2002年12月上

●2002年12月10日(火)

今日も撮影だったことをすっかり忘れて、昨夜は飲んでしまいました。
すぐに酔っぱらってしまい、あれよあれよという間に皆帰ってしまった。気がついたら私はとり残されていて、ジンだけがいっしょにいてくれた。そしてまた、転んだのです。階段の所で滑ったらしい。痛くないのに目頭から血が出ていた。
ウルフとサンが終わるまでカウンターに座って待っていたが、目頭にバンドエイドをはった中年女の私は、なんでかわからないけどボロボロと泣いていた。ウルフが、「どうしたの高山さん、何かあったの?」と、2回くらいやさしく聞いてくれたが、自分でもなんでこんなに泣いているのか分からないのだ。ジンもウルフもサンも、クウクウで働いていた男の子たちで、私のかわいい弟たちだが、皆がやさしくてそれで泣いたような気もする。
さて、今日の撮影はグッズ紹介のページだったのだが、約束の時間より大幅に遅れそうだと編集の方から電話があったので、お願いして別の日に替えていただきました。
うー、そしてまたもや寝込んでいた私。
夜ごはんは、納豆、ゆでぎょうざ、かぶとベーコンの炒め物(クリーム味)、白菜と豆腐のおすまし。食後にサービスしてデザートまで作った。生クリームにきな粉をちょっと混ぜて泡立て、プラムを刻みこんでカルーアをちょっとかけた。りうもスイセイもたいへん喜んでくれました。

●2002年12月9日(月)

朝起きてみたら、しっかり積もっていました。
窓の外を雪がほたほた降る中、撮影でした。部屋の中をうんと暖かくして、クリスマスのような音楽をかけ、おいしいものをどんどん作っていった。
揚げ卵のプロセスカットを撮っている時に、カメラマンさんはぐっと近寄って、油がはねてもびくともせずにシャッターをきっていた。こういうことって当たり前かもしれないが、人間として私は尊敬します。
11品あったのでけっこう時間がかかり、終わったのは6時でした。
大急ぎで支度をして、原君の個展のオープニングパーティーへ。
そして2次会は、ウルフ(クウクウ創立メンバー)とサンが最近始めた原宿のカフェへ。

●2002年12月8日(日)

クウクウが終わって賄いを食べていたら「高山さん雪が降ってますよー」と、ヤノ君から電話があった。私は今日なんとなく雪が降るような寒さの気がしていて、「雪降るかもね」と、いろんな人に3回くらい言っていたそうだ。それをヤノ君が聞いていたらしい。
まず外に見に行って降っているのを確認し、「皆さーん、雪ですよー」と発表した。なんだかわからんが「いぇーい!!」と皆で喜んだ。
自転車で帰る時、尋常でなく降っていて、コートの腕に積もるほどだった。その姿のままスイセイを呼んで見せ、「スイセイ雪だよ!」と自慢した。
めずらしい天気の時って、まだ知らないでいる人に教えて自慢したくなる。

●2002年12月7日(土)

4時くらいに良美ちゃんの電話で起きた。
ちゃんと起きていたようなふりをして、ハキハキと答えたのに、「みいさん寝てたー?ごめんね起こしちゃって」とすっかりばれていた。最後には「おやすみー」とまで。何で良美には分かってしまうのだろう。
通販の毛布が柔らかくて、すっかり眠りの虜だった私。電話がかかってくる直前、私は何をしていたかというと、夢を操作していたのだ。自分の見たい方向に夢を操るのって、物語を書くことに似ているかも、とも思いながら。半睡眠の時だとけっこうそれができるのです。暇だなー。
良美ちゃんは、クリスマス頃に我が家に滞在する予定だった。だから暖かい毛布も買ったのに、来れなくなってしまった。がーん!すごく残念。
布団の中で延々と「麦ふみクーツェ」を読む。読みでがあってひじょうに嬉しい。
とちゅうミルクティーをいれ、クッキーを食べながら。
ストーブもつけない寒い部屋で布団をかぶって本を読むというのは、私の冬場の愉しみなのです。これは昔、山小屋でアルバイトしていた時に覚えた愉しみだ。
夜ごはんは、試作のドライカレーと揚げ卵、キャベツのサラダ。ごはんまでも山小屋チックになってしまった。
さっきスイセイが部屋の電気を消してまわっていた。手には、コップに入ったろうそくを掲げている。コップの上には網がかぶさっていて、風よけになっているらしい。そして網は、100円ショップで買ってきた茶こしだ。これも、お遍路グッズのひとつらしい。

●2002年12月6日(金)

ゆうべは「麦ふみクーツェ」を読み始めた。早く寝ようと思っていたのに、おもしろいのでクイクイ読んでしまい、けっきょく5時くらいに寝て11時に起きました。
午後からは、コンピューター関係の雑誌のインタビュー。
新しい本のことをいっぱい宣伝してしまいました。「ものづくり」についてのページだったので、共同作業についてなどなど、ものすごいべらべら喋ってしまった。私はけっこうインタビュー好きかも。こんなばかな私の言うことを聞いて、感心してくださるので、純粋な気持ちでただ嬉しく、いつもついはしゃいでしまうという感じだ。
通販の椅子と毛布が届きました。椅子は、体圧分散オフィスチェアーといって、座るところと背もたれが粘土のようなのだ。粘土というと固いようだが、ほどよい柔らかさで、へこんだまま体を支えてくれる。いつも凝っている肩甲骨の上まである、どっしりとした背もたれ。これで、いくらでもパソコン作業ができそうだ。
あんまり座り心地がいいので、レシピを打ったり、文章をやったり、いつもだったらテーブルの方でやる請求書まで、仕事机で書いてしまった。
毛布はまだ寝てないから分からないが、ぼわっとした素材の軽いやつだ。
今日も試作の予定だったが、インタビューの最中に料理を作っているカットが欲しいというので、ちゃっかりとやらせていただきました。家族だけだとうんざりするけれど、試作したものを皆さん喜んで食べて行ってくださった。
夜ごはんは、八丁堀で買った厚切りのおいしい塩鮭、厚揚げ(閉店前に八百屋に行ったら3個で100円にまけてくれた)れんこん、ちくわ、じゃが芋の煮物、ゴーヤとひき肉の塩炒め、キャベツと卵の味噌汁。

●2002年12月5日(木)

きのうは計算したら20時間寝ていました。動物がひたすら寝て、悪いところを治すっていう感じだった。おかげで今日は元気です。
午後早くから、あちこち買い物に出掛けたりして5時には帰って来た。
レシピ書きもバリバリと10品分やり、テレビ用の試作も3品次々にこなしていった。
明日もあさっても試作の日々なので、家の冷蔵庫は今、ひき肉だらけです。
それにしても今日の私はえらかった。普段なら買い物は1日1ヶ所、多くて2ヶ所が精いっぱいなのに、注文しておいた本(いしいしんじ著「麦ふみクーツェ」)を受け取りに行き、無印良品に行き、西友で試作用の食材をどっさり買い、デニーズに行って、ある料理の写真をとり(仕事で必要だったのです)、食べたのです。
夜ごはんは、試作したものをバラバラな時間にそれぞれが食べました。だから今、ちょっと胸やけがします。

●2002年12月4日(水)

しとしと雨が降っていたので、ずっと寝ていた。カーテンを開けて、外がよく見えるようにして。いくら寝ても寝たりない感じ。夕方、豆腐屋さんのプーが、やけに長く尾を引いて聞こえていた。とちゅうで、昨日買った小説「家庭の医学」レベッカ・ブラウン著を読み終え、また眠って、起き上がったのは夜の11時でした。こういう時って、私は何も食べずにいるのが好きだが、今日はホットミルクとクッキーを布団の中で少し食べた。まるで病人のように。
しかし本当に、風邪の前触れのように、体のふしぶしが痛いのです。やらなければならないことはあるのだが、やる気というものがまったくない。熱はないからきっと何でもないのだろうが、なんとなく、原君のお母さんのことを考えながらずっと寝ていた。
そういえば、たかし君のアルバムのことを間違えて「ひとりぐみ」と書いていたことを、やさしく教えてくださるメールがきていた。ありがとうございます。正しくは「はなれぐみ」でした。私はこういうことがよくあるみたい。好きなものの名前を思い込みで間違えて、平気でいるのだ。
夜中に鮭ごはんと小松菜のお吸いものを作り、ひとりでぼそぼそ食べた。
明日は早く起きて、いろいろやろうと思う。
今日はもう、また寝ます。

●2002年12月3日(火)

八丁堀なんていうめずらしい所で仕事。キッチンスタジオで料理の審査員をしました。なんだか楽しいお仕事でした。審査員は私を入れて3人だったが、写真を撮られる時に、自分のキャラクターを満載している他のおふたりの様子が勉強になった。そうかー、皆さんこうやって顔のポーズを決めて、じっとしたまま写真を撮ってもらっているのか。この様子は、こんどダ・ビンチにのります。
スタジオを捜してうろうろしていたら、オフィス街にライトバンの魚屋さんが店を出しているのを発見。新しそうだし安いので、ぐいぐいと気になり、そうか、八丁堀というのは築地の隣町だからだとひとり納得し、帰りにいろいろ買おうと心に決る。
ずわい蟹のほぐし身、やりいか、甘塩の鮭切り身、柳がれいの干物、しらす。これから原君宅に行くので、家の分と両方買ったらすごい量になってしまった。
夕方6時頃に原君宅へ到着。おかあさんは、パジャマの上にセーターを着てソファーに座っていた。いつものように「お母さーん、来たよー」と声をかけると、うわーっと顔が微笑むのだが、その時だけで、あとはほとんどゆるんだ表情だった。2ヶ月ぶりに私は来たが、前回は、食べ物にはまだちゃんと興味があって、「それはなーに?」とか言っていたが、今日のお母さんはまったく興味がない様子だった。原君が、いろいろ流動食を工夫して、どうにか食べさせていた。
ここ2ヶ月が1年くらいのことのよう。いったい私はその間どこに行っていたのだろう?原君の絵もたくさん描けていたし・・・ 家に帰って来たのは1時を過ぎていた。スイセイと焼酎を飲み始めてしまい、とちゅうからりうも加わって盛り上がり、朝方寝ました。
私はすっかり忘れていたが、今日は私たちの結婚記念日だったそうだ。

●2002年12月2日(月)

昼過ぎに起きて布団を干し、洗濯もたっぷりしたのだが、あまりに薄暗いので、さっき、あらっ?もう夕方かしらと思ってしまった。時計を見るとまだ3時ではないですか。
スイセイはどこかに行っていない。ゆうべは布団にも入ってこなかった。いったい何をしているかはだいたい想像つくが・・そう、お遍路グッズだ。きっと材料をホームセンターに買いに行っているにちがいない。
一昨日だったか、スイセイは風呂に入る前に「みい、ちょっとでええから見て見て」と私を呼んだ。またしても真っ裸で、ボディービルの人みたいにグーッと力を入れている。確かにまた筋肉がついたみたいだけど、下半身ばかり変に貧弱で、たくましい犬のマンガ(下半身が上半身の1/5くらいのキャラクター。キバをむいて葉巻を吸っているやつ)みたいになっている。上半身だけの運動をジムでやっているのだそうだ。
夜ごはんは、鷄ひきとごぼうのつくね(小さくまとめるのが面倒だったので、フライパンいっぱいに丸く焼いた)大根おろしと天つゆで、めかぶ納豆、じやが芋と玉ねぎの味噌汁、玄米。

●2002年12月1日(日)

クウクウの日。
冬のおすすめ新メニューの初日だ。しおり&あつこ組で準備をしてきたものだ。とちゅうで、ついまた私が仕切ってしまっていることに気がつき反省しました。今回から若いふたりに完全にまかせたというのに。
モンゴルぎょうざ、ポルトガル風コロッケ、ベルギー田舎風ソーセージ、牛スジの韓国スープが人気でした。
バリバリと働きながら、たかし君の曲が耳の中でずっと鳴っていた。
けっこうくたびれて家に帰ってみると、何かが焦げるような匂いがする。また何かスイセイがやっているのだ。
部屋をのぞいてみたら、はんだゴテでビニールみたいな網を溶かしていた。テグスで縫い合わせ、袋のようなものを作っているらしい。これも、お遍路グッズのひとつらしいが、今、スイセイの部屋はすごいことになっている。作ったろうそくだとか背負子だとか、キャンプ道具だとかが乱雑に散らばっていて、スイセイが座っている所まで行けない状態。しかし、本人はとても幸せそう。

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