2007年3月中

●2007年3月20日(火)快晴

よく晴れて、ずいぶん暖かい。
11時から「暮しの手帖」の撮影。
カメラはひさびさの斉藤君だった。
松浦さんが初めてうちにいらっしゃるので、ちょっと緊張したけど、料理を作っているうちに、どんどん楽しくなってきた。
天気がよくて、ずっと窓を開け放ちながらやった。
洗濯物も干しっぱなしで。
撮影はひさびさだし、試作をくりかえしやった料理なので、少しだけ頭の方に意識がいってしまった。
でも、斉藤君との長年のやりとりが肌にしみついていたのを、やっているうちにスーッと思い出していった。
とちゅう、斉藤君とアシスタントのやっちゃんと3人でベランダに出ていたら、プクッとしたひよどりが飛んできた。
2羽、3羽と次々飛んできて、ずいぶん近くの木に止った。
まるで私たちに見せびらかしているみたいに、そこで毛づくいなどし、可愛い姿をたっぷり見せてくれた。
部屋の中では、「おいしい…」と、松浦さんがつぶやいている。
4時には終わり、皆で甘いものを食べながらお茶していたのだが、もの作りに関わるちょっと深い話にもなったりして、もうちょっとで白ワインでも飲み始めてしまいそうな気分になった。
撮影の間からずっと食べ続けだったし、『おじゃる丸』を見ながらおにぎりを2個も食べてしまったので、夜ごはんは軽めに。
かけ蕎麦(水菜)、冷やしトマト、人参サラダ、漬け物(干し大根、白菜漬け)。

●2007年3月19日(月)晴れ

よく晴れているが、さっきカラスがたくさん集まって騒がしく鳴いていた。
雨でも降るのだろうか。
そういえば、なんとなしに空が白っぽい。
今日から『日々ごはんH』の校正を始める。
1時からは、丹治君と萩原さんがいらして打ち合わせ。
1時間ほどで終わり、明日の撮影の仕入れを兼ねて美容院へ。
昨日の寒さに懲りたので、ダウンジャケットを着ていった。
でも、日陰はいいのだけど、お店の中に入ったりするとやっぱり暑い。
かといって、春のジャケットだと寒いし。
今は、何を着ていいのか分からなくなるような、どっちつかずの季節なのだ。
夜ごはんは、春巻き(豚バラ、竹の子、長葱、白菜の塩味)、ベトナム風の焼き鳥(レタスと人参をしき、スイートチリソースをかけた)、豆腐と卵の味噌汁、玄米。

●2007年3月18日(日)快晴

ポッカポカのいい天気。
でも、昨夜から目の中がとても痒い。
ここまでひどいのは初めてのこと。
違う種類の花粉が飛んでいるのだろうか。
お風呂に入って、顔をよくこすっているうちに痒みは治まった。
ひさしぶりにあちこち掃除機をかける。
けっこう埃がたまっていた。
もしかして、この埃のせいかも?。
雑巾がけも真面目にやる。
3時くらいに街へ買い物に出たら、晴れているのに風がとても冷たい。
帰りの風はもっと凄まじく、氷を触っているようだった。
熱いミルクティーとウニせんべいをお盆にセットしたところで、ちょうどぴったり『まる子』が始まった。
夜ごはんは、海老と茄子のトマトソース炒めライス添え、豆腐サラダ(レタス、人参、クレソン、ひじき)。
植村直己のテレビを見て、スイセイとふたり感動する。
とくに、遭難してから1ヶ月後の記者会見での奥さんの公子さんのコメント。
「帰ってきてこその冒険家だと常々いっておりましたから、ちょっとだらしがないですね(笑)。でも植村とめぐり合えたこと、一緒にいられたことは、本当に幸せでした」。
どこかの山に出掛ける準備をしている時の、ふたりのやりとりもとても良かった。
残ったテープから(映像はなし)… 公子「あんた、こんなに持てんの?どうすんのよこんな荷物」。
植村「やっぱりそうだよなー。どうしようこんなに」。
台所で洗い物をしながらみたいな公子さんも、風呂上がりにパジャマみたいな植村さんも、うろ覚えだから言葉は確かではないけれど、何度も何度も単独で登って、厳しい体験をしているのに、まるでシロートみたいな会話だった。

●2007年3月17日(土)曇り時々晴れ

やっと普段の調子が戻ってきたみたい。
今日は、試作をやりながらレシピ書き。
時々、窓の向こうを鳥たちが横切っていくのが見える。
それにしても、冬のように寒い。
中国に出掛ける前にはすっかり春の陽気だったので、まるで違う国に帰ってきてしまったよう。
それともタイムスリップし、1月の東京に戻ってしまったよう。
昨日は初雪が舞ったそうで、本当にたまげてしまう。
風呂場の下の杏は。満開になった。
曇っていても、杏の木の周りだけポッと明るく見える。
スイセイが「ルウム」に出掛けたと思ったら、新しい発明品を作って帰ってきた。
ハンガー式の物干しなんだけど、塩化ビニールの灰色の筒(水道管みたいなの)に丸い穴を開け、ひとつひとつに黒いハンガーがぶら下がっている。
パッと見て、私はとても気に入った。
今までのは「ロフト」で買った白いプラスチック製のものだけど、針金で補修しながらどうにか使ってきた。
さすがにもう3年以上になるので、プラスチック自体の傷みが進み、黒いTシャツを干すと、肩のところに白い粉がつくので困っていた。
当分はこのまま使って、そのうち「無印」の銀色のハンガーと交換する予定。
夜ごはんは、アンチョビと春キャベツのスパゲティ、人参、クレソン、レタス、ハムのサラダ。

●2007年3月16日(金)晴れ

朝が、とにかく眠たい。
中国の間は、なんやかやと頭が動いてしまい、ぐっすり眠れなかったからだろうな。
ベッドに入るのはいつも11時前だけど、7時半には目が覚めてしまっていた。
8時間は眠っているのだけど、寝不足なのだ。
脳みその芯のところが柔らかい感じ。
午後からは、西荻へと買い物。
自転車であちこちぐるぐるまわった。
ヒラリンがインフルエンザで寝込んでいるというので、いちご、グレープフルーツ、絹ごし豆腐、プチトマト、ちらし寿司を買って、玄関のドアノブにぶら下げておいた。
自分がインフルエンザだった時に食べておいしかったものを思い出しながら、選んでみた。
あちこちまわっているうちに、強烈にお腹がすき、お肉屋さんで揚げ立てのコロッケを5個買う。
家ではスイセイがインスタントラーメンにキャベツを入れて作っているところだった。
お椀に少し分けてもらい、スイセイはコロッケを1個、私は3個食べた。
揚げ立てのコロッケ。
こういうものが、私はずーっと食べたかったのだ。
夜ごはんは、いかのバター醤油炒め、細魚の刺し身、小松菜おひたし、人参とひじきとクレソンのサラダ、コロッケ、麩と葱の味噌汁、玄米。
夜ごはんでもコロッケを食べたので、今日はひとりで4個も食べたことになる。

●2007年3月15日(木)薄曇り

昨夜はスイセイと語り合った。
缶ビール4缶(スイセイ)、缶ビール2缶とウイスキーロック2杯(私)。
バラバラになっている間にそれぞれ何があったかを、話はいくらでも湧いて出て止らなかったが、3時でうち止めにして布団を敷いた。
隣にスイセイがいることの不思議。
布団の中で背中を向け合っていても、もうひとつの布団に包まれているような、なんともいえず安心した心持ちを味わいながら眠る。
中国のホテルで眠っている時、自分はどこにいるのかずっと分からなかった。
どちらかというと、まだ日本にいるつもりでいた。
そして昨夜もまたどこにいるのか分からなくて、中国にいるような気もした。
なんとなく、あのホテルの部屋に、自分をひとり置いてきているような。
残りの自分が飛行機に乗って、東京に帰ってきているような、宙に浮いた感触。
というわけで、今朝は12時までしっかり寝た。
目の前のハクモクレンの木は、こぼれ落ちそうな満開。
大家さんのどんぐりの木も、枝にポチポチと突起ができていて驚いた。
芽吹いているのだ。
荷物の片づけや、たまった仕事の整理などやっているうちに、あっという間に4時になる。
何をやっていても、予定より早く帰ってこれたことが、1日分得をしたようでとてもありがたい。
今夜は『拝啓、父上様』があるし。
夜ごはんは、鰺の干物、豚こまとキクラゲ(中国土産)ともやし炒め、キャベツサラダ、大根の味噌汁、玄米。
ちょっとだけ、お腹が壊れている。
帰ってきて安心したんだろうか。

●2007年3月14日(水)快晴

■■■スイセイ留守ごはんX2・5日目■■■
朝9時に起き、あまりに晴れてるのでふとん干し。
朝ご飯:昨夜の残りのシュウマイチャーハンと、カレースープ。
冷蔵庫のめったに開けない引きだしにトマトを発見。
そうか、これが野菜室か。
間食:鳥肉焼いたの、にんじん千切り、トマト。

夜ご飯:
きょうはふんぱつしてご馳走を作る。
「玄米の赤い洋風雑炊」(2食分)
1.玄米を炊くが、そのとき圧力鍋のフタの上に冷凍豚コマを乗せて解凍する。
2.具材、玉ねぎ半個、トマト3個、豚コマ100gをぶつ切り。
3.具を炒める。塩、胡椒、ナンプラー、ブイヨン、カレー粉少々。
4.水を加え20分ほど具が好みに溶けたころ、ご飯を加え5分煮て、出来上がり。
5.熱々をほおばりながら、おおー、虚空に吠える。

家庭内独身サイボーグは、いまこうして力を蓄えつつある。
■■■終わり■■■

ただいま〜。
予定よりも1日早く帰ってきました。
7時過ぎに成田に着き、夜10時前にはうちに着いた。
三鷹駅からタクシーで帰ってきたのだけど、うちの前でお金を払っていたら、スイセイがタクシーの窓をたたいた。
スーツケースが重たいかもと心配し、迎えに出てくれたのだった。
なんだか、やたらに懐かしい物体が目の前にいるのだけど、ほんの一瞬だけ、誰だか分からないような感じになった。
でも、その物体の中に宿るスイセイのことはすぐに分かった。
帰ってきて、そのスイセイにまた会えた嬉しさで、体がいっぱいになる。
風呂場の下の杏は、夜の中ですっかり開いていた。

●2007年3月13日(火)晴れ

■■■スイセイ留守ごはんX2・4日目■■■
朝ご飯:昨夜の残りの塩鮭チャーハン。これが冷めていたが、鮭の脂が全体に回っていて、恐ろしく美味い食べ物となっていた。
調子こき、早速今夜も玄米をと、水に浸け置く。
前回の留守ごはんで気付いたのだが、ごはんの支度というのはお腹が空いてからでは遅い。
何かの作業に没頭してて、何かお腹の辺りが辛いことにふと気がつく。
それでは、もう遅い。
その時はあまりに空腹なので、食材のバランスや、料理の手順など考える余裕なく、ただ胃袋を急いで満たすような作り方をしてしまう。
そしてそれは、早食い大食いを招く。
近所の川原真由美さんにそのことを言ったら、ひどく共感してくれて、「わたしは料理を作りながら食べるので、料理ができたころに食べ終わる」と、不条理なことを言っていた。さすが川原さんだ。
それで今回は、朝おおざっぱにその日の献立を作っておく作戦でやってみる。

間食:作り置きのひじき、にんじん千切りサラダ。
昼ご飯(夜ご飯も同じ) :卵と小松菜と冷凍シュウマイを木ベラで潰して和えた玄米チャーハン。固形カレーをすごい薄めたスープ。なんという美味。

みいは離れた場所にいるが、離れた感じがしない。
空中に漂っている。

●2007年3月12日(月)晴れ

■■■スイセイ留守ごはんX2・3日目■■■
家人の留守を2日ほど遊んだので、さすがに今日は真面目にしようとしてみる。
朝ご飯:数ヶ月ぶりに玄米を炊いたが、何を間違えたかばらばらと水っぽい食感。塩鮭焼いたの、漬け物各種、梅干し。二三日前のみそ汁。
夜ご飯:小松菜、卵、塩鮭の玄米チャーハン。
一日中デスクに向かい、ゆるゆると事務作業。
電話も鳴らず、家人の足音もなく案外快適。
外も公園の子供の声も、芝刈りも、廃品回収の呼びかけもない、とても静かな、正月三が日のような日。
おれ以外町から出ていったか、と思わせるような。
世界の終わりが音もなくそこの角まで忍び寄っているとしても、それもまた良しと、思わせるような。

●2007年3月11日(日)晴れ時々曇り

■■■スイセイ留守ごはんX2・2日目■■■
きょうは、道端の友人かわしまよう子の新居見学会。
昼から飲み食い。
朝ご飯:自ら持ち込んだ焼酎、ビール、産直のさつまあげ、茹でた豆、煮たかぼちゃ、豚汁など。
彼女の作品の常設展のようなきれいな部屋。明るく、広い。
よく眠れると言っていた。
その土地の磁場をエネルギー源とする彼女の作風に、力を与えると思う。
何より。
おれはと言えば、夕方お開き後も飲み足りず、リーのバイトする焼鳥屋へ。
夜ご飯:タン、ハツ、ナンコツなど。
割と忙しく、料理や空き皿がすぐ横を行き来するカウンターの端、ひとりで壁を相手に咽喉に通す。
また一歩、海底に近づく。

深夜のテレビ、マドンナ様のライブビデオ、かっちょ良し。
ジャンプ。



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