2007年10月上

●2007年10月10日(水)ぼんやりした晴れ

昨夜は、『川かますの夏』(ユッタ・リヒター著)を読んだ。
すごく良かった。
寝る前に布団の中で読んだ。
2時に寝たので、おかげで今朝は目が腫れている。
本を読んで、ひさびさに泣いた。
昨日、図書館で手にとって、ページをパラパラめくってみて、すぐに借りることにした。
一「その前」という時があって、「その後」という時があって、「今」という時がある。「今」とは、台所。シュッシュッと蒸気が音を立てているアイロン、たばこをすいながら目に涙を浮かべているわたしの母。まどから台所のテーブルに降りそそぐ太陽の光のすじ。「今」というのは、聞かなければよかった、とわたしが後悔したこの瞬間。一 この1文が目に入ってきたから。
また、夏に読みたくなる本が一冊増えました。
というわけで、9時に起きてあちこち掃除。
朝、荷物が届いた。
『セクシーボイスアンドロボ』と『すいか』のDVDだ。
イヤッホー!。
1時からは、雑誌の打ち合わせ。
もうメニューをお伝えしてあったので、サクサクッと、30分ほどで終わった。
機嫌よく美容院へ行く。
夜ごはんは、湯豆腐(おぼろ豆腐、白菜、水菜)、ひじき煮、いかの丸焼き、うどん(スイセイ)。

●2007年10月9日(火)雨のち曇り

寒い。
ストーブを出したいくらい。
朝ごはんを食べて、図書館へ。
大家さんの玄関口に、ハルがちんまり座っていた。
ショボショボとして、なんか元気がない。
近寄っても、目を細め、座ったまんま。
耳だけがピタッとはりついている。
嬉しい時に耳がそうなると、前に大家さんが言っていたけど。
頭を撫でまわしても、首の周りを撫でても、口をペロペロするだけで動かない。
私が鼻を近づけると、かろうじて舐めてくれるけど。
やる気がない感じ。
眠たいのだろうか。
午後一で買い物に行き、試作大会。
夜ごはんの前、ついに絵本の文を脱稿する。
夜ごはんは、豚の角煮(ゆで小松菜添え)、蒸し鷄、キムチ、豆腐のスープ、たらこふりかけ、白いご飯。

●2007年10月8日(月)雨のち曇り

しとしと雨。
そんな中、朝から原稿書き。
途中、スイセイが『セクシーボイスアンドロボ』のDVDを注文してくれた。
ふふ。明日には届くらしい。
10月はあとひとつ、11月は2つ、雑誌の撮影が入っている。
それらのメニュー案をだいたいまとめた。
新しい料理が、ふつふつ湧いている。
『おかずとご飯の本』のことが終わったら、本当は『ちくたく食卓』に早くとりかかりたい。
スイセイ本の文章も、書き始めたい。
だけど、平行してやるっていうことができない自分。
とにかくひとつひとつ、心を絞って作ってゆこう。
雨上がりに買い物。
近所の本屋さんが、今月いっぱいで閉店するのだそう。
小さいお店だったけど、おばあさんかお姉さんがいつも店番をしていて、レジのところで猫が昼寝していた。
商店街の本屋さんという感じで、けっこう好きだった。
たまにしか寄らなかったけど、なくなってしまうのは淋しいな。
夜ごはんは、牛こまのキムチ炒め、里芋の含め煮、温やっこ(ゆで小松菜添え)、納豆巻き(スーパーの)、玄米。

●2007年10月7日(日)快晴

風がサワサワ。
シーツも布巾もバスタオルも、サワサワ。
ミニバラが、小さいけれど開いた。
いちばん外側の花びらは茶色で、カサッとしている。
穏やかな日曜日。
今日は、何もやらない日にしよう。
夕方まで、雑誌をめくったり、本を読んだり。
次の撮影のメニューを考えたり。
けっきょく仕事をしてしまう。
夜ごはんも試作。
『まる子』『サザエさん』と見て、子供のころの運動会のことを思い出した。
夜ごはんは、塩豚とキャベツの蒸し煮、サラダ(水菜、レタス、胡瓜、蕪)、玄米(大豆+バター入り)。
夜、金木犀の匂いが部屋の中まで入ってきていた。

●2007年10月6日(土)快晴

昨夜は、あらがえない眠気に、10時半には寝てしまった。
熟睡だった。
今朝はスッキリ起きて、あちこち掃除。
11時から、いつもの「きょうの料理」テキストの撮影。
大豆をゆでながら、のんびり雑談したり、これからやる料理を決めたり。
編集さんが買ってきてくださった、おいしいケーキをいただきながら。
川原さんとのこの連載は、また来年も続けられることになりました。
3時過ぎに終わり、川原さんとスイセイと「ギャラリーF'eve」へ。
平岩夏野さんの洋服の展示に行った。
青キミとも向こうで落ち合えた。
例によっていろいろ試着し、気に入ったのを買う。
女3人ののんびり買い物に、スイセイは我慢できず、途中で帰ってしまった。
そのあと3人でコーヒーを飲み、開店を待って、飲み屋の方の「横尾」に行く。
日本酒をちびちび飲みながら、女3人で、飽きずにいろいろ喋り合った。
ここにスイセイがいたら、きっとまた違う空気の飲み会になったろう。
女同士のお喋りは、くだらないことも、深い話も、目の前のおいしいつまみも、同じところに並んでいた。
それがとても楽しかった。
ひざびさにくつろいで、いいお酒だったな。
帰ったら、スイセイが『ガンジス川でバタフライ』の続編を見ていた。
私も見て、泣く。

●2007年10月5日(金)曇りのち晴れ一時雨

5時にトイレで起きてから、眠れなくなってしまった。
なんか、寝ていられないような気持ち。
明るくなるまで布団の中でうろうろし、エイッと起きる。
窓を開けると、新しい空気。
昨夜は雨が降ったのだな。
もの干しざお、ハンガー、「クルクル君」にも滴がついている。
下の公園の小道を、作業服を着たおじさん(おじいさんに近い)が歩いている。
古びた黒い手提げカバンをぶら下げて。
きっと、中には奥さんが作ったお弁当が入っている。
しばらくしたらもうひとり、少し若いおじさんが、こんどはベージュの作業服を着て、歩いていった。
皆、これから仕事なのだ。
また今日も、新しい1日が始まるのだ。
物音が、だんだんにあちこちから聞こえてきて、鳥の声も増えてきた。
さっきまで曇っていたけど、晴れ間が出たとたんに、木々が黄色く光る。
うちのミニバラの蕾は、ピンクの花びらが渦を巻きながらガクの中に納まって、こっちを向いている。
昨日より、少しだけ開いた。
葉っぱはすっかり枯れ葉色で、枝もヒョロヒョロなのに。
もしかしたら、今開こうとしているのが、最後の花になるのかもしれない。
さて、絵本の直しを、もういちど始めよう。
朝ごはん前には終わり、お送りする。
午後からはぐんぐ晴れ、翳りがどこにもないようなあっぱれな秋晴れとなった。
部屋の奥まで光が入り、眩しいほど。
そんな中、テキパキと脳作業。
『おかずとご飯の本』の「まえがき」や、本の間にはさまるコラムなども書き終わった。
3時くらいから急に翳り出した。
曇っているのか日暮れなのか、よく分からない薄暗さだ。
洗い立てのスニーカーを履いて、散歩に出る。
帰り着いてすぐに、雨。
どんどん強くなって、土砂降りとなる。
夜ごはんは、ラーメン、温泉卵、もやしと蕪の葉炒め(昨夜の残り)、ふりかけ、白いご飯。

●2007年10月4日(木)秋晴れ

10時から打ち合わせ。
2時間ほどみっちりやって、スッキリと終わった。
これで、しばらくはレシピから手が離れる。
明日、出掛けなくてもいいように、買い物へ。
天気予報は大外れで、嬉しい秋晴れになった。
自転車をこいでいたら、金木犀の匂いが。
こんどこそ、はっきり匂ってきた。
近くに寄ってよく見ると、白っぽい花が開いている。
これは銀木犀なのだろうか。
枯れかけていたうちのミニバラは、蕾が開き始めた。
それにしても、秋の陽射しはカラッとした黄色い光。
遠くの音がよく聞こえる。
今日はもう何もやらないことにして本を読んでいるうちに、寝てしまう。
夕方、ひさしぶりに散歩。
夕暮れは、たき火のような乾いた匂い。
もう、すみずみまで秋なのだ。
夜ごはんは、秋刀魚の塩焼き、もやしと蕪の葉の炒め物、ちくわ(わさび醤油)、蕪の塩もみ、豚汁、とろろ芋、玄米。

●2007年10月3日(水)曇り

ぼんやりした天気が続いている。
1日中レシピ直し。
コーヒーをいれたり、ベランダに出たりしながらやる。
夢中でやっていると、泡がはじけるように、プチッという小さな音がする。
それが、私の集中が切れる瞬間。
ねばろうと思えばまだねばれるが、楽しみながら、風通しがいい気持ちのままやるには、そのくらいで休憩しないと。
フィッシュマンズの初期のCDをひさびさにかけていて、「息も切れそうに走るなら 眠ってたほうがましよ スイッチを消してよねえ」のところで、ボリュームを上げる。
今の気持ちにピッタリだったので。
「だれにもかぎられない そんなフューチャー だれにも邪魔されない そんなフューチャー」。
「Future」という曲。
途中から、おでんを煮ながら続きをやる。
スイセイは、アノニマ・スタジオにおでかけ。
6時過ぎにすべて終了。
明日は朝から打ち合わせなので、掃除機をかけておく。
夜ごはんは、おでん(塩豚、大根、人参、蒟蒻、ゆで卵、ちくわ、じゃが芋、結び昆布)、水菜とみょうがのサラダ(ゆずこしょう、ポン酢醤油、ごま油、いり胡麻)、炊込みおこわ(ひじき五目煮の残りで)。

●2007年10月2日(火)曇り時々晴れ

今日もまた、10時間しっかり寝た。
最近、とても深く眠れるようになった。
夢もいろいろみる。
涼しくなったせいだろうか。
朝ごはんは、豆のカレーを作る。
「紀ノ国屋」のナンを買ってあったので。
絵本の仕上げをし、宅配便に出す。
コンビニの帰りにスーパーに寄り、また買い出し。
昨日から私は、これまでたまっていた、食べたい欲作りたい欲を満たすべく、食材を買い込んでいる。
冬眠の前みたいに。
昨日、スイセイがふりかけを欲しがったので、スーパーでふりかけ売り場に行った。
腰の曲がった小さいおばあちゃんが、「のり玉」の袋を持ったまま固まっている。
どうしたのか尋ねると、普通の「のり玉」と、ミニパックが20袋入っているのの違いが分からなくて困っていたらしい。
普通の「のり玉」の方が量はたっぷりで安いけど、ミニパックの方はいろんな種類のふりかけが入っている。
説明しながらいろいろ見比べ、けっきょく私は、「おとなのふりかけミニセット」にした。
焼き鮭、おかか、海苔わさび、青じそひじき、たらこの5種類入っている。
「奥さんがそれにするなら、わたしも同じのにしようかしらねえ」と言って、おばあちゃんは同じのを2パック買っていた。
帰ったら、『おかずとご飯の本』のレシピ直し。
最近、スイセイはひとりで散歩に行っている。
私は、中国から帰ってからこっち、ずっと行ってない。
夜ごはんは、麻婆豆腐、ブロッコリーのおかか醤油、小松菜のおひたし、たくわん、らっきょう、玄米。

●2007年10月1日(月)雨のち曇り

すごく寒い。
昨日からスパッツを履いている。
今朝は、玄米のトマトリゾットを作った。
スイセイのスパゲティに触発されて、白菜、レタス、人参入り。
玉葱がなかったので、長葱を刻んで炒めた。
仕上げにチーズも加えて、ちょっとミネストローネみたいになった。
それにしても、冷蔵庫にも乾物入れにも、もう何もない。
薄力粉もないから、粉ものもできやしない。
今日こそは、買い物に行こう。
1時からは、「きょうの料理」のテレビとテキストの打ち合わせ。
しばらく休んでいたが、来年からまたテレビの仕事も始めようと思う。
夕方、絵本の作業をやり始める。
夢中でやっていたので、夜ごはんはいつもより30分遅れ。
夜ごはんは、目鯛のフライパン焼き(おろしソース)、ひじき煮、小松菜おひたし、コロッケ(スーパーの)、温泉卵、玄米、麩と葱の味噌汁。
風呂から上がって、ハルを眺める。
「ハル〜〜」と小声で呼んだら、30秒ほどこっちを見上げていた。
寒くなってきたからか、毛がムクムクのハルよ。
ああ、触りたい。
夜だけど、コーヒーをいれて、絵本の続きの作業をやる。
電気ストーブをつけた畳の部屋で。
「みいは、やっぱしおこんじきさんをやっとる。中身が変わっただけじゃのう」と感心される。
料理のことでなく、こんどは言葉。
夢中になって没頭するやり方は、子供のころからちっとも変わっていない。
頭の中にあるものを畳の部屋いっぱいに並べ、切りぬいたり、のりで貼りつけたり。



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