2005年4月下

●2005年4月30日(土)快晴、爽やかな風

まだまだ眠たいけれど、1時に頑張って起きた。
洗濯をし、帰ってから初めて掃除機をかける。
あちこち細かい埃がたまって、なんとなくぼんやりしていたのが、スッキリと角が立った感じ。
掃除をしながら、フランスで買ってきた料理本を眺めたり、いかにも使い込んだ木べら(蚤の市で買った)を煮沸消毒したりしていたので、けっこう時間がかかった。
しかしこの木べら、すっかりきれいになり過ぎた。
いかにも料理上手なお母さんが、長年使い込んだ風の、歴史を感じさせるものだったのに。
まあ、いい。
また私が使い込んだらいいのだ。
明るいうちに買い物にも行った。
初の買い物だ。
静岡産の筍、すっかり大きいのが398円で売っていた。
らっきょうも鹿児島産だけど、もう出ていた。
新じゃがは、ほどよく大きくなって、中学生から高校生くらいな感じ。
おいしそうだが、フランスでさんざん食べたことを思い出し、買わない。
新ごぼうがおいしそうだったので買う。
夜ごはんは、新ごぼうと糸蒟蒻の薄味煮(黒七味をかけた)、水菜と焼き舞茸のおひたし、鯵のたたき、鯵の塩焼き、油揚げと葱の味噌汁、白いご飯(お昼にカレーライスだったので)。
鯵が新鮮でとてもおいしかった。
塩焼きなんか、ただ塩をふりかけて焼いただけなのに、魚そのもののおいしさがすごくある。
こういうのは、フランス人の舌には分からないだろうな。
体の作りが違うのだから、体の感受性が違うのは、当然のことだ。
ごはんを食べ終わり、日本茶をいれて、『日々ごはん4』の再校正をやる。

●2005年4月29日(金)晴れ、暑い

夕方の5時半まで寝ていた。
昨夜は、飲まずに早めに帰ってきて、11時前には寝てしまったのだが、1時間くらいで目が覚めてしまった。
どこかが興奮しているみたいで、眠れない。
なので、フランスに出掛ける前の日記を読み始め、どんどん遡って、1月くらいまで読んでしまった。
自分のことではないみたいな、ちょっと遠い日々。
それで、朝の5時くらいに寝たのだ。
目が覚めては眠り、また夢をみてというくり返し。
クリームパンのクリームが、頭にいっぱい詰まっているのを、少しずつ出していくような感じだった。
鼻の後ろまでクリームがいっぱいで、目を開けていられなかった。
これが時差ボケと言うのだろうか。
「時差ボケだいじょうぶですか?」とかいろんな人に聞かれていたが、フランスから帰ってすぐに、2日続きで出掛けていたから、そうでもないような気がしていた。
確かに頭はぼんやりしていたが。
起きて窓を開けると、風がまったくなく、トローンとした空気。
音もしない。
遠くで鳥が鳴いている声だけ。
昨日は、「渡さんを送る会」に、クウクウスタッフがほとんど勢ぞろいだった。
「ニチニチ」は、のり弁に辛い焼き鳥のっけ、「トネリコ」は筍ご飯にビッグシューマイ、「みな李」はビビンバ弁当、「まめ蔵」はおにぎり弁当。
それぞれが100食くらいずつ作ったそうだ。
私は、筍ご飯弁当を食べた。
ビッグシューマイがすごいおいしさだったのでサンに伝えると、「気持ちを込めて作りましたから」と、けっこうマジな顔をして言っていた。
ステージでは、ゆかりのあるいろんな歌手の人たちが順番に歌っているみたいだった。
たまに聞きに行ったりしていたが、でも、(渡さんの声が聞きたいのに)と思ってつまらなくなる。
その気持ちは、ここに集まっている全員が思っていることだろうけれど。
待合室の広場で、マッキーや、クウクウの子たちや子供らとずっと一緒に遊んでいた。
だらだらと缶ビールを飲みながら、涙も流れる。
皆、近況の報告や馬鹿話をしながらも、最後にはひとこと渡さんのことを話したりして。
「伊勢屋とか中道通りをフラフラ歩いている時に、もう渡さんに会えないんだな…って思うんだよね、これからは」とハヅキが言っていたが、私もまったく同じ気持ち。
それこそが決定的で、そういうことが人が死ぬっていうことだ。
さて、夜ごはんは、豚肉の梅みそ炒め(夕方の子供向け番組で、ねこちゃんが作っていたのがおいしそうだったので)、白菜と小松菜の味噌炒め、葱だけの味噌汁、玄米。
びっくりするほど芽が出たじゃが芋で、夜中にカレーを作る。

●2005年4月28日(木)快晴、爽やかな風

昨夜はすっかり楽しくて、遅くまでみどりちゃんたちと飲んだ。
ごはんもいろいろおいしかったなあ。
みどりちゃんが作ってくれたのは、切り干し大根としめじの梅じょうゆ和え、筍と高野豆腐を炊いたの、ワカメときゅうりと紫玉ねぎのサラダ風酢の物。
私が作ったのは、あさりむき身入りひじき、グリーンピースと油揚げの翡翠煮。
筍ご飯(筍と高野豆腐の残りで)、菜花のにんにく塩炒め、うどのバルサミコしょうゆ炒めは、酔っ払いながら作った。
私は、帰ってきてからずっとみどりちゃんに会いたかった。
フランスでいっしょに過ごしたのが本当に楽しくて、みどりちゃんを益々好きになった。
昨夜は、中世のお城のような、学校のようなところを見学している夢をみた。
夢をみている私の脳は、まだフランスにいるつもりになっているらしかった。
そして、日本に帰ってきたら、渡さんが亡くなっていた。
渡さんは、クウクウみんなの父親みたいな人だから、今日の「送る会」では、スタッフたちがお弁当屋さんをやるのだそうだ。
私たちもこれから行ってきます。
そういえば、昨日はタクシーに3回も乗った。
1人目のおじさんは、誠意がまるでなく、というか、仕事をいやいややっている様な人で、声のトーンがくさっていた。
ついつい、パリのタクシー運転手さんたちと比べてしまう。
2人目のおじさんは、最初のおじさんとすべてが正反対の、素晴らしく誠意のある人であった。

●2005年4月27日(水)快晴

布団を干す時に下を見たら、ハルが若葉の中にいた。
大家さんのどんぐりの木、出掛ける前にはほとんど裸で、ちょっとだけ若葉出ているくらいだったのに。
今はすっかりワサワサで、風にそよいでいる。
若緑色に茶色のハルだ。
薄紫の桐の花も、ぽつんぽつんと咲き始めた。
昨夜、自分がどこにいるのか分からないような夢をみた。
まだフランスをさまよっているような、空の上にいるような。
よく、死んだ人の魂が、まだ自分が死んだことが分からずに、その辺をさまよっているような、そうな感じ。
起きた時にハルの鳴き声が聞こえて、ベランダからの景色を見て、やっと、私は帰って来たことを知った。
お昼に蕎麦を食べてから、ムーバスに乗って出掛ける。
今日のムーバスの出来事。
頭の上に桜のガク(花弁が落ちた部分)をつけているおじさんがいて、私はずっと気になっていたが、どうやって教えてあげたらいいか分からなくて、だけども気になるので、ずっとガクを見ていた。
すると、隣に座っていたおじいさんが、「桜がついています」と言いながら取ってあげ、 「さっき八重桜の木の下で、掃き掃除をしていたもんですから」「どこの八重桜ですか?」「○○会館の……」と、会話は穏やかに続いていた。
青山方面に出掛ける。
まず、川原さんと青きみの展示会に行き、アノニマ・スタジオとアリヤマ君の事務所にも行った。
アリヤマ君の事務所について、「なんだかオレはええ気持ちじゃった」とスイセイが感想を言っていた。
アリヤマ君は、いばった感じがぜんぜんなくて、スタッフの女の子3人も、マイペースでこつこつ自分の仕事をやっていて、イライラした空気がどこにもない感じ。
やっぱりスイセイも同じ印象を受けたのだ。
そして、タクシーに乗っている時にみどりちゃんから電話があり、ごはんによばれることに。

●2005年4月26日(火)日本は薄曇り、肌寒い

空港から、帰りのバスの中でずっと寝ていたが、とちゅう大雨のものすごい音で目を覚ます。
それでもめげずに、またすぐに眠る。
夕方の5時半くらいに吉祥寺に着いた。
東京は、思っていたよりも寒い。
やっと帰ってきました。
玄関を開け、中に入ると、大テーブルも小さく、台所も狭く、全体的に低くて小狭い感じ。
そして、全体的に茶色く古ぼけている。
打ち合わせなどで始めてこの家に来る人って、こんな風に見えるのだろうか。
この家って、明るく開放的で、広々した感じを持っていたが。
きっと、フランスのホテルの天井がどこも高かったのだろう。
そして、風呂でも壁でも、みんな真っ白でピカピカだったからなあ。
それにしてもこの違和感はなんだろう。
生まれ変わったような気さえする。
茶碗でもなんでも、あれ?こんなに茶色かったんだろうかと思ったりする。
これで、ひと晩寝て起きると、もう違う感覚になっているだろうから、今のうちの新鮮な時に日記に書いておきます。
とりあえずは、まったく仕事が手につかないだろう。
今はまだ、体の中にはフランスが染みていて、皮膚の下1センチくらいだけ東京にいるような感じだ。
本当は旅行日記を書きたいのだが、支離滅裂な頭なので、やっぱりとにかく寝ることにします。
夜ごはんは、白いご飯を炊いて、明太子、梅干し、食欲味噌を具にして手巻おにぎりにした。
帰りのバスの中で、無性におにぎりが食べたかったのです。
それもコンビニのおにぎりが。
たぶん、私は海苔がそうとう好きなのだと思う。
あとは、椎茸のおすまし。
鍋に水と酒少しを入れ、だし昆布と干し椎茸のスライスを放り込んで弱火で煮、塩と薄口じょうゆで味をつけただけだが、とてもおいしくできた。
だしも濃すぎず、薄味の透き通った汁。
まさにこういうのがずっと飲みたかったのだと気がつく。
スイセイもたぶん喜んでくれると思うが、帰ってからすぐに、ご飯も食べずに爆睡状態です。

さて、フランスの日記なのですが、今回の旅行は感じるところがたくさんあり、まとめるのにしばらく時間がかかりそうです。
なので、まだアップすることが出来ませんが、皆さま、もうしばらくお待ちください。



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