2007年2月上

●2007年2月10日(土)曇り

昨夜は、スイセイが早めに寝てしまったので、私はひとりで起きていた。
なんとなくワインでも飲みたい気分だったが、たくさんは飲めないから開けるのももったいない。
お菓子用のコワントローがあったのを思い出し、氷を浮かべて飲んだ。
ポワーンといい気分になりながら、ソファーで読書。
こんど、こういう夜のために、おいしいウイスキーを買っておこう。
というわけで、今日はぼんやりした天気だけど、なんだか気持ちが外向きな日。
自転車をこいで原稿を宅配便に出したり、服屋さんをのぞいたり。
「横尾」にも用事がてらお茶しに行った。
チコリコーヒーのカフェオレが、最近のお気に入り。
「横尾」ってとても小さい空間なのに、お客さんがいっぱいいても、ちゃんとひとりになれる。
不思議だな。
4時には帰ってきました。
世の中は、連休なのですね。
スイセイの咳は、少しずつ減ってきているそう。
それでもまだタンが絡んで、辛そう。
このまま治ってくれればいいけど。
今、私のまわりは平和で、誰にも邪魔されず、自分の時間表に合わせて生きている。
誰も何も言ってこないけど、嵐の前の静けさっていう気がしないでもない。
さて、どうなんだろう。
夜ごはんは、お好み焼き(豚バラ、たこ、キャベツ、天かす、長芋)。
スイセイの食欲がないから大好物のお好み焼きにしたんだけど、ふと考えてみたら、ばななさんの『チエちゃんと私』のせいだと気がついた。

●2007年2月9日(金)薄い晴れ

11時から、『きょうの料理』の連載の撮影。
いつものメンバー(女ばっかり)が、次々と集まってくる感じがなんだかおかしく、公民館の寄り合いっていう風だった。
これで2回目だけど、川原さんだけでなく、スタイリストの大畑さんもカメラマンのヒロセも編集の鷲尾さんも、皆が台所周辺に集まってきて料理教室みたい。
婦人会みたいで、なんか楽しい。
食後においしいチョコレートケーキをいただき、2時くらいに終わって一応は解散になったのだが、鷲尾さんと川原さんが残って、テーブルの片隅でイラストの直しをしていたり、鷲尾さんが帰ってからは、私とヒラリンが打ち合わせしたり。
川原さんは、同人誌『四月と十月』の古墳部の旅行でこれから九州に行くそうで、私たちの話しにも参加しながら、飛行機の時間までゆっくりしていた。
なんとなく、クラブ活動の部室みたいな感じでもある。
川原さんは、部室の棚にデジカメとスケッチブックをちょこんとのせ、自転車を置いて出掛けていった。
スイセイは、その間ずっと自分の部屋にいた。
咳は、ほんの少しずつよくなっている様子。
山芋がのどにええらしいとスイセイがいうので、今夜はとろろご飯にする予定。
夜ごはんは、お刺身いろいろ(たこ、中トロ、いか)、蒟蒻の炒り煮、ほうれん草のおひたし、人参の千切り(塩もみして、ごま油と薄口醤油)、とろろ芋、麩と葱の味噌汁、白いご飯。

●2007年2月8日(木)晴れ

明日の撮影の準備をしたり、買い物に行ったり。
ひさびさに、本屋さんをじっくり見てまわった。
文庫本のコーナーまでさんざん眺め、けっきょく買ったのは、『プ−横町にたった家』と多和田葉子さんの『海に落とした名前』。
プーさんは、昔ながらの岩波書店の児童書。
全体的に、ミルクティーのような色合いがたまらない。
小学生の頃、図書室にあったのとまったく同じ装丁なのがとても嬉しい。
雨ふりの日の、ちょっと黴くさいような古い紙の匂いとか、うら淋しい中に宿る、確かなワクワク感。
なんか、そういう気分にさせる本。
スイセイは、風邪がぶり返した様子。
時々、すごく苦しそうな咳をするが、本人がいうには治りかかっているらしい。
夜ごはんは、「すし萬」の鮭の海苔巻き、ほうれん草のおひたし、昆布(大船渡で買った、塩蔵のもの)のさっと煮、南蛮蕎麦(長葱たっぷり)。
スイセイは食欲もないし、反応が鈍くてつまらない。
ごはんが終わってから、大根の蜂蜜漬けを作ってやる。
さあさ、私は風呂に入って、『拝啓、父上様』だ。

●2007年2月7日(水)曇り

昨夜は、例のぶ厚い本を読み終わってから寝た。
後半はちょっと分かりにくいところもあり、物語りの世界に片足だけつっこんだまま、飛ばしながら読んだ。
言葉が多くて、隙間がない感じ。
本を読む時って、たぶん私はその隙間に入りこみながらたゆたうんだと思う。
そんなことをぼんやり感じながら寝たら、今朝起きて、続きの考えが浮かんだ。
自分は、ふだんから脳みその中で考えずに、頭のまわりとか、外側で考えているような気がする。
頭の中というより、まわりの空気の中にあるものとやりとりしながら、考えがまとまったり、ひらめいたり、腑に落ちたりしている気がする。
ものというのは、物だったり、人の動きだったり、景色に現れ出たりもするが、基本的には目に見えないもの。
なんだかよく分からないもの。
思わぬところからやってくるものの方を信じているからなのか、頭が悪い(数字や地図が苦手)からなのか、脳みその中でぎゅっと物事を考えつめるのが苦手。
昨夜読んでいたのは、脳みその中で考えるのが得意な種類の人が書いた本だった。
たぶんそうだ。
それで、送っていただいていた、ばななさんの『チエちゃんと私』を、起きぬけの布団の中で開いた。
読み始めてすぐに、すんなりと、呼吸がいつもの速度に戻った。
ばななさんの言葉には、たくさん隙間がある。
言葉から陽炎のようなものが出ていて、読んでいる私は言葉そのものではなく、陽炎を判読している。
それはなんて自由で、ひろびろとした世界なんだろう。
その物語りの中にすっかり私はいて、同調している。
こういうのって、単に相性なのかなあ。
もったいないので、本をベリベリッと引き離し、起き出したけれど、たぶん今日中に読んでしまうような気がします。
朝ごはんの卵サンドは、ちょっとしょっぱかった。
ゆで卵にパセリを刻んで、マヨネーズと胡椒と塩をひとふり入れたんだけど。
卵サンドの塩けって、すごく大事だな。
粒マスタードもよけいだった。
私は高校生の時、スーパーにくっついた街のパン屋さんで、土、日だけアルバイトをしていた。
毎朝、卵を50個くらい固茹でにして、でっかいボウルに入れ、泡立器でつぶし、味つけはマヨネーズと塩と胡椒(ラーメンに入れるようなの粉の)だけ。
そのサンドイッチが、すごくおいしかった。
今でもそれが私の卵サンドのお手本なんだけど、どうもいつも工夫しすぎてしまう。
たしか、マヨネーズも塩も、分量が決められていたな。
人参のスープは、おいしくできた。
白ワインが残っていたからちょっと多めに入れたら、ほんのり酸味が出て、シャンパーニュ地方のスープみたいになった。なんとなく。
今日もまた、頼まれてもいない作文書きをコツコツとやる。
夜ごはんは、牡蠣フライと海老フライ(千切りキャベツ添え、タルタルソース)、白菜漬け、しば漬け、大根と溶き卵(フライの残り)の味噌汁、玄米。

●2007年2月6日(火)晴れ

スイセイは、すっかりよくなったみたい。
私は、早起きして、バスに乗って検査のため病院へ。
予約より1時間早めに着いたのに、ぜんぶで3時間も待たされてしまった。
大きい病院というのは、どうなっているのかぜんぜん分からない。
検査もたっぷりめにやり、くったりとくたびれて帰ってきました。
図書館でぶ厚い小説を借り、布団に入ってむさぼるように読書。
ぐんぐんと半分まで読み進み、パタンと寝てしまう。
その気持ちいいこと。
夜ごはんは、鍋焼きうどん(かまぼこ、水菜、天かす、長葱)、ごぼうと糸こんと牛コマの炒り煮。

●2007年2月5日(月)快晴

鳩、ひよどり、雀、オナガと、今朝は鳥たちがやけにたくさん飛んでくる。
そのたんびに、ハルは忙しそうにせっせと駆け寄ってきて、吠えかかる。
どうやら、大家さんの庭の塀の上に餌台があって、ご飯粒が置いてあるらしい。
雲ひとつない青空。
スイセイは、昨夜とても辛そうだった。
奥の方でタンがからんで、差し迫ったような咳をする。
森進一がオ、オ、オフクロさんよおおおと、こみ上げるみたいな。
そのたんびに洗面所やトイレに起きたりしていたので、私もあまり眠れなかった。
かけ布団を踏んだり、枕元をずかずかと無神経に歩くから。
ちょっとムカッときて、今夜は自分の部屋に布団を敷いて別々に寝ようか…などと考えているうちに、いつか年をとったら、ダブルの布団じゃなくて、別々の布団で寝るようになるかもな。
それとも寝室を別にして、その時にはテレビを私の部屋だけに置こう…などとも思いめぐらしていた。
寝ぼけている時って、けっこう残酷なことを平気で考えるものだ。
起きてからちょっと反省。
そんなわけで、スイセイは朝病院に行ってきた。
ウイルス性の風邪だそうで、薬をたくさんもらってきました。
昨日よりも、おとといよりもずっと病人らしく、食欲もあまりなく、薬を飲んでおとなしく寝ています。
私は、中国であったことを遡って、これから作文を書こうと思う。
2時くらいに、郵便局と買い物へ。
スイセイリクエストの、バナナ、りんごジュース、いなり寿司を買いに。
お昼ごはんに、陽をたっぷり浴びてスーパーの海苔巻きなんかを食べながら、こうやって気のすむまで仕事を休めるってことは、何よりもありがたいことだと、スイセイとふたり話し合った。
夜ごはんは、牛蒡と牛コマと糸こんの炒め煮、目指し、ほうれん草のおひたし、クリームシチュー(昨夜の残り)、卵お粥。

●2007年2月4日(日)快晴

スイセイ、今朝はひどく咳こんでいた。
元気だし、食欲もあるんだけど、微熱があるらしい。
豆まきの後片づけをしたいのだが、スイセイが寝ているので、掃除機がかけられない。
それでも毛布を洗濯する。
とろーんとした日曜日。
大家さんの裸の木に、メジロがひとりで遊びにきている。
今日もまた、切り貼り作業。
私は、あったことを記録する癖がある。
それは日記をつけ初めてからだと思うけど、記録しておかないと、なかったことになるような気がしてしまう。
誰のためでもない。
ただ単に、思い出したい気持ちが強いんだと思う。
思い出して、何度でも味わいたいのだ。
人が見せる、思ってもみないようなおもしろさ。
人は、どんな時にどんな表情をするのか。
どんな風に体が動くのか。
いろんなものを見て、ついその中身を空想し、結びつける。
そういうことがとても楽しいし、感動して涙がこぼれることもある。
今使っているカメラが、とてもいいみたい。
私はせっかちなので、ここだ!という時に、構図もなにもなく、その勢いをパシッと写そうとする。
そういう私の体質に、しっかりついてきてくれるカメラ。
ブレないし、写し終わっても立ち上がりがとても早い。
次はいつでもオーケーと、準備していてくれる。
今回の中国は、肉眼で見る間もなく、バシバシとカメラで撮っていた。
ちょっとそのことを気にしながらも、つい撮ってしまっていた。
でも、帰ってからこうやって見てみると、その時のことが肌ざわりとセットで蘇ってくるってことは、やっぱりそれでよかったのかも、と思う。
旅行中、カメラが自分の目になっていたんだろうか。
今夜は、9時から『プラネットアース』があるので、ごはんの前に風呂に入ってしまおう。
夜ごはんは、クリームシチュー(鶏ムネ肉、ソーセージ、人参、玉葱、じゃが芋、ブロッコリー)、ほうれん草のバター炒め、レタスとトマトと玉葱のサラダ、白いご飯。

●2007年2月3日(土)快晴

洗濯物が、風にクルクル回っている。
朝ごはんを食べて、買い物へ。
のどが痛い(スイセイが)のに、しょうがを切らしていたので。
その他、風邪っぴきの喜びそうなものをいろいろ選ぶ。
いちご、グレープフルーツ、ポンカン、チチャスヨーグルト、チョコアイス(これは自分用)など。
今夜は、白身の魚を煮つけてやろうか、それともクリームシチューにしてあげようか。
今は眠っているスイセイ。
起きたら何を作ってやろう。
こういう時、私はすぐに世話やきばあさんのようになってしまい、迷惑がられるので、気をつけないと。
ささ、昨日の続きの切り貼り作業を始めよう。
夜ごはんの前に、豆まきをした。
「鬼は外、福は内」と、あちこちの戸を開けてやる。
スイセイは苦みばしったハスキー声。
私も小声だけど、心をこめてやった。
暗い中に、ちょっと遅れて豆の落ちる音がする。
どこかでハルが吠えています。
夜ごはんは、ムキガレイの煮つけ、栗南瓜(12月にアムプリンにもらったのが、まだ元気で残っていた!)のおかか煮、水菜のおひたし(しらす、梅醤油)、人参白和え(昨夜の残り)、なめこ汁(昨夜の残りに落とし卵)、白いご飯。

●2007年2月2日(金)快晴

ポカポカといいお天気が続いていて、もったいないくらい。
布団を干しても、干したりない。
洗濯物も、毎日だからそんなにたくさんあるわけではないし。
昨夜は、寝る前に『ブエノスアイレス』を見た。
もう10年くらい前? 封切りの時に見た以来。
ビデオはずいぶん荒れていて、ザラザラした肌触りが強調されていた。
やっぱり、ウォン・カーワイはいいな。
私は、ウェイ(レスリー・チャン)のどうしようもないところが、切なくて、情けなくて、かわいくて、セクシーでたまらなく好きなので、ラストがどうもピンとこないけど。
共同のキッチンで、ふたりが抱き合って踊るシーンがとにかく好き。
あそこだけ、何度でも見たいくらい。
ウェイがひとりで泣くところとか、タクシーの中でフェイの肩に頭をのせるところとかも、美しく、はかなく、悲しく、とても情けない。
お金もないし、汚いアパートだし、ノミはいるし。
あの、退廃的な中に浮かんでいる、カスみたいな幸せにしがみついたまま、ロマンチックに終わってほしかった。
今日は、畳の部屋に資料を広げ、陽に当たりながら1日中切り貼り作業をやっていた。
別に仕事ではないんだけど、中国での気持ちを忘れないうちに記しておこうという、純粋な理由から。
それがとても楽しい。
陽の光が強くて、顔に当たるところは暑いほどだった。
気が散るとコーヒーをいれたり、CDをかけ直したり。
ベランダに出て、ハルのことを探してみたり。
夕方、広島の母ちゃんから電話がかかってきて、ビールのお礼をまた言われた。
「本当にありがとうございます。今日も、夕飯の時に1本いただきましたよ。はあ、皆さんもお元気でがんばってくださいね。私たちもがんばりますので。失礼をいたしました。では、さようなら」。
母ちゃんは、張り上げるような大きな声で、とても元気そうだった。
そんなこんなしているうちに、スイセイがルウムから帰ってきた。
のどが痛くて、風邪のひき始めらしい。
すぐに酢水うがいをさせ、梅醤番茶を作ってやる。
夜ごはんは、塩鮭、大根おろし(たっぷり)、人参の白和え、春雨サラダ(玉葱、レタス、ハム)、マルシンハンバーグ、なめこの味噌汁、玄米。

●2007年2月1日(木)快晴

今日から2月。
昨日より少しは肌寒いみたいだけれど、日だまりはポカポカだ。
さーて、今日は何をしようか。
とりあえず、味噌の手作りセットを注文した。
書類を整理しているうちに、いいことを思いつき、スティックのりを買いに街へ出た。
銀行、眼鏡屋、タワレコ、かばん屋、お茶屋、乾物屋、カルディ、文房具屋、ツタヤ、東急、クリーンング屋。
けっきょく、あちこちまわってしまった。
お店の中はどこも暑いくらいで、すっかり油断していたら、帰りは木枯らしだった。
まだまだ2月なんだから、こうでなくっちゃ。
でも、4時半に外に出てもまだまだ明るいって、すごいことだ。
夜ごはんは、ちらし寿司(鮪、海老、しらす、白ごま、貝割れ菜)、飛龍頭の炊いたの(ほうれん草添え)、壬生菜漬け、豆腐と三つ葉のおすまし。
スイセイは、ごはんの前にめずらしく風呂に浸かっている。
事務仕事がちょっと一段落したのかな。



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