2006年1月中

●2006年1月20日(金)

寝ても覚めても倫子ちゃんのことを考えている。
倫ちゃんのおばあちゃんや、お母さんさえも夢に出てくる。
明日の撮影のために、ひさびさに掃除機をかけたりワックスを塗ったり。
仕入れにも行く。
今日は、これから丹治君と待ち合わせて、倫子ちゃんといしいしんじさんのトークショーに行きってきます。
そして、終わったら、「クウネル」の新年会に駆けつける予定。
明日が撮影なので、あまり飲まずに、川原さんと励まし合って早めに帰る予定。

●2006年1月19日(木)快晴

雲ひとつなくよく晴れている。
昨夜もまた胃がムカムカして、朝方ホカロンを貼った。
スイセイは随分良くなったようで、もうとっくに起きて作業をしている。
まだお腹は完全ではないらしいが。
お昼にきつねうどんを作って食べる。
まだあまり食欲がない様子。
私は私でやることをやらねば。
レシピ書きと、原稿書き。
最近、スイセイの部屋は町工場の匂いがする。
夜ごはんは、玄米味噌雑炊、肉野菜炒め(豚もも肉、人参、もやし)、水菜(倫子ちゃんのお父さんの)のおひたし、高菜(倫子ちゃんのお父さんの)の塩漬け。

●2006年1月18日(水)快晴

朝方、胃のムカムカがひどくて眠りにくかったので、胃薬を飲み、ホカロンをタオルに包んで巻いて寝た。
すぐ楽になって、よく眠れました。
スイセイは、夜中に何度も起きていたみたい。
朝6時くらいに風呂に入ったりして。
昨夜、自分が映っているビデオを見て、気分が悪くなったそうだ。
微熱もあるし、顔色が悪かった。
もしかして風邪をひいたのかも。今、病院に行っている。
きっと展示会の前で、気持ちも体も感じやすくなっているのだろう。
今のうちに、丸1日ゆっくり休息するのはいいことだ。
さて私は、そろそろ原稿を書き始めようか。
夜ごはんは、お粥、真鯛の煮つけ、ほうれん草の白和え。
スイセイは食欲なく、お粥と梅干しだけしか食べられなかった。

●2006年1月17日(火)晴れ

けっこうな二日酔いみたい。
胃がムカムカするので、寝たり起きたりしながら過ごす。
でも、気分はいい。
昨日の倫子ちゃんの声を、ボイス・レコーダーで聞きながら、布団に寝そべっている。
なんか、すぐにでも書き出せそうな気持ち。
昨夜から寝ながらも、頭の中でフレーズが鳴っていた。
全体的なトーンのようなものも、できつつある。
夕方からりうが来るので、あるものでごはんの支度をする。
今日はちょっと早めの夜ごはん。
蓮根(田中君からいただいた)のきんぴら、鯵の干物、水菜(倫ちゃんのお父さんの畑の)のおひたし、大根おろし(これもお父さんの)、納豆、油揚げと葱の味噌汁、玄米。
蓮根が、ねっちりとしてとてもおいしく、好評でした。
しかし私は昨夜の飲みずぎで、胃袋のダメージがけっこうきているみたい。
食べ終わって、家族三人布団の上に集合し、ビデオを見る。
スイセイのことを写しためたビデオを、りうが編集してくれるのだそうだ。
りうがいると、いるだけで楽しくなる。
りうが笑けると、その声につられるようにして、私の笑い方もいつもより明るく子供じみた感じになる。

●2006年1月16日(月)曇り

昨日の暖かさはどこへやら。
しっかり雲っている。
けど、この寒さはキリッとしてみずみずしく、気持ちがいい。
雨が降らないだけでもとてもありがたい。
昨夜は、スイセイがお腹をこわした。
「腹の中に掃除機の吸い込み口があるみたいじゃ」と言うので、胃薬を飲ませたり、お腹にホカロンを巻いたり。
もしかしたら、牡蛎にあたったのかも。
私はぜんぜんだいじょうぶなんだけど。
スイセイは今、神経が高ぶっているから、胃袋が弱っているのかもしれない。
夢中になっている時って、流動食みたいなものがありがたいくらいなのに、そんな時に牡蛎を出してしまった。
可愛そうなことをしてしまったなあ。
なにはともあれ、ではこれから、倫子ちゃんの家に行ってきます。

●2006年1月15日(日)快晴

春のような暖かさ。
午前中にひと仕事し、お昼にお弁当を食べる。
スイセイが板を切りに公園(青空工房)に行くというので、私もついて行く。
さて、今日はもうひと仕事して、明日の撮影に備えよう。
『まる子』を見ても『サザエさん』を見ても、なんか落ち着かない。
ポテチを一袋全部食べてしまった。
明日から、新しい本の撮影が始まるのです。
別に何も支度をすることはないんだけど、考えるとドキドキするので、あまり深く考えないようにする。
明日にすべてをまかせよう。
なので、まだ先なんだけど、別件の撮影のレシピ書きをやった。
夜ごはんは、牡蛎のフライパン焼き(椎茸ソテー添え)、人参サラダ、中華風クリームシチュー(肉団子と白菜煮込みの残りで)、スーパーで買った駅弁(名古屋のとり飯)、玄米。
駅弁は、ふたりで半分ずつ。
後片づけをしながら、明日のスイセイのお弁当を作る。
風呂から上がって窓を開けると、雨が降っている。
信じられないような気持ち。
でも、まあ、雨の音を聞きながらゆっくり眠ろう。

●2006年1月14日(土)曇り

昨夜は、スイセイが早々と12時に寝てしまった。
このところ7時くらいに起きて、すごい集中力で作品を作ったり、展示会にまつわる雑用をひとりでやっているから早寝なのだ。
私は、できるだけスイセイのテンションの邪魔をしないように、息をひそめるようにして暮らしている。
ちょっと大げさだけど。
なので、いつもだったら枕もとの電気をつけて、本は布団の中で読むんだけど、昨夜はリビングで読んだ。
武田百合子さんの『犬が星見た』。
これは、百合子さんが夫の武田泰淳さん、作家の竹内好さんとロシアを旅した日々の日記です。
何度も読んでいるけれど、やっぱりすごくおもしろい。
毎食必ず記してある船の中や夜行列車の食事がおいしそうで、私はカップヌードルをすすりながら読んだ。
ハバロフスクのホテルで昼食に出た、うどん入りコンソメスープというのにそそられたのです。
百合子さんがすでに死んでしまっていることを忘れて、私は読んでいる。
この本の中では、百合子さんも泰淳さんも、銭高老人も竹内さんも、皆いきいきと動いている。
もともと会ったこともない人たちなのに、私はとてもよく知っている気になっている。
何年経っても何十年経っても、この本を開けば百合子さんに会えるのだ。
というか、自分が百合子さんになって、こっけいな愛すべき人間たちや、車窓を通り過ぎる景色を見ていられるのだ。
(本というのはまことに素晴らしいものだなあ)、などと思いながら眠りについた。
今朝10時に起きたら、もうスイセイはいなかった。
今日は「タミゼ」で展示会の打ち合わせがあるそうで、その前にあちこちのギャラリーやお店にチラシを置かせてもらいに行ったり、私のボイス・レコーダーを買いに行ってくれる。
この寒空の下。
私は、温かい部屋の中で、「翼の王国」の原稿書きだ。
気がついたらしとしとと雨が降っている。
インドの話なので、途中で甘いチャイをいれる。
雨は、ひとしきり降っている。
スイセイは傘を持っていったんだろうか。
スイセイは、やっぱり傘を忘れたそうで、濡れねずみになって帰ってきた。
すぐに風呂を入れてやる。
夜ごはんは、肉団子と白菜の中華風煮込み(昨夜の残りに大根の千切りを加えた)、塩豚のシンプル焼き、ほうれん草のバター炒め、納豆、葱の味噌汁、キムチ、玄米。
『NHKのど自慢』の特別番組を見ながら、時々涙をにじませながら食べる。

●2006年1月13日(金)曇り

昨夜はあんなに星が出ていたのに、天気予報の通りになった。
曇りだし、とても寒い。
ベランダに出ると、昼でも息が白い。
だけど、香ばしいような冬ならではのとてもいい匂いがする。
こんな天気の日は、布団から出ずにふて寝したい気分だが、頑張って起きました。
若いころって、よくふて寝していたなと思い出した。
東京に出てきたばかりのころ、朝起きられなくて、ひとり暮らしの部屋で夕方まで寝ていた。
学校にも行かず。
今思うと、田舎から出てきたばかりであまりに環境が変わり、とまどいながらも自分の居場所を探っていたんだろうな。
なんて、もう30年近くも前のことを朝風呂に浸かりながら思い出した。
だけども夕方起きて、下北沢や三軒茶屋の市場にはよく行っていたな。
お金がないからほとんど買えないんだけど、市場がとても好きだった。
そこにいる自分はいつもワクワクと嬉しくて、東京にいることを忘れてしまうくらい、まったく違和感を感じなかったなあ。
さて、そろそろ今日の仕事を始めよう。
スイセイは、朝からパタパタパタパタよく動き回っている。
夕方から、吉祥寺のあちこちのお店にチラシを置かせてもらいに出掛けて行った。
私の方は試作をしながらレシピを仕上げ、「あとがき」も書き上げて無事お送りした。
夜ごはんは、肉団子と白菜の中華風煮込み、ちらし寿司、つまみ菜のおひたし(昨夜の残り)。
夜、片づけをしながら、スイセイの朝ごはんにハム卵サンドを作っておく。

●2006年1月12日(木)快晴

ポッカポカ。
これを書いている首筋に陽が当たって、暑いくらいだ。
鳥も気持ち良さそうに鳴いています。
さっき、ハルの声がしたのでベランダに出てみたんだけど、姿が見当たらない。
(しばらくハルを見てないなぁ、部屋の中にいるのかな)などと思っていたら、下の階の奥さんも私と同じようにベランダから首を出して、声のする方を見ていた。
こんな風に、ベランダから景色を眺めるのもひさしぶり。
メジロも飛んできた。
そういえば、大家さんのどんぐりの木は、ことしは実がならなかった。
去年の日記には(『日々ごはん6』)、どんぐりの実が色づいてゆく描写があった。
もしかしたら、1年おきに実がなるものなんだろうか。
今年も楽しみに待っていよう。
昨夜のテレビはおもしろかった。
『課外授業 ようこそ先輩』という番組で、俳優のおじさんが自己紹介についての授業を小学6年生を相手にやった。
おじさんはまず自分の自己紹介で、カバンの中身を見せた。
ケイタイ電話には、お守りや、阪神のキーホルダー、イギリス土産のキーホルダーがついている。
「私は阪神ファンで、イギリスは好きですがアメリカは嫌いです」。
いつも持ち歩いている自慢の国語辞典は、中学1年の時から使っているもの。
「私は、自分が使ったものをずっと続けて使うのが好きなんです」。
自分のことについて、長所も短所もすべてじっくり見つめてみよう。1日かけて、「苦しんで考えてください」と、おじさんは黒板に書いた。
それを作文に書くのが宿題。
おじさんの国語辞典で「苦しむ」という言葉を調べると、「心と気持ちを使うこと」と書いてあるそうです。
「苦しむ」ってネガなイメージがあるけれど、もともとの意味はそういうことだったんだ。
そのことに、まず感動しました。
子供たちの表情がどんどん変わっていくのもおもしろかった。
なんだ、本当はみんな自分のことをじっくり見つめたり、考えたりすることが楽しいし、好きなんじゃん。
翌日子供たちは、書いてきた作文を読むのではなく、その場で自己紹介をしたんだけど、真面目だし正直なので、それぞれのオリジナリティーがめきめきと前に出て、発表する子を見守る子供たちの目も真剣だった。
ひとりひとりの個性を認め合い尊重し合うこと、本当はみんなできるんじゃん。
今、手元の国語辞典で「苦しむ」という言葉をひいてみたら、「肉体に痛みを感じる。なやむ。つらい思いをする。(借金に)困る。骨を折る。苦心する。(しまつに)苦しむ」 と書いてありました。
言葉の意味っていうのは、時代によっても変わるのだな。
だから、暮らしや生き方に沿って、自分なりの解釈をすればいいのだな。
というわけで、そろそろ仕事を始めよう。
今日もまた試作をやりながら、レシピの仕上げと、「あとがき」を書く。
夜ごはんは、鶏ともち米のお粥、お刺し身(中トロ、真鯛)、つまみ菜のおひたし(梅醤油とおかか)、わかめのポン酢醤油。

●2006年1月11日(水)快晴

春のように暖かい。
昨夜は12時半に寝たのに、11時までしっかり寝てしまった。
スイセイは7時から起きているそうで、「みいは早う寝ても、けっきょく起きる時間は遅いんじゃん」と馬鹿にされる。
掃除機をかけ、1時から打ち合わせ。
「レタスクラブ」の藤原さん、1年ぶりくらいなのに、ちっともそんな感じがしなかった。
毎月連載していたころ、一緒に本を作っていたころにすーっと戻れる。
何年経ってもまたお仕事をご一緒できることが、とても嬉しい。
撮影のメニューはすぐに決まり、1時間ほどで終わった。
藤原さんからいただいた浜松土産のおいしいクッキーを、さっきからボリボリ食べながら、レシピを書いている。
スイセイはすっかり(意識が)立ち上がってきて、私はそのスピードについて行けない。
電話する声も大きいし、早口だし。
私が話しかけると、目玉が小刻みに上下している。
よく、いつもめちゃくちゃに忙しくしていて、頭の中に情報がいっぱいの人がそうなるように。
ささ、私は「あとがき」を書き始めよう。
夕方、丹治君がちょっとした作業のためにいらっしゃった。
ちょっとビールでも飲みたい気分になったが、スイセイがただごとではないし、私もやらなければならないことがあるので、ぐっと我慢した。
夜ごはんで、試作をしながらレシピを仕上げる。
夜ごはんは、百合根入り茶わん蒸しきのこあんかけ、春雨とひき肉のピリ辛炒め、キャベツのおひたし、玄米。味噌汁はなし。



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