2006年9月下

●2006年9月30日(土)曇りのち晴れ

昨日ヤーノから電話があり、婚姻届の保証人になってほしいとお願いされた。
書類を持って近々寄りたいそうなので、ならば今日、お昼ごはんにお好み焼きパーティーをしようということになった。
チアキのことも皆に紹介したかったので。
12時にチアキが帰ってきて、リーダー、ヤーノ、チヨジ、ナツコが集った。
病院に検査に行っていたスイセイは、ヤマト君という男の子を連れて帰ってきた。
ヤマト君は、「スイセイショー」でまな板を買ってくれたことで知り合ったそう。
アパートが近所なので、この間、男同士で飲みに行ったりもした。
ヤマト君は26歳。
微生物の研究の仕事をしているそうだ。
大阪出身のチヨジ、チアキ、ヤマト君と、広島出身のスイセイ、リーダー、東京のナツコ。
というわけで、お好み焼き対決になった。
大阪、広島、大阪、広島と順番に焼いて、最後にもんじゃ焼きをナツコが焼いた。
最初は、お茶を飲みながら食べていたんだけど、そのうちにヤマト君のお土産のメコンウィスキーをちびちび飲み始めた。
スイセイが焼酎の瓶を出してきたあたりから、私もスイッチが入ってしまった。
だらだらと昼間っから飲み進む。
ヒラリンもチアキに紹介したかったので、呼んだ。
アラスカに行った時のヤマト君の話を聞いているうちに、つまみはアウトドア風鉄板焼きに。
北海道から沖縄ぐらいまでの距離を、3ヶ月くらいかけてカヌーで旅をしたそうだ。
オーロラを見たり、熊に出会ってしまった話など聞きながら、まず海老焼き(おろしにんにく、ローズマリー、レッドペッパー、オリーブオイルでもんで、殻ごと半分に切り開いて焼いた)。
基本的にテント生活なんだけど、時々、マウンテンマン(山男)が暮らしている小屋に遊びに行って、釣ってきたサーモンを丸ごと1匹もらったり、ウイスキーのお湯割りをご馳走になったりしたそうだ。
そんなわけで、鉄板焼きはどんどんアラスカ風になっていった。
トマト焼き、塩鮭(レモン汁、オリーブオイルでマリネしてから焼いた)、豚バラ(ガーリックパウダー、ローリエ、ローズマリー、塩、黒こしょうをまぶし、長いまま切らずに焼いた)。
そんな私に、ナツコは「冒険料理家、高山なおみ」という新しい名前をつけてくれた。
うーん、なかなかいいかも。
なんてことをやっているうちに、夕方になって、夜になって、いちど帰っていたチヨジが戻ってきて、「ニチニチ」に仕事に出掛けていたヤーノも戻ってきた。
ヤマト君が、自分の家にラム酒を取りに行ったりして。
それからはラム酒を飲みながら、ドライフルーツ(イチジク、レーズン、プラム)をつまみに、キューバの気分で飲む。
お開きになったのは、朝の4時過ぎだった。
昼の12時からだから、16時間も皆と一緒にいたことになる。
すごーく楽しい1日だった。

●2006年9月29日(金)曇り

9時半に起きて、3人分の朝ごはんを作り、ヨガ。
チアキとスイセイは、朝の散歩に出掛けている。
1時半から、「暮らしの手帖」のカメラマンさんたちが下見にいらっしゃるので、チアキに掃除機をかけてもらった。
1時間ほどで打ち合わせが終わる。
カメラマンさんは、「この家は、写したいものがたくさんあってワクワクします!」とおっしゃっていた。
もうひとりのカメラマンさんも、「キッチンがきれいですね。すごく考えられていますね」とか、「この家がいい写真を撮らせてくれるから、だいじょうぶです」などとおっしゃっていた。
皆が帰ってから、初めてこの部屋に入った人の目になって、ぐるりとあちこち見渡してみた。
確かに、うちっておもしろいかも。
どんなページになるのか、今からとても楽しみだ。
チアキは、「この家に来てから、うんこがたくさん出る。気持ちいい」と言いおいて、出掛けて行った。
今日はミキちゃんの家に泊まるんだそう。
急に家の中が静かになる。
チアキは何をやるにもとても静かで、いるんだかいないんだか分からないような感じだったんだけど。
りうがひとり暮らしを始めた時のことを思い出しました。
なんか手持ちぶさたなような、部屋の中に空間がぽっかりできたような。
夜ごはんは、醤油ラーメン(もやし、ピーマン、メンマ、ゆで卵)、冷やっこ、高知のさつま揚げ(生姜醤油)。

●2006年9月28日(木)快晴

昨夜は、2時過ぎまで飲んでしまった。
田中君も、忙しいのに駆けつけてくれた。
閉店後に、サンとシミズタも参加して、乾杯。
エゾアムプリンの営業開始の乾杯も、お客さんも巻き込んで、3回くらいやった。
チアキは、会うのが3年ぶりだし、大阪に帰っている間にもしかしたら変わったかも?分からなかったらどうしよう… などと思いながら国分寺駅で待っていたんだけど、心配無用でした。
波照間島にいた時とぜんぜん変わらぬまま、リュックをしょって現れた。
そして、一緒にいる間にチアキの感じをどんどん思い出し、3年間のすきまがなくなった。
チアキって、あんまり喋らないんだけど、何か言う時には、すごく言葉を選んでいるんだなというのが分かる。
低い声で、ぼそぼそと切れ切れに喋る。
スイセイは、そんなチアキをすぐに気に入ったらしく、ものすごい早いピッチでどんどんご機嫌に酔っ払っていった。
隣で、ベタベタくっついたりして。
田中君も溌溂として、若々しく、とても元気そうだったなあ。
というわけで、しばらくの間、チアキはうちに泊まることになりました。
今朝は、12時過ぎに起き、私は太陽礼拝だけやる。
遅い朝ごはんを食べて、川沿いを歩いて中央公園まで散歩。
スイセイは途中から走って、グラウンドを一周。
その間、私とチアキは広場の真ん中で、寝そべったり、足を伸ばしたり。
チアキといると、何も喋らなくても平気。
ふたりとも黙って、ぼーっと空を見たりしていた。
夕方の空は、ところどころ水色のところや、薄紫色のところや、グレーのところや、何重にも雲が重なり合って、印象派の絵みたい。
そこを、トンボが何匹も飛んでいる。
向こうでは、おじさんたちがヒコーキを飛ばしていて、そのうち、本物のジェット機も空を横切っていった。
スーパーで買い物をし、チアキに買ったものの袋詰めをお願いして、私は向かいのパン屋さんへ。
戻ってみたらチアキは、料理酒の2リットルパックや、牛乳、黒酢、キャベツなど、重たいものばかりをまとめて1袋に入れ、あとのふたつは軽めにしていた。
そのいちばん重たいのを、自分が持とうとしていたらしい。
けっきょく、スイセイに持ってもらうことになったけど。
玄米を洗いながら、ひさびさに3人分の夜ごはんを作る喜びを味う。
こうして日記を書いている間、チアキはひとりリビングにいる。
ぜんぜん音がしないので、何をしているのか覗いたら、本棚から倫子ちゃんの写真集を出して眺めたり、壁にはってあるメモをじーっと見たりしている。
なんか、動物が部屋の中の匂いをあちこち嗅いで、自分の今いる場所を確かめているみたいな感じ。
夜ごはんは、さっぱりイカ(みどりちゃんの伝言レシピの真似)、れんこんのフライパン焼き、椎茸の網焼き、しらすおろし、水菜とみょうがのサラダ(かぼす、薄口醤油、ごま油、おろしにんにく)、いかワタのホイル焼き、いかなごの釘煮(チアキのお土産)、豆腐と貝割れの味噌汁、玄米。

●2006年9月27日(水)雨のち晴れ

11時まで寝てしまった。
うう、頭が重い。
ヨガは、洗濯やらごはんの支度やらやってから始めたので、すっかり午後になってしまう。
仕事の電話がかかってきたりして、やっぱり午前中の早いうちにやらないとダメだと反省。
でも、一心に入り込み、汗もかいた。
あんなにザーザー降りだった雨も、いつの間にやらやんで、そのうち青空も見えてきた。
チューイチューイと、ひよどりも鳴いている。
でも、もう2時をまわってしまった。
『記憶のスパイス』の、いろんな書類を整理していたら、桃ちゃんにいただいた手紙が出てきた。
桃ちゃんとは、吉祥寺の本屋さんでサイン会をやった時に、私のファンとして初めてお会いした。
それから何ヶ月も経って、「翼の王国」の連載をやりませんか?というのこの手紙が届いたんだけど、読んでいたら、懐かしくいろいろ思い出しました。
『たべるしゃべる』の田中君もそうだったけど、始まりが手紙というのは、やっぱりとても信頼できる。
最近は、ファックスやら電話やら、ホームページにも仕事の依頼がくるけれど、やっぱり手紙の言葉には、本当にやりたい実感の熱がこもっている。
そしてふたりとも、丁寧な言葉使いのすき間から、それぞれのオリジナリティーというものが、ふつふつと見え隠れしていた。
ふたりが、どんな暮らしの中で、いつどんな風に感じて、何に対して心を動かされたのか。
それぞれが自分自身に対して誠実なこと。オリジナリティーというのはそういうことで、私が気持ちを動かされたのはそれだったんだな、と改めて思いました。
さて今日は、波照間島の「パナヌファ」で働いていたチアキと、ごはんを食べる約束をしています。
チアキが「パナヌファ」を辞めて、大阪に帰ったのは聞いていた。
なんとなく、どうしてるかな?とは思っていたけど、チアキに会ったのはもう3年も前のことだし、それからいちども連絡を取り合わなかったから、けっこう遠い思い出になっていた。
そしたらこの間、いきなり電話がかかってきて驚いた。
3年前に島で会った時、「東京に来ることが会ったら遊びにおいで」と言って別れたのだ。
というわけで、今夜はひさびさに「トネリコ」ごはんです。
わーい。

●2006年9月26日(火)曇りのち雨

こんな天気の日は、ついつい寝過ごしてしまう。
生理だし。
打ち合わせがなかったら、本でも読みながら、今日はずーっと寝ていたかも。
昨夜寝る前に、『飛ぶ教室』を読み始めたのです。
ケストナーはやっぱりいいなあ。
それでも10時半にエイッと起きて、ウォーミングアップと太陽礼拝だけやる。
エゾアムプリンは、いよいよ今日から営業が始まった。
今ごろ注文の電話がかかってきてるかも…と思いながら、「ガンバレー!」と応援の気持ちを込めながら太陽礼拝をやった。
スパッツとあったかい靴下も履いて、午後からはテレビの打ち合わせだ。
このところ、連続して秋晴れだったから、たまにはこんなしっとりした天気もいいものだ。
ひさびさに『きょうの料理』プロデューサーの矢内さんに会えたので、嬉しくて、打ち合わせが終わってからも、積もる話をいろいろした。
終わってから、毛布をかぶって、本の続きを読む。
さめざめと降る雨の音を聞きながら。
そのうち猛烈な眠気がやってきて、ことんと寝てしまう。
スイセイが洗い物をしてくれている音で目が覚めました。
夜ごはんは、サラダとスープだけ作って、矢内さんが持ってきてくださった、大阪のおいしい豚まんを蒸かして食べた。
豚まん、キャベツとピーマンの塩もみサラダ、春雨サラダ(昨夜の残り)、わかめスープ(椎茸、葱)。

●2006年9月25日(月)晴れ

ヨガをみっちりやり、掃除をして、1時から静岡新聞のインタビュー。
とても感じのいい女の人だったので、いろんなことをたっぷり話した。
朝早く、沼津から来てきださったそう。
ありがたいことです。
終わってから、明日の打ち合わせの準備をしたりして、のんびり過ごす。
どこにも出掛けない。
締め切りもないし、急いでやらなければならないことも何もないので、夜ごはんのおかずを早めに作り始める。
エゾアムプリンの新しいホームページが、今日の夕方に更新なので、それを楽しみにしながら過ごした。
洗たく物をゆっくりたたんだり、料理の本をめくったりして。
ついに夕方になり、ドキドキして開いてみる。
すごい!。
すごい始まり方!。
これは、誰にも真似できないなあ。
読みながら、すごいおもしろくて、ついニヤニヤしてしまうんだけど、どんどん読んでいくうちに、ボロリ涙がこぼれた。
今までのホームページもそうだったけど、変なことが(アムらしくない)いっこも書いてない。
アムの気持ちが、ふざけた感じでも、誇張してるでも、作っているわけでもぜんぜんなく、ただまっすぐそのままに、出てきたままの声で書いてある。
アムは英語もペラペラだし、自分の考えをしっかり持った、周りに流されたりしないちゃんとした大人だけど、大人が絵本を書くみたいに、子供向けに書いているわけではない。
私はアムの実物を知っているからすぐに分かるけど、喋り方も、あの世界も、アムそのものなんです。
そのことがすごいと思う。
そして、うちのスイセイは、私が書いた日記を日曜日の夜中に読み直してホームページにアップしてくれるんだけど、めったにないけどよっぽどの時に、「これは書かない方がええんじゃないかの」とか、意見も言ってくれる。
カトキチも、スイセイと同じようなことをアムにしているみたいだっていうことが、夏に遊びに行った時に分かった。
カトキチとスイセイは、ホームページの影武者みたいな感じ。
これを読んでくださっている人、ぜひとも新しいエゾアムプリンのホームページをめくってみてください。
先週くらいに、プリンの器で作った料理の写真をメールで送ったんだけど、それも載せてくれてありました。
すごーい嬉しい。
プリン、本当はすぐにでも注文したいけど、アムたちはあんまりたくさん作れないし、全国の待っている人たち優先だから、私はまだ遠慮しようと思います。
夜ごはんは、いんげんと茄子のくたくた煮、肉豆腐(牛切り落とし、白滝、豆腐)、春雨サラダ(胡瓜、ハム、ピーマン)、わかめと三つ葉の味噌汁、のり玉ふりかけ、玄米。
白滝も春雨もいんげんも、どういうわけだか細長いものばかり重なったメニューだった。
風呂から上がって、エゾアムプリンのホームページを、また最初から読む。
ミルクティーをいれ、ビスケットを食べながら。
なんか、寒い空気が伝わってくるので。

●2006年9月24日(日)快晴

もうちょっとで夢に引きずられそうになったけど、エイッと起きる。
カーテンを開けると、まっ青な空が現れた。
スイセイの朝ごはんの支度をしてから、ヨガ。
今朝のリラックスでは、瞼の裏側に水色や薄紫が映っていた。
太陽の真下だと真っ赤だけど、光の屈折の加減で、こんな風に色々に見えるんだろうか。
さて、今日もまた本のための作業をやろう。
ハルは、忙しそうにベランダを行ったり来たりしては吠えている。
涼しくなったから、ちょっと毛が茶色になってきているみたい。
元気そうなハルだ。
食卓の本の作業、ずいぶんはかどった。
夕方になる前に買い物へ。
鰺の新鮮なのが、プリッと大きくて、2匹で300円もしなかった。
最近、チョコレートが周りについているバニラの棒アイスのおいしい食べ方を発見した。
噛んで食べるのではなく、歯を使わずにひたすら舐める。
パクッとしたら、そのままスーッと舐めるようにすると、チョコレートがねっとり溶けながら、バニラの方もいい具合の固さになっている。
今までは、パクパクとチョコレートが固いままで噛んでいたが、雲泥の差のおいしさだ。
食べているところは、ちょっと人には見せられない。
夜ごはんは、鰺のムニエル(粉吹芋、ゆでブロッコリー)、牛蒡と糸蒟蒻の炒り煮、わかめのお刺し身、しば漬け、浅蜊の味噌汁、玄米。
鰺の身がやわらかく、鯛みたいにおいしかった。

●2006年9月23日(土)晴れたり曇ったり

朝方は曇っていたけれど、ヨガをやっているうちにだんだん晴れてきた。
リラックスで目をつぶり、大の字になって寝ころんでいる時、太陽が体中に当って、瞼の裏が赤くなったり、紫になったり、オレンジになったり、青になったりした。
葉っぱが風に揺らされ、カサカサいっている。
光の感じと葉擦れの音で、波照間島の風のことを思い出した。
ああ、行きたいなあ。
ハヅキたちも、良美どんたちも、チャロ(犬)も、皆元気にしてるかなあ。
午後からは、気持ちを切り替えてキビキビ動く。
ゲラの校正を3本やって次々お送りし、新しい本のためのパソコン入力も始めた。
この作業、すごーく楽しい。
豚バラの固まりを、コトコト茹でながらやった。
今夜は、豚バラと大根のカレーにする予定。
パソコンをやりながら、ふと空を見上げると、まんべんなく鰯雲が広がっている。
こんな爽やかな秋の日が、暮れていくのがもったいない。
そうやって、今日も1日が終わってゆくことが、最近、儚いような胸苦しいような気分になる。
それは、早起きするようになったことと関係があるかもしれない。
たくさん寝ていたころは、夢ばかりみていたから、現実の割合が少なかった。
起きている時でも夢をひきずっていたから、なんとなしに宙ぶらりんな感じだった。
現実はちっとも永遠なんかじゃなくて、美しく儚い。
ヨガを始めたことも、早寝早起きになったことも、私の脳みそに何か化学変化を起こしているのだろう。
そして私は、本をあまり読まなくもなっている。
現実を味わうのが忙しいからか?。
夜ごはんは、豚バラと大根のカレー、コールスロー(キャベツ、大根の皮、胡瓜、貝割れ、ゆで卵)。

●2006年9月22日(金)曇り

今朝のヨガは、とてもよかった。
いつもだったら、次の型のことを考えたり、呼吸を数えたり、ぜんぜん関係のないことを思い出して、つい考え事をしてしまったり。
このところ、打ち合わせやら人に会ったりする日々が続いていたので、終わったら掃除機をかけなけりゃとか、ついつい次にやるべきことを考えて、時計を気にしていた。
今日はひさびさに人に会う用もなく、自分のペースで1日を過ごせる。
スイセイの朝ごはんも、ちゃんと用意してから始めたし、先生の声のボリュームも、いつもより落としていた。
だからなのか、自分の体の方に意識がもぐっていき、その感覚をじーんと味わいながらやれた。
動きも、軟体動物みたいにたるーんと柔らかく、気持ちも、地べたを這っているみたいに穏やかな在り方だった。
金木犀が、遠くの方でずっと香っていた。
ぜんぶ終わってゆっくり立ち上がったら、体がからっぽになっていた。
心もからっぽになっていた。
こういうののことをリセットっていうんだな。
自分ならではの、混ざり気のない感覚に立ち返ったような。
それで、昨日いただいた新しい仕事のことを改めて考えてみた。
やっぱりお断りしようと決めた。
雑誌の方は、スケジュールに余裕がないため。
もうひとつはラジオの仕事で、『記憶のスパイス』の本の話をしてもいいみたいだけど、どうもやりたい気持ちが湧いてこないから。
やりたくない理由について、よーく考えてみて、こんな風に思った。
私の仕事は、自分にしかできないことを一生懸命にやること。
自分がいいと思う本を作るとか、いい文を書くとか、テレビや雑誌の料理の仕事とか。
今持っている自分の中のことを、できる限り出し切りたい。
こういうタイプのラジオ出演では、まだそれが表し切れない。
喋り言葉で表しきれないからこそ、私は文章を書いているのだし。
もしも、パーソナリティーが「フィッシュマンズ」の佐藤君とか、武田百合子さんとか、深沢七郎さんとか、めちゃくちゃ尊敬している会いたい人だったら、その時は「やりたい!」とすぐに思うだろう。
でも皆、もう死んでしまっているからなあ。
生きている人では、ジミー大西だったらやってみたいかも。
3時過ぎに美容院へ。
夜ごはんは、スイセイがもんじゃを作ってくれるんだそう。
私が作ったのは、鶏の塩焼き(出てきた脂で茄子を焼いた)だけ。
もんじゃ焼き(桜海老、切りいか、キャベツ、小麦粉、だし汁、ソース〕は、フライパンで作ってくれた。
細かく切ったキャベツの歯ごたえが絶妙で、やたら癖になる味だった。
また作ってほしいなあ。

●2006年9月21日(木)晴れ

今日もまた秋晴れです。
9時に起きてヨガ。
12時から、本の打ち合わせ。
丹治君と浅井さんがいらっしゃった。
ついに、毎日の食卓の本(夏の間やっていた、切り貼り作業)作りが始まります。
去年の1月から1年間の記録です。
日々感じてきた食卓まわりの発見を、あますことなく織り込めるよう、こつこつとていねいに作っていこうと思います。
打ち合わせが終わり、次の打ち合わせ先の「横尾」へとてくてく歩く。
秋って、こんなに爽やかで気持ちがよかったんだよなー。
空気が澄んで、ほんのり金木犀の匂いがする。
丹治君が、「金木犀の匂いっていいですよねえ。なんか、ボクは、いろいろ思い出すんですよねえ」と言っていた。
この匂いを嗅ぐと、今年もまた秋がやって来たんだなあ…という、哀愁のようなものを私は感じる。
私とスイセイは、歩くのがめちゃくちゃ早いみたい。
スタスタと大股で歩いていくスイセイに、ふだんから私は、遅れないようについて歩いているから。
気がつくと、丹治君と浅井さんがずいぶん後ろにいた。
夜ごはんは、秋鮭の焼きびたし(網焼き椎茸添、かぼす添え)、トマト、小松菜のおひたし、ごぼうと糸蒟蒻の炒り煮、大根の味噌汁、玄米。



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