。
エッセイとレシピの仕上げもしてお送りした。
生クリームとギリシャ風ヨーグルトを買ってあったので、スメタナ(ロシア風サワークリーム)も作った。
文子さんに教わったレシピで。
ヨーグルトメーカーを持っていないので、私のはなんちゃってだけれど。
まず、よく洗った空きビンに生クリーム1/2カップを入れ、ヨーグルト大さじ1を加えてよく混ぜる。
小鍋にぬるま湯(30度〜40度くらい)を沸かし、そのビンを浸ける。フタはきっちりとは閉めずに、隙間を開けてのせておくだけ。
お湯が冷めてきたら温め直し、ころ合いの温度にしてまた浸ける。その繰り返し。
2〜3時間すると固まってくるので、フタを閉めて冷蔵庫へ。
市販のサワークリームよりも軽く、なめらかで、ロシアで食べたのによく似ているのができる。
パンにマーマレードとつけてもおいしい。
夕方、緑がしたたるよう。
グレーの空には、若い緑がよく映える。
小鳥たちも盛んにさえずっている。
今、窓の上をスーッと一直線に横切った鳥がいた。
もどってきた。
あっ、ツバメだ!
夜ごはんは、窓辺でまた『ペリーヌ物語』を見ながら食べよう。
3話まで見たから、今日は4話。
すごく変なメニューだけれど、しらすおろし(しらすを食べ切らないとならないので)、小さいおにぎり(人蔘葉とかつお節にふりかけ)、この間から食べ続けているティッコ、ビーツのサラダ(スメタナ添え)、小松菜のオイル蒸し(玉ねぎドレッシング)。

●2024年4月23日(火)小雨のち曇り

昼間にたっぷり寝ているせいで、あまりよく眠れなかった。
明け方に熟睡できたのだけど、口を開けて寝ていたらしく、喉がかぴかぴになって目覚めた。
それからはうとうと。
6時半からラジオの英語。
寝室の窓のすりガラスが、緑色に染まっている。
いつの間にこんなに緑いっぱいになったんだろう。
朝ごはんのヨーグルトも、苺もリンゴもバナナも、何でもとてもおいしい。
ひとつひとつの味がくっきりとして、驚く。
腰の痛みはほとんどなくなっているし、食欲も出てきたみたい。
さあ今日は「となりのオハコ」のエッセイの仕上げ。
寝ている間に、どう書こうか考えていたので。
朝、洗濯物を干すときに、カラスが3羽、海の上の遠くの方に見えるなあと思っていた。
その30分くらいあと、うちの近くの空を悠々と舞っていた。
近寄ったり離れたり、空は大きいんだろうな。
お昼にもやし炒めを作った。
塩だけの薄味にしたのに、とてもおいしい。
細いもやしって、こんなに香りがあっておいしいものだっけ。
私は今、舌が敏感になっているんだろうな。
熱が出ていちどダメになった細胞が、新しく生まれ変わったのかな。
文子さんからメールがあり、最近ファビオとみつけたおいしいお店のジェラートを玄関に置いてあるとのこと。
なんて嬉しいプレゼントだろう。
あとでいただこう。
「となりのオハコ」を宮下さんに送ったら、すぐにとても嬉しい感想が届いた。
ああよかった。ほっとした。
レシピもがんばって書こう。
夜ごはんは、フライパンにくっつかないホイルを敷いて、ティッコを温め直した。ビーツのサラダ、人参のサラダ(人参の葉入り)、きゅうりのサラダ(玉ねぎドレッシング)添え。
Amazonプライムで『ペリーヌ物語』第1話を見ながら窓辺で食べた。
ティッコは作った日よりもずっと香りよく、おいしくなっていた。
私の舌と鼻のせいだろうか。
今日は、姫白丁花の二つ目の花が咲いた。
よく見ると、硬い蕾がもうひとつある。
この間、ファビオに教わったように枝を剪定してから、青々として元気になった気がする。

●2024年4月22日(月)ぼんやりした晴れ

きのうよりもずっと楽になった。
熱も下がった。
5時半に起きて、掃除。
まだ微熱があるので、掃除機はかけられないけれど、モップであちこちていねいに。
ゆっくり動いた。
シーツも取り替えた。
鼻をかんだティッシュが、ものすごい量。
ゴミをまとめて出し、朝風呂に浸かって体を温め、病院へ。
ぼうっとして、耳が遠くなっているような感じがするのだけれど、坂を下りているとき、川を流れるちょろちょろという音がよく聞こえた。
海がやけにひろびろ。
大きな貨物船もとても近くに見えた。
いろいろな色の緑が、眩しい。
体がふたまわりくらい膨張し、輪郭がぼわっとした感じなのだけど、見るもの見るもの美しい。
体の節々が少し痛いけれど、そう悪くはない。
病院では、念の為にコロナの検査もしてくださった。
発熱後すぐに検査をしても、反応が出ないことがあるそうなので。
結果は陰性。
ああ、よかった。
黄砂が飛来するようになってから、私のように花粉症をこじらせ、風邪のような症状になる患者さんがとても多いとのこと。
気管支炎や喘息が出ている方もいるのだそう。
少し買い物をして帰ってきた。
朝のスーパーは、空いていて気持ちがいいな。
気づいたこと。
風邪をひいて熱があるときでも食べたくなるのは、しらす。
あとは果汁100%のジュース、バナナ、苺、アロエヨーグルト、豆腐、卵豆腐、うどん、サッポロ一番塩ラーメン。
卵豆腐は買うのを忘れたけれど、マッシュポテトが食べたくなりそうな気がして、新じゃがを買った。
帰ってから、きのうの残りのおじやにだし汁を加えてサラサラにし、ニラを刻み入れた。
大根おろしにはしらすをのせて。
きのうよりもずっとおいしく感じるけれど、まだたくさんは食べられない。
何をするにも、ゆっくりとしか動けないし。
薬を飲んで、もう1日寝ていよう。
夜ごはんは、卵うどん(ねぎ)。
半分残してしまったけれど、おいしく食べられた。
少しずつ元気がもどってきている。

●2024年4月21日(日)雨

ゆうべ、お風呂から出たときに、なんだかとても体が怠かった。
咳も出て、よく眠れなかった。
朝、微熱があった。
文子さんがパソコンを教えてくれる日だけれど、今日は1日寝ていよう。
8時になるのを待って、メールをした。
だんだん熱が上がってきた。
38度を超えたので、もしやと思い、コロナの検査キッドを出しておいた。
それからまた寝た。
気がかりなのを放っておいても仕方がないので、気持ちを落ち着けてから検査をしてみた。
陰性だった!
4時くらいに夜ごはん。おじや(豆ご飯の残り、卵、小松菜)、即席塩鮭。
何を食べてもおいしくないし、ほとんど食べられない。
7時ごろ、39度。
コロナの予防注射のときにもらったカロナールを飲んでみた。
よく眠れないけれど、熱は下がってきた。
ずいぶん楽になった。
明日は病院に行こうと思う。

●2024年4月20日(土)晴れ

ゆうべはわりとよく眠れた。
のどがイガイガし、咳も出てきたので、寝る前に葛根湯を飲んで寝たのがよかったみたい。
鼻水の出方や質が変わってきた。
ヒノキ花粉も下火になってきたそうだから、これで治ってくれるといいのだけれど。
きのうは夕方から出かけ、美容院に行った。
予約の時間まで図書館へ。
自習室で英語の絵本を読んだり、フィンランドのごはんの絵本を読んだり。
今日は、そのなかからマカロニのオーブン料理ティッコを作る予定。
玉ねぎと牛ひき肉をバターで炒めて、ゆでたマカロニを加え、牛乳と卵を混ぜた生地を流して焼く。
おろしたチーズとパン粉もふりかけて。
今日子ちゃんのイギリス土産のメースも、たっぷり加えよう。
子どもたちは、ケチャップをかけて食るんだそう。
さあ今日は、何はなくとも「となりのオハコ」。
夜ごはんは、ビーツのサラダ(玉ねぎドレッシング)、きゅうりのサラダ(塩)、ティッコ。

●2024年4月18日(木)ぼんやりした晴れ

ゆうべはマスクをして寝た。
6時ちょっと前に起きて、ラジオ。
「中学生の基礎英語1」は4月からラジオ第一になったので、なんとなく聞きにくかったのだけど、今朝はひさしぶりに聞けた。
「中学生の基礎英語2」をとちゅうまで聞いて、FM放送に変えた。
「古楽の楽しみ」が、6時からのスタートに戻った。
天気予報を聞いて、起きる。
きのうのくしゃみと鼻水は、黄砂のせいだったと分かった。
今朝も舞っているらしく、空気が白い。
霧とは違う白さ。
きのうは窓を開けていたから、部屋の中に黄砂が入ってきたんだと思う。
今日はぜったいに窓を開けないぞ。
朝ごはんの前に、あちこちていねいに掃除機をかけた。
コロナのころにつけていた布のマスクを出し、はめてみている。
少しは楽になった気がする。
ヨーグルトを食べながら外を見る。
猫森の色とりどりの緑は、とてもきれいなのだけれど、街が白い。
曇っているんだか、晴れているんだか。
花粉と黄砂が混ざっていると思うと、とても窓を開ける気になれない。
お昼前に晴れてきた。
空気が黄色っぽい。
午後、たまらなく眠くなってお昼寝。
鼻が詰まっていると、脳みそに酸素がいかないのかな。
今日は、仕事は休み。
なんだか微熱も出てきたみたい。
夜ごはんは、ゆでたビーツ(塩)、オムレツ(人参の葉)、パンデビス。
ビーツは茹でたてを熱いうちにラップに包んでしばらくおくと、つるんと皮がむける。パプリカの丸焼きと同じこと。文子さんに教わった。

●2024年4月17日(水)晴れ

中野さんは朝ごはんを食べ、帰っていった。
山梨の帰りに、月曜日から泊まっていたので。
森のなかで絵を描いていたときの話。
小鳥が近寄ってきて、後ろからトン、トンと少しずつ近寄ってくるのが、葉っぱが揺れるかすかな音で分かったこと。
ひとりで絵に集中していたとき、絵の中から小さな水の音が聞こえてきたことなど。
中野さんはとても元気になって帰ってきた。
朝は早いし、夜も遅くまで起きていたのに、ちっとも疲れが出なかったそう。
自然の息吹が体の中に入ったのかも。
きのうは、文子さんたちとアペリティーボをして、部屋に戻ったとたん、雷がゴロゴロ。
そして、道路にたたきつけるような雨。
ものすごい嵐が通り過ぎた。
ゆうべもいちど、雷と大雨があった。
私はきのうと今日、花粉症がひどく、鼻は詰まるし、目がかゆいし、よく眠れなかった。
薬は飲まない。
それでもこうやってしのいでいけば、そのうち花粉も下火になって、治るだろうと思う。
そんなわけで、仕事は何もせず、たまっていたメールのお返事。
三宮で買ってきた大きなエビは、きのうできなかったので、朝から玉ねぎを炒めてカレーを作った。
ひすい豆のさやをむいて、さやの薄皮を剥ぎ取ったり。
カレーは保存しておいて、今日は渡辺さんの料理教室で教わった、豆ごはんの天津丼にしよう。
さやはお味噌汁に入れる予定。
今日は雲が厚い。
空と海の境がなく、白灰色。
海の方は雨が降っているのかな。
それにしても鼻がかゆい〜。
今、教会の鐘が鳴った。
6時だ。
夜ごはんは、お豆ごはんの天津丼、味噌汁(新玉ねぎ、ひすい豆のサヤ、しめじ、白味噌)。

●2024年4月14日(日)晴れ

ぐっすり眠って8時に起きた。
起きたとき、まだ少し酔いが残って、ぼわっとしていた。
お風呂に浸かったら、戻ったけれど。
渡辺さんの料理教室は、一品作っては、テーブルに座ってみんなでいただき、また作っては食べる。
私の分まで小さなお味見を用意してくださったので、そのたびに玄関の通路の小さな腰掛けに座って食べた。
六甲の緑の山を見ながら。
デザートを入れて6品。
そのすべてが、ほんとうにおいしかった。
渡辺さんの料理は、味も調理法もみずみずしい。
簡単にできる手作り調味料の知恵や、「えー、そんなふうにすればいいんだ!」という驚きもあちこちにあった。
家族や大切な人に、すぐにでも作ってあげたくなる料理。
料理教室って、お店とはまたちがう楽しさがあるんだなあ。
さあ、「となりのオハコ」の続きを書こう。
豪華客船が湾をゆっくりと、神戸港に向かって進んでいくのが見えた。
小鳥たちもよくさえずっている。
気づけばもう夕方。
猫森の緑は、今日一日でまた伸びた。
ほとんど枝が見えないし、なんかもさもさしている。
夜ごはんは、中華粥(鶏手羽元、大根)、大根の皮の醤油黒酢漬け、じゃがいものせん切りナムル(今日子ちゃん作)、しょうが油(きのう渡辺さんのクラスで教わった)。

●2024年4月13日(土)晴れ

ぐっすり眠って6時前に起きた。
このところの眠たい日々から、ようやく出られた。
ラジオをつけてうつらうつらし、7時前には起きた。
今日はいろいろ楽しみなことがあるから。
そう。
きのう、姫白丁花に薄桃色の小さな蕾がひとつだけ膨らんでいるのをみつけ、1階に下ろしてきた。
今朝は開いているだろうか。
そして丹治君からは、「毎日のことこと」の文字組や、製本の案が送られてきた。
ゆうべは3種類の文字組(本の形に綴じてある)を、ベッドの中で読んでみた。
はじめて読む読者のつもりになって。
手に持った感触も含め、本の言葉がなだらかに入ってくる形をみつけた気がする。
そのことをお知らせしなくちゃ。
きのうは、中野さんからも写真が届いた。
森の中に、まっ白いキャンバスが吊るされていた。
今朝はそこに描かれた絵。
森の中に森が息づいているような、森の向こうで水が光っているような。
きのう一日で描いた絵なのかな。
今日はそこに、どんな景色が生まれるんだろう。
さあ私も、自分の仕事をがんばろう。
渡辺さんの「となりの オハコ」は、きのうから書きはじめた。
今日も続きをやって、3時くらいに「MORIS 」に出かけ、料理教室の皿洗いのお手伝いをする。
渡辺さんに、もぐろう。
夜ごはんは「MORIS」にて。文子さん、ファビオもやって来て、レッスンを受けていた宮下さんを入れて、みんなで7名。料理はすべて今日子ちゃん作。
人参の甘酸っぱいナムル(フェンネルと八角が入っていた)、じゃがいものせん切りナムル、ミニトマトのキムチ。厚切りの豚バラ肉をじりじり焼いてサムギョプサル(サニーレタス、エゴマ、ねぎのキムチ&ねぎのジャン・途中から渡辺さんが菊菜をのせて焼いてくれた)、マッコリ。
帰りは、文子さんが車で送ってくれた。
文子さんの隣にはファビオ、後部座席にヒロミさん、今日子ちゃんと私。
神戸の古い友人と、新しい友人が同じ車の中にいて、夜景がきらきらした坂道を、くねくねと上っていった。
私の話にウケた今日子ちゃんが、大笑い。
みんなで同じごはんを食べたこと、帰りも近所の友人たちとぎりぎりまで一緒にいられること。
満開だった桜も、もうお終いなこと。
私はマッコリを小さなグラスに2杯呑んだだけなのに、なんだかとろけそうだった。

●2024年4月11日(木)晴れ

8時に起きた。
眠くて、眠くて。
6時過ぎにラジオをつけ、「中学生の基礎英語」の1と2を聞いたし、天気予報もニュースも遠くで聞こえていたのだけれど、春眠暁を覚えず……と思いながら寝ていた。
きのうはビールの原稿の仕上げをし、お送りした。
締め切りはまだ先だったのだけど、ひとまず終わりにして、次の仕事に向かいたかったから。
3時半ごろ、銀行の用事をしがてら坂を下りた。
早くに咲いた桜は半分散り落ちていたけれど、坂の上の方の桜はまだ満開で、海も青く、ひろびろとした気持ちで下りた。
龍の神社の木も、もう葉桜。
バス通りの桜も同じ。
この間の大嵐で、散ってしまったのかな。
帰りに「MORIS」に寄った。
定休日だし、窓が閉まっていたからお出かけしているかなあと思いながらノックをしたら、今日子ちゃんが扉を開けてくれた。
ヒロミさんもいた。
ふたりとも、すごく元気そうだった!
クッキーを焼いている甘い匂い。
ああ、なんだかとっても久しぶり。
東京でのこと、インターネットがつながったことなどお喋りして、買い物をし、タクシーで帰ってきたのだった。
帰ってきてすぐに作った夜ごはんは、肉豆腐をしたときの牛肉と椎茸を煮汁ごと残しておいたので、にぼしのだし汁とヤンニンジャン、味噌を加えて、チゲ鍋風の煮込みを作った。
しめじと豆腐と、落とし卵も加えて。
本当は、韓国のインスタントラーメンがよかったのだけど、六甲のスーパーには売ってなかったから、ゆでうどんを1/3袋加えた。
どうしてチゲ鍋が食べたくなったかというと、キム・ナレさんの韓国料理の本を「MORIS」で見せてもらって、いろんな料理がすごくおいしそうだったから。
私はまだまだ、コリアンブーム。
今日は、バルバラの懐かしいCDを出してきて、朝から聞いている。
坂本龍一さんが食卓の前で聞いていた曲は、バルバラのような気がして。
三拍子の歌。
若いころに私もよく聞いていた、たぶん同じレコードの。
あ、エディット・ピアフかも。
カセットテープに吹き込んであるのを出してきた。
5時ごろ、文子さんたちのところでアペリティーボ。
人参とラディッシュの塩もみサラダ(赤ワインビネガー、蜂蜜、川原さんお手製の粒マスタード)とビールを持っていく。
階段の方まで、ものすごくいい匂い。
文子さんが、スパイシーシチューとクスクスを作ってくれている。
キッチンの窓から見える景色は、しばらく見ない間に、すっかり若緑が増えていた。
ところどころに、薄桃色の山桜も。
とってもいい景色。ビールを飲みながら、深呼吸した。
夜ごはんは、モロッコナイト。
クスクス&スパイシーシチュー(文子さん作・牛肉、モロッコインゲン、赤と黄色のパプリカ、人参、小玉ねぎ)、ハリサソース、玉ねぎとレーズンを甘く炒めたもの、揚げなすの香菜和え添え(人参とラディッシュのサラダも盛り合わせて食べた)、赤ワイン。
文子さんのスパイシーシチューは、いろいろなスパイスが混ざり合っていた。
メキシコのチリと炒めた玉ねぎで作ったペーストや、肉桂、カルダモン、クミン、コリアンダー、ターメリックまで、いろいろ入っているのだそう。
土鍋で煮込んであるのもタジンみたいで、最高においしかった。
きっと文子さんはこういう料理をニューヨークで作って、友人たちにふるまっていたんだろうな。
そう思ったら、なんだか神戸の街や海が、マンハッタンの夜景に見え、私までニューヨークのふたりのアパートにいるみたいな気がしてきた。

●2024年4月9日(火)雨のち曇り、大風

ゆうべはものすごい風だった。
すべてを巻き上げ、たたきつけるような風。
びゅうびゅうを通り越し、ごうごうと鳴っていた。
怖くはなかったけれど、夢の中まで音が侵入してきて、誰か知らない人たちがうちに避難している夢をみた。
寝室にもふたりいたし、1階は公民館くらいの広さになっていて、寝ている人たちをまたいで窓辺に行くまで時間がかかった。
暗いなか、木がめちゃくちゃに揺れ、ごうごうと唸っていた。
その夢がちょっと怖かった。
今日は中野さんが山梨に出発する日。心配になって、起きてすぐに新幹線の運行状況を調べたら、運休はなし。
安心して「いってらっしゃい」のメールを送った。
すると、出発は明日とのこと。
まぬけだなあ。
春の嵐の朝に出発するのは、中野さんらしいなあと思い込んでいたのだ。
朝からあちこち掃除。
東京から帰って、はじめて掃除機をかけた。
さあ、すっきりしたところで、ビールの原稿の続きを書こう。
きのうがんばったおかげで、いいところまで来ている気がする。
お昼にばたばたしないよう、お弁当も詰めたし(きんぴらごぼう、ほうれん草のおひたし、ししゃも、ゆうべのご飯)、だしもとってある。
亜由美さんにいただいた絹さやを、たっぷり入れたお味噌汁にする予定。
風はやんできた。
さあ、がんばってやってしまおう。
夜、お風呂から出て、日曜日に見た坂本龍一さんのドキュメントをNHKプラスでもういちど見た。
亡くなるまでの最期の記録。
やっぱり、ものすごくいい。
静かで、親密で。
そして、なんてかわいらしいんだろう。
フランス人の女の歌手の歌を聞きながら、両手を鼻に当て、指揮をするみたいに小さく動かし、泣きそうになる場面(食卓にお弁当みたいなもがいろいろ並んでいた)が大好きだった。
痩せて、たぶんもうあまりごはんが食べられないようになっていて。
なのに、音楽に対しては少しも枯れず、かえってどんどんみずみずしく透明になっていく。
本当に、死ぬまで、音楽そのものみたいな人だったんだな。
こういうのを見ると、いろいろなことが怖くなくなる。
夜ごはんは、記録するのを忘れました。

●2024年4月6日(土)ぼんやりとした晴れ

8時に起きた。
わざと寝坊した。
東京の疲れは、すっかりとれたみたい。
猫森の緑は、きのうよりもさらに伸びている。
黒っぽい木の枝が隠れてきている。
窓を開けていても、ちっとも寒くない。
この間、中野さんが「朝は小鳥の声がよく聞こえて目が覚めます。いつもより騒がしいんです。寝ていられなくて、僕も起きます」と言っていたけれど、今朝は六甲も小鳥たちがよく鳴いている気がする。
洗濯物を干しているとき、ものすごくいい声の小鳥が電線に止まっていた。
このところ声は聞こえていたのだけれど、姿を見るのははじめて。
全体的には濃いグレーなのだけど、背中が青っぽくぴかぴかしている。
尾羽が長く、ヒヨドリよりも小柄で、すっとした綺麗な鳥。
嘴を開けたり閉じたりしていたから、あの小鳥だと分かった。
双眼鏡で確かめようとしたら、飛んでいってしまった。
何ていう小鳥だろう。
今月と来月は、宿題の原稿が4つある。
今日は、いちばん早い締め切りの、ビールについての文を書きはじめないと。
2時には、文子さんとファビオと3人で家を出て「itohen」へ行くので、少しでも書き進めておかないと。
「itohen」は「四月と十月」の展覧会。4時からトークショーがあり、牧野さんと鯵坂さんが対談するらしい。青木隼人さんという方もギターで参加とのこと。
牧野さんに会うのは久しぶりだし、加藤休ミちゃんにも会える。マメちゃんもいるかもしれない。
さあ、頑張らないと。
今日も私は、朝からエプロンを巻いている。
大好き!
夜ごはんは「itohen」の近所のタイ料理屋さんで。生春巻き、鶏の唐揚げ、ベトナム風の混ぜご飯、カオマンガイなど。ビール&ワイン。

●2024年4月5日(金)晴れ

8時に起きた。
猫森の枯れ木の若緑の小さな葉は、東京に出かける前よりもずいぶん伸びている。
ゆうべ東京から帰ってきたときには、タクシーの窓から満開の桜が見えた。
バス通りも、龍の神社も、坂道のも、みな見事な満開。
きのうは、料理家の渡辺廉啓さんのところに、「となりのオハコ」の取材に行った。
川原さんも一緒に。
楽しくて、おいしくて、私たちはふたりとも渡辺さんの魅力にすっかりやられてしまい、取材後も興奮冷めやらず、東京駅のサントリーバーでハイボールを飲みながら、教わった料理のおさらいをしていた。
ふたりとも、すぐに作りたくて。
私の走り書きのレシピは、自分でも読み取れないほど字が汚いけれど、記憶が新しいからどうにか読める。
そして川原さんも、渡辺さんの一挙一動をかなりよく見ていたらしく、彼の声や動きをふたりで思い出しながら、ああ言ってたよねとか、こうだったよね、などと言い合いながら進めていった。
川原さんはイラストを描き、順を追ってくれた。
頭の整理がされるし、すごく分かりやすい。
レシピやエッセイを書くときに、とっても参考になりそうなので、写真を撮らせてもらった。
うちに着いたのは、10時半くらいだったかな。
お風呂に入ってすぐに寝たのだけど、なんだか眠りが浅かった。
なんとなく、自分がどこにいるのか分からないような感じだった。
このたびの川原さん宅は、2泊だけだったけれど、着いたその日に井の頭公園に桜見物にいって、買い物をして帰り、ふたりで料理しながらポルトガルのワインで乾杯した。
何を作ったんだっけ。
牡蠣に粉をまぶして、前に川原さんが牡蠣のオイル蒸しを作った残りのオイル(にんにくやローリエ、牡蠣のうまみがよく出ていた)にオリーブオイルを加え、じくじくと焼いたもの。そのまた残りのオイルで、そら豆を薄皮ごとゆっくりと焼いた。それと水茄子のサラダ(手で割いてオリーブオイルと塩)。
川原さんが作ったのは、きゅうりの薄切りサラダ(ヴィネグレットソース)、トマト(室温で熟成させたそう)、タラと白ねぎのマリネ(タラは粉をはたいてカリッと揚げ、ねぎはじりじりと焼いてバルサミコ酢のソースで和え、生の菊菜をのせていた)。
翌日は、川原さんの部屋で、アノニマの村上さんと打ち合わせ。
そのあと電車に乗って、雨のなか「どんぐり舎」のコーヒー豆を買いに西荻に行ったり、八百屋さんでゆでたての筍やおいしそうなニラを買ったり。
その日の夜ごはんは、筍と豆腐の薄炊き、姫皮のきんぴら(炒りごまたっぷり)、ニラの塩炒め(豚バラ薄切り肉に塩を多めにまぶし、しばらくおいて即席塩豚にしてからごま油でニラと炒めた)、パクチー&ねぎ醤油(香菜と細ねぎ刻んで空きビンに入れ、醤油、きび砂糖少し、ごま油を加えてよく混ぜた。香菜はねぎの5倍くらいの量)、土鍋で炊いたご飯。
そうそう。村上さんとの打ち合わせの前には、お昼ごはんに平麺の中華焼きそばも作った。
具は厚揚げ、人参、菊菜の軸、長ネギの細切り。味つけは添付のソースを1袋半に、オイスターソース。
トマトとかき卵のスープ添えもおいしかった。
しっかり食べてから打ち合わせをし、西荻に出かけたんだった。
ふたりでいると共同生活みたいになって、ロシアやウズベキスタンを旅していたときのことを思い出す。
宿題のビールについての原稿も、書きたいことが浮かんできた。
今日は、のんびりと片づけをしたり、ポストにたまっていた書類の整理をしたり。
渡辺さんのお店の2階にある「エプロン商会」で買った、滝本さんのエプロンが嬉しくて、朝からずっと巻いている。
ギャザースカートみたいな腰巻きエプロン。
人生初のリバティープリント。おばあちゃんになっても似合いそうな、細かな赤のギンガムに、青い小花模様が散らばっている。
夕方、亜由美さんが野菜をいろいろ持ってきてくださった。
文子さんの分もあるので、3人でアペリティーボ(亜由美さんは車なので、グレープフルーツジュースの炭酸割り)。
亜由美さんと文子さんのお喋りに花が咲いている。私の知らない間に、仲良しになっていたんだな。キッチンに立って、塩むすびをにぎりながら聞いているのが、じんわり嬉しかった。
夜ごはんは亜由美さんと。鮭粕汁(即席塩鮭、大根、椎茸)、塩むすび(炒りごまをたっぷりまぶしたものと、焼き海苔)。
文子さんとファビオにもお裾分けした。

●2024年4月1日(月)晴れ

朝、中野さんをお見送りがてら、海の見える公園まで坂を下りた。
坂のとちゅうの桜の木は、もうほとんどの蕾が開いていた。
きのうは電車を乗り継いで長田に行ったのだけど、いつもいちばんに開く龍の神社の桜も、六甲の街の桜もまだ。
ここのがいちばん早いみたい。
坂を上って帰ってきたら、文子さんとファビオがマンションの玄関から出てきたところだった。
荷物をいっぱい持っている。
今日からふたりは、大阪の実家へ。
中野さんも帰ってしまったし、なんだかちょっとぽつんとしてしまうけれど、その淋しさもまたいい。
明日から私は東京だし、中野さんももうじき展覧会のために山梨へ旅に出る。
春は、新しいことがはじまる季節。
私の東京行きは、「となりのオハコ」の取材のため。
晴れるのは明日だけで、しばらく雨が続くようなので、ちょっと早めの新幹線で来て、桜見物に行かない?と、川原さんに誘われている。
朝起きたときの様子で決めようと思う。
もうじき6時。
陽が落ちはじめ海は、今、最高に青い。
夜ごはんは、チゲ鍋(いつぞやの人参と蕪のポトフの残りにキムチ、豆腐、ヤンニンジャン、味噌を加えた)、しらす小どんぶり。
ちかごろ私は、コリアンブーム。 

●2024年3月29日(金)曇りのち晴れ、風強し

明け方に、窓を打つ大雨と大風。
ぐっすり眠って、目が覚めたら7時半だった。
朝になっても風は強いまま。
朝ごはんのヨーグルトを食べながら、流れゆく雲を見た。
ピュルピュルゴーゴーヒューヒュー。
猫森木も揺れている。
今日はいよいよ、新しいプロバイダーに申し込みをする。
本当はきのうの夕方でもよかったのだけど、この間も文子さんたちのところに夕飯どきにおじゃましてしまったし、新しいことをするのは朝がいいと思って。
文子さんは今朝早くにまた大阪に帰ったので、自力で申し込みをしないとならない。
でも、ファビオがいる。
翻訳アプリで調べ、ファビオにメールした。
It’s better to do new things in the morning.
いい言葉。
なんだか格言みたい。
覚えたいのでノートに書いた。
もしも今日、インターネットが開通したら、メールが繋がらなくなってからちょうど1ヶ月。
果たして、うまくいくだろうか。
この1ヶ月はずっと、七転び八起きだったから、期待しすぎないようにしよう。
でも、どうか、うまくいきますように。
10時になったら、ファビオの部屋をノックする約束。
11時半から歯医者さんなので、帰ってきたらすぐに食べられるようにお弁当(牛そぼろ、いり卵、ほうれん草のお浸し、きんぴらごぼう)も作った。
10時。ファビオのところで、プロバイダーの申し込みをした。
クレジットカードの入力を間違え、ちょっと戸惑ったけれど、どうにか自力で完了。
ヘルプセンターに問い合わせたら、設定の仕方はパソコンのメーカーに尋ねてくださいとのこと。
11時に家を出て歯医者さんへ。
桜の花は、きのうよりもさらに開いていた。
ユキヤナギは満開。
帰ってすぐにお弁当をかっこみ、パソコンの設定にとりかかるも、ちっともうまくいかない。
アップル・サポートセンターに電話をしても根本的なところがおかしいようで、いちどファビオを呼びに行って、部屋に来てもらった。
一緒にいろいろ試し、考えてくれたのだけど、何をやってもダメでもうお手上げ。
ファビオが帰ってから、もういちどサポートセンターに電話をしたら、受けてくれた女性の方がとても親切だった。
ひとつひとつ、手を取るように教えてくださる。
おかげで、ようやくいろいろな意味が分かってきた。
それでも、まだ繋がりはしなかったのだけど、何がおかしいのかがはっきりと分かった。
最後に、感謝の気持ちを伝えながら、「パソコン用語もよく知らずに、素朴な質問ばかりして申しわけなかったです」とその女性に伝えたら、「もう一息ですよ」と励まされた。
それで、もういちどプロバイダーに電話をし、入力すべき情報をつきとめた。
そしたらスイッと繋がった。
思わず缶ビールを持ってファビオの部屋をノックし、小さく乾杯した。
昔は電話をかければ、分からないことは何でも答えてもらえたのだけど、今は「ホームページを確認してください」と音声に言われ、待っても待ってもなかなかオペレーターに繋がらないのだ。
この1ヶ月間、文子さんとファビオに助けてもらいながら、どうにかこうにかここまで来れたことが、こんなに嬉しいとは思わなかった。
お風呂から上がっても、嬉しさがじんわりと込み上げてくる。
なんだか胸の辺りがぽーっとしているのだ。
ああ、パソコンやインターネットは、私にとってよほど大切なものだったんだ。
ようく分かった。
夜ごはんは、けんちんうどんの残り(大根、ごぼう、しめじ)。

●2024年3月28日(木)晴れのち曇り

朝のうちは晴れていたのに、だんだん雲が厚くなってきた。
暖かいような、でも薄着になるとちょっと肌寒いような。
このところ雨続きだったけれど、きのうはとってもいいお天気だった。
それで、ひさしぶりに坂を下りた。
坂のとちゅうの桜は蕾が膨らんで、黄緑色になっていた。
ピンクがのぞいている枝もあった。
海は青く、あちこちから花の匂いが届いて、川の水もどうどうと流れる。
それはこのところの大雨のせいだけど、水が澄んでいて、なんだか雪解け水みたいだった。
銀行や郵便局の用事もすべて終え、買い物をして帰ってきた。
今日は、朝からNTT に電話。
またひとつ、進んだ。
セーターも洗った。
午後からは、丹治君と電話で本(「毎日のことこと」)のためのやりとり。
あちこち掃除して、きんぴらごぼう、ポテトサラダを仕込み、休ミちゃんが送ってくれた酸っぱい夏みかんで、マーマレードの第2弾。
マーマレードは皮をゆでるところまで。
夜ごはんは、炊き立てのご飯でお弁当にした(きんぴらごぼう、即席塩鮭、ほうれん草のお浸し、ポテトサラダ)。赤だし味噌汁(しめじ、豆腐)。

●2024年3月24日(日)明るい雨

きのうは急に誘われて、文子さんとファビオと雨のなかを長田にドライブに行った。
古道具屋さんに行くというのでついていったのだけど、メキシコの椅子に私が一目惚れ。2脚並んでいたのを二つとも買った。
赤っぽい丈夫な木で作られた、教会で使われていたような、学校や図書館で使われていたような椅子。
椅子というより腰掛けという感じ。
二つはほとんど同じ形なのだけど、背もたれの飾り板の幅が違ったり、彫り位置が違ったりする。
ヨーロッパの教会の椅子は質素だけれど、メキシコらしい明るさが混ざった、土着の匂いのする素朴さ。
形も、木の感じも、座り心地も大好き。
ゆうべ、古道具屋さんの若者が運んでくださったので、今朝はそのひとつに座って、霧にけぶる海を見ながらヨーグルトを食べた。ひとつはテーブルにして。
長田のキムチ屋さん(というより、お惣菜屋さんだろうか。韓国の下町にありそうなところだった。文子さんによると、土間の厨房に大きな蒸し釜があったそう)で、蒸し豚、豚足、キムチ、ヤンジンジャンを買ってきたので、今日は3人で春場所の千秋楽を見ながら、うちでごはんを食べようということになっている。
私は朝からあちこち掃除をして清め、『新装 野菜だより』にサイン。
新装版は、生まれ変わったように白く清々しい姿。
帯の白も、洗い立ての体操服のように眩しい。
タイトル文字も大きくなって、なんだか元気そう。若返ったような気がする。
2005年に出した本が、こうしてまた新しい姿になって本屋さんに並ぶ。
ありがたい気持ちでいっぱいだ。
私の娘(孫かもしれない)の世代の子たちに、手に取ってもらえたら嬉しいなあ。
「料理をはじめる前に」で書いた初版の言葉は、村上さんと相談して少しだけ書きかえた。
「この本は台所の近くに置いて、どんどん自由に使いこんでいただけたら嬉しいです。余白にメモを書きこんでもいいし、しみをつけてもいい。使われることで汚れていくのは、料理本の幸せだと思います」
ビニールカバーはなくなったけれど、今も同じ気持ちです。
さて、春場所。
きのうケガをして、もしかすると休場になるかもしれないと危ぶまれていた尊富士が、土俵に上がる‥‥とテレビから聞こえたとき、ちょうどファビオが蒸し豚、豚足、キムチを乗せたお盆を持ってやってきた。
相撲観戦は大盛り上がり。
台所にテレビを向け、チヂミ(文子さんが部屋で焼いてきてくれた・春菊、セロリの葉、豚肉)&ニラソース(文子さん作)をつまみながらビールやハイボールを呑んだ。
豚足(半分に割り、冷たいまま細切りにしたものと、セイロで温め直してフライパンで香ばしく焼いた)と、キャベツとセロリのサラダも。
相撲が終わってから、窓辺でごはんを食べた。
ファビオの蒸し豚の切り方は、ローストポークのよう。
私だったら、レタスに包みやすいようにもっと小さく切ってしまう。
めいめいがお皿に大きいのをペロンとのせ、ナイフで切りながら食べたのが、外国の感じがしてとてもよかった。
豚肉はゆでたことしかなかったけれど、蒸すとジューシーかつ噛みごたえがあって、最高においしいな。
冷たいまま食べずに、ラップに包まれた塊のまま、火を止めたセイロで温めたのもよかったとも思けれど、あのお惣菜屋さんの蒸し豚が特別なのだ。
夜ごはんは、ポッサム(蒸し豚、サニーレタス、青じそ、 白菜キムチ、ニラソース、ヤンニンジャン)、豆もやしの炊き込みご飯(ニラソース)。

●2024年3月21日(木)ぼんやりした晴れ

6時ちょっと前に起きて、久しぶりに「中学生の基礎英語1」。
終わって、カーテンを開けたら 朝陽に照らされながら小雪が舞っていた。
布団をかぶり、しばし眺める。
前の建物の屋上にもうっすら積もって、真っ白。
街の方の屋根も、白くなっている。
ゆうべのうちに降ったんだな。
太陽が昇ったら、雪はやんだ。
今朝は、水道の水が氷みたいに冷たい。

きのう焼いたブリ(ディル塩麹漬けの)を、お昼に白パンでサンドイッチにしようと思いつき、キャベツとセロリを塩もみしておく。
しんなりしたら赤ワインビネガーと粒マスタード、ハチミツをほんのちょっと。ポテトサラダ(手作りマヨネーズ、玉ねぎみじん切り)も挟む予定。
さあ、今日からまた『帰ってきた 日々ごはん16』の粗校正に向かおう。
その前に、「となりのオハコ」のゲラ校正。午後に宮下さんからお電話をいただくので。
洗濯物を干しているから、窓は開けているのだけれど、パソコンを打つ指がかじかむ。
新しい私のMacは、まだインターネットも繋がらないし、これまで使えていたソフトが使えなくなっていたりもするけれど、立ち上がりが驚くほど早い。
やけに寒いなあと思ったら、また雪が降ってきた。
窓が白い。でも、明るい雪だ。
4時までやって、『帰ってきた 日々ごはん16』の粗校正はあと2ヶ月を残すところ。
あちこち掃除機をかけ、きれいさっぱりしたところで、相撲観戦をしながら窓辺でビール&柿ピー。
ずいぶん日が伸びたなあ。
夜ごはんは、切り干し大根煮、蕪の葉のお浸し、大根おろし(ポン酢しょうゆ)、ふわふわ納豆(卵白)、味噌汁(蕪、豆腐)。お腹がいっぱいなのでご飯はなし。

●2024年3月20日(水)雨のち、晴れたり曇ったり

ゆうべは3時くらいに雨が降りはじめた。
窓を開け、空気の匂いを嗅いだ。
地面の生ぐさい匂い。
あちこちで生き物たちがうごめいている、有機的な匂い。
冬とはまったく違う、春の雨の匂いだ。
そのうち雨はどんどん強くなり、窓を打ちつける大きな音。
風も吹き荒れ、大嵐となった。
すっかり目が覚めてしまい、明け方にようやく眠れたので、起きたら8時。
大寝坊。
今日は春分の日なのだな。
朝からマーマレードの続き。
煮上がったので、お昼ごはんのあとに郵便局まで散歩した。
お天気雨の降るなか、大風に煽られながら。
坂の下の海は青く、さざ波立って、白ウサギがたくさん飛んでいる。
どこかで虹が出ていそうに明るい空。
でも、指がかじかみそうなくらいに寒い。
郵便局はお休みだった!
そうか、春分の日は祝日なのだった。
雨風が強くなって傘がひっくり返るので、パン屋さんと「コープさん」で買い物し、タクシーで帰ってきた。
帰りつき、しばらくすると窓が灰色。
雨は霙に変わった。
そしてまた晴れ間が出て、今は海が青い。
日暮れどき、風花が風に巻き上げられている。
夜ごはんは、野菜たっぷりスープ餃子(キャベツ、人参、もやし、エノキ、ほうれん草)。

●2024年3月19日(火)曇り

明け方、急に寒くなって毛布を1枚出し、羽毛布団の上にかけた。
朝になったらそれほどでもない。
寒いんだか、暖かいんだか分からないような感じ。
ベッドの中で、新しいプロバイダーのことをいろいろ調べた。
少しずつだけど、分かってきた気がする。
きのうの朝は中野さんが帰ってから、文子さんに手伝ってもらいながら、NTTの名義変更のための書類を添付して送った。
夕方にまたお邪魔して、新しいメールアドレスの手続きをした。
アップルIDも私の名前に変え、パスワードも決めた。
プロバイダーの申し込みは、名義変更の完了書類が届いてからすればいいので、今日から私は新しいMacで仕事をはじめよう。
『帰ってきた 日々ごはん16』のパソコン上での粗校正。
新しいMacに変わって、どういうわけか縦書きに変換ができないのだけれど、横書きのままやっている。
今回は、2021年7月からの半年間。
3年前の夏。
蝉時雨、突然の夕立、お天気雨。
『高山なおみの神戸だより 海の見える小さな台所から”6年目の夏”』の撮影。
懐かしい日々の記録を読み込んでいたら、このところのパソコン騒動でフワフワと落ち着かなかった心持ちが、どんどん平らになってきた。
とん、とんと進んで、2ヶ月分が終わった。
気づけばもう夕方。
空は白く、海も灰色。
なんだか小雪が舞いそうなくらいに寒い。
ふと思い立ち、マーマレードを作りはじめた。
今日は皮を刻んで、茹でるところまで。
夜ごはんは、きつねうどん(油揚げ、蕪の葉、お麩、ねぎ)。

●2024年3月16日(土)快晴

ゆうべは、鼻が詰まって寝苦しかった。
中野さんはもうとっくに起きて、コーヒーのいい匂い。
私は7時に起きた。
Macの初期設定は、古い方のパソコンのバックアップをしておいたおかげで、わりとすんなりできた。
ただ、インターネットはやっぱり通じない。
プロバイダーとの連絡も、ちっともできない。
それで、いろいろ試しているうちに、また私がどこかの設定をいじってしまい、ファビオの部屋のWi-Fiさえも繋がらなくなってしまった。
アップルサポートセンターの人に電話をし、ようやくもとに戻ったけれど。
そのあとテーブルにファビオと二人並んで、グーグルの翻訳アプリで通訳をしながら、まず、これまでのプロバイダーとの退会手続きをした。
私は新しいMacのマウスの指の触れ方がわからず、書いていた書類が消えてしまったりもしながら、何度もやってようやくできた。
そしてファビオは、「今日私たちがやったこと」と「次のステップ(これから私がやるべきこと)」をまとめてメールで送ってくれた。
私ひとりでできることは先にやり、文子さんが大阪から戻ったら、教わりながらやっていこうと思う。
鼻水がとめどもなく出てくる。
スギ花粉は最盛期だし、ヒノキの花粉も飛びはじめたとのこと。
いつものようにおにぎりを作り、朝ごはんをしっかり食べ、中野さんは9時半に出かけていった。
壁画制作も今日で最後、今日は11時からイベントがあり、子どもたちがやってくるのだそう。
私は布団を干したり、洗濯物を干したり。
ポカポカと暖かいので窓を開けている。
あんまり鼻水が出てくるので、マスクをしてみたら、スパッと止まった。
これ、いいかも。
早い夕方、文子さんが大阪から帰ってきた!
中野さんも早く終わって帰ってきた!
窓べでハイボール(私)、中野さん(ビール)と柿ピー。
夜ごはんは、焼きそばライス(キャベツ、豚肉)、餃子の具の小さいハンバーグ。

●2024年3月13日(水)晴れ

ぐっすり眠って、起きたら7時半だった。
おもしろい夢をみた。
長編だったから、トイレにも起きなかった。
中野さんはもうとっくに起きて、コーヒーを淹れている匂いがする。
今日は3月13日、1が3に挟まれているからサンドイッチの日だそう。
朝のテレビで、パン屋のおばあさんとおじいさんが、厚焼き卵のサンドイッチを作っていた。
そこは、街の人たちに愛され続けている懐かしい感じのパン屋さん。
続いて『ブギウギ』を見た。
私があんまり遅いので、朝ごはんは中野さん作。
炒り卵のオープンサンド、パンデビス(文子さんにいただいた)のシャルシッチャ(ゆうべの残り)のせ、トマトとレタスのサラダ(ゆうべの残り)。
しっかり食べて、たっぷり洗濯。
あちこち掃除。
中野さんの壁画制作は、月、火とやって、今日と明日は中休み。
そして今日は、いよいよ新しいMacがやってくる。
勉強のために小さいノートも支度した。
Macは夕方の4時くらいに届いた。
箱から取り出し開け、フタを開いたら「こんにちは」と声がし、いきなりはじまった。
ドキドキするので、初期設定は明日の朝にすることにして、車で「御影クラッセ」に買い物。
夜ごはんは、焼き餃子(豚ひき肉、椎茸、キャベツ、ニラ、にんにく)、ご飯。

●2024年3月10日(日)晴れ

このごろは、6時にはもう明るくなる。
カーテンを開けなくても、それが分かる。
今朝の陽の出は6時20分くらい。
オレンジの玉。
昇る位置も、ずいぶん建物の方に近づいてきた。
季節はどんどん動いているのだな。
ラジオの天気予報を聞きながら、うとうと。
太陽の光がまっすぐに当たり、目の中が赤くなる。
その温かな赤が、体にいき渡るように深呼吸をしてから起きた。
さあ、今日は美容院に行かないと。
あちこち掃除。
窓を開けていても、ちっとも寒くない。
この間、ファビオがおもしろいことを言っていた。
それは、こんなこと。
私たちがはじめて出会ったのは、ふたりがこのマンションを下見に来ていた日。
「ここはいいところですよ。景色もいいし、管理人さんも親切なんです」と、思わず声をかけたのだけど、私は文子さんとファビオの目をまっすぐに見ていて、まるでスキャンされているようだったそう。
あのときの感じは、言葉にはできないのだけれど、彼らの印象にはっきりと惹かれるものがあったからだ。
それが今、こうして急速に近しくなり、毎日のように顔を合わせ、何でも話せる間柄になっている。
「あのとき、どうしてひと目見て分かったんだろう」と聞いたら、ファビオが言ったのだ。
「僕も子どものころからずっとひとりでいたけれど、なおみさんもそうでしょう?文ちゃんもそう。きっと僕らは、小さいころから自分の心の奥をよく感じてきたから、分かるんだと思う」。
そんなこと、はじめて聞いたから驚いた。
でも、そんな気がする。
なるほどなあ。
とても物理的な考え!
私はよくいろいろな人から、「高山さんは、人を引き寄せる力がありますね」と言われる。
それが、なんだかちっともピンとこなかった。
そんな力はないもの。
でも、未来のことは分からないけれど、はじめて会った目の前にいる人の感触を、曇りのない実感で確かめることはできる。
スイセイに出会ったときも、中野さんに出会ったときも、このマンションに出合ったときも。
きっと、そういうことなんだと思う。

中野さんはまだ風邪が完治していないので、私だけ小さいハイボール。
夜ごはんは、ハンバーグ(にんじんのクミングラッセ、ほうれん草炒め)、味噌汁(豆腐、なめこ)、昆布の薄味漬物、たくわん、ご飯。
『サザエさん』を見ながら食べた。

●2024年3月9日(土)晴れ一時雪

きのうは「気ぬけごはん」を書き上げ、3時過ぎにはファビオの部屋に行って、ぶじにお送りできた。
そして、大阪の実家に帰省していた文子さんが、ひと晩だけ戻ってくることになった。
嬉しくて、アペリティーボ。
うちにあるものでささっと作ったおつまみは、ハムのマリネ(玉ねぎ、パプリカ、ケッパー、赤ワインビネガー、粒マスタード、オリーブオイル)、にんじんの塩もみサラダ(手作りレモンマヨネーズ)、おにぎり(肉みそ、昆布の薄味佃煮)。
白ワインとパソコンを持っておじゃました。
いろいろな話をしているうちに、あっという間に10時。
部屋に戻ってお風呂に入り、パタンと寝てしまった。
今朝はわざと寝坊した。
ちょっと二日酔いだったし、このところ抱えていた締め切り原稿がすべて終わったので。
9時ちょっと前に起きて、カーテンを開けたら、海が盛大に光っていた。
すごく眩しい。
光をたっぷり浴びてから起きた。
さて、今日は確定申告の最後の支度。
12日に税理士さんがいらっしゃるから、ぎりぎり間に合った!
午後になって、なんだか窓が白いなあと思ったら、雪が舞っていた。
ふわふわとしたけっこう大きな雪。
2階に上って窓を開けた。
ちっとも寒くない。
ちょうどそのとき、文子さんが荷物を抱えて下の道を通った。
「行ってらっしゃーい!」と私。
「ファビオは家にいるから、またいつでも行ってな」と、文子さん。
週末は仕事のメールが届かないから、また来週からお世話になろう。
新しいパソコンは、4月7日以降にならないと届かないと言われていたので、覚悟をしていたのだけれど、もう発送されたとのこと(アメリカから?)。
けっきょく13日に届くことになった。
明日はまた中野さんがいらしゃって、しばしの共同生活。
月曜日から壁画制作がはじまるので。
夜ごはんは、きのこ雑炊(しめじ、大根、ニラ)、鰯(にんにく、ケッパー、バジル・この間パスタにした残り)のオムレツ(パプリカ、ほうれん草、チーズ)。

●2024年3月7日(木)曇り時々晴れ

久しぶりに陽の出を見た。
今朝は、雲の隙間からほんのぽっちりのオレンジだったけれど。
しばらく待っていたら、雲のうんと上から顔を出した。
光を浴びて起きる。
さあ、今日は「気ぬけごはん」に集中しないと。
遅れていた仕事を進めていかないと。
私のおばあちゃんパソコンは、朝立ち上げるときにはとってものろのろだけど、しばらくやっている間に普通の速さに近づいてくる気がする。
テキストを書いているときには、これまでと変わらないスピード。
デスクトップに並べてあった写真やファイルを整理して、スッキリさせたのも関係があるんだろうか。
きっと、ある気がする。
こんなに違うとは。すごいことだ。
きのうの朝だったかな、中野さんに言われたこと。 「新しいパソコンが来たら、生きものだと思えばいいんです。血の通った、自分と血肉をともにしているものだと思ったらいいんです。そうしたら相手のことを分かろうとするから、できなかったことも、できるようになっていくんじゃないかな」
夜ごはんは、ほろふき大根の煮汁のお粥(大根も小さく刻んだ、卵、白みそ)。

●2024年3月6日(水)曇り

このところずっと、パソコン騒動の渦中にいたけれど、今日からようやく落ち着いた。
状況は変わらないのだけれど、対処方が分かってきた。
まず、私は新しいMacを注文することができた。
そこにいき着くまでには、長い道のりだったけれど。
文子さんが、私の仕事内容に見合った機種を選んで、スクリーンショットに残してくれたおかげ。
月曜日、三宮の電気屋さんには、私ひとりで行った。
中野さんは電気屋が苦手だし、「ユザワヤ」で買い物があったので。
そこは、パソコンが苦手な私にも分かるよう、とても親切に対応してくださった。
説明を聞いて、ひとつひとつ納得していった。
文子さんが勧めてくれたモデルは、アップルに注文しなければならなくて、届くまでにどのくらいかかるかも分からないということだった。
それで、その店の見本でいいなと思ったものを買おうとしたのだけれど、在庫がなかった。
そのあと、中野さんと「ギャラリーVie」に絵を引き取りに行って、その足でハーバーランドにある大きな電気屋さんに行こうとして、電話をすると、やはり在庫がないとのこと。
それで、思い切って大阪の「アップルストア」に行った。
心斎橋の駅からすぐのところなのに、私は反対側に行ってしまい、ぐるっと遠回りをしてようやく着いた。
そこでも苦手ないろいろがあったけれど、文子さんが勧めてくれたモデルをどうにか注文することができた。
4月7日以降に届くとのこと。
きのうは、このところの不具合について、中野さんとひとつひとつ検証していった。
ふたりともパソコンが苦手ながら、用語を調べるところから。
ひとつひとつを読み込み、確かめながら進んでいくと、おかしなところが予測できるようになる。
その上で、アップル・サポートセンターに電話をした。
中野さんは隣に座って、私が言葉に詰まると助け船を出してくれた。
途中でインターネットを繋げるために、パソコンと停滞電話を持って6階の文子さんの部屋にも行った。
文子さんは出かける前だったのに、私の代わりにサポートセンターの方の言うことを聞いて進めてくれた。
部屋に戻ってきて、また別のことを試し、やっぱり繋がらないので電話を切った。
それでようやく、すべては私のパソコンが古いせいだからなのかもしれないという考えに至った。
きのう、ビールを飲みながら中野さんに言われたこと。
「なおみさんは、苦手なことを苦手だと思っていてもいいけれど、ひとつひとつ、分からないことは誰かに聞いたり、調べたり、それを記録したりして、確かめながらやっていけば、そのうちにできるようになっていくんじゃないでしょうか。いままでできていたことができなくなるんじゃなくて、できなかったことが、できるようになっていくんです」 「うちの父親は、これまでできていたことがどんどんできなくなっています。ネジを外すのもできなくなったんですけど、僕はこのごろ、すごいなあと思うんです。はじめは僕に頼んでいたけれど、断っているうちに、自分で工夫をするようになったんです。今はテコの原理を使ったりして、できるようになりました。ゆっくりですけどね」
新しいパソコンが届いたら、私はノートを作ろう。
設定の仕方をサポートセンターに教わりながら、これまで知ろうとしなかったパソコン用語も覚えていこう。
今朝は、中野さんが帰る前に、車でJA御影に連れていってもらった。
野菜やお肉をたっぷり買い物。
しばらくこもって、「気ぬけごはん」を書かないとならないから。
今日は、ファビオの部屋を訪ね、Wi-Fiをお借りしてメールを受け取り、それをプリントアウトして赤字を入れ、また送るというのをした。
ファビオの部屋に2度行った。
その度に英語を話すのだけど、文子さんがいないから、どうにかして伝えようとがんばる。
英語の勉強になるし、とても楽しい。
そして私は携帯電話でメールを打つのも、必要に迫られて前よりも少し早くなった。
ファビオとも英語でラインをし合っている。
できないことがひとつあると、できるようになることが二つ、三つと増えていく。
おもしろいな。
とにかく今は、おばあちゃんパソコンで、これまで通りに原稿が書ける。
そのことが、本当にありがたい。
あと1ヶ月弱、動き続けてくれますように、よろしく頼みます。
夜ごはんは、ほろふき大根(肉味噌)、いくら(おとといの残り)、焼き海苔、かき卵汁(いつぞやの)、ご飯。

●2024年3月4日(月)曇りのち晴れ

6時ちょっと過ぎに起きた。
「中学生の基礎英語1」は、後半だけ聞けた。
先週は、メールがいきなりつながらなくなってしまい、バタバタとしていた。
「パソコン相談室」に持っていって、一度良くなったのだけど、色々試しているうちに、またダメになってしまった。インターネットさえもつながらなくなった!
それでもきのうは、原稿を一つ書いた。
私のパソコンは、考えてみればもう15年くらい使っている。
たしか『ホノカアボーイ』の撮影で、ハワイ島に持っていけるように買った。
もう、おばあちゃんなんだなあ。
というわけで、今週アップする分(今日と水曜日の日記)は、文子さんのお部屋から、Wi-Fiをお借りしてスイセイに送ろうと思います。
届きますように。
朝、8時半くらいに文子さんが来てくれることになってるので、支度をしなくっちゃ。
今日は、中野さんが車でいらっしゃる予定なので、パソコンを買いに行くつもり。
文子さんとファビオは、Macのいろいろがとても詳しいことが分かったので、教えていただく。本当にありがたい。
ではここまでで、今日の日記は終わりにします。

●2024年2月28日(水)晴れ

このごろはだいたい5時に起き、ラジオをつけてうとうとする。
レジオの声が遠くなったり近くなったり。
今朝はうとうとし過ぎて、「中学生の基礎英語1」を聞きのがしてしまった。
次の番組から聞いて、またうとうと。
けっきょく7時のニュースを聞いてから起きた。
海が幻のように光っている。
大阪の方まで白く、光の幻。
でも、とってもいいお天気。
朝風呂にゆっくり浸かり、お湯を抜く前にスニーカーを洗って、そのままバスタブの掃除。
バスルームの床やトイレまでごしごしこすって、きれいさっぱり。
裸のままこんなのができるということは、ずいぶん温かくなったということ。
そして、このところうんうんいいながら向かっていた「となりのオハコ」の原稿が、きのう書き上がったから。
朝からメールがつながらない(ブラウザが工事中とのことだけれど)。
お昼に新品のフライパンでパスタの残りを温めようとして、お鍋のふたをのせたら、ピッタリと隙間なくはまってしまい、取れなくなった。
お湯をかけたり、ボウルのお湯で煮たり、根気よく弱火にかけたりしているうちに、ポンッと音を立てて取れた。
中が真空状態になっていたみたい。
このフライパンは、文子さんのニューヨークのお友だちがアメリカのネットで買ってくださったとてもいい もの。
きのう、文子さんが持ってきてくれた。
はじめて使う前に、私は洗礼を受けた。
おかげで、フライパンの新しい匂いが取れた気がする。
さあ、気を取り直して、レシピを書こう。
夜ごはんは、卵のお粥(奈良漬け)。

●2024年2月25日(日)雨

しっかりとした雨が降っている。
静かな日曜日。
天気予報によると、「冬の寒さに逆戻り」とのこと。
朝風呂にたっぷり浸かり、5本指の靴下を重ねばきして、厚手のスパッツとレッグウォーマー。
それでも足もとが冷える。
さあ、今日は文を書く日和。
「となりのオハコ」の原稿に向かおう。
きのうたっぷり遊んだおかげで、集中できそう。
5時までがんばって、文子さんとファビオの部屋にアペリティーボ。
共働学舎のチーズ、ピーマンマリネ(肉厚のピーマンを厚切りにして塩をふり、軽くしんなりしたらディル、赤ワインビネガー、バルサミコ酢、はちみつ)、ウイスキー、炭酸を持って。
前菜はチーズとクラッカー、ピーマンマリネ、カンパリソーダ(飲み残しのスプマンテ入り)。
文子さんが用意してくれたのは、空豆の春巻き。
いちど部屋に戻って、冷凍してあるイタリア風ワンタンを取りにいき、揚げてもらった。
最後にいただいた、文子さんのミネストローネ(ファビオのマンマスタイル)のおいしいこと!
セロリ、玉ねぎ、にんじん、大根、小松菜、白インゲン豆、ブロッコリー。にんにくとトマトソースをちょっと、赤唐辛子もちょっと。あとは塩だけだそう。
器に盛ってオリーブオイルをまわし、パルミジャーノをふりかけて食べた。
とろりとして、やさしくて、たまらないおいしさだった。

●2024年2月24日(土)晴れ

春のように暖かい。
今日は、ユウトク君が電車に乗りたいそうで、お姉さんとふたりで急に遊びにくることになった。
私は寝坊をして8時半に起きたので、洗濯したり掃除機をかけたりと朝からバタバタ。
文子さんからもメールが届いていたのに、気づかなかった。
手作りのプリンを、玄関の赤い椅子の上に置いてくださっているとのこと。
わー、すごい!
きのう会ったときに、ユウトク君たちが来ることを伝えたから、早起きして作ってくれたんだ。
お昼ごはんは、冷凍しておいたハンバーグのタネの残りを丸めて、トマトソースで煮込み、ミートボールのパスタを作った。
ユウトク君にチーズをおろしてもらったり、コーヒー豆をひいてもらったり。
ユウトク君、最初はちょっと緊張していたようだけど、うちの床はすべるから、体を丸めてくるくる回ったりして遊んでいた。
このところ私は、確定申告のことで頭がパンパンになっていたので、そういういちいちが嬉しかった。
デザートはコーヒーとプリン。
てくてく歩いて3人で六甲道へ。
「何でそんなに電車が好きなん?形?音?」と聞くと、「うーん分からへん。音は好きやな」とのこと。
踏切のところで、阪急電車が通り過ぎるのを2本見た。
六甲道のホームでは、乗る電車を1本遅らせた。
これから特別急行が通過するから。
電車が猛スピードで通り過ぎたときと、貨物列車が通り過ぎたとき、私はこっそりユウトク君の顔を見た。
普通の顔をしているけれど、口を小さく動かしながら見ていた。
なんだか、無心だった。
すごくよかった。
どこが好きなのか説明できないくらいに、心から好きでたまらないことをしている人と一緒にいられるのは、素晴らしい。
そしてお姉さんも、待つことが当たり前のようにしてそこにいるのだ。
六甲道から三宮までJR。
電車の中ではふたりとも入り口に立っている。
神戸電鉄でも、ユウトク君はいつも立っているのだそう。
その方が外の景色がよく見えるから。
私だけ空いているシートに腰かけた。
ふたりの後ろ姿を見ながら私は、ユウトク君は景色というよりも、外が流れていくのを見るのが好きなのかもしれないと思った。
スピードにのって、体が運ばれていく感覚とか。
次に阪急電車に乗り換えたとき、「音が静かやなあ」とユウトク君が言った。
本当にその通り。
そうか、走る音が静かなのか。
だから私は阪急電車が好きなんだな。
新開地駅の「よつばや」さんで、家族のためにピロシキを買っているのがうらやましく、私も文子さんたちにお土産を買った。
ふたりをお見送りしてから、ベンチに腰かけピロシキを食べた。
揚げたては、やっぱりおいしい。
夜ごはんは軽めに、スープ雑炊(いつぞやに土鍋で作った水炊き風スープに冷やご飯を少し。鶏もも肉、白菜、パプリカ)。

●2024年2月19日(火)曇りときどき晴れ間

今朝は、これまででいちばん暖かい気がする。
薄手のセーターでも暑いので、サマーセーターにした。
雲は厚いけれど、ときどき薄陽が差して、ぱーっと明るくなったりもする。
海は白く、春霞みたい。
窓を開けていても寒くない。
でも、夕方からまた気温が下がるようだから、靴下は重ねばき。
厚手のスパッツにレッグウォーマもつけている。
とにかく温かくしていれば、気温の変化にもついていけそうな気がして。
日中は暖かく、日が暮れると寒くなる国に来ているつもりになって。
きのうは、確定申告で必要な書類を揃えた。
もう少しで支度ができる。
今日は、メールをお送りしたり、手紙を書いたり。
掃除機もかけてさっぱり。
私のお腹は、まだくたびれているみたい。
お昼ごはんは、ゆうべの残りの南瓜のポタージュ(干し椎茸のおだし)に白菜とパプリカを加え、雑炊を作ろうかな。『ブギウギ』を見ながら食べよう。
ファビオがつるつるにしてくれたまな板を使うたびに、胸が温かくなる。
もう何十年も前にスイセイが作ってくれたこのまな板は、長年使って黒ずんできていた。
それを、私が東京に行っている間に、サンドペーパーでこすってきれいにしてくれた。
新品よりも表面がなめらかになり、目も詰まって、木のいい匂いがする。
きっと、何日もかかったんじゃないだろうか。
文子さんによると、マンションの前の道の角(バックミラーの下)で、ずっとこすっていたのだそう。
近所のおばあさんやおじいさんに、「何をしているの?」と聞かれる度に、ファビオは 包丁で切る仕草をしながら「マナイタ」と答えたんだそう。
それが楽しかったそうだ。
午後からずっと、確定申告の支度。
エクセルに打ち込んだ収入と源泉徴収額を、1月分からもういちど見直した。
計算間違いがけっこうあった。
私はこういうのとっても苦手。
でも、何度もやって、どうにか確かになった。
支払い調書が届いていない編集部に確認をしたり。
一日中やっていた。
ゆっくりだけど、ひとつひとつクリアーになっていくのは気持ちがいいなあ。
けっきょく、5時くらいまでやっていた。
夜ごはんは、チャプチェ(プルコギの残りに春雨とほうれん草を加えて炒め直した)、かき卵スープ(豆腐、茎ワカメ)、ご飯。

●2024年2月18日(日)晴れ

ぽかぽかと陽が当たり、とても暖かい。
さっき、小鳥の声がラジオから聞こえてきた。
うちの小鳥たちに混ざり、どちらが鳴いているのか分からなくなって2階の窓を開けた。
猫森からも、山の方からもいろいろな囀りが聞こえる。
ちゅくちゅくちゅぴちゅぴつくぴーつくぴー。
まだ、もう少し先になるだろうけれど、春がやってくるのだ。
ゆうべは奥の奥までぐっすり眠れた。
夜中に何度か目が覚めたけれど、そのたびにぐーっと眠りに引き戻された。
まだ眠れる、まだ眠れると思いながら8時半まで寝て、太陽の光をいっぱいに浴びて起きた。
今日はなんだか充電の日。
鋭気を養う日。
それでもゆっくり動きながら、つい新しい料理本のことを考えている。
浮かんでくる言葉をメモしたり、作りたい料理のことを考えたり。
ついこの間のように思うのなけど、青山ブックセンターでのトークショーから、もう1週間がたったんだな。
三浦さんのお話はやっぱりおもしろく、あちこちに飛んで、聞きながら私は頭の中にメモをした。
打ち上げは、渋谷の「麗郷」という台湾料理のお店。
円卓を囲んで、ひさしぶりに丹治君と美佳ちゃんともおしゃべりできた。
そのときに三浦さんがおっしゃった、私についてのひと言。
「過剰」という言葉が、あまりに自分を言い当てていて、さすがは映画の批評家さんだなあと大きくうなずいた。
三浦さんの好きなおすすめ映画も教わった。
ジョン・カサヴェテス監督の『ラブ・ストリームズ』。
「ジーナ・ローランズがいいんだよなあ。高山さんに似ています」とおっしゃっていた。
確か、そのときに「過剰」という言葉が出てきたような。
『ラブ・ストリームズ』、ぜひとも見てみたい。
こんどの新しい料理本でやりたいと思っていることは、三浦さんとお話ししたことにもつながっている感じがする。
そうそう、朗読の仕事もぶじに終わった。
スタジオブースにひとりこもり、集中して原稿を読んでいると、どんどん静まっていく感覚があった。
読むというよりも、声をのせていくというか。
言葉を声に映し、照らしていくような。
自分の書いた文章だったからかもしれないけれど、私は案外、朗読の仕事が好きなのかもしれない。
夜ごはんは、プルコギ(文子さんに教わったレシピに、パプリカ、ピーマン、しめじを加えた)、しらすの白い白和え(休ミちゃんのレシピで)、白菜のスープ、ご飯。
『まる子』を見ながら食べる予定。

●2024年2月17日(土)ぼんやりした晴れ

柱時計が5回鳴って、しばらくしてからラジオをつけた。
ベートーベンの交響曲がかかっていた。
6時からは、ウィーンの大聖堂での合唱曲。
明るくなってきたので台所に下り、コーヒーをいれた。
またベッドに戻ってきて、白んでゆく空を眺めながらコーヒーを飲んだ。
いつもの私の時間が戻ってきた。
雲が厚くて見えなかったけれど、天気予報によると、陽の出は6時42分だったそう。
2月のはじめが6時55分だったから、着実に早くなってきている。
朝からあちこち掃除機をかけた。
ようやくきれいすることができた。
東京から帰ってきたのは、14日の夜。
夜ごはんを軽く食べ、お風呂に入ってすぐに寝たのだけれど、次の日になっても疲れが取れなかったので整体に行った。
なんか、体がバラバラで、歩くのもぎくしゃくする感じだった。
青山ブックセンターでのトークショー、朗読の仕事、3つの打ち合わせ。
なかでも新しい料理本の打ち合わせが、暴れん坊だった。
4泊5日の長丁場。
川原さんちでお昼寝をさせてもらいながら、どうにか頑張ることができた。
今日は、たまっていた日記を書いたり、校正ゲラの確認をしたり。
あっという間に2時になって、文子さんとファビオとお買い物。
「MORIS」に寄って、今日子ちゃんとヒロミさんにも会えた。
ふたりとも元気そうで、うれしかった。
神戸の、心の親戚たち。
帰ってきて、しばし文子さんとお茶をした。
夜ごはんの支度をしているとき、空も街も茜色に染まり、部屋の中まで入ってきた。
2階に上って窓を開けた。
しばしのマジックアワー。
夜ごはんは、白菜と豚肉の雑炊(牡蠣の中国風佃煮の煮汁で)、じゃがいもの千切り炒め(オリーブオイル、薄口醤油、青のり)。
東京から帰ってからずっと、私は雑炊ばかり食べている気がする。
口当たりがやさしいから、つい。

●2024年2月12日(月)東京は晴れ

今朝はゆっくり起きて(朝ドラを見られなかった!)、朝風呂に浸かって目を覚まし、11時くらいにお出かけ。
西荻窪までの懐かしい道を、川原さんと歩いた。
ここを通るのは何年ぶりだろう。
『高山なおみの料理』の撮影の夜、みんなが帰ってしまっても、なかなかテンションが下がらなかった私は、ウォークマンでオザケンを聞きながら、酔っぱらって夜中に歩いた「のらぼう」までの道。
それからしばらく間が開いて、中野さんに出会ったころにも、ひとりでよく歩いた。
ということは、9年ぶりくらい? 
昔のまま残っている建物、家、空き地があった。
大きな公園も、そのままあった。
古い銭湯がなくなって、コンビニになっていたので、ちょっとだけ迷って「のらぼう」に着いた。
「のらぼう」は、テイクアウト用の出窓のコーナーが新しくできていた。
新しいメニュー、懐かしいメニュー、値段の書かれた張り紙を川原さんとじっと見た。
口の中が唾液でいっぱいになった。
買って帰りたかったし、マキオ君にも会いたかったけれど、「準備中」の張り紙。
三ちゃんのパン屋「toki doki(トキドキ)」は、「のらぼう」の小径を出てすぐのところ。
新しいビルの外階段をとんとん上がると、煙草屋さんみたいな窓があり、焼きたての懐かしいパンがいろいろ並んでいた。
三ちゃんの姿も、パンの種類も、三鷹でやっていたころとちっとも変わらない。
三ちゃんはとても元気だった。
新しいパン工房にも入らせてもらった。
部屋の広さや形、調理台やオーブンの配置も違うし、壁の色だってスカイブルーから赤に変わっていたのに、前の工房と何かがまったく一緒だった。
木枠のショーケースも、机も、道具類もそのまま持ってきて使っている。
いいなあ、三ちゃんは。
できたての揚げパンと、レーズンがぎっしり入った丸いパン、黒オリーブとチーズが挟まった、木の葉の形のカリカリしたパンを食べた。
やっぱり、すごくおいしい。
いい材料を使っていることが分かる。
今日は、「泊めてもらっているお礼に、川原さんの好きな料理を何でも作るよ。ふたりでワインでも呑みながら、一緒に食べようね」と川原さんと約束していたのだけれど、三ちゃんも誘うことになった。
帰りに「どんぐり舎」に寄ってコーヒー豆を買い、電車に乗って帰ってきた。
川原さんの作りおきのじゃがいものピュレに合わせるために、吉祥寺の駅ビルの懐かしい魚屋さんで、新鮮な鰯を買った。あと、真ダイのお刺身も。
「紀伊ノ国屋」さんでは、ステーキ用の牛もも肉と、国産の白いチーズ、カヴァ。
駅ビルで買い物をしたあと(袋に荷物を詰め手いるとき)、私は足がつり、ストレッチをしてどうにか歩けるようになった。
私たちは今日、6万歩も歩いたのだそう。
夜ごはんは3人で。前菜は、真ダイのカルパッチョ(失敗した手作りマヨネーズ、粒マスタード、ドライバジル)、スライスミニトマト&白いチーズ(フェタチーズに似ていて、とてもおいしかった)、蕪と小松菜の茎のオリーブオイル蒸し、紫キャベツのサラダ(塩もみをしてアップルヴィネガー、粒マスタード)、茄子のイタリア風レンジ蒸し(ドライタイム、川原さん作)黒オリーブペーストが挟まったカリカリパン(「toki doki」の葉っぱの形のパン)、玉ねぎパン(「toki doki」の)。
メインは、ポルトガル風鰯のフライパン焼き(前菜で残ったミニトマトを加え、カヴァをふりかけて軽く蒸し焼きに)、牛もも肉のステーキ2種(塩とワサビ&おろし玉ねぎ、バルサミコ酢、薄口醤油のソース)、カヴァ、赤ワイン。

●2024年2月8日(土)曇り

ラジオの合唱番組をゆらゆらと聞いて、天気予報がはじまる前にカーテンを開けたら、まさに今、太陽が顔を出したところだった。
みずみずしいオレンジの陽の出。
果物の橙みたい。
今日子ちゃんの橙マーマレードと同じ色だ。
ニュースを聞いた。
小澤征爾さんが亡くなったとのこと。
しばらく目をつむり、えいっ!と起きた。
明日の朝から私は、東京に出かけるのだから、今日はいろいろ準備をしないと。
「ダンチュウ」のエッセイは、ゆうべ書き上げてお送りした。
編集者さんが、とても喜んでくださった。
あともうちょっとだけ直せば、完成。
レシピも、もう少しだ。
明日のトークイベントには、お世話になっている編集者がたくさん聞きにきてくださる。
「気ぬけごはん」の島崎さん、「となりのオハコ」の八幡さん、『どもるどだっく』『おにぎりをつくる』の佐川さん。
初期の『日々ごはん』を作ってくれた、丹治君と美佳さんもいらっしゃる。
お相手の三浦哲哉さんは、繊細な感性で、たくさんの言葉を持っている方。
洞察力が深く学者さんみたいに賢い方なのに、ちっとも偉そうでない可愛らしい方。
だからきっと、楽しいに違いない。
お会いするのがとても楽しみ。
今回も、いつものように川原さんちに泊めてもらい、打ち合わせもたくさん入れている。
4泊5日のロードムービーみたいな日々を走り抜けられるように、今日はゆっくり支度して、体も心も休めよう。
休ミちゃんの取材は、とてもおもしろかった。
おいしいお酒とつまみをごちそうになって、新幹線で帰り着いたのは、夜の10時くらい。
お風呂に入ってすぐに寝たのだけど、休ミちゃんの気配に包まれ(押し寄せてきた)、なかなか寝つけなかった。
休ミちゃんはとても独自な人で、私にとってはまだたくさんの未知がある。
取材でも、言葉では説明しなかった。
でも、じっと思い出していると、何かが分かりそう。
はっきり分かったことはひとつだけ。
私は、休ミちゃんのことをますます好きになった。
夜ごはんは、豆カレー(文子さん作)をのせたチーズトースト、イタリア風ワンタンスープ(キャベツ、水菜)の予定。

●2024年2月7日(水)快晴のち曇り

きのうとは打って変わって、風もなくぽかぽか陽気。
海もきらきら。
ゆうべは4時くらいに目が覚め、ラジオをつけたら「ラジオ深夜便」をやっていた。
懐かしい声のアナウンサーの人が、オホーツク海のシャチのことを伝えていた。
とてもゆっくりとした声で、何度も同じような言葉を繰り返していた。
寝ぼけていたので、確かなことは覚えていないけれど。
オホーツク海の沖の方で、流氷が崩れて、シャチの群れが動けなくなっている。
海上なんとか隊の人が、ドローンを飛ばして撮影したところ、17頭のシャチが流氷の間に挟まれていることが分かった。
このままでは死んでしまうけれど、人の力が及ばない極寒の場所なので(だっただろうか?)、助けることができない。
もういちど流氷が崩れて、壊れたら、隙間が開いて助かるのだけれど。
というような内容だった。
ニュースでもなく、お知らせでもなくて、悲しくて美しいお話を読んでいるように聞こえた。
小川末吉の『赤いろうそくと人魚』にも似ているような。
もしかするとこのアナウンサーは、大きな地震があった次の日の明け方に、私が聞いた声の方と同じ人なのかもしれない。
ラジオはいちど消し、6時前にまたつけて、『中学生の基礎英語1』。
一応は聞いていたのだけれど、うたた寝している間に終わってしまった。
ちゃんと目を覚ましたのは、7時のニュースも天気予報も終わったころ。
太陽はとっくに昇り、海が最上級に輝いていた。
さあ、「ダンチュウ」のエッセイの続きを書かないと。
途中で日が翳り、ぐんと寒くなってきた。
夕方になって、風花がちらちら舞った。
だいたい書けたようだけど、まだまだ推敲が必要。
夜ごはんは、ウズベキスタンのダンプリング(文子さん作を冷凍しておいた)のミルクスープ(人参、白菜、スナップエンドウ、ディル)、ルッコラのサラダ(玉ねぎドレッシング)。
明日は朝早くから、「となりのオハコ」の取材で、新幹線で倉敷に出かける。
加藤休ミちゃんのところ。
早めにお風呂に入って寝よう。

●2024年2月5日(月)雨

雨が強くなってきた。
霧も出て、あちこち真っ白。
風がぴゅーぴゅー。寒い、寒い。
春がやってくる前の嵐みたいな日。
中野さんは朝ごはんを食べ、11時くらいに車で帰っていった。
雨が強くなる前で、よかった。
きのうは、とてもいい日だった。
発表会を、家族が見にきてくれたみたいな、特別な日だった。
ギャラリー「Vie 」では、ユウトク君の絵にも、ソウリン君の絵にも、赤いシールが貼ってあった(売れましたという印)
私の2枚の絵にも、貼ってあった。
嬉し、はずかし。
ギャラリー「Vie 」にみんなでいるとき、文子さんとファビオが入ってきて、手を振り合った。
中野さんの家族と挨拶をし合ったり、小さな声でおしゃべりしたり。
絵を見たいと思っている人が、約束もしていないのに、偶然に同じ場に集う。
なんともいえない幸せ。
帰るときに、もういちど壁画のところに行って、絵の前で集合写真を撮った。
家族写真の中に私も入れていただいた。
そんな日だった。
今日は、楽しみにしていたお祭りが、ひとつ終わってしまったような気持ち。
余韻をかみしめながら、これからはじまる仕事の予定をまとめたり、メールを送ったり。
さあ、私も新しい仕事に向かわないと。
今週は忙しいのだから。
まず、「ダンチュウ」のエッセイを書くこと。
8日は、「となりのオハコ」の取材で、倉敷在住の絵本作家、加藤休ミちゃんのところへ行く。
そして11日には、朝から東京に出掛け、「青山ブックセンター」で三浦哲哉さんとのトークイベント。
13日は、渋谷のスタジオに、自分で書いた文を朗読しにいき、夕方からは新しい料理本の打ち合わせで、赤澤さんたちにお会いする。
14日は、八幡さんと「となりのオハコ」の打ち合わせ。
また、川原さんの家に泊めてもらう。
三浦哲哉さんとのトークイベントでは、どんな話が飛び出すんだろう。
どきどきするなあ。
じつは、1月2日の日記に書いた、「うちにいらっしゃる予定だったお客さん」というのは、三浦哲哉さんのこと。
1日に大きな地震があって、どうしても新年をお祝いする気持ちになれなくて。メールをしたら、三浦さんも同じ気持ちでいてくださった。
そういうときの、共通の感覚って、とても大切なことだと思う。
もしかすると、一番くらいに。
生き物同士が匂いを嗅ぎ合って、確かめ合うときの繊細なセンス。
信じてもいいのか、否か。
三浦さんはやっぱりいいなあ、と思った。
トークイベント、まだお席がたっぷりあるようなので、よろしかったらみなさんも聞きにいらしてください。
詳しくは「ちかごろの」をご覧ください。
夜ごはんは、具沢山豚汁(豚バラ肉、ごぼう、大根、人参、白菜、水菜)、ふわふわ納豆(白身入り)、白菜キムチ(文子さんにいただいた、キムチ屋さんの)、ご飯の予定。

●2024年2月3日(土)曇りのち晴れ

6時ちょっと前に起きた。
ラジオを聞きながら、ゆらゆら。
今朝の陽の出は6時55分だそう。
やっぱり少しずつ、少しずつ、早くなってきているな。
陽の出前の空には、オレンジ色と黄色の帯が細く伸びていて……その間に、眩しい小さな光がチッとのぞいているなと思っていたら、ぐんぐん姿を現した。
今朝のは、こっくりとした光の太陽。
中野さんも下の窓から見ているかな。
きのうは、朝起きたときに、ちょっと風邪っぽい気がして、中野さんの壁画を見に行くのはやめにした。
葛根湯を飲んで温かくし、家で過ごしていた。
仕事らしいことをしたのは、アノニマの村上さんと電話で話し、そのあとで小さなイラストをひとつ描き、『野菜だより』の新装版刊行のために、寄せる言葉を書いた。
それだけ。
中野さんはゆうべ、7時くらいに、とても元気な様子で帰ってきた。
ちょっと頬がこけていたけれど。
それはそうだろう。大きな壁に、立ったまま2日続けて絵を描いていたのだから。
ビールを飲みながら、完成した壁画の写真を見せてくださった。
そしたら、うちの窓から見える陽の出の風景が描かれていた。
薔薇色と青の夜明けの空に上る、2本の煙突の白い煙。
海は金色。
街も光に包まれている。
きのうの朝の情景だろうか、それとも前回中野さんがいらしたときに、ものすごくくっきりとした眩しい朝があったから、その日のだろうか。
私はきっと、その日の情景ではないかと思った。
日記を振り返ると、1月26日。
汽笛がヴォッ、ヴォッ……と短く鳴って、目覚めた朝だ。
「白鷺が3羽飛んでいったのを見た」と言っていたのは、いつだっけ。
私は白鷺なんか、六甲でいちども見たことがないのだけれど。
真っ白な大きな鳥が、天井で翼を広げている。
明日は、中野さんの家族が、みんなで神戸に来る。
とんかつ屋さんでお昼ごはんを食べ、完成した壁画を見にいく。
その後に、ギャラリー「Vie 」の展覧会にも行く。
楽しみだなあ。
今日は、「ダンチュウ」の撮影。
私はとても元気。
きのう休んでおいて、よかった。
中野さんは、朝から映画を見に出掛けた。
あ、今タクシーの音がした。
編集者とカメラマンがいらしたみたい。
夜ごはんは、撮影の残りを文子さんとファビオの部屋で。ワインも開け、乾杯。とちゅうから中野さんも参加した。

●2024年2月1日(木)曇りときどき雨

今日から2月。
6時前に起きて、炊飯器のスイッチを入れた。
おにぎりを作ろうと思って。
まだ空は薄暗く、霧も出ている。
寝室に戻ってきて、「中学生の基礎英語1」。
中野さんはもう起きているみたい。
朝ごはんを食べ、おにぎりを作った。
大きな地震から、今日で1ヶ月がたった。
とても静かな日。
いよいよ壁画制作が、今朝からはじまる。
中野さんは8時くらいに、車で出ていった。
がんばれー!
私は、ゲラの校正をせっせとする。
「毎日のことここ」、「となりのオハコ」、「きょうの料理」。
いつもよりも、ぎゅっと集中できた。
どうしてかな。
中野さんもがんばっていることを思うと、なんとなく士気が上がる感じ。
お昼を食べ、もうしばらくしたら、美容院に行ってこよう。
撮影用の買い物を軽くして、帰りに三宮にまわり、壁画の制作現場に寄ろうと思う。
さっき、一瞬だけ薄陽が差して明るくなり、ふーっともとの曇り空に戻った。
夕方は風が冷たく、ぐっと寒くなった。
5時少し前に着いて、しばし見学。
中野さんと一緒に車で帰ってきた。
帰り道、「コープさん」で買い物。
ぴゅるるるるーと、吹き飛ばされそうな風。
夜ごはんは、金目鯛の煮付け(ごぼう)、ほうれん草のお浸し(ごま)、とろろ芋、カクテキ、味噌汁(豆腐)。

●2024年1月30日(火)快晴

すみずみまで晴れ渡っている。
そして、暖かい。
きのうは、文子さんとファビオと、ひさしぶりのアペリティーボだった。
冷蔵庫には何もなかったけれど、バジルペーストの残りが少しあったので、クリームチーズに混ぜてみた。
ハーブクリームチーズの変形版。
ちょっとナッツテイストを感じる、なかなかおいしいのができた。
私が持っていったのは、それだけ。
玄関の扉を開けたとき、西陽がいっぱいに差し、部屋中が黄色くなっていた。
今まさに、夕陽が山に沈もうとしているとき、カヴァで「おかえりなさい」の乾杯をした。
文子さんがミニトマトを薄く切って、おいしいチーズと器に並べ、温めたパンと生ハム(コッパ)と。
ひさしぶりにいっぱいおしゃべりして、ランブルスコも開けてしまった。
気づいたら9時前。
私はけっこう酔っぱらっていたみたい。
部屋に戻ってすぐにお風呂に入り、パタンと寝てしまった。
今朝は、柱時計が5つ鳴って目が覚めた。
ぐっすりだった。
いつもだったら、夜中に必ずトイレに起きるのに。
ふたりが帰ってきて、私は安心したんだと思う。
というわけで、今朝は曙の時間から。
カーテンを開けたら、空はまだ暗く、明けの明星が輝いていた。
「古楽の楽しみ」を聞いているうちに少しずつ明るんできて、オレンジ、薔薇色、水色、青のグラデーション。
「中学生の基礎英語」もちゃんと聞けた。
朝に聞けたのは、本当にひさしぶり。
なんだか、晴れ晴れとした気持ち。
さ、今日は歯医者さんだ。
郵便局、銀行、買い物。「MORIS」にも寄って、『帰ってきた 日々ごはん⑮』にサインをする予定。
明日からまた、中野さんが泊まりにいらっしゃる。
いよいよ壁画制作がはじまるので。
夕方、文子さんとファビオが、お豆のカレーとインド風の揚げパンを持ってきてくださった。
窓辺で3人、軽くビール。
カレーは明日、中野さんと食べようと思う。
夜ごはんは、かき揚げうどん(ほうれん草)、白菜の塩もみサラダ。

●2024年1月28日(日)晴れのち曇り、一時雨、のち晴れ

ぐっすり眠って、6時半に起きた。
今朝の陽の出も、雲の間から。
オレンジ色の光が、海にも映っていた。
金曜日にいただいた新しい仕事の原稿は、きのうの朝、起きてすぐに書いた。
寝ながら、ああだこうだと考えていたので。
これで安心、お受けすることができる。
そのあとはずっと、朗読の原稿を書いていた。
今日は、声に出して読みながら推敲している。
締め切りまで間があるので、しばらくねかせておこう。
午前中は晴れ間が出ていたのだけれど、気づけば窓が白い。
寒い、寒い。
いつ小雪が舞っても、おかしくないくらい。
3時ごろ、文子さんからメールが届いた。
去年のクリスマスのあとから、大阪のご実家に帰っていたふたりが、ようやく戻ってきた。
明日の夕方、アペリティーボに誘われた。
ふたりがいない間は、6階の窓を見上げるたびに、胸に空洞ができたみたいだった。
窓を開けると、雨。
霙みたいな雨。
なんだか、香ばしい匂いがする。
夕方になって晴れ、虹が出た。
「おかえりなさい」の虹。
文子さんとファビオが、上の部屋にいると思うだけで、じんとする。
夜ごはんは、温かいおうどん(赤澤さんにいただいた「もちもち全粉麺」で。椎茸の甘煮、ほうれん草、葱、柚子皮)、とろろ芋(卵黄)。
『まる子』を見ながら食べる予定。

●2024年1月26日(金)曇り一時晴れ

船の汽笛が鳴って、目が覚めた。
ヴォッ、ヴォッ……と、短く2回。
カーテンを開けると、向かいの建物の屋上に雪がうっすら積もっていた。
陽の出は、雲と雲の間から。
オレンジ色に光る目玉が覗いているみたい。
中野さんがコーヒーをいれている匂いがする。
キッチンに下り、コーヒーを注いで戻ってきても、まだオレンジの強い光。
ベッドの中で続きを眺める。
そのうち完全に雲に隠れると、空と山の間にオレンジ色の空間ができた。
下にある街並の黒いシルエットが浮かび上がって、オレンジの街がそこにあるみたい。
向こうに見える雲も、山と相似形。
不思議だなあ。
もしかして、屋根に積もった雪と関係があるんだろうか。
太陽が完全に姿を現したとき、窓を開けてみた。
ものすごく眩しい。
ニュースと天気予報が終わって、寝室を光でいっぱいにしてから、エイッ!と起きた。
きのうは、中野さんが壁画を描く予定の地下道を見学にいった。
いちばん近い駐車場も確かめ、そのあとで写真展を見に県立美術館に行った。
海の近くにある大きな美術館。
帰り道で小雪が舞いはじめ、家に着いたら、本格的になった。
はらはらはらはら降ってくる。
ふぶいたり、風に巻き上げられて空に昇ったり。
窓辺に立つと、小さな結晶が見えた。
ふたつ繋がっているものもある。
ガラスに触れると、あっという間に消えてしまう。
ビールを飲みながら、長いこと見ていた。
インドのサラダを作ってふたりで食べ、私はすっかりお腹が冷えてしまった。
このサラダは夏向きだ。
雪の日に窓辺で食べるものではない。
そのあとで作った椎茸のスパゲティが、やさしい味で、とてもおいしかった。
少なめのにんにくのみじん切りを米油で炒め、椎茸を加えてしんなり炒めてからバターを溶かし、レモン汁、レモンの皮のすり下し。
スパゲティのゆで汁を加えて乳化させ、ゆでたてを和えた。
器に盛って、青じそのせん切りとしらす。
ただ、それだけなのだけど、バターとレモン汁の加減がちょうどよかった。
中野さんは今朝、10時くらいに帰っていった。
私は原稿書き。
一日中やっていた。
とちゅう、パーッと晴れたので、布団を干しに2階へ。
気づくと翳っていて、大急ぎで取り込んだり。
夜ごはんは、白菜と豚肉の土鍋蒸し(ポン酢醤油、ごまダレ)、大根おろし、ご飯はなし。
夜、HPの方のアドレスに、新しい仕事が届いていた。
いつか、私のところにも来るといいなあと思っていた、ある雑誌の原稿依頼。
どうしよう。
書けるだろうか。

●2024年1月24日(水)快晴

ゆうべは風がとても強かった。
今朝もまだ、強い。
海の光っているところが、ウロコのよう。
太陽が昇るにつれ、それが大きく広がって、真正面も東の端も、すべてがさざ波立っている。
大きな龍が横たわっているよう。
台所に立って見たら、窓一面が発光していた。
すごく眩しい。
きのうは、中野さんとギャラリー「Vie」で待ち合わせ、絵を搬入してきた。
車で帰ってきて、そのまま御影のスーパーで買い物。
高知産の中トロを奮発し、お刺身丼にした。
すまし汁(ほうれん草、柚子皮)と。
絵を搬入できたお祝い。
さあ、今日は何をしよう。
風の音と、柱時計の音しか聞こえない。
ときどき小鳥。
「毎日のことこと」の続きを書こうかな。
お昼は、中野さんが焼きそばを作ってくださるそう。
朝ドラの再放送を見終わったころ、小雪がちらほら。
急いで「コープさん」に卵を買いにいく。
車って、なんて便利なのだろう。
そのあとで、台所のシンクを掃除。 
剥がれかかっていた、銀色のテープを貼ってもらった。
中野さんは今、白い棚の扉に絵を描いている。
私は、朗読のためのエッセイを書きはじめた。
海が青い。
ところどころ緑がかって、沖縄の海みたい。
よく見ると、大阪の山に雪がうっすら積もっている。
棚の扉には赤い花。
なんとなく、中欧風の台所になった。
とても嬉しい。
夕暮れの窓辺で、ポテトチップスをつまみに、赤ワインの炭酸割り(私)、ビール(中野さん)。
空の上の方が晴れ、雲の下はいつまでも茜色だった。
そこに、いろいろな形の小さな雲が行進していた。
去年死んでしまったカメ吉、ピーちゃん、フグの赤ちゃん。
夜ごはんは、ラム・ステーキ(焼きじゃがいも添え)、ハムとほうれん草のオムレツ、ご飯(中野さんだけ)。

●2024年1月20日(土)小雨のち曇り

ぐっすり眠れた。
柱時計が8回鳴って、驚いて起きたのだけど、まだまだ眠れそうだった。
夢もみなかった。
きのうから、枕と薄掛けを変えてみている。
これも、新しい仕事のひとつ。
枕はとても大きくふんわりとしているのに、ほどよい硬さがあり、頭をのせたり動いたりすると、その都度私の頭にフィットして、ついてきてくれる感じ。
薄掛け布団は、軽いのにとても温かい。
肌に当たるところがタオル生地なので、それもまた心地よく、いつもの羽根布団を上に重ねると、布団ではない温かなもの(安心感のような?)に包まれているよう。
体と心が丸ごと包み込まれる。
寝具というのは、すごいものだな。
さて、今日は何をしよう。
きのう買った額縁に、また色を塗ろう。
この間、JA御影でおいしそうなキャベツを丸ごと買ったので、ロールキャベツを作ろうと思うのだけど、ふと思いついて、干し椎茸を戻してみた。
いつもは固形スープの素を使うのだけど、干し椎茸のだしで煮てみようと思って。
そうだ、ひろみさんと今日子ちゃんをお呼びしよう。
人参や玉ねぎを刻みながら、くず野菜もどんどん加えていく。
大根も皮ごと。
甘みが出て、とてもおいしいおだしができた。
玉ねぎと人参をバターで炒め、細かく刻んだ干し椎茸も加えようかどうしようかと迷っていて、きのう今日子ちゃんからいただいたイギリス土産のメースの匂いをかいでみた。
パッケージにはこう書いてある。
(間違えているかもしれないけれど、読んだだけで英語の意味が分かった)
「ナツメグに似ているけれど、もっとやわらかな香り。チーズにふりかけたり、ベシャメルやホワイトソース、または魚のパイ。そしてスープ。あるいはケーキに入れたり、プディング、それから他にも焼き菓子に」
うーん、ほんとうにその通り。
そしてフレッシュ。
これはきっと、うまくまとめてくれそうだ。
夜ごはんは、赤ワインの炭酸割りと、人参の塩もみサラダ(赤ワインヴィネガー、オリーブオイル、ディル)&ゆで立てビーツ(手作りマヨネーズ添え)、ロールキャベツ(合いびき肉、豚ロース薄切り肉のみじん切り、干し椎茸、玉ねぎ、人参)、乾燥たもぎ茸(黄色いしめじのようなきのこ。亜由美さんがくださった)と生姜の炊き込みご飯。
ロールキャベツは、ひとつ目をねり辛子で和風に食べ、ふたつ目は、生クリームと手作りサワークリーム(文子さんに教わった)を加えて軽く煮た。メースもひとふり、刻んだディルをたっぷり。
ロシアでこんなのを食べたことがある気がする。
ふたりとも、とても喜んでくださった。
食後は、今日子ちゃんの米粉のマフィン(いちごを焼き込んである)をセイロで軽く蒸して温めた。
おいしかったなあ。
ロールキャベツを食べる前に、枕とかけ布団を2階から下ろしてきて、ふたりに寝てもらったのも楽しかったな。

●2024年1月17日(火)晴れ、ときどき小雪

7時に起きた。
前の建物の屋上が、薄っすら白くなっている。
ゆうべは雪が降ったのかな。
陽の出は雲の上から。
オレンジ金色に光ったとき、小雪がふらふらと舞っているのに気づいた。
窓を開けても、それほどには寒くない。
おとついから中野さんがいらしていて、きのうは、車でJA御影のスーパーに行った。
神戸ポークの分厚いお肉で、トンカツ!
トンカツなんてはじめて揚げるので、「暮しの手帖」のバックナンバーを見て勉強した。
低めの温度で揚げたら、取り出してしばらく寝かせ(予熱でじわじわと火を通す)、最後に強火でカリッと揚げる。
おかげで、サックサクのすばらしくジューシーなトンカツができた。
中野さんのミックスソースもおいしかったな。
今朝は、その残りでカツサンドにした。
中野さんは画材屋さんへ。
しばしのひとりの時間。
掃除機をかけたり、仕事をしたり。
空は青く、海もきらきら。
風が強いからか、空気がキリッと澄んでいる気がする。
きのう私は、額縁の色の塗り方を教わった。
サンドペーパーでこすって、さらになめらかに。
今日も続きをやる。
これは、元町のギャラリー「Vie」で1月27日からはじまる公募展のための支度。
詳しくは「ちがごろの」をご覧ください。
夜ごはんは、窓辺で明るいうちに。
おつまみ盛り合わせ(ハム、ソーセージ、レタス、手作りマヨネーズ、ペペロナータ、浸し黒豆)、ブロッコリーとアンチョビのスパゲティ、ビール&焼酎お湯割り(中野さん)、赤ワイン(私)。

●2024年1月13日(土)晴れ、一時雹

よく眠れたような、そうでもないような。
いろんな夢をみた気がする。
夢のなかでも動きまわっていたような。
市の健康診断の日なので、てきぱき動く。
9時過ぎに家を出た。
電車に乗ってもいいのだけれど、歩くことにした。
iPhoneの道案内の通りに歩く。
けっきょく、すごく遠まわりをして1時間くらいかかった。
でも、はじめて通る道だったので、珍しいお店をいくつかみつけておもしろかったな。
シャッターは閉まっていたけれど、サーターアンダギーのお店もあった。
思ったよりずっと早く終わったので、帰りもてくてく歩く。
よく歩いたので、「コープさん」で軽く買い物をして、タクシーで帰ってきた。
そういえば、この間私は「今年は仕事をがんばるぞ」と、心に決めた。
そうしたら新しい仕事がみっつ舞い込んできた。
なかには、文章を書いて朗読するというのもある。
朗読を録音するなんて、はじめてのこと。
ドキドキするけれど、わくわくもする。
このところずっとひとりでいるから、決意のことは誰にも言っていないし、日記もまだアップされていないのに。
不思議なことってあるものだ。
海の色がやけに青く、遠くの方は緑がかっていて、夏みたいだと思っていたら、ぴゅるるるると風がひと吹きし、お天気雨が降ってきた。
慌てて2階の窓から見ると、わ!雹だ!
ひとしきり降ってあたりは灰色になり、またぱーっと晴れてきた。
かすかに小雪が舞っている。
初お天気雪だ!
夜ごはんは、マッシュポテトのグラタン(撮影の残りの蕪入りマッシュポテトに、トマトソースとチーズを重ねて焼いた)。

●2024年1月12日(金)曇りのち晴れ、のち曇り

ゆうべは2時に目が醒めてしまい、それからは3時、4時と柱時計の音がしていた。
明け方に、ぐぐーっと眠った。
そして、ラジオをつけたら7時のニュースが聞こえてきた。
『中学生の基礎英語1』を聞き逃してしまった。
朝ごはんを食べたり、掃除をしてりしているうちに、あっという間に10時。
ピンポンが鳴って、ちよじと千葉さんが来た!
「きょうの料理」の撮影。
きのうはもういちど試作をしたので、準備万端。
撮影中は、急にパーッと明るくなったり、夕方、雨が降っているのかと思うほどグレーの空になったり。
めまぐるしいお天気だった。
ひとつひとつ、ていねいに追っていって、5時半に終わった。
明るさも、ぎりぎり間に合った。
ふーっとひと息、ちよじがコーヒーをいれてくれたので、シン・エゾアムプリンを3人で。
バナナといちごを添えてみた。
うーん、やっぱりおいしいなあ。
ふたりは、6時過ぎにタクシーで帰っていった。
撮影でたくさん食べたので、夜ごはんはなし。
明日は市の健康診断。
早めに寝ようと思うけれど、すでに今、眠たくて瞼がくっつきそう。 

●2024年1月9日(火)晴れ

ゆうべは寒くて、夜中に毛布を1枚追加した。
ベッドの中で、ガタガタ震えてしまう感じだった。
iPhoneで確かめたら、零度とのこと。
今朝は5時前に目覚め、ラジオを聞いていた。
「古楽の楽しみ」と、英語学習の番組を一通り。
とちゅうでカーテンを開けたら、空の下の方に大きな三日月が光っていた。
山際の雲に赤味がさし、だんだん明るくなっていく。
台所に下り、ミルクコーヒーを温めてベッドへ。
飲みながらの陽の出は、7時過ぎ。
太陽が出たとたんに、ぐんぐん暖かくなってきた。
さあ、今日は「気ぬけごはん」を仕上げてお送りしなくては。
3時には仕上がり、島崎さんにお送りした。
「毎日のことこと」の校正も終わった。
夕方、買い物に出る。
金曜日は「きょうの料理」の撮影なので、少しずつ仕入れをしておこうと思って。
坂を下りながらふと、今年は、仕事をがんばろうかなあと思った。
向いていないからなんて言ってお断りせずに、いただいた仕事は、どんなことでもやってみよう。
やってみてだめだったら、次はやめればいいんだから。
何でも真剣にやれば、楽しいはずなんだから。
などとぶつぶつつぶやきながら坂を下りた。
神戸に来たばかりのころよりも、心も体もずっと丈夫になったような気がする。
だから、今年の抱負だ。
白龍の神社にお参り。
「いかりスーパー」で買い物をさっとして、バスに乗り、ささっと帰ってきた。
ディルもワインも買えた。
帰りの坂道は、リュックをしょって上った。
空気がキンとして気持ちいい。
坂の上まで上ったとき、山際の空が茜色に染まっていた。
6時前に帰ってこれた。
明日はもういちど試作をしたいから、思い切って行ってきてよかった。
夜ごはんは、白みそ雑炊(白菜、はんぺん、蕪の葉、卵)、数の子(これで食べ終わった)、白菜の甘酢漬け。

●2024年1月7日(日)晴れときどき曇り

6時半くらいに起きた。
ゆうべは、厨房にいる夢をみた。
鶏肉をさばいて、パプリカや唐辛子の粉を混ぜた溶かしバターを塗って焼いたり、何かのシチューを寸胴鍋で煮込んだり。
何人かのお客さんに向け、ひらめくアイデアを次々試し(朝まで覚えていたのに忘れてしまった)、私はちょっと興奮しながら作っていた。
目覚めたときに、高揚している感じがまだ体に残っていて、ああやっぱりこういうことが好きなんだなあと思った。
ちょっと筋肉痛のような感じもあった。
陽の出は、山の上の雲から。
ボンタンみたいな大きいまん丸が、ぬるりと昇った。
今朝はいつもより寒い。
指先が冷たいので、厚手のスパッツの上からくつ下を重ねばきし、レッグウォーマーもつけてパソコンに向かう。
朝、アムとカトキチからプリンが届いた。
2月から発売される予定の、新しいエゾアムプリン。
箱を開けたとき、どこかの寒い国から届いたような感じがした。
パウンドケーキみたいな銀色のアルミの四角い形も、半透明の白い紙も、プリンの上にかぶせてある松ぼっくりのシートも、すべてが清楚でしんとする。
これまではプリンの生地にカラメルソースを焼き込んでいたけれど、別に添えることになったんだな。
持つと、ずっしり重たい。
おいしさやていねいな気持ちが、ぎっしり詰まっている感じがする。
さあ今日も、「気ぬけごはん」の続きをやろう。
がんばって書いて、新しいエゾアムプリンをおやつにいただこう。
シンエゾアムプリンは、目の覚めるようなおいしさだった。
びっくりした!
これまでももちろんおいしかったけど、もっともっと濃厚。
カラメルソースの苦みもほどよく、とろみがあってお皿をなめたいくらい。
でも、カラメルソースがかかっていないところも、ねっとりもったりとしてすごくおいしかった。
いい材料を使っていることがよく分かる。
これはもうプリンというより、ケーキみたい。
ワインにも合いそうな気がする。
これまでの丸い陶器の器が使えないことになり、アムたちは旅から帰ってきて試作を繰り返していたみたいだけれど、よくぞここまで到達したなあ。
すごいなあ。
夜ごはんは、洋風ワンタンスープ(鶏ひき肉、豚バラ薄切り肉、ディル、白菜、椎茸、人参)。

●2024年1月3日(水)曇り

眠れたんだか、そうでもないんだか。
明け方、ラジオをつけたら、「ラジオ深夜便」が終わるところだった。
エンディングの音楽が流れ、昔懐かしいような声のアナウンサーが、誕生日の花と花言葉を伝えていた。
今日の花はスノードロップだそう。
花言葉や名前の由来、植生などの説明をひと通りし、「今日が誕生日のみなさん、おめでとうございます」と穏やかに言った。
それを私は、目をつぶって聞いていた。 「さあ、今夜は少しお休みになれましたでしょうか。まだ、夜明けまでには少し時間があります。少しでもお休みください」。
そうして、ちょっとの静寂のあと、「辛い、というお気持ちの方がたくさんいらっしゃると思います。きのうよりはしかし、今日はよくなる。希望を持って、今日一日、健やかにお過ごしください」と、言った。
地震とか、被災地とか、ひとことも言わなかった。
こういう言葉を何気なく言える人は、あまりいない。
静かで、強い言葉だと思った。
さあ、私も動き出そう。
早めのお昼ごはんを食べ、荷物を出しにコンビニへ。
川沿いを歩きたくなり、散歩した。
ハクセキレイがチョンチョン歩き、カーブを描いて水辺に舞い下りる。
鴨を見ながら、飛び石を向こう岸へ渡り、通りに出て水道筋の商店街へ。
どこもシャッターが閉まっていた。
「コープさん」も閉まっていたけれど、隣のおいしいケーキ屋さんでケーキを買った。
午後から雨になるようだったので、傘を持っていったのだけど、けっきょく降られなかった。
お正月も今日で終わり。
明日から私は、仕事をしよう。
「毎日のことこと」に、今日のことを書いてみようか。
書けるかどうか、分からないけれど。
夜ごはんは、ピェンロー(ゆうべのを温め直した)。
体がぽかぽか。
暑くてセーターを脱いだほど。
すごいな、ごま油。
もしかしかするとピェンローは、中国の寒い地方で生まれたのかもしれない。

●2024年1月2日(火)快晴

6時半にラジオをつけた。
7時のニュースを聞いて、ずいぶんたってからテレビをつけた。
洗濯をしたり、掃除をしたり。
窓辺に腰かけ、エプロンのほころびを繕いながら決めた。
今日は、お客さんがうちにいらして、新年のお祝いをすることになっていたのだけれど。
料理もささやかながら、支度をしていたのだけれど。
どうしても、そういう気持ちになれない。
やっぱりとりやめにしよう。
メールをしてみよう。
穏やかなこのお正月を、静かに大切に過ごそうと思う。
海も空も、眩しいくらいに青い。
早めの夜ごはんは、「となりのオハコ」の試作でピェンローを作った。
ヒロミさんの手つきを思い出しながら、ひとつひとつていねいに作っていった。
とてもうまくいった。
塩と一味唐辛子だけの味つけが、染みるおいしさ。
ひとりでほぼ半分平らげ、体がぽかぽか。
ごま油がたっぷりのお鍋だからかな。
夕方、6時を知らせる教会の鐘が、いつもより長く鳴っていた。
カラーンコローンカラーンコローンカランコローンカラーンコローン……。
応援のメッセージだろうか。
ファビオのベストは、ずいぶん編めた。

●2024年1月1日(月)快晴

明けまして、おめでとうございます。
起きたら8時半だった。
大寝坊。
ゆうべは12時まで起きていたから仕方がないけれど、初陽の出を見られなかった。
もうとっくに上に昇り、海が眩しく光っている。
朝から中野さんのお母さんのベストの続き。
ゆうべ編み上がったので、裏に返して毛糸の始末。
ベッドの上で、背中に太陽を浴びながらやる。
朝風呂のあと、お風呂場の掃除。
遅い朝ごはんは、ヨーグルト(亜由美さんにいただいた大きないちご)だけ。
今年のお正月のお花は、ソウリン君が折り紙で作ってくれた花束。
きのう、植物屋さんをのぞいてみたら、真紅のアネモネがあった。
ビロードみたいでとてもきれいだったのだけど、そういえば、うちにもアネモネの素敵な花があった!と思って。
10時くらいだったかな、台所に立っているとき、窓の海が一面金色になった。
こんなに広い範囲で光ることって、これまであったろうか。
お正月だから?
掃除をしたり、黒豆をゆでたり、洗濯したりしている間にお昼となる。
元日のささやかなごちそうは、数の子、丹波黒豆の甘煮(文子さんが作ってくれた)、帆立のお刺身、お雑煮(白菜、大根、丸餅)、磯辺巻き、白菜と大根の塩もみ柚子搾り。
午後もベストの続き。
完成した!
パソコンに向かい、先週の日記をまとめているとき、地震があった。
ゆらゆらと揺れ、私は2階のベッドの下にもぐった。
テレビをつけると、石川県に大きな地震があり、津波の情報が流れていた。
アナウンサーが避難を呼びかけ、叫んでいる。
夜ごはんは、チゲ(切り干し大根のみそ汁にコチュジャンを加え、豆腐、落とし卵)、帆立の漬け、白菜と大根の塩もみ柚子搾り、ご飯。
どこのチャンネルをまわしても、地震と津波のニュース。
ラジオも同じ。
夜、ファビオのベストを編みはじめた。

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