2003年5月下

●2003年5月31日(土)強い雨、蒸し暑い

台風がきているそうだ。
買い物に行こうと思っていたのに、とても外に出られる感じではない。
昼間はキッチンの掃除。けっこう乱雑になっていたのを片づけた。こんどまた収納の取材があるのです。
そして雨の日って、原稿書きがはかどることを発見した。
いつもは雨が降ると、だらだら本を読んだり寝くさったりしていたが、原稿書きを始めたら知らないうちにけっこう励んでしまった。外に出られないという諦めと、規則的に降る雨の感じが、部屋の空気を落ち着かすのだ。窓も締め切ったままだから、部屋の中の空気が安定している感じだ。
夜ごはんは、納豆オムレツ、キャベツとわかめのさっと煮、塩鮭、玄米。
夜、風呂上がりに窓を開けると、雲がどんどん流れてゆく。
明日は教室だから晴れるといいなー。

●2003年5月30日(金)爽やかな晴れ

1時から打ちあわせ。
さっさかと決まって、2時前に終わりました。
教室用の仕入れやらあるので、街に出ていろいろ買い物。
あさっての1組の教室では、季節もののらっきょう漬けができそうだ。
もうかなり前かららっきょうが出ていたので、いつなくなるかとスーパーに行くたんびにチェックしてハラハラしていたが、ぜんぜんだいじょうぶそうでよかった。
毎年塩らっきょうのみを漬けていたが、今年は直漬けに挑戦しようと思う。
今はなき「ごはんやさん」の朝ちゃんが、きび砂糖と酢で直漬けにしていたのを、いつか真似して作ってみたいとずっと思っていた。あと、しょうゆ漬けもやろう。
夜ごはんは、かつおのたたき(ミョウガ、貝割れ、大葉などたっぷりのせて、にんにく醤油とごま油にレモンをしぼったタレ)、豚肉とピーマン炒め、油揚げの味噌汁、玄米。

●2003年5月29日(木)快晴、夏のよう

撮影でした。
良美ちゃんのCDから始まって、ずっと沖縄ものをかけながらやった。
外は青空で、真夏のような天気なんですもの。
プロセスカットがけっこうあったので、5時過ぎまでかかったが、心地よい疲れです。
今日の撮影は豚肉ものばっかりだったので、残ったらどうしようと、昨夜からそればかり気にしていたが、スタッフたちはどんどん食べてくださり、気持ち良くなくなっていった。残りはお土産に。
しおりちゃんの妊婦ぶりは、ますます板についてきている。
7月末が予定日だ。今から私はとっても楽しみ。
残しておいたゆで豚で、きのこカレーを仕込む。
夜ごはんは、きのことオクラのカレーとグリーンサラダ。
今夜も早めに風呂に入って、ヨガをみっちりやる予定だ。

●2003年5月28日(水)晴れ、初夏のよう

打ちあわせ、そして小さい撮影。
4時には終わり、明日の撮影用の仕入れ。
帰ってからは、レシピをまとめたり、次の撮影のメニューを考えたり、明日の仕込みをしたりと忙しく動く。
けど、全開にした窓からは初夏の気持ちのいい風が吹き抜けるので、気持ちはのんびりだ。さっき、木のところにめずらしい鳥が2羽来ていた。
急いで双眼鏡を取りに行ってのぞくと、黄緑色の体にくちばしはオレンジ色で、ちょっと先が曲がっている。しっぽがひゅっと長くのびた大きめの鳥だ。オオムとか南方系の鳥みたいだった。何ていう名前なんだろう、気になる。
このところ、毎日毎日なんだかひじょうにバタバタしている。
今週いっぱいで休みなのは1日のみだ。そして、教室の次の日にはすぐに取材旅行に出掛ける。
丹治君と新潟に行くんです。温泉もあるみたいだし、ごちそうも楽しみだが、帰ってから紀行文を書かなければならないのがちと辛い。というかそれが仕事なんだが。
今日はもうちょっと頑張って、ダ・ヴィンチの原稿を書き始めてしまおう。
夜ごはんは、塩鮭、しめじとちくわの醤油炒め、中落ち刺し身、冷やしトマト、玄米、卵スープ。
というわけで、ゆで豚を仕込みながら原稿を書き上げてしまった。
そしてなんと、今日は風呂上がりにまじめに体操までした。
最近私は太ってきているようなので、雑誌のダイエット記事を見て、ヨガみたいなのをやってみたんです。なんか、ハーハーしていい感じだ。

●2003年5月27日(火)曇りのち雨のち曇り

テレビの収録。
どんよりした天気の中、ゆりかもめに乗る。
ウォークマンにはクラムボン。
郁子ちゃんの声をずっと聞いていたら、世界に対して同じ視線を持っている人っていう気がした。わりと自閉的な感じがする。というか、自分だけの世界の楽しみを知っている人というか。それはまさに私です・・。
無事にたのしく収録は終わりました。
私の好みのゼリーは、ぷるぷるの柔らかいやつなので、かなりゼラチンを抑えている。そのことで、ずいぶんフードさんたちにお手間をかけてしまった。
けれどいつも、フードさんたちは皆さんニコニコでやってくれるんです。ありがたいことだと本当に思う。
8時終了の予定だったが、なんと45分も早く終わった。業界用語では、「45分まいてます!」って言うらしい。
吉祥寺に帰って来て、ひさびさに赤澤さんと飲む。
とちゅうからミキちゃんも参加して、やきとりや豆腐などおいしく食べました。
赤澤さんは、なんとなく女っぽくなっていた。
ミキちゃんとふたりてくてく歩いて帰り道に、「わたし、高山さんの本に参加させていただいて、本当に良かったです」なんて、深呼吸して夜の街に言うみたいにミキちゃんは言っていた。こんな娘みたいな(りうと同い年)子に、そんな清々しいことを言われて、私はものすごく嬉しかった。

●2003年5月26日(月)ぼんやりとした晴れ

きのうは、えりちゃんの病院にお見舞いに行って、新生児室も見に行ったのだが、えりちゃんの子供は奥のちょうど見えない所にいた。なので知らない人の赤ん坊をじいーっと見ていた。新生児ってどの子もすごいんだ。
お地蔵さんみたいに皆ありがたい顔をしているのだ。
小さい手をのばしたり、あくびしたり、薄目をあけたりしている。そして表情がくるくると変わる。
言葉も出ずにじーっとみつめる私の横で、「おー、よしよし、ええ子じゃのー。ええ顔じゃのー。ありがたいのー」と、ずっとスイセイはぶつぶつ言っていた。誰か知らない人の子供なのに。
旦那さんが来てくれたので、やっとえりちゃんの赤ん坊を見ることができた。
ふーっ、ほんとに可愛かった。やっぱ自分ちの子供(じゃないけど)は、ひとしおだ。
目に入れても痛くないというのはこのことだ。いくらでもずーっと見ていたかった。
ふたり目だけど、いちおう高齢出産だから、えりちゃんの体のことを心配していたが、風呂上がりみたいなすっきりした顔をして、案外元気そうで安心しました。なんか、旦那さんもえりちゃんも、幸せに包まれてるって感じで穏やかだった。
スイセイは、「りうには言ってないんじゃけどの、りうが生まれたての時、すーごい顔じゃったんで。シンメトリーでの、すごい整ってきれいじゃったの。今日見た中でいちばんきれいな顔じゃった。今はもうかなり崩れてきてるけどの」なんて言うので、「それは自分の子供だからそう見えたんじゃない?」と聞くと、うーんとしばらく考えてから、「うんにゃ、ちがうと思う」と答えていた。
吉祥寺に帰って来て、ちょっとクウクウに寄って1杯飲んでいるうちに、たのしーくなってきてしまい、久々にけっこう酔っぱらった。
なんかほっとしたし、嬉しかったからだと思う。
それで、今日はちと二日酔いです。
1時からは打ちあわせ。30分くらいでさーっと終わった。
スイセイが郵便局に行くというので、散歩がてら私もついて行った。
待っている間、小学生の作文集というのを読んでいて、あまりに素直な作文だったので、つい泣いてしまった。郵便局で泣く女ってあんまりいないだろうな。
夜ごはんは、いわしの梅煮(残りもの)、豚と厚揚げとゴーヤの塩炒め、玉こんにゃく(残りもの)、あさりの潮汁、白菜ときゅうりの漬物、玄米。
夜はまたしても豚角煮の試作。

●2003年5月25日(日)曇り時々晴れ、暖かい

すごい早起きしてしまった。7時だなんて・・ やりたいことがあると、さっと起きられるもんだなぁ。
やりたいことというのは、本の校正です。ワクワクして寝てらんないって感じなんです。というか、ゆうべは12時には寝たのですがね。
すごい集中してやっていたら、スイセイが部屋に入って来て「みい、すごい変な顔になっとる」と言われる。眉間にしわが寄って、すごい目つきになっていたらしい。
ためしに老眼鏡を借りてみたら、なんて楽なのだろうと驚く。
しかし、鏡に写った私の顔は・・・母親そっくりでいやになる。
3時から従姉妹のえりちゃんの病院に行くので、赤飯弁当を作る。
えりちゃんは木曜日に赤ん坊を生んだ。そう、また赤飯を炊いたのです。
弁当のおかずは、ゆうべの豚角煮と玉こんにゃく、ほうれん草のおひたしだ。
春のほうれん草って、葉っぱが大きく茎も太い。冬のも大きいけれど、冬とはまた違った感触だ。冬は霜にあたって寒さをしのいだ図太い感じ。葉っぱも厚い。
春のほうれん草は、色が新緑のようにみずみずしく、軽やかな感じ。中学生っていう感じ。
で、そんなほうれん草を触っていたら、ふと思い出した。小学校の調理実習のいちばん最初の授業って、目玉焼きとほうれん草のバター炒めだった。あの時のほうれん草を触った感触のことを思い出したのだ。たぶん新学期にやったはずだから、春のほうれん草だったんだろうと思う。

●2003年5月24日(土)晴れ、ふつうの暖かさ

朝から宅急便のおじさんが2回来て、2回目に起きてしまう。
本のゲラが届いたので。
風呂にざぶんと浸かって目を醒まし、ミルクコーヒーをいれ、校正を始める。
本の校正の時って、私はかなり集中して緊張するので、その作業は長く続かない。
イライラしたり頭痛がしてくると、良美ちゃんが歌っているCDをかけた。
とちゅう赤飯を炊きながら、それでも頑張って半分までやりました。
赤飯は、私は初めて作った。米ともち米が半々の、炊飯器で炊くまがいものみたいのは前にやったことがあるが、せいろで蒸かしたのは今回が初めて。
すご〜くおいしくできました。前の晩からたっぷり水に浸けてさえおけば、あとは布巾をしいたせいろで蒸すだけだ。とちゅう、何回か手に水をつけて全体にふりかけた。
ツヤツヤのもちもちのができました。
スイセイの好物なので、すごくおいしがってくれた。
夕方、スイセイといっしょに散歩がてら買い物に行く。
帰ってからは試作大会だった。
くーっ、すごくくたびれました。
夜ごはんは、いわしの梅じょうゆ煮、豚の角煮トマト入り、玉こんにゃくの煮っころがし、わかめの清し汁、玄米。
デザートは昨日の水ようかんにきなこをかけて、自家製黒みつをかける予定。
今、私の後ろではヤノ君にもらった冷蔵庫がブーンといっている。
ゆうべ夜中に電源を入れてみたのです。あまりにブンブンうるさかったので、足のところに段ボールなどはさみこんでいろいろやったら、いい感じになりました。
まるで、台所が書斎みたい。
この音が、なんだかやけに落ち着くんです。ばななさんの「キッチン」みたいだな。

●2003年5月23日(金)曇り、蒸し暑い

ゆうべは江藤淳の「妻と私」を一気に読んだ。
それでいろいろ考えて、眠れなくなってしまいました。
奥さんの末期ガンが分かってから、亡くなって、実際にこの手記を書き始めるまでのことが、淡々と書いてある。
江藤さんは奥さんが亡くなった後、わりとすぐに亡くなった。奥さんの後追いのような自死だったから、批評家の人たちはいっせいに「情けない」だの「作家として失格だ」だの「不幸だ」などと、勝手なことを言っていたらしい。
けれど、この本を読んでいると、そういうこともありだな・・と私は思った。
夫婦のこういう寄り添い方というのが、本来の姿という気がした。
そして江藤さんて、小説家としてすごく信頼できると思いました。
なぜかというと、小説家というのは、自分の心のありようをどこまでも突き詰めて探ってゆく仕事だから。江藤さんはとても初々しく、自分の気持ちを辿っていったと思う。
人の幸福ってものは、当人の心の中にあるもので、世間が決めるものではないでしょう。
前に新聞に、惚けたおばあさんが保護された事件が載っていた。
このばあさんは、寝たきりのじいさんをずっと介護していたんだけど、ある日じいさんが死んで、それに気がつかないばあさんは、「おじいさんご飯ですよ」「おじいさん寒いから炬燵を入れましょうね」なんて、相変わらず毎日世話をしていたそうだ。
相手が死んだことも気づかずにいるばあさんのことを「不幸だ」と、近所の人や介護グループの人々は口々に言っていたらしいが、え〜なんで〜?って私は思った。
自分もこんなふうにご飯を作り続けられたらと、私は願うよ。
そして「妻と私」は、小説のように読める。
なんでかというと、エンターテイメント(つくりもの)としても成り立つくらいに、構成がしっかりしているから。これは、たいへんなことだと思う。りっぱだなと思う。
さて、今日は冷蔵庫の掃除でもしようかな。
そして、次の撮影のレシピを書いてしまおう。
夜ごはんは、時鮭、ほうれん草のおひたし(昨夜の残り)、筑前煮(大根、新ジャガ、しいたけ、ちくわ、にんじん)、わかめとねぎの味噌汁、玄米。
レシピ書きに夢中になっていて、玄米を真っ黒に焦がしてしまった。
デザートは、昼間のうちに作っておいた水ようかんだ。しかし、どうも舌ざわりがおかしい。寒天の割りが多すぎたせいもあるが、さらしあんで簡単に作ったからか? こんどはあんこから煮てちゃんと作ってみよう。
明日、赤飯を炊こうと思うので、後片づけをしながらもち米と小豆を水に浸ける。
夜、NHKの人間ドキュメント「さよならキク子、アキ子、象の飼育係の25年、涙の別れ」を見る。
飼育係のおじさんは最後の別れの時、象の様子を遠くからじっと見ているだけで泣いたりしなかった。私はそれを見てすごく泣いた。
「アキコー」と、おじさんが低い声で呼んだら、向こうの方で子供に果物をもらっていた象がゆっくり振り向いて、おじさんの方に向かってまっすぐに、のしのしと歩いてきた時にも私は泣いた。

●2003年5月22日(木)快晴、半そででちょうどいい

さいきん私は熟睡している。
ちょっと風邪ぎみだからだろうか。
今朝は、仕事机まわりの整理をした。
同時進行の仕事のファイルをいつでもダッととり出せるように。というか、今まで箱に積み重ねておいたのを、立ててみただけだが。
午後からは銀行に行ったり、美容院に行ったりした。
帰りにおいしい魚屋さんで、関鯵のお刺し身、ぶり、時鮭を買う。
夕方にはまた図書館へ。昨日行ったばかりだが、もう5冊は昨夜のうちに、読んだり眺めたりしてしまったので。
茂木健一郎さんの本を借りてきた。脳関係の本だ。
この間、久家さんがおもしろいよと言っていたので。
夜ごはんは、関鯵の刺身(生姜じょうゆ)、ぶりの塩焼き、大根おろし、ほうれん草のおひたし、めかぶとろろ、新じゃがの味噌汁、玄米。
今夜も早く布団に入って、本を読むつもりだ。

●2003年5月21日(水)晴れ、暖かい

やっと雨が上がったと思ったら、どんぐりも柿の木も、いつの間にやら葉っぱがぼうぼうだ。桐の花もすっかり落ちてしまった。そして1匹蚊がいる。
今日はひさびさに休日ということにした。
仕事はいっさい何もやらんぞー、と決める。
3時ごろから中華おこわを作り始めました。
もち米を3カップといでざるに上げておき、干ししいたけ3〜4個と干し海老を1カップの水でもどしておく。
しょうが、ねぎを炒めて、下味をつけた豚肉としいたけ、海老も炒め、もち米を加えて炒める。しいたけのもどし汁とオイスターソース、しょうゆを加えて、水分を米に吸わせる。
そして、せいろで蒸すこと20分。せいろにはキャベツをひいた。
夕方、出来たてをスイセイと食べる。
うーん、おいしいがちとしつこい。
もち米は油を吸わないから、ごま油が多すぎた。それと、オイスターソース味が濃すぎて、もち米のおいしさの邪魔をしている。
こんどは、トリガラスープと塩だけでやってみようと思う。
では今から、寝室で本を読み耽ることにします。



日々ごはんへ めにうへ