2007年9月上

●2007年9月10日(月)曇り時々雨

雨上がりの朝、さっそうとコンビニへ。
原稿を届けに行った。
牛乳とアイスとビールも買った。
朝のコンビニというのはいいものだな。
レジのおばさんたちも、心なしか張り切っていた。
お客さんたちも、眠そうな顔で入ってきても、これから仕事が始まる… という空気をまとっている。
(たどんなに昨日、嬉しいことがあっても、辛いことがあっても、とりあえずまた1日が始まった)という空気。
大家さんのどんぐりの木に、今日はメジロが3羽ほど遊びにきていた。
夏の間はまったく見なかったから、これも秋の訪れなのだろうか。
お昼を食べて、美容院へ。
小雨の中、散歩がてら出掛ける。
銀色のすすきの穂が開いているのを、垣根ごしに2軒見た。
ジャスミンの白い花も、ふたつみっつ咲いている。
もう、一気に秋なのだ。
ほとんど人のいない(3人とすれ違っただけ)井の頭公園を、サッサッと大股で歩くのは、とても気持ちよかった。
「紀ノ国屋」で買い物をして帰ってきた。
今日は、大阪の「なだ萬」のお寿司の実演があったので、秋刀魚の棒寿司を迷わず買う。
4時過ぎに、スイセイと散歩。
腰は、もうほとんどいいみたい。
小雨が降ったりやんだりだったけど、空を仰ぐと水色に雲。
農家でモロヘイヤとじゃが芋を買う。
帰ってから図書館へ。
体を動かしたり、声を上げて笑ったり。
なんとなく、私は気持ちが外に向いているのかも。
夜ごはんは、秋刀魚の棒寿司、肉じゃが(人参入り、薄味で汁だく)、ごぼうと蒟蒻の炒り煮(昨夜の残り)、サラダ(レタス、大根、胡瓜、ミニトマト、辛しマヨネーズで)、枝豆、モロヘイヤの梅醤油かけ、油揚げの味噌汁。

●2007年9月9日(日)快晴

ミニバラがまた2つ、新しい蕾をつけている。
ずいぶん大きくなり、枝ぶりも葉っぱも丈夫になった。
地面が乾いていたら水をあげるくらいで、ほとんど世話をしてあげてないのに。
えらいなあ。たくましいなあ。
スイセイの腰は、昨日よりは少しよくなっているみたい。
杖(カメラの三脚)をついて歩いている様子はまだおじいちゃんだけど、自分の部屋に座っていられるくらいになった。
お昼に、素麺をゆでる。
もう、今年は何度食べられるか分からないので。
午後からは、また昨日の仕事の続き。
暗くなる前に、どうやら出来てきた模様。
風呂に入って、頭と体を冷やし、もういちど読み直す。
夜ごはんは、鯵の干物、ごぼうと蒟蒻の炒り煮、冷やしトマト、キャベツもみ(みょうが、青じそ、白ごま、金白ごま油)、ひき割り納豆(スイ)、納豆(私)、餃子スープ。

●2007年9月8日(土)快晴

ひさしぶりにカラッと晴れました。
またたっぷり洗濯し、スイセイの万年マットまで洗った。
万年マットというのは、自分の部屋でマックをやる時に、座布団がわりに敷いている絨毯の切れ端。
今まで、「干させてくれ。洗濯させてくれ」と何度たのんでも、なかなかやらせてもらえなかったもの。
どういうわけか、今日はあっさり許してくれた。
ところで、「クルクル君」は、風力発電の実験なのだそう。
さて私は、今日もまた昨日の続きの仕事をやろう。
詳しいことはまだ書けないけれど、これは、小さな物語です。
スイセイがぎっくり腰になった。
私のお盆を組立て直していて、ボンドで貼りつけた上に重しをのせようとして、ギクッといった。
ものすごくは痛がっていないし、どうにかゆっくり歩けるようだけど、おじいちゃんと暮らしているような気分。
夜ごはんは、焼き餃子、茄子とピーマンとにらの甘辛醤油炒め、大根と胡瓜の塩もみ、お粥。

●2007年9月7日(金)雨のち晴れ

昨夜の台風はすごかった。
トイレに起きた時、カーテンをめくると、細かい雨粒が窓にビッシリついていた。
雨の量は心配したほどではなかったけれど、それからあと、なかなか寝つけなかった。
起きてすぐに、部屋干ししていた洗濯物を干し、残りもたっぷり洗濯。
ザワザワした風に吹きっさらしになって、干す。
布団も、風呂マットも、まな板も干す。
お昼におにぎりを作った。
『かもめ食堂』風に、ちゃんと鍋で炊き、梅、おかか、鮭の3種。
海苔の巻き方も真似した。
にぎる時、サチヨさんになったつもりでやった。
あとは、ゆで卵とがんもどきの煮たの、わかめの味噌汁。
胸に言葉がたまってきたので、今日は、新しい仕事にとりかかろう。
夕方、スイセイと散歩。
「風の道」には、まだ青いどんぐりがたくさん落ちていた。
夕暮れの西の空が、黄色からオレンジ色になるまでの間。
水色とのコンントラストの具合が、みるみる移り変わり、前はどんなだったか忘れてしまう。
芝生に座ってしばし眺める。
昨夜の大嵐で、空も洗濯されたのだ。
夜ごはんは、豚の生姜焼きプレート(焼き玉葱、レタス、胡瓜、貝割れ)、油揚げの味噌汁。
おにぎりを食べ過ぎたので、ご飯はなし。
生姜焼きがとてもおいしく、スイセイに「このタレがうまいのう」と2回ほめられた。
そのタレというのは、自家製焼き肉のタレにおろし生姜を混ぜたもの。
こんどの本で紹介する予定です。

●2007年9月6日(木)降ったり止んだり、台風

朝起きたら、雨も降ってないし、空も明るめだった。
台風はもうそれたのかと思い、たまっていた洗濯をやろうとしていた。
しかし、テレビの天気予報を見ると、まさに向かっているところらしい。
とてもゆっくりなスピードだそう。
昨夜の食あたりは、体が病んだ時の苦しさを、頭ではなく体で味あわせてもらった気がする。
とてつもなく苦しく、心細く、痛みの中に強いひとりぼっちを感じた。
だから、スイセイがそばに立っていてくれるだけで、とても助かった。
癌というのは、あの苦しさが日常的に続くものなのかもしれない。
それは、思ったより、ものすごく辛い。
雨は少ないけれど、木々たちが体中をしならせている。
吹きっさらしの風の中、ひたすら日記を書く。
夕方、スイセイに誘われて散歩。
嵐の前の静けさ。
小雨が降っていたので、帽子をかぶり、傘をさして歩いた。
中央公園は、ところどころ木くずを敷き詰めてあって、不思議な匂いがした。
漢方薬のような、樹脂のような。
でも、暮れなずむ蒼の中、グラウンドの緑と木くずの色合いが、とても綺麗だった。
途中から風が強くなり、傘をすぼめて歩いた。
誰もいない公園。
ひょっとして、川原さんが来ていないかと目を凝らすが… いませんでした。
うちの200メートルほど手前で、土砂降りとなる。
帰ってからお風呂。
そして、パジャマに着替える。
夜ごはんは、ドリア(いつぞやのパエリアを下にしき、白茄子を炒めてホワイトソースを作った)、サラダ(大根、ピーマン、青じそ、レタス)、冷やしトマト。

●2007年9月5日(水)雨、台風

あちこち掃除をして、1時から『おかずとご飯の本』の作業。
みっちりやって、5時半くらいに終わった。
「TSUTAYA」にDVDを返す日なので、雨の中ムーバスに乗って出掛ける。
バスの後ろの方で、「献立を、忘れないうちに日記に書いとかないとなんないんだよなー」というおじいさんの声が聞こえてきた。
隣のおじいさんに、「わかめと胡瓜の酢のものに、あれ、なんてったっけなーなんとか生姜(針生姜だと思う)だっけ、をのっけたのだろ、がんもどきの煮物に、あとは鮭を焼いたの」と伝えている。
多分、昨夜の献立だろう。
この時、うちの夜ごはんのメニューが決まった。
DVDを返し、ひさしぶりに買い物。
大荷物になったので、タクシーで帰ってきた。
塩鮭も買ったけど、たくさんじゃなくていいんだけど、お刺し身が食べたいような気がして買う。
夕方のタイムサービスで、お造りの盛り合わせが20%引きだったので。
夜ごはんは、刺し身盛り合わせ(いか、ハマチ、真鯛、中トロ)、たこぶつ、がんもどきの煮たの(ゆでほうれん草添え)、わかめと胡瓜の酢の物(針生姜のせ)、ピーマン(生のまま)と谷中生姜(味噌添え)、茄子の味噌汁、玄米。
食べ終わってしばらくしたら、いきなりムワーッといやな気分がのぼってきて、トイレに駆けこんだ。
お腹はピーピーだし、猛烈な吐き気がする。
苦しくて苦しくて、動物のように喘いだ。
体がブルブル震え、冷や汗が流れ、血圧が急に低くなるような感じ。
上から下から… というのを、初めて体験した。
体の芯から寒けがくるので、毛布やバスタオルや布団を全部かけて横になる。
そのまま、寝返りも打てずに1時間ほど眠った。
お刺し身のイカを口に入れた時、ほんのちょっとだけ生臭いような感じがしたのに、私は2切れ食べてしまった。
スイセイはまったく大丈夫だったそう。
私の胃袋が弱っていたんだろうか。
あとから聞いたが、「救急車を呼ばんといけんかも… 」と、スイセイは思ったらしい。

●2007年9月4日(火)晴れのち夕立

今日は、1時から、「トネリコ」を借りて撮影。
トムヤムクンラーメンを作った。
撮影は、2時間かからずに無事終わりました。
その後、電車とバスを乗りついで、斎場に向かった。
若いころに一緒にいた人が、癌で亡くなった。
昨日、その知らせを聞いた時、自分が生きていることが不思議だった。
茫漠とした暗い海に、油紙1枚の上で立たされているような。
お線香を上げてお祈りすることが、この世にあったことが、とてもありがたかった。
もう20年も前になるけど、彼と別れてから、私は何度か夢をみた。
自分がスイセイと暮らし、仕事も楽しく充実して、新しい人たちと出会えば出会うほど、くり返し同じ夢をみた。
そうやって時々思い出し、また忘れた。
ふたりが暮らしていた、古い一軒家もよく出てきた。
小さな庭はいつも草がボウボウで、風呂場に続いた日陰の廊下みたいな台所は、じめじめしていた。
私は彼のために、あまりごはんを作ってあげられなかった。
廊下の向こうが、迷路のようになっていたり、私の知らない部屋がひとつ増えていたり。
夢の中の彼は、その家で永遠に暮らしていた。
だから、こんな自分のところに、訃報を知らせてくださった人の心遣いがすごくありがたかった。
おかげで、最後の顔に会え、お別れすることができました。
スイセイが言うには、昼間作ったトムヤムクンラーメンは、とてもやさしい味だったそう。
ちっともエスニックでなく、「お粥ゆうたら大げさじゃけど、そのくらい柔らかい味じゃった」。
作っていた私には、ちゃんと辛かったし、汗をかくほどだったけど。
不思議なものです。
吉祥寺に帰ってきて、近所の蕎麦屋にて、スイセイと謹んで献杯。
「みいよう。生きとる人はの、自分のやりたいことを一生懸命やればええんよ。役目じゃけえ。先に死んだ人はの、それを喜んでくれると思うで」。
うちに帰ってから、昔の友人からメールが届いていました。
現実の彼は、新しい仲間たちに囲まれ、彼女にも支えられ、亡くなる寸前まで、思い切り生きていた。

●2007年9月3日(月)けっこう晴れ

ちょっとだけど、ちゃんと暑い。
ずっと肌寒かったから、こういう日がとてもありがたい。
昨夜は、楽しい夜だった。
夕方の薄明るいベランダで、景色を眺めながらのビールもつかの間、あれよあれよと時間が過ぎ、アッという間に12時を過ぎてしまった。
楽しいことは、時間が経つのが本当に早い。
ご近所の面々と「最近どう?」などと世間話をしたり、リーダーの実家で採れた野菜を網焼きしたり。
やきとりやソーセージも焼いた。
カオルちゃんのお母さんにもらった高級せんこう花火を、皆で1本ずつやったのも楽しかった。
夏の終わりにふさわしい、しっとりめのパーティーだった。
チヨジとも話せたし、川原さんともひさびさにいろいろ話せた。
皆、話し出せばきっといろいろあるけれど、それぞれが仕事をし、自分の場所で頑張っている。
世間話の向こうに、ひとりひとりの背景を想像するような。
ベタベタした関係でなく。
というわけで、今日はまったく二日酔いでない。
レシピの直しを、気合いを入れてやってしまおう。
夕方、スイセイに誘われて散歩。
夜ごはんは、神戸の豚まん、たたき胡瓜、焼きそば。

●2007年9月2日(日)薄い晴れ

蝉の声で目が覚めた。
ひさしぶりに青空が出ています。少しだけど。
洗濯物をたっぷりやる。
お腹も、どうにか治まってきたみたい。
今日は、リーダーたちのアパートのベランダで、「ご近所さんビヤガーデン大会」がある。
このところの寒さでしょんぼりしていたが、楽しみな気持ちがふつふつと湧いてきた。
暑さが戻ってきて、本当に嬉しい。
それまでにひと仕事やってしまおう。
ミルクティーをいれて気をひきしめ、レシピの直しだ。
あとで、パーティーに持っていくちらし寿司も作る予定。
スイセイも、いそいそと何やら準備をしている。

●2007年9月1日(土)曇り、肌寒い

この寒さはどうだろう。
ひと息に秋になってしまった。
今日は、『おかずとご飯の本』のレシピ直し。
とり手羽でスープをとりながらやる。
このスープは、火曜日の撮影で使う予定。
冷ましてから冷凍した。
夜ごはんは、サーモンプレート(サーモンのフライパン焼き、キャベツとアスパラの蒸し煮)、わかめとにらの味噌汁、玄米。
ごはんを食べ終わってしばらくしたら、またお腹がピーヒャララ。
ひさしぶりに熱いお風呂に浸かると、ザワザワとして、体が芯まで冷えきっていたのが分かった。
夜、寝る前に、また『かもめ食堂』。



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