2018年     めにうへ

●2018年4月15日(日)曇りのち晴れ

朝起きたとき、灰色の重たい雲がたれこめて薄暗く、空気までグレーだった。
でも、緑はしたたるような色。
ゆうべはひと晩中よく降ったから。
『帰ってきた 日々ごはん4』の「あとがき」にとりかかろうかと思ったのだけど、なんとなく棚の整理をはじめてしまう。
たまりにたまっていた『たべもの九十九』の書類を片づけたり、絵本の箱、物語の箱、これからはじまる新しい仕事と、単行本のための箱も作った。
窓を見ると雲に切れ目ができ、青空がのぞいている。
そのうちぐんぐん晴れてきた。
海の向こう側の半島の、山並みの筋までくっきりと見える。
山裾に一列に並んでいる、白い建物もよく見える。
今週は予定が立て込んで、いつもより忙しかった。
水曜日には、「きょうの料理」の撮影でちよじが来て、ひと泊まった。
次の日には中野さんがいらっしゃり、3人でワインを呑みながらお昼ごはんを食べた。
ちよじを見送ってからふたりで坂を下り、六甲道で電車に乗って、住吉のラーメン屋さんへ行った。
お腹がいっぱいで、少し歩きたかったので、川に下りた。
光が灯りはじめた夕暮れの山を仰ぎながら、ダーダーと水の流れる住吉川沿いを、川を挟んでそれぞれの小径を歩いたのも、夜風に吹かれながら御影の駅までゆっくり散歩したのも、すべてがよかった。
なんだかそのときに見えたもの、感触は夢のようでもあり、いつか、お話のなかに出てきそうでもあった。
中野さんは次の日に大阪の画材屋さんへ行って、もうひと晩泊まり、きのう帰られた。
もう、すぐにでも絵を描きたそうだった。
そういえば、私の鼻の下には今、水泡状のぶつぶつができている。
多分これもヒノキ花粉のせいだろう。
ずいぶんよくなってきたけれど。
目ものども、ここ二三日ですっかり治った。
ちよじが作ってくれた、大根ハチミツのおかげだ。
夜中に咳が出るたびに、スプーンですくってなめていた。
大根ハチミツは効果絶大。
うがい薬やトローチなんかより、よっぽど効く。
今はもう夕方の6時前なのに、海も空も青い。
日が長くなったなあ。
夜ごはんは、オムソバ(焼きそば、冷やごはん、キャベツ、豚肉)しろ菜の中華風スープ。

●2018年4月10日(火)晴れ

このごろは7時少し前に起き、カーテンを開けて陽を浴びる。
ゆうべは、のども目もずいぶんらくになって、夜中にいちどだけ起き、うがいをしたくらいでぐっすり眠れた。
朝から、『帰ってきた 日々ごはん4』の「おまけレシピ」の推敲。
あと、絵本と料理についての文をていねいに校正し、ファックス。
明日が「きょうの料理」のテキスト撮影なので、買い物に出たいのだけど、細々とやることがあり、ひとつずつ終わらせていった。
ゆっくり、ゆっくり、落ちついてと、心で唱えながら。
ピーマンの肉詰めが冷蔵庫に残っていたので、ご飯を炊いて、夜ごはんのお弁当を作っておく。
1時過ぎに坂を下りた。
バスに乗って阪神御影駅へ行く(御影の「オアシス」は、魚屋さんがとてもいい)ので、いつもと違う道を通って下りた。
どこもかしこも葉っぱが新しい。
垣根の若緑の葉も、やわらかくてつやつやしている。
バスを待っている間、ツバメが2羽空を横切った。
つかず離れずの距離で、さえずりながらすごいスピードで一直線に滑空していた。
きっと、気持ちいいんだ。
帰りのタクシーのなかから見えた山に惹かれ、荷物だけ置いて屋上へ。
ひさしぶりの屋上。
裏山はいつの間にやら緑が増え、もくもくしていた。
ところどころに、薄桃色の木がある。
あれはきっと山桜だ。
夜ごはんは、お弁当(ピーマンの肉詰め、卵焼き、小松菜のおひたし、小イワシの酢煮)、かぶのみそ汁。

●2018年4月9日(月)晴れ

12時から「リンネル」の打ち合わせ。
2時間ほどで終わり、編集者のおふたりと森の入り口まで歩いた。
今、青紫の花(ツルギキョウ)が盛りなので。
一輪摘んで、戻ってきて、遅いお昼ごはんを食べに「かもめ食堂」へ。
小さな器にいろいろ盛られた、色とりどりの野菜料理。
メインはチキンカツのブロッコリーソース。
野菜たっぷりのごはんで、お腹いっぱい。
どれもこれも心落ち着く味で、とてもおいしかった。
「かもめ食堂」のごはんを食べると、いつも、体のなかが清められるような気がする。
ごはん粒ひとまで残さずに、ぜんぶきれいに食べないと、そうはならない感じもする。
ふたりとも元気そうで、ちょっとだけおしゃべりすることができた。
食後に、紅茶とフルーツケーキをごちそうしてくださった。
帰り道、てくてく歩いていたら、あちこちの生け垣や花壇にツルギキョウの花をみつけた。
やっぱり今が盛りなのだ。
「moris」に寄ったら、京都帰りの今日子ちゃんが、おいしい豆大福と炒り番茶を淹れてごちそうしてくださった。
お腹いっぱいとなり、八幡さまでお参りをして、眼科へ。
患者さんが誰もいなかったので、またすぐに診てもらえた。
軽く買い物し、ゆっくりゆっくり坂を上って帰ってきた。
あまりにお腹がいっぱいで、運動したかったから。
夜ごはんは、まだお腹がいっぱいなので、いちご&ヨーグルトのみ。

●2018年4月7日(土)曇りのち晴れ

朝、佐川さんからのメールを読んで、片山令子さんが亡くなったのを知った。
いきなり涙が噴き出す。
私はこのところ、令子さんの文や詩の世界に惹かれていて、『夏のかんむり』を寝る前に開いたりしていた。
きのうも図書館で借りた二冊が、たまたま令子さんが書いた絵本だった。
『きりのなかのかくれんぼ』と『きんいろのとけい』。
ゆうべ、寝る前に読んで寝た。
令子さんの書く文や詩を、新しい絵本も、まだまだ読めると思っていた。
また、好きな女の人がひとりいなくなってしまった。
なんだか背筋が伸びるような気持ち。
私は、自分の仕事をがんばろう。
今日は、令子さんの冥福を祈りながら、一日を過ごそう。
目もずいぶんよくなってきたので、『帰ってきた 日々ごはん4』の校正の続きと、おまけレシピを書こう。
沖縄へ出かける前まで、裸だった猫森の木々も、若葉がずいぶん伸びてきた。
見渡せば、あちこちに若緑のいろいろな色。
小さな葉っぱが、さわさわと風に揺れている。
今日は、雨が降っていたかと思ったら、ぱーっと晴れたり、また雨になったり。
肌寒く、不思議なお天気だった。
校正はベッドの上でやり、終わった。
おまけレシピもだいたい書けた。
夕方、つよしさんから絵本の銅版画が送られてきて、そのあと電話で少しお喋り。
私たちの絵本が、歩きはじめた。
夜ごはんは、沖縄風の焼きそば(ソーキそばの麺で。豚バラ肉、かぶの葉、豆苗)、ポトフの残りに牛乳を加えたスープ。

●2018年4月6日(金)雨のち嵐

ゆうべは、枕もとに水を入れたボウルを置いて、ガーゼをしめらせては目をふいていた。
朝起きたら、睫毛が目やにで固まっている。
沖縄から帰って、せっかく目がよくなったのに、こんどは傷めてしまった。
きのう私は、涙がよく出るので、花粉症の目薬をさした。
そのまま『帰ってきた 日々ごはん4』の校正に向かっていたのだけど、そのうち目やにが出て、視界が白くかすむようになってきた。
ときどき目をふきながら、それでもやっていて、スイセイからアルバムについての相談の電話があり、パソコンを見ながら話をしていたら、そのうち目が空かなくなってきた。
目玉がひっくり返るような感じ。
目をとじるとゴロゴロして痛い。
それで、今朝9時ごろに家を出て、眼科へ行った。
今まで知らなかったのだけど、消費期限を超えた目薬は、水分が蒸発してどんどん濃縮されるのだそう。
私が使ったのは、神戸へ越してくる直前に買ったものだから、もう2年前のものだ。
六甲道にある眼科は、うちと同じくらいに古い建物で、床もPタイル。
古いけれど、すみずみまで掃除が行き届いて清潔な感じがするし、男の先生もとても感じがよかった。
待合室で待っていたら、おばあちゃんが3人ほど入れ替わり入ってくるくらいで、すぐに診てもらえた。
看護婦さんも優しくて、とても感じがいい。
いい眼科をみつけた。
そのあとで耳鼻科へ行った。
時期からいうと、私のはスギではなくヒノキの花粉のアレルギーなのだそう。
のどが赤くイガイガするのも、ヒノキ花粉の特徴なのだそう。
花粉症の薬を処方してもらい、美容院へ行き、図書館へも行った。
帰りに「MORIS」へ寄ろうかと思っていたのに、冷たい雨のなか、買い物をして帰ってくるのがせいいっぱいだった。
私は沖縄の疲れが出ているみたい。
夜ごはんは、ポトフ(冷凍しておいたゆで大豆と、ゆで汁で。玉ねぎ、かぶ、キャベツ、人参、ソーセージ)、いちご。
夜になって嵐。
目はずいぶんいいみたい。

●2018年4月4日(水)晴れのち雨

7時に起きた。
熱は5度4分。
平熱に戻った。
きのうは、寝たり起きたりの合間をみて、『帰ってきた 日々ごはん4』の校正をしていた。
ベッドの上で、寝ながら。
校正というよりも、読者になってただ読んでいただけ。
直すところはほとんどない。
今日もまた、その続きをしようと思う。
同じ目線で。
窓の外が白い。
どこまでも白い。
むくむくと春霞に覆われている。
沖縄から帰って、私は目がよくなった。
実際に、これまで老眼鏡をかけなければ見えなかった細かな文字(電話の近くに貼ってあるタクシー会社の番号)が、裸眼でもはっきり見える。
この日記も今、眼鏡をはずして書いている。
視力がよくなったので、埃が目につくようになった。
体の調子がいいので、あちこち念入りに掃除をしているうちに、2階の部屋を模様替え。
隣の部屋から仕事机を移動させ、タンス代わりにしてみた。
積み重ねてあった衣装ケースも整理して、半分をベッドの下に収めた。
きこちゃんちの木のタンスを、いいなあと思っていたら、私の机(米軍払い下げの家具)がよく似ているのに気づき、やってみた。
なかなかいいかも。
夕方になって、雨。
夜ごはんは、豚肉と厚揚げのピリ辛炒め(小松菜)、とろろ納豆、即席みそ汁(かつお節、とろろ昆布、ミニちゃんの空豆みそ)。
夜、山から海から、風が強く吹き荒れている。
おかげで夜景が一段ときれい。

●2018年4月3日(火)晴れ

ゆうべ、寝る前に熱が出た。
37度8分の微熱。
お湯を沸かして飲んで、寝た。
今朝もまだ下がらないので、黒砂糖をお湯に溶いたのをポットに作り、ご飯も食べずにずっと寝ていた。
寝て起きて、お砂糖湯を飲んで、また寝て起きるたびに熱が下がって、夕方には36度3分になった。
私の平熱は35度台だから、まだもう少し。
のどもイガイガする。
沖縄は、体の内と外がぐるりとひっくり返るくらいの旅だったから仕方がない。
こんなふうにして、場に慣れていくんだろうな。
今夜も黒砂糖のお湯を作って、早く寝よう。
お砂糖湯を作ろうと思いついたのは、ついこの間中野さんがおっしゃっていたのを思い出したから。
小学生のころに風邪をひくと、お母さんがお砂糖を溶かした甘いお湯を水筒に詰め、枕もとに置いて、カーテン屋さんの仕事に出かけていったという話。
中野さんはそれを飲みながら、ひとりで寝ていたのだそう。
そういえば、ウズベキスタンのダルバン村というところで、川原さんが体調を壊したとき、民宿のおばあさんが琥珀色の砂糖のかたまりをお湯に溶かし、ポットにいっぱい作って、枕もとに置いておいてくださった。
川原さんは私が洞穴に行っている間、ひとりでそれを飲み、汗をいっぱいかいて自力で熱を下げた。
私は、沖縄帰りなので、黒砂糖にしてみたというわけ。
夜ごはんは、とろろ蕎麦(青じそ、ねぎ)。

●2018年4月2日(月)晴れ 

もう3時だ。
お昼寝をして、今さっき、起きたところ。
今朝は9時から、このアパート全体の洗管工事(下水の流れる管の掃除)のため、管理人さんと作業の方がいらっしゃった。
今日が締め切りなので、「気ぬけごはん」のゲラ校正をし、ファックス。
あとは、留守の間に届いていたメールの返事。
そのうちにたまらなく眠たくなってきた。
沖縄での日記を書いて、スイセイに送らなくてはらないのだけど、うまく書けるかな。
パソコンを持っていかなかったので、日記らしきものはスケッチブックに少しだけメモしていた。
それを、ここに書き写してみようと思う。
なんだか、どこからどこまでがきのうで、どこからが今日で、とか。
何日に何をして、何を感じ、何を食べたとか。
時間として区分けすることができないような、そんな旅だった。
私はただ、きこちゃんと潤君の国に行って、ぼかんとした塊の、明るくて楽しくて、眩しい一日を過ごしてきたような。
『たべたあい』の主人公そのものみたいな子どもたちと算数の宿題をして、遊び、絵を描き、海で泳ぎ、馬に乗り、毎日おいしいごはんをもりもり食べ、呑み、おしゃべりして、大きな大きな年寄りの樹と水汲み場のあるパン屋さんへ行った。
六甲に帰ってきたら、中野さんは絵本の絵を10枚以上描いてらした。
壁には「お帰りなさい」の大きな絵が貼ってあった。
黒い馬に乗って、この部屋に帰ってきた私の絵。
馬ははじめは白かったのだけど、途中から黒くなっていったのだそう。
私が実際に乗った馬はビアンコという名前で、ベージュと白が混じり合った月色という毛の色をしていたのだけど、その馬は後ろ足がないので、私にはきこちゃんちのコザという犬に見えて仕方がなかった。
翌朝、目を覚ましたら、枕もとに飾ってある満月の絵の四つん這いの女の子と目が合い、涙がふき出した。
そのことはこんど、『帰ってきた 日々ごはん4』のあとがきに書こうと思う。
中野さんはきのう帰られた。
坂の途中の桜が風に舞っていた。
川沿いを歩き、駅までお見送りの散歩をした。

さあここで、日記のメモを書き出してみます。
日づけは、あとからつけたものもあります。

(3月27日)
6時に起きた。
玄関を出るとき、柱時計が8回鳴った。
坂の途中の桜はまだ一分咲きくらい。
ゆっくり咲いてくれるのが、嬉しい。
神社の桜は八分、車がたくさん走る道路まで下りたら、ほとんど満開だった。
六甲駅8時20分発、三宮へ。
ポートライナーに乗り換え、神戸空港へ。
窓から見える山は、けぶっていてほとんど見えないけれど、私の山はあの辺りだなと分かる。
ゆうべは、鷲尾さんと窓辺に腰かけ、飛行機が降り立つ光を見ていた。
これから私は、その飛行機のなかの人になる。
神戸空港はとてもコンパクトだし、お客さんも少なくすいている。
すいすいと、手続きが進む。
三宮から20分ほどで空港に着くなんて、便利だな。
私は何も知らずに、とても便のいいところに引っ越してきたのだな。

きこちゃんちの動物。
猫(タラ)、アヒル(ダブダブ)、犬(コザ)

久高島のことを思い出す。

夜ごはんは、魚屋さんで買った新鮮なお刺身(カツオ、まぐろ、キラジャー)、ミーバイ(貝・きこちゃんがナンプラーのタレを作った)、海ぶどう、マヨネーズ(きこちゃん作)、トマトサルサ(赤いトマト、玉ねぎ、塩、オリーブオイル・私作)、ディル&香菜を刻んだもの)、ゆでとうもろこし。
きこちゃんの子どもたちは、自分の食べたいものを取って、食べたいように食べる。
タレをかけたり、しょうゆをかけたり、組み合わせてかけたり。
辛いのも平気で混ぜて食べる。
3歳になったばかりのぬいちゃんも、自分で刺身を取って、手づかみでどんどん食べる。
「ぬい、もうそれで終わりだぞ」と、隣に座ったりく君(12歳)から小さな声で言われていた。
私たちはビール。
同居しているきこちゃんのお父さん、お母さんは、ウイスキーの炭酸&シークワーサー割りをジョッキに作って、3階から下りてらした。
みんなでわいわい食べ、9時くらいに私と翔だけ先に寝る。

(3月28日)
7時過ぎに起きた。

この家はいろんな音がする。

誰がどこで何をしてたてている音なのか、分からない。
動物も、音をたてている。

シャワー。
朝ごはんは、潤君のもちもちパンケーキとコーヒー。
タピオカの粉が入っているのだそう。
バターとジャム(柑橘の皮とパッションフルーツ? 何かの種が混ざっている)。
とってもおいしい。

コーヒーを翔がいれた(潤君に教わって)。

お昼ごはんは、持ち寄り。
子どもとお母さんが、続々やってくる。
子どもたちは外も、家のなかも、裸足で歩く。
今日は2階の部屋で、算数の問題を2問解く日なのだそう。
寝そべったり、起き上がったりしながら、絵を描いて、みんなひとりひとりで解いてゆく。
じゃがいも入りパスタを作った。
オイルサーディン(お土産)の量が足りないから、にぼしを加えてみた。
頭を取って、にんにくとオリーブオイルで炒めた。
翔は、「しぬほどむずかしい」と台所に言いにきた。
2階へ上がると、たみちゃん(きこちゃんの娘。朝のうちにもう2問解いてしまったので、遊べるらしい)とチェスをしている。
翔は、女の子たちにちやほやされているような気がする。

海へ。

夜ごはんは、焼き茄子とトマトのサラダ(ディル、私作)、チキンカレー(きこちゃん作)、島豆腐(できたてでまだ温かい)、丸ごとゆでたビーツのサラダ(マヨネーズ)、豚肉の鍋蒸しロースト(島らっきょう添え、きこちゃん作)。

(3月29日)
「マジックアワーとは、日の入り前の夕陽が最も美しい、空気の澄んだ時間」
ソーキそばのお店に貼ってあったポスターより。
こんなにおいしいソーキそばは、はじめて食べた。
そういう時間のことを、沖縄の言葉で「あこーくろう」と言うのだと、潤君が教えてくれた。

読谷に行って、焼き物を見てまわってから、水円というパン屋さんへお茶を飲みに行った。
車が走る道から、長い石段を下りると、年をとった大きな大きなくねくねした樹があって、樹の下には水を汲むところがあった。
川原さんがひとりで下りた。
私も、ひとりで下りた。
赤澤さんは下りない。
そのあと、外のテーブルで果物を甘く煮たシロップ入りの炭酸を飲んだ。
おいしい。
風が渡って、とても気持ちのいいお店。
アンソニー・アンド・ジョンソンズの曲がかかっていた。
お店をやっている香ちゃんという青いワンピースの女の人が、話しかけてきてくださって、握手した。
マメちゃんのパンの絵があって、私はとても驚き、でも、「そうか」と思った。
手打ちうどんのノブさんとマメちゃんは、ついこの間、このお店で何かをしたって。
畑の方に出ると、ロバがいて、坂道で足のない猫が毛繕いをしていた。
足が取れた関節のところ、深紅の骨がチュッと覗いていて、たまらなく美しい。

帰りの車。
最高潮に幸せだった。
翔が後ろの席で、私たちに外人の名前をつけていた。
すぐに忘れてしまうらしく、何度も呼ばれた。
「ナンシー(赤澤さん)」「リンダ(川原さん)」「私(アンナ)」。
そのあとは、ぬいちゃんと電話ごっこをずっとしてる。
同年代みたいに、普通に会話をしていてとても楽しそう。

窓の外は、でっかい夕陽。
たみちゃん「ずっと見ていると、中に月があるよ。月とか、いろいろいろなのが動くよ」。
私も夕陽をじっと見た。
ほんとだ。
月がある。
眩しいのに、よく見える。

●2018年3月26日(月)晴れ

6時前に目が覚めた。
カーテンを開け、上りかかった朝陽を浴びた。
太陽はずいぶん移動し、日の出は隣の建物に隠れてしまって見えないけれど。
りうの赤ん坊は、きのうのお昼ごろ、ぶじに生まれた。
ゆうべ、写真つきのメールが届いた。
3030グラムのとてもきれいな男の子だ。
唇の形がお稚児さんみたい。
予定日より大幅に遅れたし、へその緒がとても長く、首に三重にも巻きついていたそう。
メールには「なかなかの難産でした」なんて、なんでもないみたいに書いてあった。
でもきっと、ものすごく大変だったのだろうと思う。
りうは、生まれたての赤ん坊の隣で、溌剌と元気そうに写っていた。
ああ、よかった。
ほんとうに。
今朝もまた、空も海も街も白くけぶっている。
屋根がひとつだけ銀色に光っている。
あの真上に、太陽があるんだな。
12時半から「きょうの料理」の打ち合わせなので、きのう作っておいたレシピをプリントしたり、資料を集めたり。
のんびりゆっくりやっていても、まだ時間がたっぷりある。
きのうのうちに炒めておいた玉ねぎの鍋にスープ加え、チキンカレーも作った。
下の桜は、どんなだろう。
ゆうべ、寝る前に読んでいた本がとてもいい。
若菜晃子さんの『街と山のあいだ』。
ひと晩に一話か二話かずつ、ゆっくりと読み進めたいような、とても静かな本。
山のなかで雨に降られ、びっしょりになりながらひとりで延々と歩く話が好きだった。
打ち合わせは3時前に終わり、鷲尾さんとこれからお世話になるテレビのディレクターさんと坂を下って、桜見物に行った。
途中の神社で、りうについて感謝のお祈り。
川沿いの桜は八分咲き。
河原に腰かけ、缶ビールを1本と、パン屋さんで買ったおそうざいパンを食べながら、しばしお花見をした。
ディレクターさんは六甲駅へ、鷲尾さんとふたりで坂を上って帰ってきて、作っておいたカレーを食べ、しばしおしゃべり。
鷲尾さんは8時前にタクシーで新神戸へ。
さあ、明日は早起きして、いよいよ沖縄へ出発だ。
夜ごはんは、チキンカレー、白菜とにんじんのサラダ、ひたし大豆。

●2018年3月25日(日)晴れ

朝の7時にりうから電話。
陣痛らしきものがあったので、これから病院に行ってくるとのこと。
こういうとき、子を産んだことのない私は、どぎまぎしてしまう。
「うん、行っておいで。ふんばってね」としか言えなかった。
「みい、朝早くにごめんね。ありがとう」なんて、りうに言われてしまう。
こちらこそ、知らせてもらえてありがたかったのに。
りうの声はいつもと変わらず太く、はっきりとして、落ち着いていた。
スイセイにも電話したら、「ぼちぼち向かおうかのう」と言っていたそう。
立ち会うため、ジープで病院へ向かうらしい。
このところずっと、そろそろだなと気になっていて、神社に行くたびりうのことだけお祈りしていた。
がんばれー、りう。
今日は暖かく、とてもよく晴れているのに、空も海も白い。
街は、靄がかかったようにけぶっている。
春霞だろうか。
私はあさってから沖縄へ行くので、荷物をまとめたり、あちこち掃除をしながら冬の絨毯を夏向きのマットに代えたり。
沖縄は、きこちゃんのところへ遊びにいく。
旅のメンバーは、赤澤さん、川原さん、翔(私の姪のナッちゃんの小六の息子)。
翔は東京に住んでいるので、川原さんと赤澤さんが同じ飛行機で連れて行ってくれる。
私は神戸空港からひとりで飛び、那覇空港で待ち合わせ。
そして、私が沖縄を旅している間、中野さんもうちでひとり合宿をし、新作絵本の絵を描かれる。
8月に私がポルトガルに行っていたとき、描いていたものに、改めてもういちど向かい合うのだそう。
だから今、うちには絵の具がたくさんある。紙もある。
おとつい、中野さんが大阪の画材屋さんで買ってらした。
きのうはお見送りがてら、夙川へ行った。
六甲の坂を下りるときには、桜は一輪か二輪咲いているくらいだったけど、阪急電鉄沿線の桜も、夙川の桜も、ずいぶん開いていた。
川沿いをゆっくり歩いて桜見物し、ビールを軽く呑んで、おいしいお蕎麦を食べた。
私は沖縄へ、中野さんは絵へと旅に出る前の、ささやかなお祝い。
軽く買い物し、坂を上って帰りつき、夜ごはんを支度してひとりで食べた。
真っ暗になる前の、蒼い空のひととき、食後に食べた桜餅のおいしかったこと。
りうは、今ごろどうしているかな。
寄せては返す陣痛の波を、やりすごしている最中かな。
今夜が山場だろうか。
夜ごはんは、鰯のポルトガル風塩焼き(じゃがいももち、ゆで卵、トマト、玉ねぎ添え。ワインビネガー&オリーブオイル)。

●2018年3月21日(水)曇り時々小雨

ぐっすり眠って、7時前に起きた。
肌寒いけど、空気がピンとして気持ちいい。
朝から、沖縄へ行く支度をしていた。
神戸空港までの電車の時間を調べたり、旅のメンバーにメールをお送りしたり。
お昼ごはんを食べ、原稿書き。
2階の寝室にヒーターを入れ、暖かくしてやった。
書きかけの原稿が、すーっとできた。
続いて、もう1本も書く。
また、すーっとできた。
書きたいことをメモしておいたら、ほとんどそのまま文章になった。
はじめに出てきた言葉が、いちばん勢いがあるので。
今の私には、1000文字くらいの文字量がちょうどいいみたい。
シミズタから、「ソーセージを作った」と写真入りのメールが届いた。
今日は、東京は雪なのだそう。
こちらは風が強く、雲が流れ、青空が見えてきた。
「一日」での展覧会がぶじに終わり、残った絵などがダンボール箱で送られてきた。
とてもていねいに梱包してくださってあり、感激した。
掃除機をかけてから箱を開け、床にポスト(展覧会場に、感想を入れてもらう赤い箱を置いておいた)の手紙を全部出し、読んだ。
絵だけの手紙もある。
子どもが描いたのも、大人が描いたのもある。
生の言葉、筆跡。じーんとする。
芳名帳も、最後の見開きページには、三段重ねで名前がぎっしり並んでいた。
懐かしい人たちの名前。
牧野さんやいっこちゃん、立花君も来てくださったんだな。
夕方になって、リーダーからメールが届いた。
今「ミロ(シミズタとケイスケの店)」に来ていて、これからソーセージを頼むのだそう。
しばらくして、ソーセージのでき上がり写真が送られてきた。
丸々1本の荒々しいソーセージ。
ザワークラウトとマッシュポテト添え。
なんて、おいしそうな!。
ザワークラウトは、波照間島の良美ちゃんから送られてきた6個の キャベツで作ったとのこと。
返事を書き、灯りがつきはじめた夕暮れの海と空の写真を撮って送った。
なんだか今日は、東京、神戸、沖縄が近いような夜。
夜ごはんは、卵うどん(半玉分)、しょうがの佃煮のおにぎり(冷蔵庫にあったのをセイロでほかほかに蒸した)、蒸し白菜(おにぎりの隣で蒸した。ポン酢醤油、菜種油たらり、七味唐辛子。これはおいしい!)。

●2018年3月20日(火)小雨が降ったり止んだり

ずっと寝ていた。
お風呂にも入らず、パジャマも着替えずにずーっとベッドの人。
『たべもの九十九』を読んで、眠たくなるとパタンと本をふせて。
なんだか、今と昔と夢のなかを、ゆわゆわと旅しているみたいだった。
きのうはとても楽しかった。
休ミちゃんはお酒を呑んだら絵を描かないから、一緒には描けなかったけれど。
台所で私が料理を作っては出し、みんなで食べた。
休ミちゃんからリクエストがあったので、マヨネーズも一緒に作ってみた。
ソーセージをゆでて焼くのも、途中から筒井君にやってもらった。
お土産に一本包んだのを、留守番をしているミニちゃんに焼いてあげられるように。
日本酒の酔い方がやさしく、お腹に、気持ちに、あたたかく染み渡るような感じだった。
近ごろ私はブルーハーツにはまっているので、最後にユーチューブをかけた。
♪リンダリンダーのところで、筒井君と休ミちゃんが条件反射のように踊り出した。
筒井君、ジャンプしてはった。
本物のロッカーみたいに高く跳ねるんだけど、静かに着地する。
何度も跳んでいて、可愛らしかった。
あっという間に時間がたってしまい、大豆の炊き込みご飯も、デザートも出せなかったけど、7時半くらいにお開きになる前に、3人で『あさがくるまえに』を読んだのも、なんかよかった。
私たちは、絵本を作る仲間だから。
夜ごはんは、ミニちゃんにいただいた梅干しでお粥にしようと思ったのだけど、けっきょくごはんを炊いた。
ひき肉と白菜のあんかけ丼(とりガラスープの素、柚子こしょう、みりん、きび砂糖、薄口醤油)、ひたし大豆。 残ったご飯をお弁当箱に詰め、ミニちゃんの梅干しをのせた。明日のお昼のお楽しみだ。

●2018年3月19日(月)曇り

今朝は曇り。
海も、空も白く、境がない。
天気予報では雨だと言っていたから、よかったな。
今日は休ミちゃんと筒井君がいらっしゃるので。
先週は東京と鎌倉。
とてもとても、楽しい旅だった。
神戸に帰ってきてからも、まだ旅をしているようだった。
中野さんはあと3泊して、筒井君のところへ打ち合わせに出かけたり、その次の次の日には、私がつよしさんと打ち合わせをしたり。
東京でのこと、鎌倉でのことは、こんど落ち着いたらゆっくり書こう。
パソコンを持っていっても、最近は日記がまったく書けない。
開いてくださった方、申しわけありません。
朝起きて、今日のメニューを紙に書き、台所の壁に貼った。
今日は「かっぽう高山」。
献立は、う、ふマヨネーズ(ゆで卵の手作りマヨネーズのせ)、白和え2種(ひじき→炒りごま、塩、きび砂糖・絹さや→炒りごま、塩、白みそ)、ゆで立て大豆(辛し醤油&塩とごま油)、京都の菜花のおひたし(辛しみそマヨネーズ)、かぶとかぶの葉のこっくり炊き、手作りソーセージ&じゃがいものガレット、大豆の炊き込みご飯&韓国風肉みそ(海苔で巻いて食べる)。
お飲物は、キリン一番搾り、白ワイン、ワインクーラー、飛騨のどぶ(にごり酒)、亀泉(高知の日本酒)、ダバダ(土佐の焼酎)ジャスミンティー、六甲のおいしい水(うちの井戸水)。
デザートはいちごアイス。
中野さんはきのうの朝、実家に帰られた。
なので、お客さんは二人だけ。
休ミちゃんははじめてうちにいらっしゃる。
絵、いっしょに描いてみたいな。
愉しみだな。

●2018年3月10日(土)快晴

7時15分に起きた。
太陽はとっくに上っていた。
朝ごはんを食べてすぐに「気ぬけごはん」の続き。
お昼過ぎにはほとんど書けた。
東京に行く前にやっておきたかったから、これでひと安心。
ゴミを出しにいったり、荷物をまとめたり、のんびり支度する。
掃除機をかけ、これから雑巾がけをするところ。
今日は海が真っ青だから、あとでビールを呑もうかな。
そういえばさっき、ゴミを出すときに廊下の窓越しに小鳥が見えた。
お腹ガオレンジ色の、ぷっくりとした可愛らしいのはヤマゲラ。
黒と白の横縞の、はじめて見る小鳥もいる。
頭がぽしゃぽしゃした、わりと細身の小鳥。
あとで調べてみたら、コゲラだった。
キツツキの仲間だそう。
ヤマガラかと思っていた小鳥は、もしかするとショウビタキかもしれない。
さえずりが似ていた。
海を眺めながら台所に立ってビールを呑んでいたら、つよしさんにお電話したくなった。
絵本のことを、ぽつりぽつりおしゃべり。
つよしさんは、たくさん話があったみたいで、いっぱいおしゃべりしてはった。
電話してよかったな。
夜ごはんは、春巻き(いつぞや作って冷凍しておいたもの)、白菜の塩もみ(かぼすこしょう)、チゲ風スープ(いつぞやのひとり鍋の残りにコチュジャンとキムチ、えのき)、納豆(白身を加えてふわふわに泡立てた)、ご飯。
さあ、明日からまた東京だ。
今夜は早めにベッドに入って、絵本を読もう。

●2018年3月9日(金)曇り

ゆうべはたいへんな風だった。
何もかもを吹き飛ばしてしまいそうな、大きな大きな風。
ときどき、ヒュルルルルーと笛のような甲高い音もしていた。
吹き荒れる風の音を聞きながら、ベッドのなかはぬくぬくとあたたかい。
風の夜はよく眠れる。
朝になってもまだ吹いていて、でも、8時を過ぎたころにちゃんとやんだ。
このあたりは夜に風が吹くことが多い。
六甲おろしとはいうけれど、昼間の風は、吹いてもたかが知れている。それが不思議。
きのうは、「気ぬけごはん」をひと通り書いて、雨のなか図書館へ本を返しにいき、買い物をして、「MORIS」に寄った。
今日子ちゃんにマントゥーを教えてほしいとお願いされていたので、もしかして、今日やるのはどうだろうと思い、お誘いしてみた。
今日子ちゃんの顔がパッと輝いた。ひろみさんも嬉しそうだった。
本当に嬉しいとき、今日子ちゃんは両手で指パッチンをしながら歩いてまわるみたい。
ふたりにはいつもお世話になりっぱなしだから、喜んでいただけて私も嬉しかった。
それで、ひろみさんと3人でタクシーに乗り、帰り着いてすぐにふたりで練りはじめ、はさむ具も作った。
ひろみさんにいただいた日本酒をちびちび呑みながら、なんとなく「バー高山」みたいになって、冷蔵庫のあるものをちょこちょこお出ししながら、発酵を待った。
マントゥーはほんのり甘く、ほわほわで、とてもおいしくできた。
おふたりが帰ってから、すぐにお風呂に入ってあたたまり、バタンと寝た。
雨はずっと降り続いていたけど、思いがけず楽しい夜だった。
今日は今日とて、「気ぬけごはん」の続きだ。
朝、母からのを皮切りに、今日はたくさん電話がかかってきて、大忙しだった。
夜ごはんは、ケチャップ・チキン丼(ご飯の上に白菜の細切りをしいた)、ちぢみほうれん草炒め、ひじき煮、いぶりがっこ。

●2018年3月8日(木)曇りのち雨

7時前に起きたのだけど、陽はもう上ったあとのようだった。
太陽はどこにあるんだろう。
雲のなかに隠れていて分からない。
ちょっと肌寒い。
近ごろは、朝ごはんにヨーグルトを食べるのが気に入っている。
「MORIS」で買った、とっておきのガラスの器に盛って。
今朝は、文旦の上にクリームみたいにヨーグルトをのせた。
あとはバタートーストだけ。
朝風呂に入って、お湯をぬきながら東京へ着ていく薄手のセーターを洗った。
11日の東京行きまでに私のやることは、「気ぬけごはん」。
図書館へ本を返しにいくこと。
冬物をクリーニングに出しにいくこと。
この間取材していただいた、新聞の記事を確認すること。
あとは、何があるだろう。
えーと。
まだまだ、時間はたっぷりある。
夜ごはんは、今日子ちゃんとひろみさんと3人で。
ほうれん草のおひたし(いりごま、ごま油)、かぶとかぶの葉の鍋蒸し煮(きのうの)、おにぎり(お昼ごはんの残りひとつを三等分し、ひじき煮をのせ、のりで巻いた)、油揚げのカリカリ焼き(かぼすこしょう)、かぶの葉をゆでたの(マヨネーズ、かぼすこしょう)、手作りマントゥー、肉みそ(にんにくと豚ひき肉をごま油で炒め、酒、きび砂糖、麹たっぷりみそ、普通のみそを加えて炒りつけ、仕上げにミニトマト)、じゃこ入り卵焼き&焼き肉(玉ねぎ)&豆苗炒め(今日子ちゃん作)。

●2018年3月7日(水)晴れのち曇り

9時に起きた。
大大寝坊。
ゆうべは8時にはベッドに入ったから、13時間眠ったことになる。
ゆらゆらと、うすーく寝ていた感じがする。
夢も、みたんだか、みなかったんだか。
最近は、朝陽を見ていない。
今日は『たべもの九十九』の発売日。
全国の本屋さんへ飛んでゆきました。
自分が書いたことを忘れ、はじめて読む人になったつもりで読んでみたら、なんだかこの本は短編集みたいだなと感じた。
小説とまではいかないけれど、短い物語の集まり。
私の人生のなかで起こったことを、この目で見、体で感じたのは確かなのだけど、何度も思い出し反芻しているうちに、”お話”というようなものになった。
著者が語り部となって書いているような。
その物語には、食べ物にまつわることが必ず登場する。
食べ物というより、食べること。
食べ物のことをひとつつまんで書きはじめたら、ずるずるーっと、いろんな玉がくっついてきて、自然とそうなったのだけど、食べる=生きるだから、なんだかこれまで生きてきた跡を、振り返るようなことになった。
そんな感じだ。

今日は、あちこち埃が気になるので、ていねいに掃除した。
ゆっくりゆっくり動いて、たまっていた雑誌や紙の束も整理した。
しょっちゅう手をとめ、海を眺めながらやった。
なんだかようやく、いつもの暮らしに戻ったみたい。
日曜日からまた東京だから、ぼちぼち支度をしながら、たっぷり休んでおこう。
夕方、ミルクティーをいれてベッドに腰かけ、海を眺めた。
今日の海は、空との境がない。
ひろびろと、茫漠と。
やっぱりここは、最高だ。
明日はちゃんと起きて、陽の出を見たい。
「気ぬけごはん」も明日から書く予定。
夜ごはんは、ひじき煮(油揚げ、干し椎茸。だしは干し椎茸のもどし汁だけしか使わなかったのだけど、だしをとったあとの昆布が冷凍してあったので、ひじきくらいに細く切って加えてみたら、切り昆布煮のようになってとてもおいしかった)、かぶとかぶの葉の鍋蒸し煮、簡単ひとり鍋(しゃぶしゃぶ用豚肩肉、豆腐、えのき、ポン酢醤油、七味唐辛子)、ご飯。

●2018年3月6日(火)晴れ

今日は海がまっ青。
ラジオからアラビアの音楽が流れている。
それが、ぴったりな青だ。
このところ、ずっと日記が書けなかった。
この1週間、あまりに楽しく、めまぐるしくて。
ブログを覗いてくださった方、ごめんなさい。
東京へ行ったのは2月26日から3月1日まで。
その間、川原さんの家に泊めてもらい、また今回も楽しいことがいっぱいあった。
シミズタとケイスケのお店「ミロ」のオープンに行ったり、たくさんの人に会い、呑んだり食べたり。
「一日」の展覧会にも、いろいろな方が見にきてくださった。
絵を見にきてもらえることが、こんなに嬉しいとは思わなかった。
そしてまた、買っていただけるなんて!。
それはとんでもなく嬉しく、はずかしく、ありがたくてたまらなく、申しわけないような気持ち。
はじめて買ってくださった女の子に、私は自分の持っているものを何でもあげたくなった。
神戸に帰ってきて、まもなく大阪でトークイベントがあり、その日は中野さんも大阪で別のイベントがあったので、終わってから合流した。
それが3日だったかな。
中野さんはきのうまでうちに泊まり、私は午前中に新聞のインタビューを受け、お昼過ぎに見送りがてら六甲駅に下り、買い物をして帰ってきた。
泊まっている間、中野さんは夏の間に描いていた自作絵本の大きな絵を眺めてらした。
私は私で、つよしさんとやっている絵本のテキストのことを、東京にいる間もずっと考えていたから、早く向かいたかった。
私が「のぼってきています」と言うと、「ぼくもです」。
帰ったらすぐに向かい、だいたいできた。
ゆうべは早めに寝た。
ゆらゆらといろんな夢をみながら。
ああ、もうたっぷり眠ったな。もうお昼近いのかな……と思いながら起きたら、まだ8時半だった。
神戸のこの家は、疲れを癒す深くて強い力がある気がする。
布団と洗濯ものがいっぱいに干してある2階の部屋で、ゆうべ書き上げた絵本のテキストを読んだ。
まだ、もう少し直さないと。
ベッドに寝そべり、声を出して読んでみる。
パソコンに向かい、直す。
そのくり返し。
お昼を食べてまた向かう。
4時ごろにでき上がり、つよしさん宛の封書に。
坂の途中にポストがあるので、そこまで下って、また上って戻ってこようと思っていたら……坂の上のところで郵便配達のお兄さんに出会い、「預かっていきましょか?」と声をかけられた。
お兄さんは私の絵本のテキストを、ベルトについた小さなカバンに収めていた。
なんだか、ムーミン谷の郵便配達夫みたいだった。
ようやく今日から、いつもの暮らしにもどりました。
夜ごはんは、チャーハン(いつぞやの大豆と大根のグラタンの残りに、ちりめんじゃこ、かぶ、青じそを加え、冷やご飯と炒めた)、ちりめんほうれん草のおひたし(白ごま)、天かす入りいり豆腐(絹さや、卵。ゆうべの残り)の予定。

●2018年2月24日(土)曇りのち快晴

6時半に起きた。
カーテンを開けたら、上ったばかりの太陽がコロンと丸く雲に透けていた。
雲に覆われているので、ちっとも眩しくなく見ることができる。
いつの間にやら日の出の時刻が早くなり、上る場所もずいぶん変わってきた。
もう少ししたら、隣の建物に隠れて見えなくなってしまう。
朝風呂から上がって身支度をしていたら、聞き慣れない小鳥の声がする。
双眼鏡で覗いてみた。
でも、よく分からない。
ヒヨドリのような気もする。
ヒヨドリは、ほかの鳥のさえずりを真似することがあるそうだから。
猫森の枯れ枝の先にとまっている。
ふと、後ろに見える遠くの海の、金色に光っているところを見た。
朝の早い時間は太陽が低いから、海もそこだけ金色。
そしたら、雲にうっすら隠れている太陽から海に向かって、金の粉がちらちらと降っていた。
肉眼では見えず、双眼鏡でしか見えない光。
え? これは何?。
明日もまた、このくらいの時間に双眼鏡で調べてみよう。
月曜日は、絵の飾りつけのため東京に行く。
なので、今日はその支度をみっちりやったら、ぼちぼち旅の荷物をまとめよう。
東京にいる間は、また居心地のいい川原さんの家に泊めてもらえる。
吉祥寺に住んでいたころには、あんなにちょくちょく遊びに行っていたのに、いちども泊まったことがなかった。
お風呂にも入らせてもらったことがなかった。
いよいよ2月28日(水)から、「一日」で『たべもの九十九』原画展がはじまります。
川原さんが飾りつけを手伝ってくれるので、とても心強いけれど、何もかもがはじめてのことでどきどきしている。
なんか、発表会みたい。
展覧会は、3月18日まで開いているので、よろしかったら覗きにいらしてください。
夜ごはんは、ぺろっこらーめん(岩手の物産展で買った、ワンタンの皮みたいなラーメン。白菜、人参、ほうれん草)。

●2018年2月22日(木)快晴

7時過ぎに起きた。
矢内さんが8時半の電車に乗らないとならないので。
朝陽はもう上っていたけれど、海がオレンジ金に光っていた。
矢内さんを起こしたら、窓に張りついて、しばらく外を眺めてらした。
1階に下りてからも、矢内さんは何度も窓辺に立っていた。
きのうは打ち合わせのあと、六甲駅までてくてく歩いて関西のディレクターさんをお見送りし、また戻ってきて、蒼くなりはじめた空と海を眺めながら、矢内さん、鷲尾さんと3人で乾杯した。
東京で十年以上もお世話になっていたおふたりに、ようやく六甲の家へ来てもらえたのが、私はとても嬉しかった。
8時くらいにタクシーを呼んで、鷲尾さんは新幹線で東京へ帰られた。
翌朝(今日のこと)大阪で打ち合わせのある矢内さんと、そのあともワインをゆっくり呑み、たくさんおしゃべりし、矢内さんは泊まった。
酔っぱらって、ふたりで『あさになるまえに』を読んだのだけど、ゆうべ矢内さんの夢に、絵本のなかの白鳥が出てきたのだそう。
頭の上をばさばさばさばさと、通り過ぎていったのだそう。
朝ごはんを窓辺で食べ、タクシーのお見送り。
私はそのあとすぐに、『帰ってきた日々ごはん4』の校正の続きを洗濯機をまわしながらやって、屋上にシーツとバスタオルを干しにいった。
背中を伸ばして深呼吸。
裏の山々はもう、冬とは確実に違う。
なんとなく、薄茶に桃色が溶けている。
校正は3時には終わり、そのままの勢いで封筒を開いた大きな紙に、アルバムにのせる写真をどんどん切り貼りし、言葉をつけていった。
これはスイセイから出ている宿題。
夢中でやって、ようやくできたところで柱時計が6回鳴った。
この部屋は、こういう作業をするのにとても向いている。
絵の具が床についてもあとでふけばすぐきれいになるし、大きな紙を何枚も広げたまま夢中になっていてもだいじょうぶ。
この間も、展覧会の垂れ幕を描いているときにつくづく思った。
私は絵本のお話や、文章をたくさん書くためにここへ越してきたつもりになったいたけれど、絵を描くためもあったのかもしれないと、このごろは思う。
うちには紙も画材も自由に使わせてもらえるのがいくらでもあるし、中野さんの魔法のクレヨン(外側に絵の具がびっしりついているので、描いてみるまで何色か分からない)もある。
夜ごはんは、豚の焼き肉(豚バラの薄切りを、脂を出して紙で拭きながら焼き、焼き肉のタレでからめた)、白菜とかぶの葉炒め、キムチ、みそ汁(大豆、かぶの葉)、ご飯。
食後に、関西のディレクターさんにいただいたいろんな柑橘の皮をむいて、房からはずしながらつまんだ。
お風呂から上がったら、さすがにぐったりくたびれた。
今日は朝からからがんばったもの。
夜、『あさがくるまえに』をアマゾンに注文した。

●2018年2月20日(火)晴れ

起きてすぐ、きのうの絵の続き。
絵というのは時間がたつと変わるのか、自分の目が変わるのか。
だからつい、続きを描きたくなる。
午後からは2階の机で『帰ってきた 日々ごはん4』の校正をしながら、アルバムについてのアイデアを頭の中で練っていた。
ピンポンが鳴った。
管理人さんだった。
「高山さん、今日は洗濯をされますか?」
「はい、今しているところです」
「屋上に干されますか?」
「いいえ」
「ああ、それならよかった。今日は私、お昼過ぎに急に帰ることになりました。屋上の鍵もかけてしまうので、高山さん、洗濯ものが干せんようになるなあと思いまして」
廊下の消火栓にSカンをひっかけ、ソーセージを干しているのを注意されるのかと思ってどきどきしていたら、そうではなかった。
私が「こんなものを作ってしまって……」とソーセージのことを言うと、「高山さんは器用ですね。いいですねえ、何でも作れるんですねえと、きのうも管理会社の者と話とったんですよ」と言われた。
校正を10月分まで終え、洗濯ものをたたみながら夜ごはんの支度。
『帰ってきた 日々ごはん4』は、絵本を作りはじめた最中の日記なので、とても濃い日々だ。
何年か前の日記だから、いつもだったら校正をしながら「そんなこともあったなあ……」と、ちょっと他人ごとのように感じるのだけど、どういうわけかあのころのことはすみずみまで鮮明に覚えている。
どんな気持ちになったかも、スイセイの表情も、景色も、生々しく覚えている。
めったに起こらないことばかり立て続けに起こったから、凝縮された濃いものが体に刻み込まれているのかもしれない。
不思議だなあ。
今日は春のようにあたたかい一日だった。
夜ごはんは、大豆のトマト煮(いつぞやのスープを大豆だけ残しておいて、トマトペーストを加えた)、ほうれん草とじゃこのペンネ(ペンネと一緒にじゃがいもをゆでて加えた)。
たっぷりのオリーブオイルでにんにくとじゃこを炒め、ほうれん草を加えて、ゆで上げたペンネとじゃがいもをからめた。
パスタにじゃがいもを加えるのは、今日子ちゃんの真似。

●2018年2月19日(月)曇り

うすら寒い。
朝から展覧会のことばかりやっていた。
垂れ幕の続きの絵を描いたり、チョコレートの小箱に絵を描いたり。
描いていると絵の脳みそになるのか、ほかのことが何もできなくなる。
きのうは、中野さんをお見送りがてら新開地で軽く呑んだ。
楽しいときには時計の針がなかなか動かず、時間が止まったような感じになるときもあるのだけど、きのうはなぜだか針が早く(普通に)動いていた。
でも、最後の20分が長かった。
どういう具合でそうなるのだろう。
そのあとで私は、岡本の絵本屋さんへ行ったのだけど、お休みだった。
それで、住吉にある大きい図書館へ行こうと思い、間違えて阪急電車に乗ってしまい、御影で下りた(そこが図書館のある住吉駅だと思っていた)。
ああ、ここは違う駅だと気づき(住吉はJR線)、地図を見たら意外と近くだったので、タクシーで図書館へ向かった。
閉館まで30分しかなかったのだけど、どうしても絵本を借りて帰りたかった。
大急ぎで5冊ばかりみつくろい、借りる手続きをし終わってからふと左を見たら、返却台の棚に気になる絵本が置いてあった。
『あさがくるまえに』。
絵だけのページがしばらく続き、発せられる、はじめての言葉がとてもいい。
力ある言葉は、絵の力によってさらに響いている。
見開き1ページに一行、ひとことずつこう続く。
「ふかい闇につつまれて」
「ねむっているあいだに」
「まいあがるものと、まいおちるもので」
「空がいっぱいになりますように」
そこまで読んで、借りてきた。
私はこの絵本に出会うため、岡本の絵本屋さんに行くことができず、御影駅で間違えて下り、タクシーでここまできたのかもしれないとそのとき思った。
今日はソーセージを作って、干した。
水曜日に東京からお客さんがいらっしゃるので。
「きょうの料理」の矢内さんと鷲尾さん、関西のディレクターさん。
なんとなく頭がぼんやりするから、今夜は早めにお風呂に入って、『あさがくるまえに』をまた読んで寝よう。
夜ごはんは、かぶと鶏と大豆のみそスープ(かぶと鶏のこっくり煮の残りで)、大根葉のじゃこ炒め、キムチ、ご飯。

●2018年2月17日(土)晴れ

風はあるけど、春のように暖かい。
東京から、おとついの夜遅くに帰ってきた。
パソコンを持っていったのに、楽しいことがいろいろありすぎて日記がまったく書けなかった。
きのうは一日、寝たり起きたり。
ベッドのなかで小野さんにいただいた本や、絵本を読んだり。
大豆をゆで、ゆで汁に玉ねぎやじゃがいもソーセージを加え、スープを作って食べた。
木皿さんとのトークも、楽しくてあっという間だった。
川原さんもリーダーも、シミズタもケイスケも、サンも、「ニチニチ」の星野君も、「まめ蔵」の前でばったり合ったマスターも、みんなみんな元気そうだった。
最後の日は、東京も春のように暖かかったけど、帰ってきたら神戸も負けないくらいに春だった。
今朝は8時半に起きた。
美容院、図書館へ。
通りを歩いていると、実際には匂いがしないのだけど、花の香りがするような。
しっとりと汗ばむような、そんな日だ。
帰り道、「MORIS」のベランダに亜衣ちゃんの娘さんがちらりと見えたので、たまらず会いにゆく。
亜衣ちゃんは窓を開けた「MORIS」の台所で、ひとり料理をこしらえていた。
ゆるやかな空気のなかに、スパイスやお肉のいい匂いが漂っていた。
目には色濃い緑の野菜。
亜衣ちゃんの紺色の大きなエプロンの後ろに、娘さんがまとわりついたり、離れたり、隠れたりしているのが愛らしく、なんだかうらやましいような気持ちになった。
お母さんというのは、娘と一緒にそこに立っているだけで、動いているだけで、笑っているだけで艶っぽい。
今日は、中野さんが大阪の図書館でイベントがあり、終わってからいらっしゃる予定なのだけど、まだみたい。
待ちきれず、海が青いうちにひとりビールを呑みはじめる。
今夜のメニューは、かぶと鶏肉のこっくり煮、菜の花のおひたし(辛し味噌自家製マヨネーズ)、マグロの中落ち丼(黄身醤油、梅たたき、ねぎ、青じそ)の予定。
※3月11日の「一日」でのトークイベントのご予約は定員に達したため、しめ切りになったようです。ありがとうございます。

●2018年2月12日(月)晴れのちお天気雪

今朝も朝ごはんに「プチ・ブレ」さんのパンを焼いて食べた。
皮がパリッとした方の食パン。
おいしいなあ。
朝からずっといいお天気で、けっこう暖かかったのだけど、寒い、寒いと思って窓を見たら、雪。
お天気雪だ。
風に舞い、上からも下からも降っているように見える。
今朝は、明け方に、体のなかで仄めく光のようなものがあった。
ほんのり温かいような、クリーム色の小さな光。
起きてからもその感触が残っていた。
それで朝から、絵本のお話の推敲をずっとやっていた。
これは、ずいぶん前に書いておいた猫の話。
ひさしぶりに読み返すと、どこが悪かったかよく分かる。
ひととおりでき上がり、声を出して読み終わったちょうどそのとき、かかっていたシャンソンの曲と相まり、物語が窓から飛んでいくような感じになった。
「ムーラン・ルージュの唄」。
ラストにぴったりの歌だ。
ケンカの強いキズだらけの猫が出てくるこの話は、大衆演劇のようでもある。
さあ、そろそろ東京行きの荷物を支度して、『帰ってきた 日々ごはん4』の初校の続きをやろう。
夜ごはんは、春巻き(この間作っておいた、白菜とひき肉の中華風煮込みにしろ菜を加え、水溶き片栗粉でまとめ具にした)、天かす入りいり豆腐(いつぞやの残り)、白菜とソーセージのスープ煮(お昼ごはんの残り)、しろ菜のおひたし(ちりめんじゃこ、ごま油、ポン酢醤油)、しょうがの佃煮、ご飯(せいろで温めた)。
夜ごはんを食べ終わったころ、つよしさんから銅版画の絵が何枚か送られてきた。
す、すごい!。

●2018年2月11日(日)晴れ

7時15分にカーテンを開けた。
ぽっかりと丸い、橙色の太陽。
そのまま布団をかぶり、眠ってしまった。
ひなたぼっこをしているみたいに太陽を浴びながら。
柱時計が9回鳴って起きた。
今朝は「プチ・ブレ」さんのおいしいパンを焼いて食べよう。
来週の火曜日から東京に行くので、なんとなく支度をしたり、日記を書いたり。
さて、そろそろ『帰ってきた 日々ごはん4』の校正をはじめようかな。
今日はストーブをつけなくても暖かいな。と思って、窓を開けたら、それでもまだ暖かい。
さやさやと風、海も穏やかに光る春のような日だ。
「かもめ食堂」のりっちゃんからメールが届いた。
木皿さんとのトークイベントで東京へ行くことについての最後に、「気をつけて帰ってきて下さいね」と書いてあった。
そのひとことがなんだかとてもうれしかった。
「行ってきて」ではなく、「帰ってきて」。
そうか、私は神戸の住人で、神戸にまた帰ってこられるのか。
『帰ってきた 日々ごはん4』の校正は、5時半まで2階の机でやった。ときどき青い海を眺めながら。
夜ごはんは、カレーライス(みにちゃんのおいしいらっきょう)、ゆで卵とトマトと人参のサラダ(玉ねぎドレッシング)。

●2018年2月10日(土)雨

冷たい雨。
8時半に起きた。
ぐっすり眠って、夢もいろいろみた。
パンを切らしているので、朝ごはんはパンケーキを焼いた。
トマトも焼いて、仕上げにホワイトビネガー。
これは、なんとなくポルトガルな感じ。
鰯の塩焼きと食べたら、おいしそうな味。
さて、これから大阪の画材屋さんに行ってこよう。
まず、「プチ・ブレ」さんでおいしい食パン(この間、今日子ちゃんが作ってくれた卵サンドがとてもおいしかったので)を買って、「MORIS」に寄って荷物を置かせてもらい、また帰りに寄って、本(ソーセージが載っている『料理=高山なおみ』)にサインもしてこよう。
小旅行な気分で、楽しみだ。
画材屋さんではほしいものをじっくり見て、いろいろ買ってきた。
スケッチブックや、葉書サイズの画用紙や、色鉛筆やパネルやら。
ずっと雨だったけど、木皿さんの本(私が手作りしたもの)を読んだり、ときどき目を上げて霧にけぶる山を見ながら電車に揺られるのは、心落ち着く時間だった。
私はほんとうにいいところに越してきたなあと思いながら、山を見ていた。
帰りに「MORIS」に寄ったら、中国茶のお教室だった。
ヒロミさんの隣に座り、本のサインを少しして、とても珍しいお茶の一煎目をいただいた。
中国茶教室のときの「MORIS」は、薄暗く、ほの明るく、小さな音までよく聞こえる。
「香りをお聞きください」と先生がおっしゃった。
先生の立ち居振る舞いをぼんやり眺め、気配のようなのを私は聞いていた。
とくとくとくとく。さらさらさらさら。
夜ごはんは、ほうれん草炒め、ソーセージ炒め、揚げ玉入りいり豆腐、お弁当箱の冷やごはん、かぶのみそ汁。
食べながら、ご飯の冷たいのがお腹に入るのが分かった。
お腹の調子もあまりよくないみたい。
雨の外出で冷えたのかな。
薬屋さんで温泉の素を買ってきたから、お風呂でよく温まり、今夜は早めにベッドに入ろう。
お風呂から出たら、窓の外が真っ白。
ふかぶかとした霧のなかにもぐったよう。
夜中にふとカーテンをめくると、霧は下の道のところまで押しよせ、猫森の枝の先だけが電灯に白く光っていた。

●2018年2月9日(金)晴れ

7時に起きた。
よくない夢をみて、ちょっとだけ目覚めが悪いような感じだった。
このところ人にたくさん会いすぎて、もしかしたら私はちょっとくたびれているのかも。
ソーセージ教室はとても楽しかった。
集まったみなさんが、ソーセージとマッシュポテトをそれはそれはおいしそうに食べていて、私は心底うれしかった。
今日子ちゃんの文旦のデザートも、ガラスの美しい器に負けない澄んだ味がした。
房からはずした文旦と甘夏のシロップ和え、アール・グレイ紅茶のグラニテ、水のゼリーの絶妙な組み合わせ、おいしかったなあ。
今日子ちゃんはくったくのない人だから、デザートの味にも、盛りつけにもそれが表れる。
きれいなのに、整いすぎていないところがまたいいんだと思う。
なんか、「MORIS」で開く教室は、きれいで実質的な心のようなものを、やりとりするような安心感がある。
静かで、おおらかで、ゆっくりと、落ち着いた空気。
あの日は、教室に参加くださった宮下さん(京都に住んでいる編集者)をお誘いし、うちで過ごした時間もとても楽しかった。
私は、信頼できる関西の編集さんに、また新しく出会えたのだと思う。
きのうは、「かもめ食堂」のりっちゃんとやっさんが突然遊びにやって来て、ソーセージとマッシュポテトを作り、一緒に食べた。
私は木皿さんの新刊(『木皿食堂3 お布団はタイムマシーン』)のゲラを切り抜いて、本のようなものを作っていたので、なんとなくふたりのことも思いながらやっていた。
だから、玄関を開けて佇んでいるふたりを見たとき、「わっ!」とびっくりしつつ、それほどには不思議じゃなかった。
車で坂を下り、いつもの「コープさん」に買い物に行ったり、ふたりのマンションをちょっとだけ訪ねたのも楽しかった。
そうそう。
きのうは、朝から管理人さんが長靴姿でいらっしゃり、お風呂場の下水のつまりと格闘してくださっていた。
ズッポン! ズッポン!。
「こうやって、何度も繰り返していれば、まあ、2時間も続けておれば、そのうちすーっと通ることがあるんです」とおっしゃって。 いちど様子を見にいったら、配管の黒い鉄サビが浮かんだ水びたしのお風呂場に立って、腰を曲げ、排水溝をじっとのぞいてらした。 微妙な水の引き加減を観察しているようだった。
髪の毛が絡まったわけの分からないゴミも、取りよけてくださってあった。
ああ、本当に申しわけない。
私は途中でコーヒーを淹れた。
朝10時に来てくださって、柱時計が12回鳴るまでやって、「高山さん、やっぱり私ではだめのようですわ。事務所に伝えて、業者さんに来てもらうようにいたします」
とおっしゃった。
管理人さんは、本当に立派な人だなあと思う。
けっきょく、事務所の方(大家さん)の立ち会いのもと、7時過ぎに業者さんがふたり来て、15分ほど作業をし、すぐに流れるようになった。
今日は、朝からあちこち掃除。
すみずみまで雑巾がけもした。
シーツやらバスタオルやら、布巾やらクロスやら四角い物をたくさん洗濯し、屋上に干してきた。
今日は掃除やら、書類の整理やらしているうちに一日が終わってしまった。
なんとなく、何かがはじまる前のような、そのせいで胸のつかえがあるような、そんな感じもする。
新しく何かがはじまるときというのは、楽しみと同時に怖さもある。
そういう日は掃除をするにかぎる。
『帰ってきた 日々ごはん4』の校正は、もう少し落ち着いてからやろう。
夜ごはんは、白身魚ときのこのグラタン(カラスガレイ、舞茸)、ほうれん草と菊菜のオリーブオイル炒め、かぶのみそ汁、しょうがの佃煮、たくあん、ご飯。

●2018年2月6日(火)快晴

風もなく暖かい。
今朝の海は、きらきらというよりぴかぴかしている。
  平らにぺったりと光っている。
いい景色を見ながら、歯磨きをするのが好きだ。
なので今朝は、わざわざ2階に上って窓を開け、手を腰に当ててした。
そういえば山の家でも、毎朝歯ブラシを口にくわえ、庭に出て畑を眺めながらとか、スイセイが朝飯前の作業をしているのをぼんやり見ながらしていたっけ。
帰ってきてからきれいになっていると気持ちがいいので、あちこち掃除機をかけた。
さて、そろそろソーセージ教室に行ってこよう。
どんな生徒さんがいらっしゃるんだろう。
今日子ちゃんとヒロミさんのおかげで、こうして外向きになれるのがとてもありがたい。
ほっておいたら私はずっと、家にこもって書き物ばかりしているから。
さて、どうなることやら。

●2018年2月4日(日)晴れ

さっき、コンビニまで下りて宅配便を出してきた。
このところ、寝ても覚めてもやっていた『たべもの九十九』の最終校正が終わったので。
陽は差していたけど、けっこう寒く、風も強かった。
でも、すがすがしい空気。
坂を下りるとき、もみの木の集まりが枝を揺らして風に鳴っていた。
いつもの神社でお参り。
帰りは、荷物がないのですいすい。
最後は後ろ向きで、青い海を見ながら上った。
でも、今日はちょっとくたびれた。
朝からソーセージを12本仕込んだし。
これは、火曜日に「MORIS」で開くソーセージ教室の生徒さんに食べていただくもの。
おいしくできるといいな。
今日子ちゃんがつけてくれたタイトルは、「なおみさんのソーセージ&マッシュポテト実演教室」。
こんな文章も添えてくださった。
「昨年末、高山なおみさんのお家であったかいご飯をご馳走になり、お土産に手作りソーセージをいただきました。
あまりに美味しかったので、ソーセージ教室をお願いしました」
(※ソーセージ教室は定員に達したので、「MORIS」での受付は終了しました)
早めに夜ごはんの支度をしながら、玉ねぎドレッシングとマヨネーズを仕込んだ。
これもまたソーセージ教室のためのもの。
今夜はカレーライスの予定。
思うぞんぶんやって、ようやく『たべもの九十九』を送り出したと思ったら、引き換えのようにアノニマから荷物が届いた。
こんどは、『帰ってきた 日々ごはん4』の初校。
すごいなあ。
どこかから見られているみたい。
やることがあるのはとても嬉しいし、ありがたいのだけど、でも、もう少し休んでから取りかかろう。
今夜も「ムーミン」を見ながら夜ごはんを食べ、お風呂に入ったら、早めに寝よう。
夜ごはんは、カレーライス(豚肉、人参、玉ねぎ、じゃがいも)、らっきょう(「nowaki」のみにちゃんの)、ほうれん草と小松菜とコーンのバター炒め。

●2018年2月1日(木)粉雪のち雨

ゆうべの月食は、8時半を過ぎたころからはじまった。
黒い下敷きで、左下の方から少しずつ隠していっているみたい。
じわじわと確実に形が変わっている。
それを寝ながらずっと見ていた。
最後に三日月になってからは、ずいぶん長い時間三日月のままだった。
目をつぶって、また目を開けてもまだ三日月のまま。
そのかわり、じわじわと細くなってゆく。
次に目を開けたら、一瞬だけ月がどこにあるのか分からなくなった。
そのうちうっすらと赤茶っぽい小さな丸がおぼろに浮かんできて、ああ、あそこにあるなと思ったら、すごいスピードでぐんぐん姿を現わした。
そこだけ早回しのようだった。
赤銅色の月は、こりんとして堅そうだった。
飽きるまで眺め、それから眠った。
ときどきカーテンを開けて確かめながら。
月のまわりも、空も、赤みがかった黄土色。
最後に見たときには月はもう見えなくなっていて、空全体がふっくらと膨らみ、黄土色になっていた。
とても不思議な色だった。
今日は、朝から粉雪。
『たべもの九十九』の再校正日和だ。
さあ、いそしもう。
4時までやって、夜ごはんの支度をゆっくりやった。
「清荒神」さんで買ったしょうがを刻んでつくだ煮にしたり、百合根の下ごしらえをしたり。
百合根のみそ汁は、白みそ仕立てにするとたまらなくおいしい。
アムたちがクリスマスに送ってくれた百合根は、これでもう食べ切った。
夜ごはんは、じゃがいもだけのコロッケ(マッシュポテトの残りで)、しろ菜のおひたし(ごま油、ポン酢醤油)、納豆(卵、ねぎ、思いついて柚子皮を刻み入れてみた)、しょうがの佃煮、田舎風たくあん(「清荒神」さんで買った)、みそ汁(百合根、豆腐)。

●2018年1月31日(水)晴れ

6時半に起きた。
朝焼けの長い帯ができていた。
橙色の上は藍色。
カーテンをいちどしめ、7時にまた開けて陽の出を見る。
毎日毎日、一日として同じ日がない。
今日はソーセージのレシピを書いたり、仕入れをまとめたり。
11時過ぎに、待ちに待った荷物が届いた。
校閲さんが確認ずみの『たべもの九十九』、最終校正だ。
お膳の上に並べ、お茶を水筒に入れていそしむ。
至福の時間。
3時までやって、有山君と山本さんから、表紙まわりのデザインが届いた。
4種類も!。
パソコン画面に張り出し、迷う。
こりゃあ、選びきれないや。
そのあとで中野さんからも、紙版画の画像が届いた。
なんだか、楽しみなお土産をもらいすぎて、どこから開いていったら分からないような感じ。
しかも今夜は月食だそう。
ベッドの反対側に枕を置いて、眺めよう。
夜ごはんは、親子どんぶり弁当(お昼に食べた残り)、白菜入りペロペロラーメン。

●2018年1月30日(火)快晴

春がきたみたいに暖かい。
窓を開けていても、ちっとも寒くない。
中野さんがいらした次の日、宝塚線に乗って「清荒神」さんへ初詣に行った。
「清荒神」さんは台所の神様だそう。
ちらちらと雪が舞う寒い日だった。
参拝にきている人たちはみな傘を差さず、髪の毛に雪のひらをつけて歩いていた。
私もそうした。
雪に洗われるようで、とても気持ちがよかった。
参道には乾物屋さんとか、屋台がたくさん並んでいて、日曜日だからほどほどに賑やかで。
私はあこや貝の小さな兎と月がはめ込まれた、赤い塗り箸を買った。
お社の上の方に小さな滝があった。
滝壺の水は静かに澄んで青っぽく、縁のところが緑がかっていた。
絵本に出てくる竜の住処は、きっとこんな色をしているんだろうな。
お昼ごはんに入ったところがとてもいい感じのお店だったので、お参りをしてから、また寄った。
熱燗を2合に、海老の箱ずし、なまこ酢、ふぐ皮ポン酢。
冷えた体が温まり、また電車に揺られて帰ってきた。
「清荒神」さんで山椒を多めの七味唐辛子を調合してもらったので、夜ごはんはお鍋にした。
それがとてもおいしかった。
薄目にだしをひいて、まずは鶏のもも肉とお豆腐から。
食べ終わったら白菜、菊菜、しろ菜、えのき。
土鍋を台所の火にかけながら、それぞれが食べたい具を泳がせ、煮えばなを柚子入りのポン酢醤油につけて食べた。
薬味は青ねぎ、大根おろし、七味唐辛子のみ。
中野さんは立ち飲み屋のように立ったまま。
私は器によそっては階段に座り、絵を見ながら食べた。
日本酒をちびちび呑みながら。
中野さんはきのう帰られた。
三宮までお見送りし、お昼にハンバーグと白身魚のフライのコーンスープとサラダつきランチをがっちり食べた。
今朝起きたら、唇の上に吹き出物ができている。
私は栄養のとりすぎだ。
というわけで、たっぷり遊んだので、今日からまた仕事をがんばろう。
夜ごはんは、親子どんぶり(鶏肉を焼いてから煮汁に加えてみたら、香ばしくとてもおいしい)、おろしあんかけ汁(ねぎ、柚子皮)。

●2018年1月27日(土)晴れに舞う雪

7時に起きた。
カーテンを開けると、大きな大きな橙色の日の出。
海にも大きいまま映っている。
寝転んで空を眺めると、雲のひとところだけ虹色に光っている。
何かがプリズムの働きをしているのかな。
そして小雪が舞っている。
六甲の二度目の冬。
晴れているのに舞う、お天気雪だ。
うっすらと積もり、道路が白くなっている。
朝ごはんを食べ、洗濯機をまわしながらつよしさんとの絵本のテキストを直す。

ゆうべ、寝る前に気づいたことがあるので。
ふと窓を見ると、さっきよりさらに晴れている。
小雪は細かな粉となり、ちかちかと光りながら舞う。
こういうの、なんとかダストというのだっけ。
海は白銀に光り、ラジオからはお正月みたいな三味線の音楽。
さて、今日もまた『たべもの九十九』の校正だ。
ベッドの上でやろう。
午後から薄暗くなり、本格的な雪。
ここらの坂は急だから、路面が凍結したらタクシーも上ってこられない。
そのあとでまた、晴れてきた。
雪はほんの少しだけ、ちらちら。
中野さんは4時半くらいに、明るいうちに着いた。
夜ごはんは、鶏セセリの塩オリーブオイル焼き、白菜サラダ(手作りマヨネーズ)、自家製ソーセージ、マッシュポテト、焼きトマト、ほうれん草炒め(中野さん作、砕いたナッツが入っていた)、ビール、赤ワイン。

●2018年1月26日(金)晴れ

海がきらきら。
朝、プラスチックのゴミを出しに行ったら、とても寒かった。
空気がきりっとしていた。
きのうの夕方、有山君からいただいた宿題を出しにコンビニまで下りたのだけど、とても寒かった。
うちはよく陽が差すし、セントラル・ヒーティングのせいで部屋が暖かいから、分からなかった。
そうか、朝でも昼間でも、今はこんなに寒いのだな。
さて、今日は『たべもの九十九』の再校正をやろう。
ベッドの上でやろう。
これはゆうべ、寝る前から決めていた。
有山君と山本さん(アリヤマ・デザインストアの女の子)のデザインが反映されたものなので、きのうから嬉々として向かっている。
明日の夜、中野さんがいらっしゃることになった。
大阪で打ち合わせがあるとのこと。
クリスマスの次の日以来だから、お会いするのはほとんど1ヶ月ぶり。
2時くらいから小雪が舞いはじめた。
空は晴れている。
お天気雪だ。
ときどき、舞う雪を眺めながら、ときどき、窓を開けたりもしながら、『たべもの九十九』の校正。
5時までやって「ほ」が終わり、今日の分はもうおしまい。
なんとなく窓の外が黄色っぽい。
日が沈む前、雲の縁が黄色い。
建物のところどころも黄色く光っている。
なんだか、黄色い大きな雲のなかに入ってしまったよう。
雲のなかで小雪が舞っている。
雪はどんどん強くなり、風に煽られ、上からも下からも降っているよう。
夜ごはんは、大豆と野菜のありあわせグラタン(お昼に作った大豆と白菜のトマトスープにトマトペーストを加えて煮つめ、つよしさんと食べたじゃがいも、スッキーニ、人参、しめじ、ほうれん草のオリーブオイル炒めの残りをのせ、ホワイトソースとチーズをかぶせて焼いた)。

●2018年1月24日(水)快晴

朝のラジオの天気予報では、全国的に寒波が来ていると盛んに言っていた。
兵庫の北の方でも雪になるから、警戒してくださいとのこと。
けども、六甲は信じられないくらいによく晴れている。
とても暖かい。
海はいつもに増してきらきら。
まぶしいからカーテンも閉めたままだ。
きのうは、陽が傾いてからとても寒くなった。
あんまり急に寒くなったので、雪も霙も降っていないのにおかしいなあと思って、何度も窓を開け確かめた。
薄氷のようにぴんと張った空気、いつもとは違う格別な寒さだった。
今年いちばんの寒さだったと思う。
今日は、のびしろが増えたみたいに暖かい。
ここしばらく日記が書けなかった。
といっても、書いてないのは2日間だけか。
なんだか短い間に、いろいろなことがあったような気がする。
まず、つよしさんとの絵本ミーティング&ごはん会は、新しい発見もあり、とても有意義な時間だった。
次の日には朝からお弁当をこしらえ、「鉄道芸術祭」の搬出をしている立花君たちのところへ差し入れに行った。
帰りに「ヨドバシカメラ」に寄って、前回行ったときに目をつけておいたCDデッキを買い、持って帰ってきた。
冷たい雨の降る、寒い日だったな。
きのうは何をしていたのだっけ。
あちこち掃除して、CDデッキをつなぎ、『たべもの九十九』の小出さんと電話でお話し、夕方には有山君からお電話をいただいたんだった。
その間、つよしさんの絵本のテキストに向かい、またああでもないこうでもないと書き直していた。
ゆうべは、佐野洋子さんの本のカバーと帯のデザインも送られてきた。
私の書いた帯文が、洋子さんの絵の隣に並んでいる。
とてもとてもうれしい。
じつは去年の12月に、この本の編集者さんがいらしたときのことを日記に書いていました。
12月22日の日記の続きとして、読んでいただけたら嬉しいです。

・・・

洋子さんの本の編集者さんが、すがすがしいとても感じのいい方だったので、軽いお打ち合わせのあと、屋上に上った。
そしたら急にビールを呑みたくなって、また部屋に戻り、りうが送ってくれたれんこんをすりおろし、お焼きを作った。
屋上では、裏山を眺めながら、そして山の上を円を描きながら上昇しているとんびを眺めながら、私は洋子さんのことを聞いたのだ。
「洋子さんは怖かったですか? 激しい方でしたか?」
編集さんは、「うーん」と言ってしばらく沈黙してから、答えてくださった。
慎重に、言葉を選んでらっしゃるようだった。
「心にあることをそのまま、感じたことをそのまま話す方でした。
嘘をついたり、何かに紛らわしたりすることなど、少しも思いつかないみたいに」
「お酒は好きでしたか?」
「いいえ、煙草はよく吸われてましたけど、お酒はまったく呑まれなかったんですよ」
編集さんはNHK出版の川村さんという。
川村さんは子どものころ、洋子さんご一家とは家族ぐるみでおつき合いをしていた。
どこかへ一緒にお出掛けしたり、家にもよく遊びに行って、洋子さんの手料理をごちそうになったり。
息子の弦さんは二つ年上で、幼なじみ。
洋子さんが離婚なさってからは、30年近く会わない期間があったようだけど、病気をされてからまた再会したのだそう。
川村さんは長年の念願がかなって、弦さんと一緒に洋子さんのご本を作ることになり、その帯文を私に依頼してくださった。
その本は、食べ物にまつわる文章が、エッセイや絵本のなかから、あいうえおの順に引用されているそうだ。
洋子さんがよくこしらえていた料理を弦さんが再現し、カラー写真とレシピも載っているようだった。
私が今作っている本も、あいうえお順のたべものエッセイの本だから、
ご依頼をいただいたときに私は驚き、そういうのはお受けしてはいけないような気がして、大急ぎで断った。
そうしたら、「ご遺族の方が、高山さん以外に帯を書いていただける方を思いつかないとおっしゃっている。お断りされても構わないから、お話だけでもさせてください」と川村さんから電話があった。
それで、はるばる神戸までいらしてくださったのだった。
れんこんのお焼きのあとは、長ねぎの青いところが冷蔵庫にとってあったのをゆで、ぬたにした。
つまみが減ってくると、カキのオリーブオイル漬けを出したり、チーズやサラミを切ったり。
台所のカウンターでお話しながら、不思議な距離感を保ったまま、でも、私は川村さんのことを、昔からよく知っている方のような感じもしていて。
いただいた帯の仕事にも関係がないし、聞かれてもいないのに、私は自分のことをたくさん話した。
どうして神戸へやってきたのか、今の心境など、ごまかしのないよう言葉を選びながら、ぽつぽつと、あれもこれも。
話さずにはおられなかった。
なんか、ずっと、洋子さんが近くにいるような感じがして。
編集者さんは暗くなる前に、坂を下って帰っていった。
私も坂の途中までお見送りした。
あのときにはまだ空が明るく、白く出ていた細い三日月が、今は濃いオレンジの、寒空につきささりそうな月になっている。
洋子さんの本の帯文だなんて。
こんな私のところにお仕事くださるだなんて。
なんて、もったいないことだろう。
私がぽつぽつと、何でもかんでもおしゃべりしてしまったのは、書かせていただくお礼をしたかったのかもしれない。
川村さんを通じて、空の上の洋子さんに。

・・・

きのう、有山君に宿題をいただいたので、本当はそっちに向かいたいのだけど、朝から絵本のことをやりはじめ、途中でメールを書いたり、電話がかかってきたり。
でも、机に向かうと、どうしても絵本の方に引っ張られてしまう。
そうだ。
2月13日に東京へ行くことになった。
吉祥寺の「キチム」にて、木皿泉さんとトークショーをする。
木皿さんに会えると思うと、緊張してくる。
上京するのはとてもひさしぶり。
おととしの12月に、『たべたあい』の原画展で、原宿の「ギャラリー・マヤ」さんに通っていたころ以来だろうか。
それまでにやらなければならないことがたくさんあるから、ひとつひとつに立ち向かい、終わらせていこう。
夕方になったら、海がやけに青い。
水色ではなく、藍色。
窓を開けると、頬を切るような寒さ。
こんなに青いのは、寒さのせいなのかな。
夜景が灯りはじめると、さらに深い藍色。
空の真上には三日月。
また、長々と書いてしまいました。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
夜ごはんは、お好み焼き(菊菜、豚こま切れ肉、卵&もやし、豚バラ肉)。

●2018年1月21日(日)晴れ

とても暖かい。
窓を開けたら、そよそよと風。
春がきたと間違えてしまいそうな陽気。
きのうは「鉄道芸術祭」のクロージング・イベントで、太陽バンドの畑さんと野村卓史さんのライブがあった。
ポルトガルの車窓からの大きな映像をバックに、ふたりの奏でる音楽を聞いた。
楽しくてたまらず、私は演奏の間中ずっとにやにやしていた。
とんちさんが加わったラップの曲も可笑しくて、涙が出てきた。
なんか、感動した。
立花君がポルトガルで買ってきた、「イル・トレノ」という古い楽譜の曲のお披露目もあった。
表紙に描かれた列車の絵がよかったから、たまたま立花君が買うことになったその楽譜。
立花君は、どんな曲が収まっているのかまったく分からないまま、卓史さんに託したのだそう。
ふたりが演奏をはじめると、電車が走り出し、スピードを上げ、アコーデオンとエレキギターがからまって景色がぐんぐん流れ、きらきら光る軌跡が見える。
そして、徐行しはじめたなと思ったら、大阪の中之島(「鉄道芸術祭」の場所)に戻ってきた。
レールを走り続けていたつもりが、海を超え、空を超え、ポルトガルから大阪のこの場所へ。
「イル・トレノ」は音符が黒々と並んでいて、テンポもおそろしく早く、とても難解な曲だったらしい。
卓史さんが楽譜を訳し、演奏し、編曲し、練習し、畑さんとのお披露目に至まで、とんでもない労力があったことだろう。
私はこのところ、部屋にこもって文ばかり書いていた。
パソコン画面の活字を頭のなかでこねくりまわし、そこから浮かぶ世界にひたる。
ひとりでいると、ひとりごとを言うようになる。
考えなくてもいいようなことを考えたりもする。
畑さんたちのライブを聞きながら、なんか私、このごろ半分死んでいるみたいだったな、と思った。
死んでいるというのは大げさか。
眠っている、という感じかな。
ごはんは三度三度作ってちゃんと食べていたけど、なんか、生きものたちとやりとりをしていなかったような。
ライブが終わって、畑さん、卓史さん、立花君、カクちゃんと外のカフェで冷たい風に当りながらコーヒーを飲んだり、立花君が連れていってくれた心斎橋のたこ焼きささんの前で、打ち上げメンバーが集まるまで30分くらい立って待っていたり。
そのたこ焼き屋さんは偶然、2年前に『ごはん 実用の料理』の編集の村瀬さんが連れてきてくださったのと同じ店だったり。
私はまだ東京に住んでいて、その日は、心斎橋の「スタンダード・ブックストア」でトークイベントがあったのだ。
そして同じ日に、六甲の今住んでいるアパートメントを、はじめて下見したのだった。
たこ焼きを何皿も頼んで、騒いだり、大笑いしたり。
「パリパリチーズ」という一皿が、確かにパリパリなのだけど、想像していたのとまったく違って、可笑しかったり。
あ、そういうことか。
私はこのところ、自分の思い通りになることばかり、予想のつくようなことばかりしていた。
外に出ると風が吹いていて、人々は行き交い、めぐっているから、自分の思い通りにならないことがぽんぽん起こる。
誰かが何か言うのをじっと待っていたり、何かがはじまりそうなのをぼんやり待っていたり。
そういうこと?
何かが起こったら、そこに自分ものっかって、楽しむ。
生きているって、そういうこと?
なんか、そんな感じがした一日だった。
私が外に出ると、待ってましたというふうに、受け入れてくださるネットワークのようなものができている感じもあった。
そういうのも、ちょっと意外だった。
私、ずっと休んでいたんだろうか。
というわけで、ゆうべは12時過ぎに帰ってきた。
慌てずに駅まで歩いて御堂筋線に乗り、梅田から阪急に乗ったら、特急の終電だった。
今日はあちこち掃除し、雑巾がけ。
これから、つよしさんがいらっしゃる。
絵を持ってきてくださる。
とても楽しみ。

●2018年1月18日(木)晴れ

今朝の日の出は、大きな太陽が海に映っていた。
きのうとは打って変わり、よく晴れている。
洗濯をして、ひさしぶりにバスローブだけ屋上に干しにいった。
風もなく、とってもいい天気。
山はいつの間に、こんなに裸になったんだろう。
そういえば猫森も木の葉がすっかり落ちている。
そのおかげで、昇りはじめの太陽がいつも見られる。
つよしさんとの絵本のことを、朝からずっとやっていた。
途中、掃除機をあちこちかける。
埃がいっぱいたまっていた。
雑巾がけも、すみずみまで。 
絵本のことを考えながら、鏡を磨いていて、ずっと思っていたことを思い出した。
また絵本の続き。
3時ごろ、台所の方ではらりと音がして、換気扇の網が落ちた。
銀色のテープで貼ってあるだけだから、「もしもはがれてしまったら、いつでもおっしゃってくださいね」と、ちょうど今朝、管理人さんがおっしゃっていた。
屋上にバスローブを取り込みにいきながら、管理人さんにお伝えしたら、すぐに来て直してくださった。
つよしさんとの絵本は、もしかしたら、なんとなく、できたかも。
プリントアウトをして、寝る前にベッドのなかで読んでみよう。
夜ごはんは、ドリア(人参とかぶのクリームシチューを作り、冷やごはんを少し加え、チーズをのせてオーブンで焼いた)、焼き餃子(ゆうべの残りを焼き、ウスターソースで)。

●2018年1月17日(水)雨 

目が覚めたとき、雨の音がすると安心するな。
まだ薄暗いけれど、カーテンを開けたら7時になるところだった。
今日は雨か。
こんな日は本を読みふけろうか。
きのうは、あちこち出掛けた(「MORIS」で今日子ちゃんとおしゃべりしたり、バスに乗って阪急御影の電気屋さんや古い市場に行ったりした)ので、晴耕雨読の気分。
と思うも、読みはじめたら、途中でやっぱり起きてしまった。
朝風呂から出ると、窓の外が夕方のよう。
これから夜になるみたいな薄暗さ。
そのうち霧が出て、下の街が真っ白になった。
静かな静かな日だ。
朝ごはんのトーストにこってり塗って食べた、今日子ちゃんのおみかんジャムがたまらなくおいしい。
皮の苦み&とろとろジューシー。
「今日子ちゃん、おいしいよー」と、窓に向かって手を振った。
午後、中野さんが絵を送ってくださった。
じっと見ていると、お話が浮かんできそうな絵……というか、もうお話が入っているような絵。
絵本についての文章がどうやらできたみたい。
推敲して仕上げ、4時くらいにお送りした。
余った紙がたくさんあるので、つけペンでお絵描き。
この間、実家に帰ったとき、母の幼稚園の園児たちの集合写真をもらってきた。
母はたぶん20代で、溌剌とした顔をしているし、昔の子どもたちもいろんな顔形があって、自由な感じがして、とてもおもしろいので。
その写真を見ながら、いろんな顔を描いてみた。
自分の小さいころの顔も描いてみた。
へたくそだなあ。
ずーっと、なんだか静かな日だなと思っていたら、今日は震災の日だった。
夕方、知った。
23年前の1月17日も、こんなに寒い日だったのだろうか。
冷蔵庫に残っていた日本酒を盃に一杯、窓から見える街に向かって献杯した。
この街に住まわせてもらっていることに、感謝を込めて。
夜ごはんに餃子を包み、焼いて、食べた。
「暮しの手帖」に載っていた、ひき肉と玉ねぎとねぎだけの餃子。
餃子だけであとは何も食べない。

●2018年1月15日(月)薄い晴れ

今朝は日の出前にカーテンを開け、寝転んだら、雲が少しずつ茜色に染まっていくのが見えた。
でっかい、まん丸な太陽が、完全に顔を出すまで眺めていた。
太陽が上ると、とたんに暖かくなる。
ゴミを出しに行った。
寒いことは寒いけど、それほどではない。
朝ごはんを食べ、洗濯機をまわしながら「気ぬけごはん」。
うちの換気扇は、穴が空いたところに網を張ってあるのだけのとてもシンプルな仕組み(穴は建物の外につながっていて、そこにも同じような網が張ってある。吸い込みのモーターがどこかについているらしい)なのだけど、その網が油で詰まって、このところまったく吸い込まないようになっていた。
なので、管理人さんに書き置きをしておいた。
管理人さんはすぐに、脚立と青いビニールシートを持って、網を貼り替えにきてくださった。
廊下の外にある排気口の網も、取り替えてくださった。
お昼前に、中野さんから1枚の絵が送られてきた。
今年はじめての絵。
パソコン画面を整理し、絵を飾った。
昇ったばかりの太陽のような、オレンジ色のキンセンカの絵。
樹君の新しいCDをかけながら、また「気ぬけごはん」。
夕方4時くらいにだいたい書き上がった。
仕上げは明日やろう。
陽が沈むと、ぐっと温度が下がり、とたんに寒くなる。
太陽の力は本当にすごい。
夜ごはんは、カラスガレイの西京漬け(自分で漬けたのをオーブンで焼いた)、肉じゃが(牛こま、玉ねぎ、じゃがいも)、大根のみそ汁、ごはん。

●2018年1月14日(日)晴れのち曇り

5時くらいに目が覚め、書きかけの絵本のことやら、絵本についての文章のことやら、言葉が浮かんでぐるぐる巡っていた。
なんだか寝ていられないような気持ち。
6時半くらいにカーテンを引くと、水平線が朝焼けだった。
オレンジ色のグラデーション。
カーテンはそのままにしておいて、寝転ぶと、ちょうどその位置から白い月が見えた。
細い細い、新月間近の月。
切ったばかりの爪みたいな月。
太陽が顔を出しても、まだ見えている。
極細の半透明の月は、水色の空を少しずつ上に上り、そのうち見えなくなった。
7時半に起きた。
朝ごはんを食べてすぐに絵本のテキストに向かう。
できたみたい。
つよしさんとのテキストは、まだできない。
絵本についての文章にまた向かう。
スイセイから連絡があり、電話をつなげたまま、きのうと同様にあっちへ行ったりこっちへ行ったりしてパソコン入力。
そのあと、『帰ってきた 日々ごはん4』のアルバムと、表紙の絵について軽くミーティング。
夜ごはんは、あり合わせグラタン(この間の残りをオーブンで温めた)、ワンタンスープ(白菜、ワカメ、ねぎの青いところ)。
早めにお風呂に入り、ベッドのなかで『飛ぶ教室』を読む。
明日から「気ぬけごはん」を書くつもり。

●2018年1月13日(土)晴れ

朝から、ゆるゆるとパソコンに向かっていた。
絵本についての文章を依頼されているので。
これまでの絵本についての書類を箱から出し、部屋いっぱいに広げ、一冊一冊をどんなふうに作ってきたか思い出しながら書いていた。
編集者とのメールのやりとり(プリントしてあった)を読んだり。
神戸に越してきたばかりのころ、次々にできていたお話も読み返した。
なんだか、世界がとても濃い。
知らない人が書いたみたいだった。
私は少し、あのころから書くものが変わってきているかも。
文章は4時くらいにだいたい書けた。
文字数が大幅にオーバーしてしまった。
締め切りはまだ先だから、しばらくねかせておこう。
今日もきのうの続きで、メールの不具合についてスイセイがいろいろ調べてくれた。
夕方、電話をつなげたまま、部屋を行ったりきたりしながら、スイセイの言う通りにパソコンに入力した。
緊急にやるべきことは、ひとまず終わったたとのこと。
ほっ。
お腹がすいたので、続きは明日。
夜ごはんは、ヒロミさんのお好み焼きを再現(キャベツ、豚肉)、白菜スープ(ゆうべの鍋蒸し煮の残りで)。

●2018年1月12日(金)快晴

きれいに晴れている。
空も海も、広範囲にきらきら。
きのうはとてもおもしろい一日だった。
まず、朝っぱらからCDデッキを分解した。
CDの取り出し口が、長いこと壊れたままになっていたので。
思った通り、歯車をつなぐ黒い輪ゴムが切れていた。
似たゴムを探しに、「コーナン(ホームセンター)」へ。
寒いけど、マフラーをぐるぐる巻きにして、流れの音を聞きながら川沿いをどこまでも歩いて行くのは、とてもいい気分だった。
「コーナン」の2階の駐車場で、手をあたためながら飲んだ、自動販売機のほうじ茶ラテのおいしかったこと。
目的のゴムはなかったけれど、洗濯機のホースや丈夫なガムテープなど、ずっとほしかったものを買った。
帰りも川沿いを歩いて、適当なところで階段を上がり、お店がありそうな通りに向かって歩いていたら、見覚えのある場所に出た。
前に、今日子ちゃんが案内してくれた水道筋の商店街だ!。
ふらふらと散策し、物産店のようなところで白菜と大根を買い、お腹が空いたので、たこ焼き屋さんののれんをくぐって焼きたてを食べた。
10コ入りで250円。ふわふわでとてもおいしかった。
今日子ちゃんが連れていってくれた、古い方の商店街の魚屋さんにも行ってみたくて探したのだけど、どうしてももとの場所に戻ってきてしまう。
仕方なくあきらめ、山の方に向かってゆるやかな坂道を上った。
もう少し歩けば、いつもの「コープさん」。
買い物し、荷物をかついで坂を上っていたら、角のところでひょっこりヒロミさんとサチ子さん(イギリスから里帰りをしている、今日子ちゃんのお姉さん)に会った。
歩いて帰るつもりだったのだけど、せっかくなので3人でタクシーに乗り、うちに遊びにきていただく。
お茶を飲み(サチ子さんと私はビール)、ヒロミさんたちは今日子ちゃんのいる三宮にいちど向かい、3人揃って夕方にまたうちにいらした。
夜ごはんを4人で食べた。
サチ子さんが飛行機で帰られる前の日の、家族水入らずに参加させてもらったような楽しい晩餐だった。
リクエストをしたら、ヒロミさんがまたお好み焼き(キャベツ&牛肉&卵、長ねぎ&豚肉)を焼いてくださった。
おいしかったなー。
私は何を作ったんだっけ。
塩もみ大根とトマトのサラダ(玉ねぎドレッシング)、大根と昆布の煮物(薄目のコンソメスープ&塩&醤油、水溶き片栗粉でとろみづけ)、あり合わせグラタン(大豆のトマト煮を耐熱皿のいちばん下にしき、ホワートソースを作って、蒸したレンコンと硬めにゆでた百合根をからめて重ね、4cm角に切ったはんぺんをのせ、溶けるチーズを散らしてオーブンへ)。
さて、今日は1時から台所まわりの取材で、「建築知識」という雑誌の編集者が東京からいらっしゃる。
もう、そろそろかな。
爽やかな好青年がふたりで訪ねてらした。
立ち上がるとふたりともとても背が高く、いちいち驚いてしまう。
専門書なので写真撮影はなく、細かな質問に私がひとつひとつ答えていった。
短い文章と、イラストや図で表されるらしい。
あとは、台所のあちこちを説明すると、彼らはメモをとりながらスマートフォンで盛んに写真を撮ってらした。
取材は2時間ほどで終わり、『帰ってきた 日々ごはん4』のアルバムについてと、このところのメールの不具合について、スイセイとやりとり。
1時間近くの長電話となり、お腹がぺこぺこ。
電話を切ってから、大急ぎで作って食べた。
夜ごはんは、カラスガレイの照り焼き、白菜とえのきの鍋蒸し煮(大根おろし&ポン酢醤油。色が黒ずむし、白菜の味が負けてしまうから、えのきは入れない方がよかった)、玉ねぎと豆腐のみそ汁、ワサビの茎の醤油漬け(みっちゃんのお土産)、ご飯。

●2018年1月10日(水)晴れのち曇り、のち小雪

7時に起きた。
ようやくいつもの生活に戻ってきたみたい。
夜も普通に眠れるようになったし。
つよしさんとの会は、とても楽しかった。
ラフスケッチを何枚も描いてくださっていた。
見せていただきながら、自分のお話について、あー、そういうことだったのか……と気づいたり。
陽差しの薄い、かすかな音しか聞こえない、こもったような私の世界に風穴が空いたような感じ。
どんなふうにお話が流れていくかはまだ分からない。
はじまったばかりだから。
きのうは朝起きてすぐ、つよしさんが送ってくださった絵の画像をパソコン画面に映しながら、お話にもぐっていた。
でも、まだほとんど動かない。
そして午後から、『帰ってきた 日々ごはん4』のパソコンでの作業をはじめた。
ぐいぐいと入り込んでしまい、夕方にはもう6割方できた。
絵本作りがいよいよ本格的になり、中野さんにも出会って、『どもるどだっく』の世界にどんどんのめり込んでいったころの日記なので、私もぐいぐい引き込まれ、やめられなかった。
今日もまた続きをやる。
お昼ごはんを食べ、ふと窓を見ると、霙まじりの雨が降っていた。
思いっきり降っている。
窓を開けると、キーンと冷たい空気。
よし、続きは2階のベッドの上でやろう。
窓に近いので。
霙まじりの雨はすぐにやんだ。
そしてまたパソコン画面に戻り、しばらくして目を上げたら、雪になっていた。
ふらふらふら舞っている。
その雪もすぐにやみ、白い空。
続きをぐんぐんやる。
4時近くに、雨がまた音を立てて降りはじめた。
窓を開けるとさらに冷たい空気。
みっちりと、シャワーのような雨。
降りながらところどころ凍っているみたい。
海の方の空にも降っているのが見える。
首を出してのぞくと、めっぽう風が強い。
粉雪まじりの雨が山から吹き下ろしてくる。
さっきまで、対岸の小さな煙突がロウソクみたいに光っていたのも、今はすべて白におおわれた。
さあ、『帰ってきた 日々ごはん4』も残すところあと2日。
集中してやってしまおう。
今は2015年の大晦日、あのころは本当にスイセイとケンカばかりしていたな。
なんだか年の終わりのような夕方だ。
夜ごはんは、大豆のトマト煮のチャーハン(小さく切った大根も加えてバターで炒めた、ゆで卵添え)、白菜のサラダ。

●2018年1月8日(月)曇り

ゆうべは明け方に、けっこう雨が降っていたみたい。
地面が濡れている。
朝、ゴミを出しに行って深呼吸した。
山の匂いのする空気。
それほどには寒くない。
曇っているけれど、空のところどころに水色がある。
朝ごはんのサラダにしようと白菜を切った。
芯のところをつまんでみたら、みずみずしくて、奥行きのある味がする。
びっくりするほどおいしい。
ためしに塩をちょっとつけてみたら、その味は薄らいだ。
玉ねぎドレッシングをかけたら、もうすっかり変わってしまった。
何もつけない白菜、おいしいな。
お正月に濃い味を食べ過ぎたから、舌が敏感になっているのか、本当に白菜がおいしいのか。
この白菜はたしか、図書館のある「フォレスタ六甲」のスーパーで買った。
ゆうべから、絵本のお話が生まれはじめている。
ひとつ(ついこの間、浮かんできたもの)はほとんどでき、ずいぶん前に途中まで書いておいたものも、形を変えてまた動き出した。
今日で『たべもの九十九(仮)』の校正が終わる予定なので、つよしさんと会う約束をした。
つよしさんは明日から学校(小学校で図工の先生をしている)がはじまるので、グッドタイミングだった。
4時に三宮駅で待ち合わせだ。
ずいぶん前に書けていた方のお話に、つよしさんが1枚だけ絵をつけてくださったのを見にゆく。
楽しみだー。
それまでぎゅっと集中し、『たべもの九十九(仮)』をがんばろう。
夜ごはんは、北野のどこかで食べる予定。

●2018年1月7日(日)晴れ

今朝は8時に起きた。
夜中に何度か目が覚めたけれど、あとはぐっすり眠れた。
夢もいくつかみた。
神戸に帰ってきたのは4日の夕方、ようやく自分がどこにいるのか分かってきたみたい。
帰ってからはずっと、『たべもの九十九(仮)』の校正にいそしんでいた。
それが楽しくてたまらなかった。
きのうは朝から夢中でやって、午後にはひと通り終わり、美容院&図書館に行ってきた。
冷蔵庫に野菜が何もなかったので。
坂を下り、いつもの神社でお参りもした。
ああ、やっと帰ってこれたなあと思いながら。
帰ってすぐのころには、台所で洗いものをしていたりすると、実家の洗いもの置き場の感じがふーっと蘇ってきて、重なったりもしていた。
あの感じは何だろう。
実家での日々が、それなりに濃かったのかもしれない。
帰る日には、シンクを掃除した。
いくら掃除しても、それほどにはピカピカにならなくて、母がそこで過ごしてきた年月を思った。
ひとりの人が生き続けてゆくことの、垢のようなものも感じた。
私が寝ている間に、おからとひじき煮の残りでお焼きのようなものを作っていた母。
楕円形にまとめたのに粉をはたき、溶き卵をからませて、フライパンで焼こうとしていた。
手をべたべたにして。
母は強火で焼いていて、中まで火が通っていないのに、裏返した。
「ふたをして弱火で焼かないと、中まで火が入らないよ」と私が言うと、「やーだ、そう? ひじきもおからも火が通ってるだから、冷たくてもいいのかと思った」と力なく笑った。
そういうときの母の表情や、体の傾け方、手に絡まってしたたり落ちる卵のどろどろ。
私の話を聞くときに、口もとを凝視する(耳が通いから)真っすぐな目もよく蘇ってきていた。
あれ 、今これを書いていたら涙が出てきた。
いやだなあ。
さーて、そろそろ『たべもの九十九(仮)』の続きをやろう。
夜ごはんは、ひさしぶりにごはんを炊いて、ひとり鍋(鶏肉、豆腐、白菜、えのき、ねぎ)の予定。
西京味噌を買ってきたから、白みそ仕立てにしよう。

●2018年1月3日(水)晴れ

ぐっすり眠って、8時に起きた。
実家に帰ってきてからずっと、どうもうまく眠れてなかった。
どこにいるのか、ようやく分かってきたのかな。
今朝もよく晴れている。
富士山が上から下までくっきり見える。
朝風呂に入っていて、気づいたら30分くらい浸かっていた。
なかなか体が温まらないせいもあるけれど、ひとりになれるのはお風呂のなかくらいだから、ぼんやりと頭をめぐらせていた。
そういえばスイセイと住んでいたころにも、朝風呂のなかで夢を反芻したり、文に書く内容を思いついたりしていたっけ。
神戸ではいつでもどこでも自分に没頭できるし、思いついたらすぐにパソコンに向かえる。
だから、そういえば、お風呂に浸かりながらぼんやりすることがなくなった気がする。
お昼にれんこんのお焼きを作り、母と食べた。
本棚にあった『くんじくんのぞう』を私が見ていたら、「この絵本は、とってもおもしろいね」と盛んに言う。
「最初はよく分かんなかっただけど、何度も読んでいるうちに、どんどんおもしろくなってきたさや。やー、これはいい絵本だよ」 「この、地下にもぐっていくところ。すごく怖いら。こういう怖いところにくると、子どもたちはぶるぶるふるえて、ほんとに怖いさ。そういうのがうんと好きさや」
などと褒め、読み聞かせてくれた。
「どうゅー」と書いてないところでも、書いてあるところでも、「どうゅー」「どうゅー」と何度も言うのがすごくおもしろかった。
間合いも絶妙。
そういうのを聞いたら、子どもたちもきっと、おもしろがって真似をするんだろうな。
母はお昼を食べると眠くなるらしい。
お昼寝している間に、私は「たべもの作文」の校正をやろう。
お正月なので、そろそろこの本のタイトルを発表します。
まだ、仮なのだけど、『たべもの九十九(つくも)』といいます。
このまま順調に進めば、3月のはじめに本屋さんに並ぶ予定。
デザインは今回も、有山君にお願いしています。
みなさん、愉しみにしていてください。
みっちゃんは、今夜は息子の家族の家で新年会。
リカ一家も呼ばれているのだそう。
なので、夜ごはんはお母さんとふたりで。
いかの塩干しをバターとごま油で炒めたもの、白菜の薄味煮(片栗粉でとろみをつけた)、ひじきと切り干し大根の煮もの(母作)、鶏つくね(お鍋の残りのタネを丸めて焼き、甘辛いタレでからめた)、納豆、ごはん。
母は今夜もよく食べ、よくおしゃべりした。
あと片づけを一緒にしながら、ずっと鼻歌を歌っていた。
何の歌なのかさっぱり分からないけど。
かと思うと急に、「あー、腰が痛い」とひとりごとを言う。
何かに夢中になっていて、ふと気づくと痛くなっている様子。
今夜もまたお風呂の前に、足を投げ出して座り、気功とストレッチをやっている。
前屈をしている姿を後ろから見ると、とても88歳のおばあちゃんには見えない。
私は明日神戸に帰るので、母がお風呂に入っている間に荷物をまとめてしまう。
それにしてもこの家は寒い。
寝る前に読む絵本を、本棚からたっぷり選んだ。全部で11冊。
図書館でずっと探してみつからなかった、『かぜは どこへいくの』があった。
『ふゆねこさん』がおもしろかったから、この人の絵本をずっと探していた。
私の寝ている部屋は、ふだんは母の衣装部屋になっているらしい。
次の日曜日に教会へ出かける用の洋服がコーディネートされ、ハンガーにかけて箪笥の前にぶら下げてある。
マフラーやブローチまで、ちゃんと用意してある。
このコーディネートは2日にやっていた。
ちゃんとアイロンもかけて。

●2018年1月2日(火)晴れ

ゆうべは日本酒を呑みすぎた。
呑んだというより、呑まされた。
夜遅くにみっちゃんと歩いて帰ってきて、そのあとふたりでウイスキーのロックを1杯ずつ呑んだ。
ひさしぶりにようやくふたりだけで話せた。
寝たのは4時近くだったので、今朝はお昼まで寝てしまった。
お酒が残って、なんとなくふわふわしながらお粥を作ってみっちゃんと食べた。
母はひとりで先に食べていた。
それにしても母の食欲はすばらしい。
姉の家でもそうだったけど、このところ濃い味のものばかり食べ続けていたので、私はちょっと食傷気味。
2階の部屋で、母の本棚にあった『絵本の作家たち』をずっと読んでいた。
この本は小野明さん(『ほんとだもん』のデザイナー)が聞き手で、コージさん、荒井さん、長新太さん、ささめやゆきさんなどが、子どものころや初期に描かれた絵本の話をたくさんされている。
みんなそれぞれで、とてもおもしろい。
みんな「クウクウ」に来ていたお客さんだし、この本もちょうどそのころに出たのに、私は何も知らなかった。
ようやく頭がすっきりしてきたので、「おいしい本」の校正の続きをやりはじめるも、母がお腹が空いたと呼びにきたので、やめにする。
夜ごはんは、計画通りラーメンを作った。煮豚と煮卵をとっておいたので。
もやしとえのきをゆでたのと、シナチクをのせた(ふたりは海苔ものせていた)。
材料はみっちゃんが昼間のうちに買っておいてくれた。
早めにお風呂に入り、私は2階へ。
母は気功をしてからお風呂に入った。
みっちゃんは「ツタヤ」でDVDを借りてきて、テレビの前の炬燵の上に、氷の入ったグラスと炭酸をいそいそと揃えている。
ハイボールをちびちびやりながら、映画鑑賞。
みっちゃんの至福の時間だ。
寝る前に、母の部屋に絵本を借りにいったら、母はベッドで読書をしていた。
あたたかそうなオレンジ色の毛布と布団にくるまり、虫眼鏡を当てて文庫本の小さな文字を読んでいる。
枕もとにはオレンジ色の電気がついている。
本は太宰治の『人間失格』。
母もまた、至福の時間。
図書館で母が借りている絵本のなかで、私のお気に入りは、レオ・レオニの『びっくり たまご』。
3匹のカエルが出てくるお話。
これがおもしろくてたまらない。 
3匹のうち、1匹の女の子のカエルだけが、いつもひとりでどこかへ出かけていっては、おもしろいものを見て帰ってきて、みんなに話すところとか。
それは何のへんてつもない普通の石ころだったりするから、話してもなかなかおもしろさが伝わらないのだけど、女の子は気にせずまた出かけていくところとか。
出かけたら、どんどん歩いて遠くまで行って、おもしろいものをひとりでじっと見ているところとか。
卵から生まれたワニの赤ちゃんのことを、最後までにわとりと呼んでいるところとか。
ワニの赤ちゃんがはじめて母親に会ったとき、「おかあちゃん」と一声だけ言うところとか。
「ママ!」でもなく、「おかあさん!」でもなく。
谷川さんの翻訳は、いいものはやっぱりいいのだな。

●2018年1月1日(月)晴れ

明けまして、おめでとうございます。
今年も大掃除をするつもりで、30日の昼間に帰ってきたのだけど、母がずいぶんきれいにしてあった。
おせち料理もいくつか作ってあった。
里芋やにんじん、干ししいたけのお煮しめ、たずなコンニャクの煮物(青のりがまぶしてある)、おなますにはタコが入っていた。
きんとんや伊達巻き、数の子(味がついているもの)も買ってあった。
お雑煮のための、里芋と大根も煮てあった。
母は思っていたよりずっと元気。
肌もつやつやしている。
きのうは日曜日だったので、母とみっちゃんと3人で教会の礼拝に行ってきた。
賛美歌を歌ったり、牧師さんの説教を聞いたり。
終わって、クリスマスツリーの飾りを箱にしまうのや、その箱を屋根裏部屋に運んだりするのをみっちゃんと手伝った。
「子どものころ、日曜学校でクリスマスツリーを飾ったり片づけたりしていたね」と言い合いながら。
今はもう本当のもみの木ではなく、プラスチックでできたものだけど。
飾りも現代的なものだけど。
それでも手作りのクッキーがぶら下げられていたり、赤や黄色の玉、てっぺんには銀の大きな星。
電飾も控えめで、とてもいいツリーだった。
昔の飾りはほとんどがボール紙でできていた。
小さな家、銀紙で覆われたロウソク、てっぺんの銀の星。
赤い屋根の家の窓に目を近づけ、私はよく中をのぞいていた。
窓には黄色いセロハンが貼ってあって、部屋の中があたたかそうだったから。
のぞいても空っぽなのだけど、そこには暖炉が燃え、絨毯が敷かれ、テーブルの上には紅茶のセットが見えた。
ゆうべは、みっちゃんの娘たちが家族でやってきた。
リカは旦那さんの紳之介君と、5月に生まれた赤ん坊を連れて。
ミホも一緒に暮らしている彼氏と、テツ(柴犬)を連れて。
母も揃ってごちそうを食べながら、ささやかに忘年会。
鳥鍋(鶏肉、つくね、豆腐、白菜、えのき、春菊)、みっちゃんのお土産のカニ、牛肉のバター焼き(生ワサビ&塩)、ブリのお刺身(生ワサビび)、サラダ(スモークサーモン、大根、貝割れ)。
母が寝てから、男連中は呑みながら格闘技を見ていた。
ぽつりぽつりとおしゃべりしながら。
私は台所に立ち、ミホに手伝ってもらいながら、男連中のために何かしらつまみを作っていた。
ときどきチャンネルを変えるのだけど、『紅白歌合戦』はほとんど見ていない。
紳之介君は格闘技があまり好きではないらしく、ウイスキーのグラスを片手に私の近くに来たり。
テツをゲージから出して、遊んだり。
今年はどうだったとか、来年はどうしたいとか、忘年会らしい話はたいしてしない。
こういうのもいいな。
ミホたちが帰ってから、残りのメンバーで『紅白』を見た。
今年は起きていられるか自信がなかったのだけど、『紅白』が終わり、『ゆく年くる年』の時間になった。
あと3分で年が明ける前に、紳之介君に来年の抱負を言わされた。
みっちゃんは、「オレは、今年は、自分のことをやる」。
「おばちゃんは?」と聞かれ、「私はもう、やりたいことをやっているから、そのまま進んでいく」。
さあいったい、どんな年になるだろう。
除夜の鐘が鳴りはじめたのを合図に、みんな寝た。
私はお風呂。
リカたちがみっちゃんの部屋に泊まるので、みっちゃんは布団を下ろして居間で寝た。
そんな大晦日だった。
ゆっくり休んで、ゆっくり支度をして、5人で元旦の朝ごはん(お昼に近かった)。
母がこしらえたおせちらしきものや、数の子、鶏のハム、甘く煮たトコブシ(みっちゃんのお土産)、きんとん、伊達巻きなどを、リカが庭の赤い実を摘んできて、重箱に盛り合わせてくれた。
なかなか豪華な感じ。
ブリのお刺身(生ワサビ、醤油、黄身醤油)、煮豚&煮卵(きのうのうちに仕込んでおいた。八角がなかったので入れなかったのだけど、しょうがだけで充分においしくできた)、お雑煮(里芋、大根、ほうれん草)。
リカたちが2時ごろに帰ってからは、あと片ずけをして、私は仕事。
2階の畳の部屋で、「おいしい作文」の校正。
至福の時間。
途中で母に聞きたいことが出てきたので、部屋に呼んだ。
文を少し朗読し、コロッケ屋さんのことなどを聞いているうちに、夏の庭の思い出話になった。
家を建て替える前、古い家の庭には柿の木があった。
リリ(飼い猫)を埋めた柿の木だ。
その木の下に、夏になるたび、蒼い小さな実がたくさん落ちてきたのだそう。
実には蒼い星のようなガクがついていて、こんな形で…… と、絵を描いてみせる。
「お母さんも、エッセイを書いたさや」
そう言うと、書類の束を持ってきて畳の上に広げ、手当たり次第読みはじめた。
「あったあった! そうそう、これこれ。『踊り子のスカートのような蒼い実』って書いたさや」
もう仕事どころではなくなってしまう。
さて、そろそろ姉の家の新年会へ出掛けよう。
私と母は、ご挨拶だけして2時間くらいで帰ってくるつもり。
もう、いそいそと着替えている。

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