2005年3月中

●2005年3月20日(日)曇り、ちと肌寒い

今日もまた鼻がムズムズ。
私でさえこうなのだから、花粉症の人たちは、本当にたいへんだろうな。
2時からは、また川原さんが来て作業をする。
私は私で、こんどの撮影と打ち合わせの準備などやる。
川原さんのお土産のしょうゆだんごと、アムプリンをおいしく食べながら。
夕方になってやっと日が射してきたが、やはりまだ肌寒かった。
買い物に出ても、鼻はムズムズ。
千葉県産の初鰹が出ていたので買う。
新たまねぎと青じそも買った。
今夜は、マキオ君が言っていたサラダを作ろうと思って。
あと、昨夜ごまをたくさんすりすぎたので、白和えを作る予定。
スイセイからリクエストもあったことだし。
毎週、『ちびまる子』と『サザエさん』を見ながら、どうしてもせんべいを食べてしまう。
どうにかならないだろうか、この癖。
おかげで、日曜日の夜ごはんはいつも食傷気味だ。
鰹と新たまねぎのサラダ、白和え(こんにゃく、にんじん、にら)、れんこんの厚切りきんぴら、新たまねぎの味噌汁、玄米。
「みい、(白和えを)また作っての」とスイセイに言われた時、私はそっけなくしていたが、実は軽く涙がにじんだ。
今夜の『情熱大陸』は、作家の角田光代さんだ。
すごく楽しみ。

●2005年3月19日(土)快晴、暖かい

昨夜は鼻とのどがかゆくて、鼻水もたくさん出た。
花粉症ではないと思うのだが、もしかしたら部屋の中の埃のせいかもと思い、今日はしっかりめに掃除をする。
ワックスまでぬった。
春になると明るくなるから、あちこち汚れが急に目につく。
でも今日は、本の校正の仕上げをやりたいので、見て見ないふりをした。
夜ごはんは、昨夜テレビでやっていたビビンバを作る予定。
ナムルは、にんじん、にらとクレソンとルッコラ、キャベツ、焼き茄子でやってみよう。
牛肉も冷凍してあるので、買い物に行かなくてもだいじょうぶだ。
そういえば家の杏の蕾は、丸くふくらんできた。
もう、いつ咲き出してもおかしくないような感じ。
夜ごはんは、ビビンバ(玄米で)、きくらげと干し椎茸のスープ。
ビビンバ、とってもおいしくできた。
とくに春キャベツのナムルがおいしかったなあ。
ナムルと言っても、全種類ごま油で和えるのもしつこいので、キャベツはあっさりめにした。
1/4個を固まりのまま軽くゆでて、太めの千切りにしてきゅっとしぼり、すりごま、塩、黒こしょうで和えただけ。
ちょっと温かいうちがとくにおいしい。
にらとクレソンとルッコラのナムルもごま油で和えずに、おひたし風な感じでたっぷりのせた。
こんどまた作ろう。

●2005年3月18日(金)晴れのち曇り

アムプリンをお土産に買って、「のらぼう」へ。
自転車をこぎながら、おとといよりもさらにまた、花の匂いが濃くなっているのを感じる。
沈丁花だけではない、花の蜜みたいな匂いも混ざっていた。
マキオ君とショウコちゃん(マキオ君の妹)は、仕込みのまっ最中だった。
ぬか床に、茄子やらかぶの皮やら漬けているマキオ君に、野菜の本当の時期についていろいろ質問する。
こんど出る『野菜だより』に、出盛りの野菜のカレンダーをつけるのだが、私の主観だけではイマイチ自信がないので、マキオ君に教わりに来たのです。
近所の生産者から野菜を仕入れ、毎日その味を確かめながら、季節を送りながら、料理を作っているマキオ君に聞くのがいちばんいいと思って。
私のは、主婦としてスーパーや八百屋さんに行き、「あれっ?にんじんの味が甘くなったかも」とかいう素朴な感性だけだからな。
仕込み中のあわただしい中、短い時間だったけど、マキオ君はおもしろい話をいろいろ聞かせてくれた。
春キャベツは、この間みたいな雪の日に、最後の霜に当たり、「甘みがのって」から収穫するのだそうだ。
きっとこの間、驚いて指を切るほど甘くなっていたキャベツがそれだな。千葉県産だったし。
春キャベツって、1月の末からスーパーに出ているけど、だいたい九州で採れたものや、ハウスものだったりするから、本当はまだ早いんだよな。
とくに春野菜というのは、はしりの方が喜ばれるので、早くから店に並ぶんだそうだ。
露地ものの春野菜が出てくるのは、4月から初夏にかけてで、その頃が本当はいちばんおいしいのだ。
でも、そうなるとこんどは、夏を感じたくなるのが人情だからなあ。
「新たまねぎは、ちょうど初鰹の期に出るから、うちではサラダにして合わせて出してるんだよ」と、マキオ君は言っていた。
「今は、畑にはほとんど野菜がないけど、カキ菜やのらぼう菜がおいしい」と言っていたのを思い出し、帰りに、近所の農家でカキ菜とルッコラを買う。
さあ、これから『野菜だより』の最後の校正をがんばろう。
これが本屋さんに並ぶのは、4月の末です。
夜ごはんは、カキ菜と絹さやの塩炒め、もやしとニラの辛し和え(昨夜の残り)、鰆の照焼き、あさりのエスニックスープ、玄米。
今、鰆がとってもおいしい。ずいぶん安くなってきたし。

●2005年3月17日(木)雨のち曇り、暖かい

雨だけど暖かい。
春の雨だ。
昨夜、ようこちゃんにふきのとうをいただいた。
四角いペットボトルの底を切ったものに、紙をくしゃくしゃに詰めてある。
その中に小さいペットボトルが隠してあり、水が入っていて、ふきのとうが気持ちがいいように活けてある。
ふきのとう味噌にするようにとくれたんだけど、容れ物ごとあまりに可愛いので、水をあげていたら、だんだん花が開きそうになっている。
午後からはサン・アドでまた打ち合わせなので、川原さんと待ち合わせて出掛ける。
電車の中で、近況を報告し合う。
近況ったって、この間会ったばかりだが。
川原さんの自転車はみつかったんだそうだ。
「良かったねー」と喜び合う。
風邪をひくと体が動かないから、頭が悶々としていろいろ考えちゃったり、幻覚とか見えちゃったりしてどーんと落ち込むけど、風邪が治ると前より元気になるよねー、なんて言い合う。
川原さんも最近風邪をひいたから、お互いに実感がこもっているのだ。
そして、「あれっ? 竹の子って秋だっけ。ああそれは松茸か・・・」と、相変わらずな川原さんであった。
サン・アドの人たちって、この間も感じたけれど、早口の人が誰もいない。
マンガの吹きだしみたいに、皆がぽつん、ぽつんとつぶやくように喋っている。
そうやって誰彼ともなく出てくるアイデアを、ぽつん、ぽつんとキャッチして、大事にしている感じ。
小さく固く決めてしまわずに、どこからでもすきま風が入ってこれる環境。
発想のすきま風だ。
何かに急かされた中では、ぜったいにできない発想方な気がする。
葛西さんにもお会いした。
思っていた通りのきれいな(清い)人だったので、私は超緊張した。
吉祥寺で餃子を買って、雨が止んだのでてくてく歩いて帰ってきた。
しかし、なんだかどっぷりとくたびれました。
なので、やる気のない夜ごはんを早めに作って食べ、布団に入る。
夜ごはんは、ラーメン、買ってきた餃子、もやしとにらのごま辛し和え。
あまりにも手抜きなので、ごまを炒って、太田さんのすり鉢でちゃんとすった。
布団の中で、アノニマ・スタジオの南ちゃんが昨日届けてくれた、『日々ごはん3』の読者カードを読む。
たっぷりあるのを1枚1枚じっくり読む。
くたびれているせいもあると思うが、涙なしには読めませんでした。
「高山さん、たまに転ぶみたいですが、キモチはすごくわかりますが、本当に死なないでくださいね。なるべく長生き、ケガも気をつけて」。
今後高山さんのどのようなテーマの本を希望しますか? の問いに、この葉書の人は、「何でもいいです。書きたいことを書いてほしいです」、なんて書いてくださった。
くー。
夕方、みどりちゃんと赤澤さんから電話があったけど、なんだかふたりともすごく元気そうであった。
春というのは、激しい季節な気がします。

●2005年3月16日(水)晴れ、とても暖かい

1時から『きょうの料理』の打ち合わせ。
だんだん収録が近づいているのを思い出し、ちょっと緊張する。
まあ、どうにかなるだろう。
もう少し先だから、あまり考えないようにしよう。
打ち合わせは1時間ほどで終わり、陽の当たる部屋で原稿の続きをやる。
かわしまよう子ちゃんから電話があり、今日は外が気持ちがいいので、「のらぼう」でごはんを食べることにする。
スイセイと西荻まで歩く道すがら、完全な春のように暖かく、沈丁花の匂いがしていた。
おととい散歩した時には、まだ匂っていなかった。
昨日か今日から、沈丁花だ。
「のらぼう」は、おいしかったなあ。
店の名前にもなったのらぼう菜が、今ちょうど盛りで、だし汁のゼリー固めがとてもおいしかった。
ひさしぶりに「のらぼう」に行ったが、いつ行っても、あそこはいい空気が流れている。
おいしいものを作るのと、お客さんをもてなすことに、働いている3人の気持ちが結束していて、いい緊張感がいつもある。
気持ちよくてついつい飲んでしまいそうだったが、明日はだいじな打ち合わせなので、ほどほどにして帰ってきました。

●2005年3月15日(火)曇り時々晴れ、やや寒い

朝起きて、うんこをして、朝風呂に浸かりながら、(今日は何をやればいいんだっけ?)と考える。
やらなければならないことはいろいろあるけれど、そんなに急がなくてもだいじょうぶ。
そんな日々だ。
レシピを書き始めたら乗ってきて、ひと息にぜんぶ仕上げてしまう。
そして今から、『翼の王国』の原稿も書き始めよう。
夜ごはん用のだし昆布を水に浸け、玄米を水に浸け、お茶を煮出しながらやる。
昨日、少しだけ運動したので、ふくらはぎの裏側がちょっと筋肉痛だ。
夜ごはんは、とろろ芋、カキフライと千切りキャベツ、煮しめ(こんにゃく、にんじん、ごぼう、さつま揚げ、厚揚げ)、豆腐の味噌汁(昨夜の残り)、玄米。
キャベツの千切りをしながら、ちょっとつまんで食べてみたら、あまりにもおいしくて気が散り、指を切ってしまった。
やっぱり春キャベツの本番は3月からだ。
肉厚な葉っぱには、甘いのと、甘みと苦みの中間みたいな味が混ざっている。
体が固いので、風呂から上がって軽くストレッチをする。

●2005年3月14日(月)曇りのち晴れ

1時からNHKのテキストの撮影。
いつものメンバーで、ゆっくりした気分でやる。
久々にヒラリンに会ったが、スキッと爽やかで元気そうだった。
料理もとてもおいしくできて、皆に喜ばれる。
日置さんが、前の撮影で写真を撮った、千疋屋のフルーツゼリーをもらってきてくれた。
オレンジとグレープフルーツを丸ごとカップにしたゼリーで、ふたの部分の果汁を絞ってから食べるというもの。
撮影が終わって、皆でひとつずつおいしくいただく。
4時には全部終わり、スイセイと市役所へ。
最近ふたりとも運動不足なので、ゆっくりゆっくり走る。
しばらくぶりだから、急に走るとまた膝がいたくなるので、早歩きくらいのスピードで。
まだ明るいけれど、そろそろ日が落ち始めようとしている夕方、気分がいいので公園までそのまま走り、グラウンドも半周走った。
大家さんの奥さんに連れられて、ハルも散歩に来ていた。
少しでも体を動かすと、せいせいして、景色までスカッとして見える。
歩きながら、「今日は、いろんな人が皆トキメイテルのう」とスイセイが言う。
寒いのは今日までで、明日から春のように暖かくなるからだそうだ。
夜ごはんは、かぶの葉とさつま揚げの煮浸し、赤魚のかす漬け、クレソンとトマトと玉ねぎのサラダ(梅種じょうゆドレッシング)、豆腐とワカメの味噌汁、玄米。

●2005年3月13日(日)曇りだけど、時々晴れ間が

昨夜は寝る前に、倫子ちゃんが送ってくれた新しい写真集を見ていて眠れなくなった。
胸がつまって苦しくて。
こういうのを切ないと言うのだな。
『cui cui 』という写真集。
よく生きてきたなーと思って。
私も、全地球の皆も、もちろん倫子ちゃんもです。
家族とか、暮らすとかいうことは、毎日だらだらと、なあなあで過ごしてきているようだけど、けっこうぎりぎりの気持ちとか、病気とか、死んだりとか、そしてまた赤ん坊も生まれたりとか。
固くて安心だと思っている地面は、あんがいとやわらかいのに、毎日ごはんを食べたり、親戚やら集まるといつものご馳走を作ったりもする。
笑ったり、泣いたり、大人たちに囲まれて愛されて、親と喧嘩したり、おばあちゃんにひどいことを言ったり。
そんな毎日、ふとした瞬間に見たどうでもいいようなシーンが私の体に入っていて、見えた時のまま残っている。
その景色が、まるで倫子ちゃんの写真のようなのだ。
今見ると、怖いようなはかないような、泣きたいような景色。
退屈の中にある、残酷で、色とりどりな世界。
おとといくらいにスイセイに起こされて、『となりの晩ごはん』というテレビを見た。
落語家のヨネスケが、夕飯どきを狙って、一般家庭にドカドカと入りこんでゆく。
ごはんはもう食べ終わって、お父さんは猫が泥足で入ってきた居間に掃除機をかけ、お母さんは台所で片づけをやっている。
石油ストーブの上には、お弁当のおかずの煮物がかかっていて、ふだん娘は料理しないんだけど、たまたま作ったカレーと、スーパーで買ってきたみたいな餃子が残っていた。
餃子も娘が焼いたそうで、皮がやぶれてひっくり返っている。
2軒目の家は、おじいちゃんが風呂から上がったところ。
もやしと豚肉の中華あんかけ、さつま揚げの煮物、青菜の胡麻和えなど、お嫁さんがいろいろ作ってくれてあるけれど、おばあちゃんと今日はカラオケに行ってきたから、「夕ごはんはいらない」なんて言って、おじいちゃんはご機嫌だ。
朝っぱらからそんなテレビを見たもんだから、ちょっと涙が出た。
こんなもんだよなーと思う。
スロウライフとか今流行っているけどさ。
畑からひっこぬいてきたネギと同等に、カラオケやヘルスセンターや演歌やら猫のうんこやらがある。
毎日って、なんて図太いんだろう。
そして倫子ちゃんの写真にもどり、そんな毎日のはかなさも思うのだ。
もう1冊の薄い方の写真集も、こんどゆっくり見せてもらおう。
いいものをいただきました。
今日やることは、明日の撮影用の買い物に行くだけ。
ゆっくりと日曜日を満喫しよう。
そういえば、『サザエさん』のワカメちゃんの声優が、4月から変わると新聞に書いてあった。
その記事に、サザエさんは24歳の設定だと書いてあって、ちょっとびっくり。
今日からそのつもりで見てみよう。
夜ごはんは、いかと空心菜のオイスターソース炒め、ワンタンスープ、ごぼうと白滝炒り煮(昨夜の残り)、玄米。

●2005年3月12日(土)曇り、北風が冷たい

最近、早寝早起きを続けているが、とても便通がいい。
朝起きたらすぐに、いつも出る。
午後からは川原さんが来て、私が料理を作ったものをデジカメで写したり、スケッチしたりする。
その間、私は書斎で原稿書き。それぞれが勝手に仕事をする。
マイペースなふたりにはぴったり。
川原さんは、最近自転車をとられたんだそうだ。
「もうかなり古いから、そろそろ代えどきなのかもと思うんだけど、どこかにほったらかしてあるんだろうなーと思うと、なんだか可愛そうで・・・」と言いながら、ちょっと目が涙ぐんでいた。
今日も来る前に、3時間くらい捜して歩いたんだそうだ。
夜ごはんは、ごぼうと白滝と牛肉の炒り煮、つまみ菜と豆苗のお浸し(梅種じょうゆ)、鰤の刺し身、かぶの塩もみ、油揚げと三つ葉の味噌汁、玄米。

●2005年3月11日(金)雨、肌寒い

ざるうどんをゆでる。
スイセイのために小松菜もゆでて、ワカメもたっぷり添える。
今朝スイセイは病院に検査に行ってきたが、結果はあまり芳しくなかったらしい。
詳しく聞くと嫌がるのであまり聞かないが、「運動をしなさい」と言われたそうだ。
食べ物も、またふんどしのひもを少し引き締めなければ。
スイセイと、午後から新宿まわりで中野に行く。
冷たい雨の中、高島屋の紀伊国屋までの道、私はちょっと辛かった。
新宿は駅からして苦手だが、高層ビルを背景にした車の大通りが、超苦手。
しかも雨ときた。
心が冷え冷えとする。
中野では映画を見たのだが、あまりおもしろくなかったのでここには書きません。
帰りに近所の蕎麦屋で、カレーライス(私)、田舎風ざるそば(スイセイ)、豆腐サラダをおいしく食べる。
軽くビールを飲みながら。
映画を見ながら、私は蕎麦屋で何を食べるかばかり考えていたが、スイセイもやっぱりそうだったらしい。



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