2005年12月中

●2005年12月20日(火)快晴

ポカポカと暖かい。
でも、これも今日だけで、「明日からまた寒くなるみたいで」とスイセイにくぎを刺される。
窓を開けて掃除機をかけたり、雑巾がけをしたり、ポカポカを味わいながらやる。
お茶を沸かしながら。
お昼に、スイセイはスイトン(大根と昆布入り)、私は照焼き弁当を食べ、1時からNHKの打ち合わせ。
2時半からは「ぴあ」のインタビュー。
今年のこと、来年の展望についてなど、べらべらとよく喋った。
「昨夜はとても寒かったけど、月夜がすごく綺麗で東京じゃないみたいだった」と、編集者さんが言っていた。
残念。昨夜は風呂から出てもあまりに寒いので、窓を開けなかった。
こんどの寒い日には、ぜひとも気にしていよう。
4時過ぎからは別件の打ち合わせで、丹治君と伊澤さんがいらっしゃる。
その間に、今、煮卵を煮ているところ。
今夜のラーメンに入れようと思って。
最後の打ち合わせは6時くらいに終わり、来年の仕事についてなど話しながら、丹治君と軽く飲む。
つまみは、トマト、ふろ吹き蕪(昨夜の柚子みそ)、蕪の葉の塩おひたし、煮卵。
7時過ぎにお開きになり、つまみの残り+ワンタンメンで夜ごはんにする。
紅白歌合戦の昔の映像を見ながら食べる。
食べ終わってからも、畳の部屋に移って本格的に見る。
森進一の「襟裳岬」がすごかった。
昔の森進一って、正視してはいけないような、独特のすごみがある。
こんなのテレビに映っていいの?という、何かがむき出しな感じ。
いいものを見た。
でも、昔の紅白はおもしろかったなぁ。
私が子供の頃は、豪華な演出なんかないけれど、三波春夫や三橋美智也や、越路吹雪や坂本スミ子やら、芯から歌で勝負の番組だった。
皆、自分の歌や芸にプライドがあって、歌のすごさだけで純粋に楽しめた。
橋幸夫や舟木一夫のを見ていたら、伸びきったお蕎麦(夕方からすでに茹でてある)や、豚肉と人参の千切りが入った温かいつけ汁の味を思い出した。
つつましい昭和の時代の、ささやかな大晦日ならではの温かさ。
スイセイはスイセイで、自分の家のことを思い出しているみいたいだった。

●2005年12月19日(月)快晴、すごく寒い

スッコーンと晴れているんだけど、風が強い。
その冷たい風が吹きすさぶ中、たっぷり着込んで美容院へ。
もう、今日しか行けないと思って。
帽子をかぶらないと、とても外は歩けないような寒さだった。
井の頭公園は枯れ葉が風に舞い、犬の散歩の人くらいで、ほとんど人がいなかった。
こんな日に外で働かなくてはならない人は、本当にたいへんだ。
東北の方も、ものすごい雪らしい。
帰ってから、明日の打ち合わせの準備などをやる。
夜ごはんは、鰤の照焼き、真鯛の昆布じめ、ふろ吹き大根(柚子味噌)、白菜と生ハムのサラダ、トマト、大根おろし、油揚げと葱の味噌汁、玄米。
季節はずれだけど、急にトマトが食べたくなった。
甘すぎず、みずみずしくて案外おいしかったな。
明日は、打ち合わせ2本とインタビューも入れてしまった。
今夜は早めに布団に入ろう。

●2005年12月18日(日)快晴

「立花君の展示会に、ぜったいいった方がいい」というメールが川原さんからきていたのを、朝風呂の中でじーっと反芻する。
昨日さぼったから、本当はひと仕事やらなければならないんだけど、お昼を食べてスイセイと出掛ける。
なんだかすごいことになっていた。
あれは、見た人にしか分からない。
壁ごと?!。
でも、あの部屋ごと、ゴリゴリの壁ごとぜんぶ見てみたかったなあ。
久家さんは写真を撮る時に、感動しただろうな。
田園調布の駅は初めて降りたが、とても品のある、感じのいい場所で驚いた。
矍鑠とした老紳士みたいな。
あんなに気持ちの良い所とは知らなかった。
銀杏並木はもうすっかり葉っぱが落ちて、歩道に敷き詰められていた。
銀杏が、落ちるにまかせてたくさん踏みつぶされてあるのが不思議だった。
田園調布の人々は、銀杏を拾って食べたりしないんだなあ。
というわけで、天気のいい日曜日に、ちょいと遠出の散歩をして帰ってきたような、爽やかな気分。
吉祥寺に着いて、土屋商店で正月用のかつおぶしや昆布、黒豆を買う。
東急デパートでごま油やみりん、干し蕎麦、刺し身、寒じめほうれん草などを買う。
電車の中でも、街行く人たちも、まだ年末の慌ただしさが本格的でなく、のんびりとした幸せそうな顔をしていた。
街道沿いの蕎麦屋で、天ぷら蕎麦(私)、山かけ蕎麦(スイセイ)。
ここは初めて入ったんだけど、おばあさんがひとりでやっていて、とてもおいしかった。
山かけ蕎麦のかまぼこの切り方とか、とろろがちょうど真ん中にきて、うずらの卵がかわいくのっているところとか。
海老の天ぷらの程よい大きさや、揚げ方や、ほうれん草でなくて根三つ葉の茹でたのがのっているところとか。
丁寧だし、品もある。
街のお蕎麦屋さんという感じだけど、なんだか温かかった。
子供のころ、教会のクリスマス会の帰りに、家族で行く「ふじ家」というお蕎麦屋さんの味を思い出した。
ほとんど外食なんてなかったけれど、クリスマスの夜だけは、毎年恒例でそこに連れてきてもらえた。
座敷の部屋に家族で輪を作り、父親は熱燗なんかを飲み、おばあちゃんも母親も子供たちも、皆決まってなべ焼きうどんだった。
それが、おいしくておいしくて。
帰ってから、『まる子』も『サザエさん』を見ずに、『日々ごはん6』の見直しをやる。
夜ごはんは、お刺し身いろいろ(真鯛、真だこ、帆立)、とろろ芋、寒じめほうれん草のおひたし、かき玉汁、玄米。

●2005年12月17日(土)晴れ

二日酔いで、ずーっと寝ていた。
よくもこんなに眠れるもんだと思いながら。
何も食べずに、6時まで寝ていた。
風呂に入り、きりたんぽうどんを食べてまた布団の中へ。
放っておいたら自然に瞼がくっついて、ずるずると寝てしまう。
昨夜の牧野さんのオープニングパーティーは、いつもの周りの仲間が、バラバラにだんだんに集って、まるで忘年会みたいだった。
三次会は「太陽」へ。
ふだん家にこもってばかりいるから、たまに皆に会ったりするとつい楽しくなってしまう。
また来年も楽しいことが始まりそうな予感だし、好きな人たちに囲まれて、ついはしゃいでしまう、いつものパターンであった。
夜、カレーライスとサラダを作って、スイセイだけ食べる。
私は11時に寝た。

●2005年12月16日(金)快晴

今日もまた素晴らしい天気。
昨夜は12時には寝てしまったので、ちょっと早起きして、あちこち掃除機をかける。
足の筋肉痛はちょっと和らいだ。
まだ本調子ではないけれど。
あのぐらい走っただけで、こんなに後をひくとは、情けないことだ。
スイセイはトマトソースのスパゲティ、私は昨夜作っておいた鮭弁を食べる。
今日は夕方から下田さんの展示会と、牧野さんの展覧会のオープニングパーティーに行く。
それまでに、『日々ごはん6』の見直しを少しでもやっておこう。

●2005年12月15日(木)快晴

すごい筋肉痛。
膝の痛みはないようだが、両足のつけ根が痛い。
ロボットのように、ゆっくり動く感じ。
昨日は張り切りすぎたのだ。
とてもじゃないが、今日は走れないなあ。
では今日も初女さんの言葉を少し。
*「めんどくさいって言うのが嫌いなんです」。
*「私はね、いい人、いい味とは言わないで、好きなのとか、嫌いなのとか、主観を言うようにしています。自分の主観で感じてみて、良くないことだと思ったら、それは良くない。何も思わなければ、それはそのままでいい。そんな風に判断しています」。
*「子供のころ、病気の時に食べた鯛がおいしかったから、今でも鯛が好きです」。
さて、今日もまた『日々ごはん6』の続きをやろう。
夕暮れ時、カーテンを閉めようと思って外を見ると、雲が山脈のようになっていた。
『日々ごはん6』は、ちょうど去年の今ごろのことなので、ほーっといちいち感心しながらやっている。
スイセイもよく風邪をひいているが、私もインフルエンザにかかったりしている。
夕方までには一通り終わったので、教育テレビのメドレーを見る。
夜ごはんは、キャベツのさっと蒸し(ナンプラー)、豚の生姜焼き(グリーンサラダ添え)、塩鮭、じゃが芋とセリの味噌汁、玄米。

●2005年12月14日(水)快晴

昨日はずいぶんゆっくりして、仕事は何もやらなかった。
枕もとに『じゃがいも料理』の本を置いて、とてもよく寝た。
ひとつの仕事がようやく終わって、今は、(さあ、また今日から新しく始まることに頑張ろう)というような、きっぱりした気持ち。
天気もいいし、爽やかだ。
というわけで、まずは『日々ごはん6』の校正の続きをやろう。
3時までやって、スイセイの散歩(ジョギング)について行った。
一年ぶりかもっとだと思うが、とても気持ちが良かった。
ひさしぶりだから無理はせず、走れるところだけ走り、くたびれたら早歩きに切り替えながら、並んで走った。
そのうち膝の脇が片足だけ痛くなってきて、無理をしたら後にたたるからと思い、早歩きに切り替えるのだけど、走りたい気持ちの方が勝ってしまうような時もあった。
中央公園まで走って、そこからは別行動。
グラウンドをゆっくり歩いたり、走ったり。
銀杏の木はほとんど葉っぱが落ちて、落ち葉を踏みしめながら走った。
両手の杖で支えながら、ゆっくり歩くリハビリをしているおじさんが、今日もまたいた。
夏の間には、半そでのTシャツだったおじさん。
「あの人はの、オレなんかよりもっとぜんぜん毎日来とるんじゃけど、ぜんぜん歩くのが早くならんの。ほいじゃがもう何年も前からがんばっとるの」。
おじさんを追い越す時に、「ショ、ショ」という掛け声が小さく聞こえた。
きっと、何もしなかったらどんどん固くなってしまう筋肉を、少しでも動かして、それ以上悪くならないようにしているのだろうな。
暑い日も寒い日も、毎日、毎日だ。
私が知っているだけでも、もう3年は続けているのだ。
スイセイは、けっこうなスピードで2周走り、軽くストレッチをしたり腕立て伏せをしたりして、また一緒に走って帰ってきた。
近所の農家で、葉っぱのついた泥つき人参と、大根の漬物を買う。
足の調子が良かったら、明日もまた走りたい。
帰ってから、7時まで『日々ごはん6』の続きをやる。
夜ごはんは、親子卵とじ(きりたんぽの比内鶏で。親子丼だけど丼にしない)ほうれん草とソーセージ炒め、人参サラダ、大根の麹漬け、せりの味噌汁、玄米。

●2005年12月13日(火)晴れのち曇り

昨日、ちよじの実家から「青森のきりたんぽ鍋セット」が届いた。
毎年、この時期になると送ってくださるもので、すごくおいしいのです。
とても嬉しいんだけど、毎年毎年、本当に申し訳ない気持ち。
それで、ちよじにお礼の電話をしたら、今夜は「トネリコ」でパーティーがあるという。
なので、私たちも急きょ「トネリコ」に行った。
ミッシー(「クウクウ」開店よりも前から「まめ蔵」で働いていた)の送別会だったので。
「クウクウ」仲間たちともひさびさに会え、酔っぱらってバカ話をした。
仕事の話とかぜんぜんしなくてもすむ、気のおけない長屋のような仲間たち。
すごく楽しかった。
「トネリコ」のトイレが、とても素敵なことになっていたので写真を撮る。
葉っぱや鳥のタイルの上に、本物の枯れ葉が。
トイレに入った人がカサコソ踏んで、ひとりで遊べるように、適当な感じでまかれているのが良かった。
ヤーノとちよじとは本当にご近所さんなので、長屋のようなもの。
リーダーとナツコも長屋。
皆、明日は普通に仕事があるので、終電でちゃんと帰ってきた。
帰ってからスイセイに蕎麦をゆで、楽しい気持ちのままに、もうちょっとだけ飲んだ。
さて、ところで、今朝11時に、伊澤さんが『じゃがいも料理』のでき上がった本を持ってきてくださった。
すごいことになっていた。
やっぱり本ていうのはすごいものだな。
15日に発売なので、今はまだあまり書けないのがくやしいけれど、というか、あまりに素晴らしい出来上がりで、言葉がないのです。
一生ものというか、親子何代もが受け継いでいってくれそうな、そういう本のような気がする。
いやー、まいった。
畳の部屋でストーブをつけ、毛布にくるまって、(一読者のつもりになって)最初からゆっくりページをめくる。
これが、至福の時です。
夜ごはんは、きりたんぽ鍋、スーパーののり巻きといなり寿司。
きりたんぽ鍋、今年もすごくおいしかった。
ぬるっとして甘く、長ねぎの青い所までもすごくおいしいものだった。
上等なのだ。
スイセイとふたりで、テレビもつけずにゆっくり味わった。
毎年これを食べていると、すっかり年末の気分になる。
今夜は早めに風呂に入って、また『じゃがいも料理』の本を、レシピまでじっくり読みこもう。

●2005年12月12日(月)晴れ

昨日はどうりで寒いと思っていたら、雪が降ったそうですね。
今日はまずまずの暖かさ。
たまった洗濯物を干す。
「翼の王国」の原稿を仕上げてお送りしたので、『日々ごはん6』の校正に集中しよう。
その前に、取材ノートの中から、今日も初女さんの言葉を少し書きます。
*「野菜は何でも、大地に生えている時は(自分から)光を出しているけど、採ると、受け身になると思うんです。受け身になるというのは、透明になるということです。食べてください、料理してくださいと、野菜がこちらに身を委ねているんです。それを思うと、いい加減なことはできないよね」「私はただ、(自分が)やったことを話しているだけです」。
初女さんの家でトイレに入って手を洗ったら、水がとても冷たかった。
部屋の中はストーブがついているけれど、廊下を歩くと床がしんしん冷えている。
食後にいただいたみかんは、冷凍みかんじゃないのに中までしっかり冷えていて、甘くてとてもおいしかった。
あとで見たら廊下にみかんの箱が置いてあり、納得しました。
水が冷たいというのは、キリッと気が引きしまる。
大きなヤカンでいつもお湯を沸かしておいて(ストーブの上で)、野菜をゆがくのでも、お皿を洗うのでも使っていました。

●2005年12月11日(日)曇り、すごく寒い

はっきりした曇り。
そしてすごく寒い。
新聞を見ると、あちこちで雪マークが。
全国的に、寒い寒い日曜日なのだな。
スイセイは、新しく作った機械で紙を切っている。
昨夜からずっと。
それで、私が何か言うと、「みいはボケとるけえ、オレに話かけんといて。『クレヨンしんちゃん』でも見とってくれ」とか言う。
あと1ヶ月ちょっとで展示会があるので、着々と準備をしているらしい。
私は私でこの間まで頭の中がフランスにいたし、今日は青森に行っているから、なかなかままならないのだ。
さて、「翼の王国」の原稿を書こう。
夕方になって、ますます寒くなってきた。
温かいお茶もすぐに冷たくなってしまう。
窓を開けると、キーンという寒さ。
水道の水もひどく冷たい。
青森の原稿を書いているので、この寒さはちょうどいいんだけど。
『まる子』が始まるまで、もう少し頑張ろう。
そういえば、月曜日にファンの方からメールをいただきました。
そのお手紙がとっても良かったので、一部をここに載せさせていただきます。
「毎週欠かさず『日々ごはん』を読んでます。
今日メールをはじめてしようと思ったのは、先週の日記で、「まるこ」と「サザエさん」を見逃したとあったのが理由です。
特に、サザエさんの2話め。
カツオが波平さんの泣いたところを見たことがない、サザエさんの結婚式では泣いたに違いないという事が発端で情報収集をはじめます。
もし泣いていたら、波平さんから好きなだけお小遣いがもらえるという条件だったからです。
結局泣いてなくて、その場合の条件「朝1時間勉強」をするはめに・・・。
けれど、がんばるカツオにおふねさんが「お父さんは泣かない訳じゃない」と。
「カツオが生まれたときに欲しかった男の子が生まれて目に涙を浮かべたんだよ」 それを聞いてカツオの目にも涙。
それを見ていたわたしもジンときました。」 私も、これを読んでジンときました。
夜ごはんは、ハマグリと海老と豆腐の中華風あんかけ、水菜の塩おひたし(炒りごま、姫柚子、ごま油)、キャベツの塩もみ(梅種醤油)、コーンクリームシチュー、玄米。



日々ごはんへ めにうへ