2004年10月上

●2004年10月10日(日)曇り

二日酔い。
目が覚めたら寝、また目が覚めて、寝る・・・のくり返しで、なんと6時まで寝ていた。
昨日は、みどりちゃんのオープニングパーティーだった。
あんな嵐の中、遠くから、ぬれ鼠になってやって来てくれた人たちって、すごいなーと心底思った。
あんまりたいしたものを作ってなくて、申し訳ない気持ちだった。
佐々木美穂ちゃんや、ともすけ(ケイタリングをやっている)や、日置さん、昌ちゃん、スイセイは、皆心からみどりちゃんのファンなのだ。
お蕎麦やさんで皆で飲んで、その後「南天」に行き、そしてこの間のバーにも、また行ってしまった。
下田さんに誘われたら、どんな所でもついて行くっていう気持ちだった。
下田さんて、吉祥寺中の姉ちゃんみたいな人だもの。
今日は、サザエさんもまる子も見ずに、全部がオフの日にした。
ウルルンだけは楽しみに見た。
夜ごはんは、ざる蕎麦(スイセイ)、温かいとろろ蕎麦(私)。
昨夜も蕎麦を食べたというのに。
そういえば、野草を生けていたかわしまよう子ちゃんが、とてもいい娘だった。
「ホームレスは憧れです」なんて、平気な顔をして言っていて、ひとりでどんどん遠くまで行ってしまいそうな、ひとり遊びが得意みたいな、小柄だけど、たくましさを体の中に持ったような娘だった。
そういう若い娘を見ると、私は姉ちゃん心が沸いてきて、応援したくなる。

●2004年10月9日(土)台風

宅急便で、10時に起きる。
次回撮影のメニューを考えながら寝たので、明け方の夢に出てきた。
ミルク・コーヒーをいれ、そのメニューを紙に書き出す。
夢の中で味見もしたので、思い出しながら書きとめる。
吉祥寺のギャラリー「フェブ」で、今日からみどりちゃんの展示会が始まります。
そのオープニングで軽い料理を作るんだけど、台風が直撃なのは90%らしい。
朝、起きた時に小雨だったから、「やったー、それたんだ」と思っていたんだけど。
これは、嵐の前の静けさということか。
お客さんが集まらないのがつまらないけど、まあ、内々でやりましょうという気持ちで、気軽に作ることにします。
これからヒラリンが来て手伝ってくれる。

●2004年10月8日(金)雨もまたよし

雨の音を聞きながら、ずっと寝ていた。
3時くらいに起きて、撮影の残りの白菜とソーセージのスープを温め、スイセイにはきしめんを作ってやる。
食べ終わったら、ミルクティーをいれて、また布団にもどる。
布団の中で、ひたすら読書タイムだ。
今月の「ダ・ヴィンチ」のいしいしんじさんの「本当のしごと」がとても良くて、ぶわっと涙がこぼれる。
つづいて、「ソーネチカ」をぐんぐんと読む。
すごくいい。何ともいえないひんやりした空気が、霧のようにある。
霧というか、雪なのかもしれない。
何か、音がしない感じなのだ。
この作家は、たとえば登場人物がひょっとした事で心が動く時、そのきっかけや理由のようなものについて、理屈っぽく追及したり、つじつま合わせのようなことをしない。
その感情を、ただそういう感情としてだけ書いている。
人間の頭や気持ちだけの中にその理由があるわけではなく、もっと大らかな、自然の摂理みたいなものに影響されている、とさえ思わせる。
それは、うんと高い所からの視線で、人間のことを書いているってこと?だろうか。
全部読み切りたかったが、最後の数ページを残して起き出し、餃子を作る。
夜ごはんは、焼き餃子、野菜たっぷりスープ(にんじん、キャベツ、ニラ、ねぎ)、玄米。
餃子は2回に分けて焼き、スイセイとふたりで36個たいらげた。
私の本(「うちの玄米ごはん」)には、1回に12個ずつ焼くと、返す時にきれいにできると書いたが、今日は18個ずっつ焼いて、バサッと皿にのっけてみた。
餃子はあっちを向いたりこっちを向いたりしているが、普段のごはんでは、そういう行儀の悪い方が、けっこう美味しそうに見える。
早めに風呂に入り、アノニマのすり鉢教室に応募いただいた方々のメールを、すべてプリントアウトして、じっくりと布団の中で読む。
たぶん私は、このところの忙しさで、人疲れというか人酔いしたのだと思う。
そういう気分の日に、「ソーネチカ」はぴったりだった。
冬ごもりの気分だ。

●2004年10月7日(木)秋晴れ

金木犀がまっ盛りの、爽やかな秋晴れ。
たっぷり寝た(とちゅう地震で起きたけど、ほとんど10時間)せいか、今朝はスッキリ起きました。
煮込み料理を作りながら、洗濯機をまわしたり、せっせと掃除機をかける。
11時から撮影開始。
みどりちゃん、赤澤さんコンビの仕事なので、なんとなくウキウキしながらやった。
ひとつひとつ、じっくり集中しながらも、ひさびさに会えた嬉しさは隠せない。
みどりちゃんの足、ギブスは取れたけれど、まだまだびっこをひいていた。
その足で、いつもと同じように車を運転し、仕事をこなしているみどりちゃん。
私だったら、気が重く、人に会うのもおっくうになって、あっさり仕事を休んでしまうような気がする。
改めて、みどりちゃんの仕事熱心さに惚れぼれした1日だった。
夜ごはんは、れんこんの厚切りきんぴら、焼き茄子、塩鮭、切り干し大根の煮物、ひきわり納豆、大根とごぼうの味噌汁、玄米。
ひさびさに、ちゃんとした夜ごはんだったな。

●2004年10月6日(水)秋晴れ

今朝は9時に起き、パプリカ・シチューを煮込んで、パン生地を練った。
起きてすぐにパタパタと動いたので、ずっと頭がぼんやりしていたが、1時半に車が迎えに来る頃には、だんだんと元気になっていった。
2時から、「魯山」で撮影。
しおりちゃんちがご近所さんなので、まな板やら包丁やらボールやら、いろんな物を何度も取りに行ってもらい、やっとこさ料理を支度する。
ハリハリと楽しかったけれど、慣れない撮影だったので、ぐっとくたびれました。
朝からどうも貧血っぽく、風呂に浸かって目を覚ましても、疲れが取れてない感じだったのだ。
なんとなく腰が痛いし、背中も重たい。
西荻から帰ってから、大急ぎで明日の撮影用の仕入れに行き、とりあえず風呂にゆっくり浸かったところ。
今夜は、スイセイがお灸をすえてくれるらしい。
夜ごはんは、カレーうどん(ごぼう、しいたけ、しめじ、豚肉入り)、豆苗のお浸し、大根と青じそのサラダ。

●2004年10月5日(火)ずっと雨

昨夜は、久々にものすごい酔っぱらって、とても楽しい夜だった。
川原さんを誘い出して、スイセイと3人で飲んだのです。
まずは「晩酌や」さんで。
そして、前に川原さんが連れて行ってくれた(牧野さんとばったり会った店)バーにも行った。
懐かしい洋楽をマスターがどんどんかけるので、耳がやたら反応して、言葉より体の方にはまってしまい、最後には他のお客さんも一緒になって、踊った。
小さな店の、細い通路みたいなところで。
3時くらいにタクシーに乗って帰って来たのだが、タクシーの運転手さんがすごく良い人だった。
乗った途端、私にもスイセイにも、すぐに良い人だって分かった。
それは車の中の空気で分かったような気がする(酔っぱらっていたし)。
顔は、無口な職人さんみたいな純朴なおじさんで、世の中の幸せなことも不幸なことも、すべて背負ってニコニコしているような声だった。
大袈裟でなく、本当に天使ってああいう人のことを言うんだって思った。
自分の心の中の、くたびれて擦りきれたようなほころびの場所が、おじさんの部屋(タクシーの中)の泉に浸かったら、みずみずしく再生されていくような感じ。
でも今、こうして書いているけれど、これは全然まだまだあのおじさんじゃない。
帰ってから、窓の所に座って私は泣いた。
おじさんのことを書きとめたいのだけど、書くっていうことは、こっちに引きずり下ろすことだ。こんなにこの気持ちを残したいのに、私にはどう書いたらいいか分からないし、きっと書けない。
しかも、酔っぱらいすぎていて、おじさんの記憶がどんどん薄れていく。
それがものすごく哀しくて、胸が押しつぶされるようで、大泣きした。
というわけで、今日は強力な二日酔いなので、6時までだらだらと寝ていた。
雨の音を聞きながら。
買い物にも行かずに丸1日休みにしたかったけれど、冷静になって考えてみたら、明日の撮影の準備をしなければならないことに気がついた。
顔も洗わずに(昨夜から)、化粧もせずに、髪もとかさずに帽子をかぶって、近所のスーパーに買い物に行く。
夜ごはんは、スーパーで買ってきたお寿司いろいろと、かき卵汁。
おつゆだけは、ちゃんとだしをとっておいしく作った。
スイセイは、お寿司をとても喜んで、幸せそうに食べていた。

●2004年10月4日(月)雨、昨日よりさらに寒い

目が覚めてからも、雨の音を聞きながら布団の中でぬくぬくとしていた。
スイセイはアノニマ・スタジオで打ち合わせがあるので、なんだか張り切っている。
なので、ハムエッグを焼いて黄色いご飯にのせ、昨夜のシチューと豆苗炒めを温め、ハンガリー定食を作ってやる。
「みいよう、三色になったのう」とスイセイが言うので気がついた。
赤(シチュー)、黄(サフランライス)、緑(豆苗炒め)だ。
記念に写真を撮る。
私も3時から吉祥寺で打ち合わせがあるのだが、外に出掛けたい気分の自分と、布団の中でミルクティーとビスケット&読書の自分と、ふたつある。
打ち合わせが終わったら、アノニマに行って合流し、ごはんでも一緒に食べようという予定もあるが、もしかしたらひとりで帰って来ようかな・・・という気持ちもある。
まあ、その時に決めることにしよう。

●2004年10月3日(日)雨、寒い

「アムプリン感謝祭」は雨のため中止。
楽しみにしていたので、がっくしだ。
昨日もやっていたみたいだから、行けばよかった・・・と悔やまれる。
あんなに気持ち良く晴れていたんだし。
急に暇になったので、スイセイの買い物について行く。
行きも帰りもムーバスに乗った。
帰りのムーバスは、雨のせいか満員だった。
狭い通路に人が立って、荷物の置き場に困っていると、座っている人が助けてくれたりして、なんだかアジアの乗り合いバスみたい。
おばちゃんが話しかけてきたりして。
本屋さんで「うちの玄米ごはん」が一冊しかなかったのを、スイセイは目立つ場所に置き直したり、「高山なおみの料理」を棚から出して、他の本の上にのせたりして、私はすごく恥ずかしかった。
2時くらいに帰って来て、2回分の撮影のレシピを書いてしまう。
とちゅう、パプリカシチューを煮込みながら。
夕方、秋田のササ坊から、またおいしい葡萄が送られてきました。
まる子とサザエさんを見ながら、1房ぜんぶ食べてしまう。
夜ごはんは、豚肉と野菜たっぷりのパプリカシチュー、サフランライス、キャベツのサラダ、ほうれん草と豆苗のバター炒め。
スイセイは「ハンガリー定食じゃの、うまいのう」と、満足な様子。
テレビのおもしろそうなのがめじろ押しなので、時間を大事に使おうと思わなければ。
ウルルンの2時間スペシャルの後は、NHKアーカイブスで田中裕子の昔のドラマをやるんです。
「しあわせの国、青い鳥パタパタ(血縁のない家族が一緒に暮らす疑似家族、本当のしあわせとは)」だって。
うーん、いつ風呂に入ってしまおうか、悩むところだ。

●2004年10月2日(土)快晴、暑いほど

12時より「翼の王国」の撮影。
陽が強くて眩しく、暑いほどだった。
撮影前に掃除機をかけ、張り切ってワックスまで塗ったので、何となく体育会系のノリで料理を作った。
というか、あまりに簡単な料理だったが。
試作で、スペイン風の塩ダラスープを作った。
パンとチーズをのせてオーブンで焼く、冬向けの1品を皆で汗ばみながら食べる。
終わってからはパソコンの前に集中して座り込み、ずっと気になっていた原稿を書き上げました。
やったー、明日はプリン祭だ!。
カトキチとアムちゃんの家で、「アムプリン感謝祭」だそう。
何をやるのだろう?と、今チラシをよく見てみたら、やきとり屋、生春巻き&梅酒屋、アム写真展&お土産屋、プリン早食い競争とか、こまごま書いてある。
おかあさん屋とか、青春コーナーというのもあるが、意味不明だ。
カトキチとマー坊のふたりバンド「ソテツ」と、シタ君のライブもあるらしい。
「赤ちゃんの部屋を用意してまってます」「店多数出店、お金をある程度持ってきてください」「当日は、すみずみまでおもしろくしようと思っています。アム」なんてことも書いある。
夜ごはんは、百合根入り茶碗蒸し(きのこあんかけ)、ごぼう入り鷄つくね、ゆかり、玄米。味噌汁はなし。
干し貝柱を酒に浸けておいたのが余っていたので、ほぐして鷄つくねに入れてみたら、やっぱりコクが出てとてもおいしかった。
夜、母から電話がかかってきた。
「日々ごはん2」に母のことをありのままに書いてしまったので、もしかして本人はイヤがるかな?と、なんとなく気になっていた。
すると、のっけからいちオクターブ高い元気な声で、「なーみちゃん読んだで。お母さんのところケッサクで、ひとりで読みながら笑っちゃったさや。よく私のキャラクターをつかんだわねー、さすがだわねー」なんて言っていた。
いくら家族でも、嫌がることは書きたくないから、ほっとひと安心。
というか、自分のことを書かれて嬉しくて、舞い上がっているみたいだった。
さすがは超楽観的な私の母だ。
最近、みっちゃんにCDプレイヤーを買ってもらったので、100円均一でクラッシックのCDをいろいろ買って、聞いているらしい。
「ショパンのピアノ曲とかさ、バッハのオルガンと、あとアリアもあるさや。夜ひとりで聞いてるだけど、すごい良いさやー。お母さんは幸せだよー、感謝だよー」ですって。

●2004年10月1日(金)快晴

秋晴れというか、ぽかぽかした小春日和です。
1時からはインタビューの打ち合わせだったが、久々に竹中さんとのお仕事だったので、すでにインタビューし終わったくらいに、話が盛り上がってしまった。
竹中さんは、まだ私がメディアに出始めの頃に、とってもお世話になった。
あの頃は、ふたりともバリバリの30代前半だったが・・・。
遅いお昼をスイセイと食べ(玄米の卵かけごはん)、郵便局に行ったり、私の本を見に本屋に行ったり、買い物をする。
アムプリンも今日の目的のひとつだったんだけど、早々と売り切れで、もう店じまいしていた。すごい人気だ。
中道通りで、カトキチには偶然会ったけれど。
撮影のためではないので、なんとなくプラプラとした気分で買い物をする。
帰って来たら、6時になっていた。
そういえば、今日初めて金木犀の匂いがしたなー。
ものすごい久々に、「おいしい魚屋」さんにも行った。
鹿児島産の鰻の蒲焼きがあったので、迷わず買う。
取材の時のあのおいしさを、ちょっとでもスイセイに味あわせてあげたいので。
なので今、白米を炊いています。
夜ごはんは、うな丼、ほうれん草のお浸し、キャベツの蒸しゆで(黒酢じょうゆ)、蕪のおろし汁。
キャベツが、ずいぶん大きくみっしり詰まっていた。
もう、すっかり秋冬のキャベツなのだ。
夜、布団を敷こうと思って広げたら、干したぬくもりがまだ残っていた。
秋の陽の光って、あんがい強力なのかも。



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