2004年4月中

●2004年4月20日(火)晴れ

撮影2日目。
夏のような1日だった。
今日はひとつひとつ、じっくり集中しながら作った。
そして日置さんのすごさを再確認した日でもあった。
実はこの日記、21日の朝に書いています。
今、朝の5時だ。
2日間の緊張がやっとほどけて、撮影が終わったとたん、夏バテのようになった。
そして、体育会系のように缶ビールをぐびっと飲んだんです。
「おー、終わった終わった!」って感じで。
そしたら1本では足りなくて、3本飲み、そして日本酒も少し飲んだ。
で、猛烈にひとりで酔っぱらって(顔がまだらに赤かった)、涙がぼろぼろ出て(今日のことでいろいろ感動して。日置さんのこととか)10時ごろ気を失ったように寝たのです。
それで、さっき目が覚めてしまったというわけ。
まだちょっと酒くさい私。
そして目は、すっかり一重になって瞼がたれている。
今はまだ、気持だけの(言葉が出てこない)私なので、明日の日記にいろいろ書こう。
もう寝よう。
とりあえず、明日(というか今日だけど)は丸一日休みだ。
またすぐにバタバタと忙しいので、明日はしっかりとバカになろう。

●2004年4月19日(月)薄曇り

7時に起きちまった。
なんか、寝ていられない感じなのだ。
今日から本の撮影が始まります。
ちょっとわくわくもあるが、緊張している。
しおりちゃんがアシスタントで、和楽をおぶってやる予定なので、ちょっと心がゆるむ。
あんまり突っ張らずに、ゆったりとおいしいものが作れるといいな。
だって今回の本はそういう本だから。
ふだんの、あくまでも実質的なご飯の本だから。
これから掃除機をかけて、部屋の空気を仕事のノリに入れ替えます。
よっしゃ。では、行ってきまーす! 5時に終わった。
テンションが上がっているから撮影中は気がつかないが、終わるとどっと腰が痛いっす。
スイセイが、また明日用の仕入れにつき合ってくれる。
家族で協力だ。
帰って、野菜の始末などしていたら猛烈に眠くなり、棒のように眠る。
寝ながら、体がびんびんしびれていた。
9時に起きて夜ごはん。
餃子だけ焼いて、あとは撮影の冷たい残り物をぼそぼそと食べる。
私はあまり食欲がないが、スイセイはもりもり食べていた。
風呂に入って、ちょっと頭が覚めてきたので、今日のレシピの直しを忘れないうちにやってしまう。
そういえば、今日の撮影で日置さんとモッ君がとてもかわいかった。
私の本棚を、二人並んで物色中のふたりの肩が、けっこうくっついていた。
背丈も同じくらいだし、仲良しの悪ガキふたりっていう感じで。
なんで、ふたりを見ると私はティーン・エイジャーの頃ばかり想いをはせるのだろう。
私は二つくらい上級の、悪ガキ少女だ。
後ろから頭をコッツンコしてやりたい衝動にかられたが、料理を作っている最中だったから、それどころではなかった。

●2004年4月18日(日)晴れ

昨夜もまた、とても楽しかった。
「太陽」って、ほんとに気持のいい場所だ。
ハタさんの歌ものびのびして、パワー全開で、とちゅう感動して1回泣いた。
アリヤマ君や久家さんや、皆家族で集まっていて、休日の夕涼みみたいなライブだった。
私もスイセイも6時半から、けっきょく夜中の3時までいた。
いったい何時間飲んでいたのだろう。
夜風に吹かれながら、ちびちびと飲んで、どんどん気持よーくなって、気がついたらけっこう大酔っ払いになっていた私。
立花君もけっこう酔っぱらっていて、私は話したいことがたまっていたので、なんかいろいろ話したなー。
だけど、この人ってやっぱ骨の芯までアーチストさんだ、と思った。
私は、彼のことを大好きだから、つい自分の近くにいる人のようなつもりになってしまう。
だけど、私と彼との間にはやっぱりものすごい隔たりがある。
もの作りに対するていねいさやくわしさが、とんでもなくしつこくて、私はうっと吐きそうになる。
それを思い出した。
だけど、スイセイだって本当はそうなのだ。
いつもいっしょに暮らしていて、おならをしたり、くだらないことで喧嘩したりして、淡々としあわせに暮らしているからつい忘れてしまうが。
スイセイのしつこさにも、立花君に共通する吐き気を覚える。
私はバカ女だから、すぐにそれを忘れてしまうんだ。
なんかふたりに対しての、その吐き気の感じを思い出し、帰りのタクシーでほんとに吐きそうになった。
私は、彼らを尊敬してやまない。
てなわけで、今日は強力な二日酔いなので、ずっと寝たり起きたりしていた。
長編の夢をみていて、ちょっと目が覚めてまた続きを見るというくり返しだ。
夕方やっと起きて、買い物に行く。
明日からの撮影用の大量の買い物を、スイセイがカートを押して手伝ってくれました。
リュックに荷物をつめこんで運んでくれた。
さて、明日からどーんと頑張らねば。
今夜はウルルンを見て早めに寝よう。
夜ごはんは、ゆでうどん、わかめ、大根葉のゆでたの(これらをうどんのつゆにつけて)、タコ刺し。

●2004年4月17日(土)ぼんやりした晴れ

昨夜はとっても楽しかった。
倫子ちゃんはたいへん綺麗で、肌もぴんぴんして、とても元気そうだった。
あんなにたいへんな(奇跡を切りとったようなという意味)写真をいっぱい撮って、りっぱな写真集を作ったのだから、うんとたいへんなことがたくさんあっただろう。
なのに本人はさらりと立っていて、ぜんぜん浮かれてないし、お父さんとお母さんと弟の圭介くんも来ていて、なんか家で団らんしているみたいな打ち上げに、すっかり私は気持ち良くなってしまった。
竹井さんも素敵だった。
中国っぽいシルクの刺繍服に合わせて、麻雀牌のすごいブレスレットをしてらした。
相変わらずお派手だったけど、ぜんぜんいやらしい感じにならないのは、きっと竹井さんの服の下に隠れている品性のせいだろうなって、昨夜初めて思った。
初めて見る人は、竹井さんの派手さと存在感に圧倒されると思うけど(私も最初はびびった)、ご本人の様子をなんとなく遠くに感じて見ていると、なんかとっても「おっちゃん」という感じがする。
うまく言えないが、それは父性のようなものだと思う。
なんか、「俺にまかせろ!」的なものだ。
素敵だ。
是枝さんもお見かけしたが、とてもさりげない感じの方で、顔に寝あと(シーツの皴のあとみたいなの)をつけていそうな、ぜんぜんギラギラした感じでなかった。
すごくお忙しいだろうし、いいお仕事をしていて、皆に注目されている人なのに、すごくふつうの人の顔をしてらした。
私は信頼できるな。
実はまだ映画を1本も見てないけど、さすが本ものだと思った。
そして、「有山さん、今日はすごく気持ち良さそうです。あんなに酔ってるのは久しぶりに見ました」なんて、いろんな人が私のとこに教えにきてくれた。
何で皆私に報告に来るんだろうか?というくらい、いろんな人が同じことを言いに来た。
アリヤマ兄貴はよっぽど忙しくて、きっと皆とばっちりを受けていたにちがいない。
ラーメン屋さんの外の椅子で、皆でラーメンを食べたかったアリヤマ君は、「塩と味噌をここに持ってきてとたのんでこい」と、事務所の女の子に札を渡して指示していたが、今考えるとそれってめちゃくちゃ「俺さま」じゃん。
もちろんラーメン屋さんには断られた。だって待ち合い用の椅子だもの。
すっごいわがままー。
私も人のことは言えないが・・・。
私も、外で皆で回し喰いしたかったが。
おー、忘れてはいけない。
いしいしんじさんにもお会いできたのだ。
あまりに大好きなので、私はドキドキして、せっかく倫子ちゃんが紹介してくれたのに、ぜんぜん話せなかった。
もう、いっぱい伝えたいことがあったのに。
ああいう時の脳みそって、すごく活動してるんだろうな。
なのに、何も話せないのだ。
いしいさんは、思っていたよりがっちりしていて背が高く、男らしい方だった。
それでドキドキしたのかも。
なんか、すごく意識しちまった。
ふと見ると、いつも女の子たちに囲まれているいしいさん。
うー。それを柱の影からこっそり見ている私は、片思いの女子高生の気分だった。
丹治君も、お仕事を終えて2次会に駆けつけてきた。
「倫ちゃんは、本当に僕のただひとりの友だち・・」って、丹治君は独り言のようにかわいく私につぶやいていた。
いっつも丹治君は私にそう言う。
そしてそのセリフを言う時の丹治君は、いつも遠くを見るような目になっている。
人が人を大好きって、すごく嬉しいことだな。
というわけで、今日は二日酔いだし、赤ワインのせいでなんとなく歯が黒ずんでいる。
でも、今夜もまた楽しい夜が待っているはずなので、どーんと遊ぶために、ちょっと夕方まで寝ておこう。
6時から「太陽」でハタさんのライブがあるんです。
12時まで2部構成でやるっていうし、漫才コンビ(誰なんだろう・・)もデビューするっていうし、すごく楽しみで眠れないよ。

●2004年4月16日(金)晴れ、暖かい

今日もまたポカポカのいい天気。
鼻はかゆいが。
さっきから下の公園で、じいさんたちが5人くらい集まって、日なたぼっこをしながらお喋りしている。
かと思っていたのだが、風に運ばれてくる語気がなんとなく荒い。
「そりゃあ分かるけどね」・・って今聞こえた。
何かの話し合いだ。
酒を飲んで話すようなことを、この真っ昼間に話しているのだろうか。
心配になって、時々上からのぞき見している私。
じいさんに混ざって、ばあさんもひとりいる。
さて、夕方から倫子ちゃんの写真展のオープニングにスイセイと行くので、出掛ける前にひと仕事してしまおう。
ふー。
本のレシピ、書き上げました。
これでせいせいと遊びに行ける。
明日もういち日遊んで、日曜日は仕入れだけしてじっくりと休み、月曜日から怒濤の撮影だ。
なんだか、計画がうまくいきすぎてちょっと怖いが・・・。
だいじょうぶなんだろうか。

●2004年4月15日(木)晴れ、暖かい

天気がいいので、早くから活動する。
洗濯ものを干していたら、向こうの生け垣でツツジが満開だ。
そうそう、桜の次はツツジやサツキが咲くのだった。
サツキはゴールデン・ウィークっていう感じ。
サツキを見ると、同時にいつも父のことを思い出す。
父は定年後、いろんな種類のサツキを育てていて、花が咲くと写真を撮ったりしていた。
それを写真屋さんでもらったペラペラのアルバムに貼って、下には名前やら日付けやら丁寧な細かい字で書きこんであったなぁ。
気分がいいので、さっさと出掛ける準備をして、1時には吉祥寺で買い物。
撮影用のものをボチボチ買い初めた。
帰ってから、蕎麦をゆでてスイセイと食べる。
今日はパンも焼いたし(明日、倫子ちゃんにあげようと思って)、デザートの試作をいろいろやった。スパイス入りの黒蜜なんていうのも作ってみた。
レシピも書いた。
なんだかフル活動で、気がついたら8時を過ぎていた。
大急ぎでごはんの支度をする。
夜ごはんは、そら豆ごはん、真鯛の塩焼き、大根葉と油揚げの煮浸し、しじみの味噌汁(木の芽のっけ)。
「今日のごはんは完ぺきじゃったのー」と、スイセイにほめられた。
空豆の固さ加減も色も美しく、ほんとに、春の夕げっていう感じでした。
昨日から夜ごはんは8時にしようと決めたばかりなのに、けっきょくいつもの時間になってしまった。

●2004年4月14日(水)小雨、肌寒い

ぼそぼそした雨が降っているけど、雨もまたよしっていう感じの日だ。
ていうか、たんに自分が元気なのだ。
昨夜、原稿を書き上げたから私は調子いいのだと思う。
これですっぽりと、本のことに夢中になれる。
来週から撮影がみっちり始まるので、レシピをまとめたり、頭をまとめたりして、助走を今日から始めよう。
週末は、倫子ちゃんのオープニングや太陽バンドがあるので、思い残すことなく遊びの方もしっかりやる予定。
そして、月曜日からはズッポーン!と、本の海に飛び込もう。
うふふ、私は絶好調だ!。
というのも今さっき、原稿2本とも、いっぺんでオーケーの返事がきたからです。
本のレシピをぐんぐん書いて、プリントアウトもして、ずっとパソコンの前に座りっぱなしでやる。
頭がぼーっとしてきたら、台所に行ってごはんの支度をしながらお茶をいれ、また机にもどる私。
夜ごはんは、ハンバーグ(ほうれん草のバター炒め添え)、プチトマトの漬物(おととい塩水に昆布と薄口しょうゆ、酒を加えて漬けておいた。トマトには味がしみやすいようにフォークで穴をあけた)、かぶの塩もみ漬け、わかめの黒七味しょうゆ(また黒七味)、かぶのスープ(昨日の残り)、玄米。
今夜は8時にごはんにしてみた。
いつもは9時なんだけど、1時間早いだけで、食べ終わってからもうひと仕事できるのが嬉しいかも。
これからも8時にしてもいいか?と、スイセイにお願いする。

●2004年4月13日(火)曇り、肌寒い

昨日とはうって変わって、今日は寒いです。
こういう日がくるたんびに、まだまだ騙されてはいけないのだ、という想いを新たにする。
このところ、撮影やら打合わせやらで毎日人に会っていたので、今日はどこにも出掛けないぞと昨夜から決めていた。
それにこの重たい天気が重なったので、4時くらいまでずっと布団の中にいました。
本を読んだり、寝たりのくり返し。
蕪が冷蔵庫に残っていたので、「天然生活」のレシピで「蕪と豚肉の味噌スープ」を作る。
おいしい・・。
このスープの味噌は、癖のない信州味噌がいいです。
粒も何もない白っぽい色の。
ちょっと洋風系統にしたい時は、味噌も癖のないものの方が合う。
おいしすぎる田舎味噌を使うと、どうも味が田舎っぽくなるんだよな。
編集の赤澤さんもみどりちゃんも、豚汁のようになったとぼやいていました。
今夜はご飯は炊かずに、うどんを茹でる予定。
その前に、原稿を書き始めなければ。
夜ごはんは、ザルうどん(ワカメとゆでた小松菜もザルにのせた)、玉ねぎ天ぷら。
うどんに黒七味をかけたら、天ぷらの油っこさと合ってとてもおいしかった。
黒七味・・・スイセイも私もちょっとはまっている。

●2004年4月12日(月)晴れ、初夏の空気

大家さんの木、ますます葉っぱが大きくなっている。
桐の大木はまだまだ冬枯れで、カサカサした実のカスみたいなのがぶら下がっているのに、そこからみっつよっつ藤色の花が咲いてきている。
4〜5日前にすでにその状態のまま、ひとつだけ藤色のものが見えたが、まさか?と思って信じられなかった。
もしかして今ごろになると、毎年同じことを思っていたかも。
夏の始めに満開になるこの大木は、夕方になるとまた綺麗なんだよなー。
12時からはキッチンの撮影。
なんだかんだ時間がかかってしまい、3時に終わった。
すぐに赤澤さんと本の打合わせ。
そして4時半からは別件の雑誌の打合わせ。
ここでも赤澤さんとご一緒するので、引き続きやる。
夕方、コピーをとりに図書館まで赤澤さんと歩いたが、風が爽やかで5月のよう。
もっともっと歩きたくなった。
今日は1日いろんな人に会ったし、このまま歩いて吉祥寺まで行って、赤澤さんと焼き肉でも食べながらビール飲みたい!っていう気分だった。
最近の赤澤さんは、パワー全開って感じでとってもいい感じだ。
撮影の最中に、しおりちゃんが京都のお土産を持ってきてくれた。
長尾さんが「クウネル」で紹介してらっしゃった、傘のお菓子をおねだりしたのだ。
黒七味と、永谷のヨーロッパ土産のはちみついろいろもいただく。
うわーい。
和楽は、また大きくなっていた。
顔もどんどん可愛く美少年になってきて、いつまで見ていても飽きない。
笑ったりされると、たまんない。
撮影中なのに奥の部屋にこもって、ずっとべたべた遊んでいた。
冷凍庫に手羽元が2本だけ残っていたので、大根、長ねぎ、梅干し、生姜、昆布、酒、オイスターソース、しょうゆを入れて圧力鍋で煮ているところ。
夜ごはんは、大根と手羽元の煮物(さっそく黒七味をかけたらバッチリだった)、大根、にんじん、貝割れ、ワカメのサラダ、かぶの味噌汁。
デザートはココナッツみつ豆。

●2004年4月11日(日)晴れ

昨夜はエッセイをひとつ書き上げた。
「ツクピーツクピー」と、よく通るきれいな声で鳴いているのは、木のてっぺんにひとりでいるシジュウカラだ。
雀よりも小さな体のどこから、あんなによく響く声が出るのだろう。
午後から、ちよじがお母さんを連れて挨拶に来る。
わざわざ大阪からいらっしゃって、おいしい日本酒や塩昆布やちりめん山椒を持って来てくださった。
ちよじは、ゆっくり穏やかに関西弁を話す娘だが、お母さんはちゃきちゃきだった。
「ほんまに家の方にも遊びにきてくださいな。蛙がガーガー鳴いておりますけどな」という感じ。
明日はキッチンの撮影なので、あちこち軽く磨く。
打合わせもあるので、メニュー出しや試作もやった。
夜ごはんは、塩鯖、大根おろし、ニラ玉、中華風冷や奴、つみれ汁、玄米。
つみれ汁がとてもおいしくできた。
昆布だしで薄味に汁を作り、大根、つみれを入れたんだけど、しょうがのおろし汁を最後に絞ったのがよかったみたい。
ていねいに作るとやっぱりおいしくできて、それがスイセイにも伝わる。
スイセイは特に味にうるさい方ではないけれど、気をぬいたものを作ると、なぜだかすぐにバレてしまうのだ。
デザートは、ココナッツミルク寒天のスパイスはち蜜。
おいしかったけど、バナナとかマンゴーを加えるともっといいかも。



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