2003年12月上

●2003年12月10日(水)晴れ、夕方から寒い

風邪はだいぶ良くなってきている。
タンがからむような咳が出るけれど、これは治りかけの症状だと思われる。
1時から打ちあわせがあるので、風呂に入ってごしごしと風邪を洗い流し、窓を開け放してあちこち掃除機をかける。
打ちあわせは1時間ほどで終わった。
風邪もまあまあだ。しかし、どうやらスイセイがひき始めたみたい。
スイセイの部屋に入るとティッシュの山が。
それを片づけようとすると、怒って不機嫌になるスイセイ。
なんで?、だいじなものなのか?。
夕方、ひさしぶりに近所の八百屋さんに行く。
聖護院大根がふたつで150円、長いもの長く太いのが400円、れんこんが150円。
じゃが芋、玉ねぎ、にんじん、茄子、しめじなど、めいっぱい買ってもぜんぶで1200円くらいだった。
このところスーパーでばかり買っていたから、すごく得した気分だ。
帰ってからすぐに料理を始める。
最近、ずっと何も作ってなかったので、なんかもの足りなかったんだ。
だし汁もちゃんととったりして、気持ちをこめて料理しているうちに、どんどん元気が出てきた。
風邪が治ってきたのだ。
7時に図書館に行き、7冊借りてきました。
夜ごはんは、聖護院大根と油揚げの炊きもの(「のらぼう」の真似)、アスパラガスのお浸し、塩鮭、カキ酢、ひじき、豆腐とセリの味噌汁、玄米。
ひさびさに3人で夜ご飯を食べました。

●2003年12月9日(火)晴れ

風邪はどんどんひどくなっている。
咽にあったイガイガが下がって、今は肺のところにある感じ。
体は怠く、ぼーっとしている。
「冷えとり毎日」の真似をして、5本指の絹の靴下の上に、もう1枚毛糸の靴下を履いて寝ているので、寒けはなくなったが。
薬を飲んで、また寝ます。
今日はひたすら眠ることにするので、日記はここまででやめておきます。

●2003年12月8日(月)晴れ

昨夜はクウクウで飲んでしまい、スイセイをおいて歩いて帰って来たが、それでも3時半をまわっていた。
風呂にも入らずすぐ寝たけれど、まだお酒が残っているし、風邪っぽくもある。
11時から撮影なので、必死に起きて風呂に入り、酔いを覚ます私。
いくら1品の撮影だからといっても、油断は禁物だった。
顔写真もバッチリあるのだから。
飲み始めると、ちょっとということができない性分の私だ。
撮影はどうにか無事終わり、料理もおいしくできたので胸を撫でおろす。
2時間ほど仮眠して、打ちあわせを1本やる。
そしてまた布団に倒れ込み、7時までぐったりと寝た。
寒けがするし、咳も出る。
どうやら本式に風邪をひいたみたい。
夜ごはんは、きりたんぽ鍋を3人でおいしくいただく。
あとは何も作らない。
きりたんぽがお餅のようでおいしかった。
薬を飲み、加湿器を寝室に入れて9時に寝た。

●2003年12月7日(日)久しぶりの快晴

たっぷり寝た感じで10時に起きる。
そしてたまっているゆうべの食器を洗ったり、洗濯したりする。
リビングは、一昨日の荷物が散らばったままだけど、まだ片づける気にならなくて放っておいたままだ。
年末だなーっていう感じ。
今月は、あまり仕事を入れなくてよかった。
来年からの仕事の打ちあわせや、自分自身の来年の方向を考える時間にあてようと思っていたので、けっこうお断りしているうちに、けっきょく撮影は2本のみになったのです。
スイセイの部屋をのぞいてみたら、ヘッドホンをつけてのど自慢(NHKの)を見ている。
おもしろそうなので、途中から私も一緒に見た。
そして泣いた。
のど自慢っていい番組だなー。
出演者は出演者同志で応援し合い、皆一生懸命で歌い、ふとそれぞれのドラマがかいま見えたりもする。
それを応援するお客さんは、家族だったり近所の人だったり、職場の同僚だったりするんだろう。
美容院に行ってきたばかりみたいな頭で皆おしゃれをしているし、マスクをしたじいさんもいる。風邪をひいても見にきたかったんだ。
全員がニコニコの、ぴかぴか顔で、この日をとても楽しみにしていたのが伝わってくる。
なんだか私は感動した。
スイセイは「おっ、この人は上手でえ」と、歌う前から教えてくれる。
毎週欠かさず見ているので、分かるんだそうだ。
「上手な人はしまっとるんよ。へたな人はの、出てくる時から違うんよ。空気がの、ボケとるんよ」。
確かにスイセイが目をつけた人は最初から上手で、たくさん鐘が鳴っていました。
さて、ゆうべ読んだ「冷えとり毎日」がとてもおもしろかった。
この本には、青木さんというひとりの人の実体験がつまっている。
青木さんが感じたことだけしか書いてない。
だから、青木さんの小さい自分の世界の中のことだ。
だけども、日本全国の人に伝わる「サザエさん」みたいだなと感じました。
たとえば、高野文子さんの「るきさん」という大好きなマンガがあるが、そのるきさんのここ10年の実生活を見ているような感じもした。
ずぼらだったり真面目だったりする、ひとりで暮らしてきた女の人のなんでもない姿なんだけど、とても伝わってっくるのは、全部が彼女の実感だからだろう。
休みの日や寝る前に、ストーブをつけた冬の布団の中で、せんべいなどボリボリ食べながら読むのにぴったりです。
そして、イラストがまたいいんだなー、ぬけてて。
本文とイラストが一体化している。
私の本でも描いてくださった川原真由美さんなんだけど、なんかこの本に対する愛情が線に出ている感じがする。
それはべたべたした愛情ではなく、じんわりとした間のびするような愛情だ。
イラストでも、いちいち「くっ・・」と笑えます。
さて、今日は夕方から料理教室の生徒さんのクラス会がある。
クウクウで19人も集まるんだそうだ。
しおりちゃんも和楽も来るそうなので、私もあとでちらっと顔を出そうかな。
「きりたんぽ」がものすごく気になるけれど、明日いただくことにしよう。
明日は今年最後の撮影だから、早めに帰って来る予定。

●2003年12月6日(土)曇り

二日酔いだしくたびれているしのダブルパンチで、夕方までずっと寝ていた。
仕事を入れないでおいて大正解だった。
丹治君は、「今朝9時に京都にいないといけないんです」とか言いながらも、ゆらーっとしていたが、だいじょうぶだったろうか・・と思いながら。
白いご飯を炊き、豚肉と大根でサラサラのカレーを作ってスイセイと食べる。
ちよじもずっと寝ていて、さっき起きてきた。
カレーを食べ終わり、また寝ているちよじ。
そしてちよじの実家から、「炭火焼きりたんぽの鍋セット」のすばらしい到来物が秋田経由でやってきた。
比内鷄と濃縮スープ、セリも長ねぎもとてもりっぱなのが、丁寧に紙に包まれている。
そして天然水のボトルまで入っていた。
これでスープを薄めて作れということらしい。
ちよじの家では、毎年冬になるとお取り寄せして、家族で食べるのだそうだ。
今年、ちよじはわが家で食べる。
ありがたいことです。
そして私も寝ることにします。
昨日いただいた青木美詠子さんの本(「冷えとり毎日」メディアファクトリー刊)を読みながら。

●2003年12月5日(金)曇り

11時からは軽い撮影があり、1時には終わった。
そして、みどりちゃんの車に乗せてもらって、いざ青山へ。
「アノニマ・スタジオ」の事務所開きパーティーです。
お客さんは、70人くらいいらっしゃって大盛況だった。
料理は、黒豆のだししょうゆ漬け、丸パンと焼き豚のベトナムサンド、黒パンとハーブクリームチーズ、煮卵、赤かぶのゆず漬物、蒸し野菜盛りあわせ(豆腐マヨネーズ、緑のソース)、じゃが芋とたらこのグラタン、上海餃子、モンゴル餃子、塩豚と根菜の味噌スープ。
中川ワニさんがコーヒーを実演つきでいれてくださり、しおりちゃん作の甘いもの2種もお出しした。
炒った黒米、干しいも、干し柿の入ったチョコレートと、干しいちじくの煮たのをのせて焼いたバターケーキだ。
ワニさんのコーヒー、とてもおいしかった。
いつも自分でいれているコーヒーとは、まったく別の飲み物でした。
トロリとして、コクがあって、香りも濃厚で。
料理は、いろんな方に「おいしいです」と声をかけられ、食べている人たちの顔も見ることができ、クウクウで働いていた感じを思い出しました。
スタッフ皆でパーティーを作り上げてゆく感じ。
やっぱりそれは、とても興奮するものでした。
そして何よりも熱い料理をタイミング良く出せ、お客さんもあっという間にさらうように食べてくださったことが嬉しかった。
展覧会なんかのケイタリングでは、ぜったいに不可能なことだ。
手伝ってくれたしおりちゃんを筆頭に、ミキちゃん、ちよじ、赤澤さん、川原さん、青木美詠子さんの助けがなかったら出来ないことでした。
私は本番中飲みながらあちこち行かせてもらえて、本当にありがたかった。
赤澤さんは、冗談を飛ばしながら、絶え間なく洗い物をしていてくれた。
そして丹治君は、気がつくとすごく酔っぱらっていた。
見た目にはあまり分からないんだけど、よく見ると眼鏡の中の目が、(〜)こんな形になっていた。そして、すっかり甘えん坊さんの口調に。
玄関のところで、「高山さ〜ん、僕ほんとうによかったです〜」とか言っていた。
キッチンのシンクの下にもぐりこみ、膝をかかえて「ん一一一」とホーミーみたいなのをひとりぼっちでやっていた丹治君。
私ももぐってみると、そこはもぐらないと分からない空間だった。
音がこもって、周りから遮断され、ひとりぼっちになれるんです。
ほんとうに良い場所で仕事をやれることになった丹治君に、心からおめでとう。
打ち上げが終わって、タクシーで帰って来ました。
布団に入ってふと時計を見ると、朝の6時だった。
あー、長い一日だった。
そうだ。川内倫子さんに会えたのもとても嬉しかった。
倫子ちゃんは、早めに顔を出してすぐに帰ってしまったのが淋しいなーと思っていたら、夜中にまた戻って来てくださったのです。
奈良さんのオープニングパーティーに行っていたんだそうだ。
明日は撮影だとか言いながらも、スイセイと私と3人でいろいろ喋り合った。
そして、サラッと風のように帰って行った倫子ちゃんであった。

●2003年12月4日(木)晴れ

パーティーの準備で「アノニマ・スタジオ」へ。
12時前に出掛け、8時に帰ってきました。
くたびれました。
腰も痛いし、実はのども痛い。
風邪か?。
とにかく明日に供え、今夜は早く寝ることにします。
夜ご飯は、今夜もちよじがクウクウでバイトなので、スイセイとふたりでラーメンにした。
小松菜ともやしがたっぷり入った、醤油味だ。
明日は11時から撮影、そしてそのままみどりちゃんの車に乗っけてもらって、アノニマに行く予定。

●2003年12月3日(水)晴れたり曇ったり

黒パンにハーブクリームチーズと杏ジャム&バター、カフェオレ。
これが私とちよじの朝食。
スイセイは、わかめうどんのチクワ入りだ。
チクワは1本丸ごと入っている。
「みいよう、こうやってお汁を吸いながら食べるんで」と言いながら、チクワをストローのようにしているスイセイ。
午後からは、ケイタリングの仕込みだ。
モンゴルだれと黒豆のだししょうゆ漬けを、ちよじに教えながら作る。
しおりちゃんは和楽をおんぶしたり、おっぱいをあげたりしながらチョコレートを作ってくれる。
あさってのパーティーに、中川ワニさんが出張コーヒーに来てくださるので、しおりちゃんに小さい甘いものを作ってもらっているのです。
すごーく楽しみだ。
夜ごはんは、はまちの刺し身、いかゲソにんにく炒め、ごぼうとしらたきの炒り煮(昨夜の残り)、かぶの葉のおひたし、おぼろこんぶの汁、玄米。
ちよじがクウクウのピンチヒッターで夕方から出掛けたので、ふたりで食べました。
食べながら、スイセイと喧嘩をする。
私がふっかけたのだ。
今、メールを見たら、今日は私たちの結婚記念日だということを教えてくださるファンレターがきていた。
ありがたくてジーンとしました。
私はまったく忘れていた。
あとでスイセイに報告に行ったら、「何をやっとるんじゃ俺らは」とつぶやいていた。

●2003年12月2日(火)あっぱれ

昨夜は、スイセイの話につき合っているうちに私もどんどん興奮してしまい、夜中の4時まで喋っていた。
まるでSF映画のように、ひと言の言葉で脳ごと情報を交換し合い、瞬時にそれが伝わって、お互いの脳に映像を写し合うような感じだった。
テレパシーか?。
ふたりして「お疲れハイ(テンション)」なのだ。
そしてぐっすりと眠り、今朝は12時に起きました。
久々に晴れたので、洗濯を2回戦やったり、掃除機をかけたり。
今は、ケイタリングのことに頭のすべてを集中しています。
シミュレーションもしています。
たぶん、会いたい人たちにたくさん会えるパーティーになるだろう。
初対面の人との出会いもあるだろう。
とても楽しみだ。
明日から、しおりちゃんと仕込みに入ります。
和楽がいっしょに来るのも、孫に会えるみたいにすごく嬉しい。
夜ごはんは、鯵のなめろう、カレイのみりん漬け、かぶの葉(スキップの)お浸し、ごぼう(スキップの)と舞茸としらたきの炒り煮、あさりの味噌汁、玄米。
今の時期、あさりはしじみみたいに小粒なのだな。
けど、小粒ながらいい出しがでていた。
スキップのかぶの葉は、味がしっかりあって、茎がぬるっとして、とてもおいしい。
風呂から上がってベランダに出ると、西の空の月がずいぶん下にある。
今日は昼間の月が白く出ていたからだな。
星もけっこう出ているから、明日はきっと晴れるだろう。
ウッシッシ。

●2003年12月1日(月)静岡県は雨、寒い

9時半に起きたら、洗濯ものを干していた(雨だというのに)母が、いきなり私の前に現われて、「ど〜う?なーみちゃん」と外人みたいに両手を広げる。
新居のことだ。
「けっこういいじゃん」と私。
それからは、母とだべる。
ひたすらだべる。
というか、母が次から次へと本だの聖書だの持ち出してきて、止まらないのだ。
聖書の中の言葉について、「ペテロがね・・」なんていろいろ教えてくれるのだが、だんだん私にもペテロさんの人格みたいなのが伝わってきて、顔まで浮かんできた。
「母さんみたいにずっと聖書を読んでる人たちにとっては、ペテロとかって、すごく馴染みが出てくるわけ?、近所の偉いおじさんみたいに?」と私。
「そうさやー。いろんな弟子がいてね、皆個性があるんだけど、特にペテロは偉かっただよ。世界中を巡礼して、教えを広めただよ」なんて同調している母。
「料理の音」のビデオを見せてやって、私は私でだべる。
昼ご飯に、ビデオの中の「にぼしチャーハン」を作ってくれと言う。
「ナンプラーを前に買っただけどさ、匂いをかいだらあんまり臭いもんで、お姉ちゃんにくれちゃったさー。でもチャーハンおいしそうだったねえ・・。今、お母さんナンプラー買ってくるだよう、西友で」と、財布をつかんで買いに行ってしまった。
近所に西友ができてからというもの、いつもこの調子なのだ。
お昼をおいしく食べ終わり、母に「クウネル」のことを言ったら、すぐに本屋に電話してあるかどうかを確かめ、雨の中ひとりで買いに行った。
やるなー、お母さん。
もう72歳くらいだと思うのだが。
きわめつけは、帰る前に夕飯の支度をしてやると私が言って、「やだよう、嬉しいようお母さん。じゃあ今夜はひとりでご飯を食べながら、なーみちゃんのビデオでも見るさや」なんて頬をテカテカさせて喜んでいたくせに、友だちから電話がかかってきたら、あっさり変更して外食することになったらしい。
私はもう作り初めていたのにだ。
まあ、ぜんぜんオッケーですけどね。
母が、そうやって自由気ままに生きていてくれているのが、娘としてはいちばん嬉しいことだからさ。
電話があってから15分で母は出て行った。
残された私はひとり、見ず知らずの新しい家の鍵をあちこち締め、電気を消して、タクシーに乗って駅へ向かったのです。
でも、なんだか私は嬉しかったな。
帰ったら、いい匂いをさせて、ちよじがご飯を作ってくれている最中だった。
メールもどっさり、ファックスも何枚か届いていた。
1日でも家を空けるとこうだ。
私の1日が、まるで空白だったような気分になる。
その1日は、実家でたっぷりと濃い時間を過ごしてきたのに。
私の体は、ほんとうにひとつしかないのだなあ。
たとえば私が家を空けている間に、私の分身(カスタネダ風の)がひとりいたらどうなるのだろう。
帰って来たら、当たり前のように分身と合体するのだ。
それは幽体離脱という方法か?。
夜ごはんは、大根と豚肉のホワイトシチュー、ゆでソーセージ、黒はんぺんの生姜じょうゆ、水菜とほうれん草とワカメのサラダ、玄米。
スイセイはここふつかの間にあったこと考えたことを、喋る喋る。



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