2005年7月中

●2005年7月20日(水)曇りのち晴れ、涼しい

昨夜も涼しかったし、今日なんか避暑地のように過ごしやすかった。
夏休みの宿題みたいに、校正をきりのいいところまでやって、早めに買い物に行く。
包丁も研いだ。
明日は本の撮影なので、気持ちも体もそれに備えて1日を過ごした。
梅干しを干そうと思ったのだが、出してみたらまだ赤く染まっていなかった。
考えてみたら漬けてからまだ日が浅いし、土用に干さなくても、8月になって晴天の日が続くころに干せばいいのだ。
土用と言えば、「おいしい魚屋」さんで鰻を焼いていたので、つい買ってしまう。
先週くらいに食べたばかりだったけど、ここでシメて、生を焼いているそうなので。
昼間、赤澤さんに電話をしたら、海の家で働いていた。
なんか、話をしていたら、赤澤さんの元気が海の風にのって、電話口から吹いてくるようだった。
しばらく一緒に仕事をしてないので、声を聞いたら、すごく会いたくなった。
夜ごはんは、鰻の蒲焼き丼(玄米ごはん)、マイタケの網焼き、ほうれん草のおひたし、きんぴらの白和え、椎茸のすまし汁。

●2005年7月19日(火)曇り時々晴れ

今日もまた暑いなあ。
昨夜は、あちこちの扇風機をつけて寝た。
クーラーをつけたくないので。
最近私は、寒がりになったような気がする。
この間も、地下鉄の中でカーディガンを着てもまだ寒かった。
若い人たちは、小さいTシャツやタンクトップでお腹を出し、よく寒くないなあと感心してしまう。
私は歳をとったのだな。
お昼にそうめんを茹で(私はオクラと納豆を入れた)、午後から校正の続きをやる。
夕方までひたすらやる。
気が散ってくると、まな板やざるを干したり(明日、梅干しの土用干しをしようと思って)、杏のソーダ水を作ったりしてまた机に向かう。
スイセイも自分の部屋で何かやっている。
今日はまったく鳥が来ないのだが、どういう加減なのだろう。
天気が関係あるのだろうか。
夜ごはんは、塩鮭(辛口)、小松菜おひたし(しらすのっけ)、ラムの塩焼き(サンチュ、青じそ、キムチ添え)、トマト、じゃがいもの味噌汁、玄米。

●2005年7月18日(月)快晴、夏日

スッカーンと晴れ渡っている。
洗濯機が新しいので(音が静かだし、脱水もよく絞れる)、洗濯するのが新鮮な気持ち。
掃除機をかけ、いろんなものを干して、雑巾掛けをする。
1時から打ち合わせ。
ある程度決まっていたので、30分くらいで終わった。
宅配便を出しに入ったり、図書館、買い物にも行く。
こう暑い日が続くと、何にしようか困ってしまうが、今夜は餃子を作ろうと思う。
図書館では、『メグレ警視の事件簿』の2巻、3巻を借りてきた。
実は、この間1巻を借りてからというもの、ちょっとはまっている。
パリの話だし、メグレの奥さんが時々出てくるんだけど、ヒッチコックの『フレンジー』の奥さんに似ているのです。
『日々ごはん1』のまえがきにも書いた、私の憧れの女性だ。
メグレが帰ってくるのを見計らって、奥さんはチキンをオーブンに入れる。
メグレが相棒と事件のことで生臭い話をしている横で、黙々と編み物をしたり、目数を数えている奥さん。
考えていることはただひとつ、(今夜、この方もごはんを召し上がってらっしゃれるのかしら?)。
こんな奥さんだが、まったく事件に興味がないわけでもなく、たまたま言ったひとことが、メグレのひらめきにひっかかって、事件解決の発端になったりもする。
まず、この本はとても古いので、紙は茶色に焼け(やぶけそう)、古い本独特の匂いがする。
そして、景色の描写や気持ちの描写が詩的で、ドリトル先生に通じるものがある。
挿し絵も古くさい。
パリのおいしいパン屋さんや、料理の話が時々出てくる。
これが、はまっている理由だ。
夕方まで、集中して『日々ごはん5』の校正をやる。
夜ごはんは、餃子、冷やしトマト、レタスと胡瓜と海苔のサラダ、茄子の醤油炒め煮、中華スープ(みょうが、三つ葉、ねぎ)、玄米。
後片づけをして風呂に入ってからも、校正の続きをやる。

●2005年7月17日(日)うっすら晴れ、暑い

ふくらはぎが筋肉痛。
だらーんと怠いのは、日に焼けたせいもあるだろう。
プールから帰ってきたような、心地よい疲れだ。
昨日掘って箱詰めしたじゃがいもが、今朝送られてきた。
さっそくお昼に茹でて食べる。
そのおいしいこと。
皮の色は、昨日の掘りたてよりも少し茶色がかっていたが、土を洗い流したら、また白っぽい肌が見えてきた。
ゆで立ての熱々のところを、何もつけずに食べても、ちゃんと味(塩は入れてないのに塩気を感じる)がある。
若くてみずみずしい味。
バターと塩で食べたあと、バターとしょうゆでも食べてみたが、塩の方がじゃがいもの味を壊さない。
そして、バターのおいしさがよく分かる。
カルピスの発酵バターって、ほんのりカラメル味が混ざって、酸味もあって、とてもいい感じ。
ところで、下の公園では、小学生の女子3人が、先輩に怒鳴られながら体を鍛えるごっこみたいなのをやっている。
「声が小さーい!」「体重は?と聞いておるんだ!」「す、すいません!」。
などと、繰り返し大声でやっているので、すごくうるさい。
スポ根もののドラマの真似をしてるんだろうが、どうも私は苦手だなあ。
私が子供のころにも『サインはV』とか、『アタックナンバーワン』が流行って、クラスの女子は皆見ていた。
私もなんとなく流されて『サインはV』を見ていたが、心からは夢中になれなかった。
だいたい私は大声が嫌いだし、無理して頑張るとか、怒られるとかいうのがすごくダメ。
人に自由を縛られるのなんて、生きている価値がないと思う。
さて、掘ったじゃがいもを実家の母にも送ったので、さっき電話があった。
ひとしきりお礼を言われた後、「アンタ、間違ってたよ(『日々ごはん4』の本文について)。お母さんが言ったのはペテロじゃなくてパウロだで。あのね、世界を巡礼したのはパウロなの」。
というわけで、『日々ごはん4』の12月1日の中にあるペテロは、パウロの間違いです。
ここに正しておきます。
夜ごはんは、キャベツたっぷりやきそば(肉がないのでちくわ入り)、冷やしトマト、クレソンのおひたし、レバーの醤油煮、わかめのわさび醤油。

●2005年7月16日(土)快晴

早起きして、9時前にはスイセイと家を出る。
千葉の畑に、じゃがいもを掘りに行くのです。
11時くらいに畑に着き、教わりながら、さっそく掘らせてもらう。
この前来た時には、枝も葉っぱも青々と繁って、花も咲いていた。
それがもうすっかり立ち枯れて、黒く干からび、畑の地面にはりついている。
こうなると、地面の下のじゃがいもが充分育っているのだそうだ。
こんもりした土を掘ると、案外すぐ下にじゃがいもが出てくる。
ゴロゴロと出てくる。
その肌の白さに驚きながら、どんどん掘った。
皮が本当に薄いのだ。
この掘りたてをゆでたら、さぞかしおいしいだろうと思いながら掘る。
4時半くらいにおいとまし、青山に回って立花君の展示会を見に行く。
なんか、立花君の世界に、色がついていた。
すごく良かった。
そしてひさしぶりに会った立花君は、顔が変わっていた。
なんか、可愛らしくやんちゃな感じが混ざっていた。
前はもっと、厳しいような暗いような近づきがたいような顔が、イメージの中にあったんだけど。
畑から帰ってくる時、ものすごく私はくたびれていたのだが、立花君の展示を見ているうちに気がついたら元気になっていた。
なんでなんだろう。
ギャラリーごと、床まで、立花君の作品みたいだった。
芳名帳にいたっては、いろんなボロ紙を同じ大きさに切って、積み重ねてあるのだが、それも立花君の作品になっていた。
そこに書かれているいろんな人の文字やすき間、そんなものも美しいものに見えてしまった。
吉祥寺に着いて、近所の蕎麦屋でビールとつまみを食べ、日本酒も飲む。
スイセイとひさびさに語り合い、最後においしい蕎麦を食べて、いい気分で帰ってきました。

●2005年7月15日(金)快晴

11時から撮影。
3時には無事終わり、レシピの直しをやる。
あまりに暑かったので、クーラーをつけて撮影をしたのが悪かったのか、夜ごはんもあまり食べられず、扇風機の風が肌に当たるのが辛かった。
風呂にたっぷり浸かって温まるが、膝から下がまだ芯から冷えている感じ。
明日も早いので、今夜は早く寝よう。
洗濯機が新しいのが嬉しくて、今日は何度も回している。
今、3回目だ。
夜ごはんは、めかぶ、浅蜊とじゃがいものワイン蒸し、ゴーヤと小松菜のチャンプル、卵の味噌汁、玄米。

●2005年7月14日(木)曇り

洗濯機の配達があるので、午前中から動き出す。
おじいちゃん洗濯機、ついに運ばれて行きました。
階段を降りて行くのを、窓からそっと見送った。
でも、配達のお兄さんがとても感じがいい人だったので、ちょっと浮かばれた気持ちだ。
本の撮影が迫っているので、最終のまとめをしたり、試作もひとつやる。
紀伊国屋で明日の撮影の仕入れをし、図書館にも行った。
今日は肌寒いかと思っていたら、蒸し暑いような気もしたり。
長袖のTシャツであちこち動き回っていたのだが、そのうち暑くなってきた。
でも、近所のスーパーが冷房効きすぎで、やたら寒かった。
帰ってから袖無しに着替えたんだけど、やっぱり寒くて長ズボンと七分袖のTシャツに落ち着く。
今、大家さんが桃を1箱くださった。
うわーい。
桃狩りに行ってきたそうだ。
去年もやっぱりいただいたのが、あんまりおいしかったので、食べ終わってからも夏の間中桃にはまってしまった。
果物屋やらスーパーのやらいろいろ買って試したけど、やっぱり大家さんにいただいたのがいちばんおいしかった。
勝沼の桃だそう。
「今年はちょっと出来が悪かったみたいですけど」と言っていたが。
夜ごはんは、じゃがいもとレバーのバルサミコ醤油炒め、キャベツとレタスと青じそのサラダ、ホテルのカレー、ゆで卵、きんぴら(昨夜の残り)白いごはん。
後片づけをして風呂に入ったら、どーっと疲れがやってきた。
本当は、明日の仕込みをひとつやっておくつもりだったが、明日の朝やることにする。
今日は、ずっとノンズトップでいろんな作業をしていたものなあ。
はよ寝ます。

●2005年7月13日(水)曇り、肌寒い

今は(3時ごろ)、鳥たちの天国だ。
私の好きな木にいろんな鳥が遊びにきている。
聞いたことのない、様々な鳴き声がする。
「ピチピチピチピチ」「ピーヨピーヨ」と、少年合唱団のように清楚な声。
見ると、雀よりも小さく細身の鳥がとまっている。
そこにオナガが飛んできて、「ギョエーギョエー」と奇声を上げ、合唱は終わりとなった。
さて、おじいちゃん洗濯機、今朝もういちどやってみたら、すっかり直ったように普通に動いた。
しかし、試しに脱水だけ押してみたら、やっぱりまた動かなくなってしまう。
スイセイと相談し、これでやっと新しいのに取り換えることに心が決まった。
今日もまた、秋のように涼しくて、長ズボンにカーディガンも着ている。
フランス日記をまた再開したが、朝、『日々ごはん5』のゲラが送られてきた。
また、校正の日々が始まる。
新しいゲームが、また親戚のおじさんから送られてきたような気持ち。
今日はどこにも出かけずに、校正をやろう。
最近、若い人の悩みをよく聞く機会があるのだが、皆たいへんだなーと思う。
これは、前にスイセイに教わったのだけど、そういう時は自分のランクをひとつ下げたらどうだろう、と思う。
だいたいの悩み(自分も、そういう悩みにはまって落ちこむことがあります)は、周りの人たちと比べて自分はダメだとか、周りの人たちに分かってもらえないとか、周りの人たちに期待されているからなどと、考えの軸が自分よりも他人の方に傾いている気がする。
だからたぶん、基準を自分の方にがっしりと置いたらいいんではないだろうか。
周りに比べたら自分はダメダメだけど、自分の中では精一杯がんばっているのだから、それで他人の期待にそぐえなくても、それが自分なんだから仕方がない。
で、最近私は気がついたのだが、ランクを下げてもそれは周りの目のことなので、自分自身は一向に減っていない。
そればかりか、余計なものがなくなった分、かえって芯が太くなるような、そんな気がする。
そうやって身軽になったところで、自分がやって楽しいこと、夢中になれることを、足下からひとつひとつ頑張ればいいのだと思う。
会社だって、仕事だって、家事だって、無理だったらやめてしまえばいい。
実家に帰ったって誰かに依存したって、ぜんぜんオーケーだと思う。
さあさ、私はフランス日記をやろう。
夜ごはんは、鯖のみりん漬け、きんぴら牛蒡、人参の塩もみ、ニラとセロリの塩炒め、茄子の煮物(角煮の汁の残りで柔らかく煮た。むちゃくちゃおいしかった)、大根おろし、落とし卵とニラの味噌汁、玄米。
今夜は、歯ごたえを残した野菜料理が多くて、アゴが疲れるごはんであった。
ごはんが終わってからも、フランス日記をやる。

●2005年7月12日(火)晴れだけど涼しい

晴れてはいるんだけど、空気がひんやりして秋のよう。
昨日の蒸し暑さとはあまりに違うので、起きた時信じられなかったほど。
そして昨日あたりから、どうも洗濯機の様子が悪い。
脱水ができないのだ。
これは中古で買って、6年ほど使った。
製造が91年というから、前に使っていた人の分も合わせると、10年以上は使ったことになる。
グレーのシンプルな箱型で、日本のものじゃないみたいなデザインがとっても気に入っていたんだけど。
もう、おじいちゃんなのかなあ。
というわけで、お昼を食べてスイセイと洗濯機を買いに街に出る。
私は歩いている時、人の顔はあまり見ないが、散歩中の犬のことはジロジロとよく見る。
今日の一匹目の犬は、私と目が合ってから通り過ぎてからも何度も振り返り、電信柱にぶつかりそうになっていた。
二匹目の犬は、ぐーっと顔を上げてしっかり目が合った。
犬って、興味を示していると、ぜったいにこっちを見てくれる。
さて洗濯機、なかなかシンプルなのがなかったけど、どうにか気に入ったのを見つけて注文してきました。
あさって配達だそうだ。
しかし、帰ってからなんとなく脱水のボタンを押してみたら、いきなり動き出した。
捨てられると思って、おじいちゃんは頑張ってしまったんだろうか。
うーん、どうしよう、困ったなあ。
スイセイは、「電話して断ってもええで」と言っている。
夜ごはんは、鰻の蒲焼き丼(案外玄米ごはんにも合って、とてもおいしかった)、南瓜(清水さんの)の煮物、芯とり菜の塩おひたし、エリンギの網焼き、ミニトマト、豆腐と三つ葉の味噌汁。
洗濯機、明日もういちど使ってみて、まだ使えるようだったらキャンセルした方がいいだろうか。
うーん、明日になったら考えよう。

●2005年7月11日(月)晴れ

2時くらいにりうが遊びに来る。
私は料理の支度をなんとなくだらだらやりながら、りうと喋ったりしながら、スイセイと親子水入らずの会話を聞いたりもする。
でも、どうやら洗濯機が壊れてしまったみたい。
もう6年も前に中古で買ったものだしなあ。
すごく好きだったんだけどなあ。
4時から、みどりちゃんと昌太郎君がくる。
こんどやるスイセイの展示会の打ち合わせだ。
私は台所で料理を作りながら聞いていたが、なんだかとてつもないことになりそう。
昌太郎君の発想って、なんて独創的なんだろう。
スイセイのおもしろさのことを、ここまで理解して興味を持ってくれる人は、たぶん昌太郎君が初めてだと思う。
昌太郎君も変わっているなあ。
とてもありがたいことだなあ。
みどりちゃんも参加して、打ち合わせは本格的だった。
当のスイセイは真面目な顔をして、言葉少なげ。
でもきっと今日は、スイセイの人生の中で、とても嬉しい日だろうなと私は思う。
蒸し暑いけど、なかなか日が暮れない気持ちのいい夕方だった。
私は途中でワインを買いに走る。
ベランダに蚊取り線香を置いて、窓を開けて扇風機を回し、ビール、焼酎と飲み進む。
赤ワインはたらふく食べた後、デザートのようにして飲む。
料理は、いんげんの醤油炒め、レバーの醤油煮、いろいろトマト、枝豆、谷中しょうが、豚角煮(冬瓜、結び昆布入り)、鶏の塩焼き(清水さんのルッコラ添え)、おくらのお浸し、浅蜊のリゾット(鶏を焼いた脂を使って。でも、汁をすっかり吸わせて炊いたので、どちらかと言うとパエリャだと教わった)、チーズ(リコットとチェダーに、きゅうりとセロリ)。
皆が帰ってからスイセイは寝てしまうが、私はまだ元気が余っているので、風呂に入って後片づけをする。
小腹が空いてしまい、サッポロ一番ソース焼きそばを作ってひとりで食べる。
たぶん、昌太郎君がジャンクフード好きな話をしていたから、食べたくなっちゃったのだ。



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