2006年1月上

●2006年1月10日(火)快晴

スイセイは朝7時に起きたそうだ。
私は、速達が届いて8時くらいに起こされたが、また眠り、ひと夢みて11時に起きた。
今日も、風もなくポカポカ。
空は、昨日ほどまっ青ではなくて、少しだけ飛行機雲ができるくらい。
のどかだ。
洗濯物を干しながら、これから始まる本のタイトルやページの字面のようなものが、ポーンと浮かんできた。
それについて、出てくるままに書き出していたら、編集の田中君からタイミングよく電話がかかってきた。
思いついたことを、どどーっと伝える。
というわけで、今日は『日々ごはん6』のおまけレシピをやる予定。
「あとがき」に書くことも浮かんでいるので、触りだけでも始めよう。
お昼は、「ドミノピザ」のアメリカンスペシャルだ。
3時からスイセイと走りに行く。
公園にはおじいちゃんが2人、ベンチに並んで腰をかけ、A「シが長くなったなあ」B「そうだなあ。暮れよりか2ぢっ分や3ぢっ分は長くなったなあ」。
ストレッチで足を伸ばしていると、ビブラートがかかった本格的な歌声が聞こえてきた。
見ると、犬を連れてグランドを歌いながら歩いているお兄さんだ。
「もうひとりじゃない〜 孤独という友だちがいる〜」。
誰の歌なんだろう。尾崎豊だろうか。
歌をやめて欲しくないので、知らん顔してうんとしばらくしてから追い抜かしてみた。
「月がゆっくり時間をかけて通りすぎる〜〜そんな部屋があればいい〜〜」。
さっきから途切れずに、延々と歌い続けている。
もしかして、これはお兄さんの即興の歌かも。
よく、ネガティブな独り言を大声で言っているおじさんやおばさんに、街中や駅の切符売り場で出くわすことがあるけれど、このお兄さんみたいに、思ったことを詩にして歌ってみたらどうだろう。
腹から声を出して。
買い物をして帰り、レシピ書きの続きをやる。
今日走っていてふと気がついたんだけど、スイセイと横並びに走っているシーンなんか、まるでコマーシャルの仲のいい中年夫婦(健康好きな)みたいだよな。
夜ごはんは、和風ハンバーグ(大根おろし、蓮根、焼き椎茸添え)、大根と胡瓜の梅酢和え、コンソメスープ(玉葱と人参)、玄米。
ハンバーグを焼き終わった油で、蓮根を焼いてみた。
これはともすけの影響だが、蓮根のつけ合わせっていいものだな。
コンソメは、昨日の撮影と打ち合わせの間にトリガラでスープをとっておいたもの。
私は味わいながら飲んだが、スイセイはさんま(明石家)のテレビを見ながら、なんでもなく飲んでいた。
しかも一番最後にすっかり冷めてしまったものを。
夜、寝る前にレシピの続きをやってしまう。
明日から、これをもとに試作です。

●2006年1月9日(月)曇り時々晴れ

初仕事。
12時から「翼の王国」の撮影。
斎藤君が玄関を入ってきて、顔を見たら、懐かしいような気持ちになった。
でもすぐに、いつもの空気にわーっと戻っていく。
桃ちゃんが来て、その感じは一気に強まった。
やっぱりこの撮影は、料理を作っていて、その自由さに武者震いする。
終わってから皆でお昼を食べ、丹治君も一緒に打ち合わせ。
2時半くらいに終わり、丹治君と『日々ごはん6』の作業と打ち合わせ。
ひとりの頭で考えているだけの世界は、自分にとっては充分に大きいんだけど、そこに誰かが加わると、思ってもみないような転がり方を見せる。
その計り知れない感じが、もの作り同志の醍醐味を感じる。
またことしも、いろんな楽しい仕事が始まりそうな予感だ。
去年、『じゃがいも料理』の出来上がりでもそういうことを感じ、著者は私なんだけど、関わった人たちそれぞれの力の結集というか、想いの凄みに感動した。
ことしも、そういう感触をすでに感じ初めている。
誰に感謝していいのか分からないから、そういう巡り合わせをしてくれた神さまに感謝するしかないような。
なんか、ダイナミズムを感じてしまう。
ふー。
この気持ちを腹の底に沈め、きゅっと紐を縛って、私も頑張るベ。
夜ごはんは、中華そば、塩豚焼きの葉っぱ巻き(プリーツレタス、青じそ、キムチ)。

●2006年1月8日(日)快晴

まるで今日が元旦みたいに、ピカピカ、ポカポカの天気だ。
10時に起きました。
雲がひとつもない。
飛行機雲もできないくらい。
思う存分洗濯物を干す。
午前中に、昨夜の続きの『日々ごはん6』を仕上げてしまった。
お昼に試作でチャーハンを作る。
あまりに外が明るいのでソワソワとし、スイセイを誘ってみるが、今日は走りに行かないとのこと。
ベランダに出てしばし考えるが、思い切って私ひとりでも行くことにした。
スイセイがいなくても、あまり無理せずに、走ったり、歩いたり。
中央公園は、凧揚げの親子や飛行機を飛ばしているおじいちゃんがぽつぽついた。
犬の散歩の人も、数えるくらい。
青い空に、昼間の白い月が出ている。
少し膝が痛くなってくると、立ち止まってストレッチをし、また走ったり、歩いたりした。
帰りはゆっくり歩いて、スーパーに寄る。
ワインの試飲コーナーで、おじいちゃんが味見をしている。
女の子が「いかがですか?」と聞くと、「かわいい…」とひと言答えていたおじいちゃん。
見ると、その女の子は本当に背が小さく、アニメのキャラクターみたいに華奢で可愛らしい。
白いフリルのエプロンもしているし。
よぼよぼに近いおじいちゃん(80歳は越えている)でも、そういうことを言うんだなあと、感心した。
帰ってから、またデスクワークをやる。
明日は初の撮影だけど、「翼の王国」だから楽しみでもある。
あとで、『まる子』と『サザエさん』を見よう。
夜ごはんは、いかのワタ煮、レタスとハムとアスパラ(缶詰め)のサラダ、小松菜のおひたし(しらすのっけ)、油揚げと貝割れの味噌汁、玄米。

●2006年1月7日(土)快晴

雲ひとつない青空。
やっと晴れました。
ポカポカと暖かく、ひさしぶりに窓を開け放して掃除をする。
とてもありがたく思い、洗濯をする。
晴れが続いていた時には、素晴らしい天気をなんでもなく過ごしていたけど、何日も寒い日が続いてやっと、このありがたさに気がつく。
気がついたのだけど、何かに対してありがたい…と感謝の気持ちになっている時って、心が健やかになっている。明るくもある。
せっかくなので、早めに街に買い物に出る。
お米屋さんに行ってお奨めを聞きながら、注文する。
新潟の大雪のニュースを見ていたので、小国町のコシヒカリを買いました。
銭湯の前では、若者たちがロックをかけながら、ビールを飲みながら、餅つきをしていた。
道行く人たちにも配っている。
あさっての撮影で使う青唐辛子を捜しに行ったんだけど、すぐにありました。
新じゃがの小粒のもみつけて、季節外れだとは分かっていても、ついつい買ってしまう。
焼き立てのどら焼きも買った。
世の中は、今日からまた3連休なのですね。
東急デパートは、買い物をしている夫婦連れやカップルで賑わっていた。
いつもお世話になぅている、東急の自転車置き場のおじさんたちは、彼らこそ木枯らしの中でも関係なしに働かなければならない人たちであった。
帰ってから、七草粥を作ってスイセイと食べる。
ことしのは、赤米入り玄米に卵もとじて、色のきれいな七草粥になった。
夕方になったら、またぐんぐん気温が下がり、すっかり冬空に戻ってしまう。
温かい部屋で、『日々ごはん6』の校正をはまってやる。
夜には一通り終わり、もういちど見直しをやる。
夜ごはんは、サーモンステーキ、浅蜊の潮汁、玄米。
ともすけにいただいた正月料理のつけ合わせ(蓮根と芽キャベツ)を、サーモンステーキに添えて、おいしく食べる。
ソースは、焼き汁に白ワインと醤油、バルサミコ酢ほんの少々で味つけ。
粉吹きにしたじゃが芋は、トウヤという種類のもので、ちょっと黄色っぽくてとてもおいしいものだった。
キタアカリともまたちがい、どちらかというとメイクインに近いねっとりさだった。

●2006年1月6日(金)曇り

スイセイはバタバタとよく動き、何かを作っている。
これから東急ハンズにも行くらしい。
それにしても、この寒さはどうだろう。
廊下に出るたびに、青森の初女さんの家を思い出す。
こんな日に外で働かなければならない人や、雪の多い地方の人たちは、本当に大変だろう。
洗濯物もずっと部屋干しで、あの、よく晴れ渡った青空がとても恋しい。
ガスストーブだけでは寒いので、腰にブランケットを巻き込んで、『日々ごはん6』の校正をやる。
スイセイが帰ってくるのに合わせて、今夜は温かいお蕎麦にする予定。
というか、私はずるしてずっと買い物に出ていないので、残り物工夫のメニューなのだ。
夜ごはんは、鴨南(鶏肉で)蕎麦、精進揚げ(蓮根、京人参、青じそ)、小松菜のおひたし。

●2006年1月5日(木)曇りのち晴れ

よくもこんなに眠れるものだ、と自分でも感心する。
夢もまたしっかりみて、2時に起きた。
私の場合はただの睡眠ではなく、落ち込む、眠る、夢をみる、治すがいっしょくたになっている。
だから眠るのは、自分の内面を旅する感じだ。
眠りにひきこもる感じ。
でも、もうそろそろいいだろう。
今日からは、少しずつ外に向けて体を動かそう。
仕事を始めよう。
夜ごはんは、和風カレー(煮しめの残りに鶏肉を加えて)、ハムとレタスのサラダ。
今日から『日々ごはん6』の校正を始めた。

●2006年1月4日(水)曇り

昨夜はとても楽しかったんだけど、ワインを飲みすぎた。
はしゃぎすぎて、最後には歌って踊った。
りうと抱き合って踊り、りうもろとも転んで、床に頭をぶつけてしまった。
肘にはアザもできている。
私の知らないりうを、昨夜見た。
というか、私たちから離れて、大人になったっていうことなんだろうか。
隠れていたりうの内面が、ぶわっと出ていて驚いた。
りうのことを、ついいつまでも子供のつもりで見て、小さい型にはめていた自分に気がつきました。
いいとこも悪いとこも持った、もう、ぜんぜん立派な大人(ひとりの人)なのだ。
アリヤマ君やともすけには、あまりにありのままを見せてしまって、本当に恥ずかしいし申し訳ないけれど。
怒ったり注意するのは簡単なんだけど、そういう親の特権みたいなもので、りうから出てくるものを押さえつけたくなかった。
なんか、うちの家族は次のステップに入ったような気がしました。
今日は3時くらいに起き、胃がムカムカして気持ち悪いが、ゆっくり片づけをして風呂に入る。
このムカムカはお腹が空いているからかもと思い、サッポロ1番を作るが、ほとんど食べられなかった。
そしてまた眠る。
胃袋の上に手を置いて布団にもぐりこみ、動物が悪いところを治すみたいに、ひたすら眠った。
たくさん夢もみて、次に起きたのは10時半であった。
夜ごはん、スイセイは自分で作ったラーメン。
私は、ともすけ弁当のいろんなつけ合わせ野菜と、ハウスクリームシチユーをお湯で溶いたもの。
もうしばらくは、お酒はいいやという感じ。

●2006年1月3日(火)曇りがちの晴れ

今日もまた2時まで寝てしまった。
このところ、夢の世界の方が自分に近い気がする。
めまぐるしい夢の世界からいつまでも目覚めずに、この不安定な場所でずっと漂っていたい…と思ってしまい、朝ちゃんと起きられない。
スイセイは、自分のことをひとりでいろいろやっている。
スイセイ・ショー(展示会)が、27日からなので。
起きて風呂に入り、3時にお雑煮を作って食べる。
夕方から、ともすけ、アリヤマ君、りうが来るので、いそいそと掃除などをしています。
さて、ちょっと買い物に行ってこよう。
スーパーはもうやっているのだろうか。

●2006年1月2日(月)雨のち曇り

4時まで寝てしまった。
昨夜はおもしろいテレビをやっていて、5時くらいに寝たんだけど、ほとんど12時間寝たことになる。
なんだか、長い夢をみていたな。
あちこちのいろんな人の前に自分が出没して、なんだかんだと関わりを持ち、またどこか別の所に出没する夢。
母もいたし、知っている人も、知らない人もいた。
どこかを旅しているというよりは、とつぜんその場に出くわすような、自分がお化けみたいに漂っている感じだったなぁ。
もしかして、これが初夢か?。
スイセイはとっくに起きて、自分でお雑煮を作って食べたみたい。
窓の外はすでに蒼暗く、物干し竿に水滴がついている。
雨が降ったことも知らないで寝ていた。
今日はもうとことんまで怠けることにして、布団の中で本を読み耽る。
ごはんも食べずに。
気がつけば、外はもう真っ暗であった。
夜ごはんは、とろろ蕎麦(温かいの)、しめ鯖と平目の残り、わかめ(ポン酢醤油)。

●2006年1月1日(日)曇り、寒い

元旦にしてはめずらしい天気。
それでも、下の公園でお父さんと男の子が遊んでいるのが、ちょっと正月らしいかな。
なんとなしに清々しい気持ちで台所に立つ。
いそいそと準備していたら、スイセイが部屋から出てきた。
「アケマシテ」とスイセイが言い、「オメデトウゴザイマス」と私が言う。
数の子、煮しめ、平目の昆布じめといくら、アン肝、黒豆、だて巻などを並べたら、ぐっと正月らしい食卓になった。
あとは、お雑煮と玄米餅の磯部巻き。
考えてみると、暮れから正月にかけてスイセイとふたりきりで過ごすのは、すごくひさしぶりかもしれない。
淋しくはないけれど、お湯のようにじっとりと満足してしまう。
人の声もしないし。
りうからメールがあって、体調を壊して家で寝ているとのこと。
きっと、暮れぎりぎりまでアルバイトに精を出したんだろう。
今年の正月は、もう来れないかもしれないな。
昨夜は、スイセイとふたりで、紅白を見ながら日本酒をちびちび飲んだ。
ふたりだけで歳を越すのは、照れくさいような、純度が濃くてもったいないような気がした。
今日は、3時くらいから、中国映画を見ながら整理ものをひとつやる。
せっかく正月なんだから、のらりくらりしなければと思うけど、普段から自分のやりたい様にして暮らしているから、あんまりそんな気にもならない。
スイセイも、いつもと変わらず何かの機械を分解したりしている。
正月1日目にして、すでに手持ちぶさたな感じ。
せっかくの日曜日なのに、『まる子』も『サザエさん』もないし、『ウルルン』もないのだから。
夜ごはんは、ずわい蟹、しめ鯖、ハム(辛子マヨネーズ)、大根といくら、お雑煮、磯部巻き。
明日から、『日々ごはん6』の校正を再開しようかな。



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