2002年6月上

●2002年6月10日(月)

掃除をして、ベンチの上に敷いてある布も洗濯した。
そして今日は領収書などの仕分け。なんか1日中イライラしていたのは、慣れないことをしていたからだろうか。
昼ごはんは、キャベツとレタスのパスタ。オイルサーディンがあったので、にんにくで炒めて醤油と黒胡椒をたっぷり加え、それをソースにして和えた。まあまあの出来。
夜ごはんは、しいたけたっぷり入りひじき、チキンとトマトのバルサミコ酢ナンプラー焼き。付け合わせに、チキンの油で焼いたなすとチンゲンサイのゆでたもの、大根のみそ汁。
今日は早めにふとんを敷いて本でも読もう。

●2002年6月9日(日)

クウクウはものすごい暇でした。早めに来ていたお客さん方も、8時が近づくにつれ皆どんどん帰って行く。サッカーがあるからだ。試合が始まってから、2組ほどお客さんがいらっしゃったが、私は心の中で思ってしまった。「なんで、あんたらはサッカーを見ないんか?大勢の人たちが盛り上がっているんだから、違うことをしてないでいっしょに盛り上がればいいではないの」と。
実は私もサッカーは見ないから人のことは言えない。この間だってアルゼンチン戦の時に焼き肉屋にいた。だからと言って、こんどの日本戦を見るかどうかは分からないが、見れたら見てみようかな。スイセイは自分の部屋で見ているらしく、けっこう詳しい。
ダイジェストを見ながら、いろいろと教えてくれた。

●2002年6月8日(土)

ひさびさにゆっくり眠った。まだまだ寝ててもいいんだよーと自分に言い聞かせながら。
3時に起きました。冷蔵庫の中に手打ちうどんがあったので、大量の湯をわかしてゆでた。
昨日、大学のゼミでうどん屋に行って手打ちうどんを打って食うんだと、りうが自慢していたから、そのうどんに違いない。 なんで映像学科がうどんを打つのだろう。大学というところは謎だ。
どっちにしても、コシがあって粉の味がじんわりして、すごくおいしかった。
2日続けて肉を食べたから、私のお腹はこわれている。
寝室に入ったら、プーと音がして寝ているスイセイがおならをした。私と同じ臭い匂いがする。
きっとスイセイのお腹もこわれているのだろう。ほとんど毎日、同じものを食べているんだなこの男と、と思うと郷愁のようなものを感じた。何に?私の胃袋がスイセイの胃袋に感じているのか? パンツからふくろをのぞかして寝ているスイセイ。
気をとり直して、今日はためている書類の直しを一気にやってしまおう。

●2002年6月7日(金)

スイセイと白川さんの個展を見に行きました。なんだか今まで感じていた彼女の世界が、ぐわっと皮がむけてはためいているような、おもしろいことになっていた。作風が変わったとも言えるのだろうか。でもそんな表向きの言い方でなく、もっともっと彼女らしさがにじみ出てきているような。自分で自分の体に傷をつけて、ほらこんなんもあるよーと、次々取り出して見せてくれるような。好きな作家さんだなあ。彼女は若いし、これからも彼女が生きている限りいろいろ見せてもらえるのだなーと、やけにじんわり思ったりした。私もがんばらねばと思う。
ハルタさんと待ち合わせて焼き肉を食べに行った。豚トロって、ごまと胡椒がいっぱいかかっていておいしいものだ。初めて食べました。
スープとごはんを私が混ぜておいたのを、どうしても食べられなくて残しておいたら、お勘定をする段になってハルタさんが、「あー、私こうゆうのすんごくやなんだよねー」と言って、大急ぎで全部きれいに食べてくれた。今日私は、ハルタさんといるといつも思うことをまた思った。この人の前では、私はおねえさんでもなく高山なおみでもなく、しいて言えば小学校4年までの私になるなあ。世の中というか自分以外の人と自分との違いについて、まだ気がついていなかった頃。それは大いなる自分が堂々と悠々とのさばっていた頃だ。私、その頃って友達がいなかった。ひとりでごそごそと遊んでいた。
思ったのだが、昨日丹治さんにからんだのって、ランディさんの「くねくね日記」を読んだからだ。ぜったいそうだ。私はミーハーだから、すっかりその気になってしまったのだ。バカか私はとも思うが、ずっと前から気になっていたことに、ランディさんの文章が火をつけたというのが正確なところだろうと自分で分析した。

●2002年6月6日(木)

打ち合わせが終わって、丹治さん赤澤さんと池袋に繰り出した。おいしいやきとり屋さんに連れて行ってもらいました。私は調子良く日本酒など飲んでしまい、「もう1件行きましょう」と丹治さんに誘われるまま、「マダムシルク」というアングラな飲み屋に行き、そこでワインを2本空けたような気がする。「もう1件行きましょう」とまた丹治さんに誘われ、赤澤さんはここでタクシーに乗ってお帰りになり、ふたりでタイ料理の店に入ったのだが、もうこれ以上何も飲めないことに座ってから気がつき、すぐに出て来て公園に行った。
石畳の上に座って、そこで、ついにやってしまいました。というか、いちど挨拶を入れておきたかったのだ私はずっと。丹治さん、何で私の本なんか作ってくれるの?何で私なんかの所に来てくれたの?と、首ねっこをつかまえてぐらぐらと頭を揺すりはしなかったが、言葉の勢いはそんなようなものだったろう。問い詰めたのだ。私はこういうへんてこでしつこくてわがままな人間だけどよー、おめー、ほんとに私ととことん付き合ってくれる根性あるのかよーと言いはしなかったけど、もう少しやさしい言葉では言ったと思う。
だけど私は反省しません。それが私なので。
丹治さんは、ちゃんと答えてくれました。何と言われたかは忘れてしまいましたが、あーよかった、ついて行ってほんとにいいんですねーと思わせることを言ってくださった。
帰りのタクシーの運転手さんがやさしかったなー。「お客さん、アルコール入ってますか?気分が悪くなったら言ってくださいね。そこに袋もあるから使ってください。」と言葉にしたらたわいのないせりふだが、その声と言い方はべたべたしていなくて、強くもなく弱くもなく、にじみ出ていたなー。何がにじみ出ていたかって、それは愛です。

●2002年6月5日(水)

雑誌の打ち合わせを2本して、編集の方々とそのままビールを飲み始めた。
外は激しい夕立。沖縄の曲をかけながら窓を開けると、土を掘り起こした時のような懐かしい匂いがした。
たぶん「うさぎ公園」の地面が匂い立っているのだろう。
軽く酔っぱらって昼寝をする。時々、強く降る雨の音を聞きながら。
夜ごはんは、スイセイと私はもやしラーメン。りうは冷麺。それと焼き茄子、トマト、めかぶ、アスパラガスを焼いたのにオリーブオイルとしょうゆをかけたもの。
ごはんを食べている時に、ちいさいゴキブリが壁の上を歩いているのを私が発見。りうとスイセイは大の苦手だ。その場で殺そうとする私の反対を押し切って、スイセイは掃除機をバタバタとセットし、吸い取ってしまった。その間、りうは棒立ちになっていたが、スイセイに指図されながら、親子で力を合わせて掃除機の吸い込み口の所にサランラップでふたをして輪ゴムで止めている。これで解決したのだろうか。

●2002年6月4日(火)

昨日は日記を書けませんでした。なんとなく1日じゅう本を読んで暮らしたような気がする。
さて、今日は赤澤さんと打ち合わせ。サッカーの試合のチケットがゆうべ遅くに取れたそうで、「暑いですねー夏みたいですよねー」と、ますます元気な赤澤さんだった。途中で雹かと思うような大粒の雨が降り、すぐに止んで青空が広がった。
スイセイを誘って買い物に行く。例の八百屋でまたしこたま買ってしまった。青梅も買って来ました。
外を歩いている人の数がいつもより多いような。そして皆なんとなしにはっきりとした顔をしている。目的を持ってそこに居るような感じだ。ふだんは皆もっとぼんやりした顔をして歩いているような気がする。夕方からサッカーの日本戦があるからに違いない。なんとなく、歳の暮れのような感じだ。夜ごはんを食べながらレコード大賞や紅白を見ようと計画しているのと同じ感じ。
帰ってからは漬物大会だった。
塩ぬきしておいたらっきょうを干して甘酢(きび砂糖にしてみた)に漬け、梅酒を漬け、ホワイトリカーが少し余ったので、レモン酒を漬け、傷のある梅をしょうゆ漬けにし、きゅうりの塩水漬けを作った。
沖縄の音楽をエンドレスでかけながら。風が入ってくる床の上で。
このあいだみどりちゃんが「ネーネーズだった人の CD最近聞いてるんだよー窓開けて。」と言っていたのが残っていたのか、そういえば家にもその人のあったなーと思い出して。
そして、野菜や実ってすごいもんだぞと思いました。ぷりぷりつやつやとしている張りのあるものを触っていると、それだけで腹の底に重しがだんだんできてくるものだなあ。
音楽や本や人の言葉とかに頭を撫でられることもあるが、それよりももっと体感的に励まされるものだなあ。動物のまじめな無邪気さにも似ているかもしれない。しかも、後でおいしいものが出来上がるというのは、あながちバカにできるものではないぞ。びんに詰まった青梅やレモンやらっきょうは、しかも驚くほど奇麗なのだ。 そして、今日はうれしい宅急便が届いた。ミズのたたきの味噌と山椒混ぜ。ケイ君が実家(秋田)から送って来たのをおすそわけしてくれたのだ。今夜ごはんにかけて食べようではないか。

●2002年6月2日(日)

クウクウは夏の新メニュー初日。
夕方まかないを食べる間もなく、どどっと忙しさに突入。
「沖縄風お好み焼き」と「タイ田舎風辛いチャーハン目玉焼きのっけ」がバカ人気でした。
ひさびさに、胸からお腹から汗を吹き出しながら、ガンガン働いた。

●2002年6月1日(土)

ゆうべ遅く電話があって、矢川さんが亡くなったことを聞く。
ワインを飲んで寝たが、眠りそうになるとふいっと起こされる。夜汽車に乗っていて、駅に停まるごとにゆらっとして目が覚めるような感じだった。
夕方からクウクウへ。明日からの夏メニューのまとめをしに行く。
クウクウの皆は、全員がやたら元気そうでまぶしかった。結婚式の貸し切りパーティーだったので、オフィスでひとりこそこそと仕入れやレシピなどまとめた。
帰りに自転車をこいでいたら猛烈に本が読みたくなり、パルコブックセンターへ。
隅々まで眺め回して四冊買った。本屋に1時間いたのは久しぶりだ。
高野文子の「るきさん」、田口ランディの「くねくね日記」、ばななさんと河合隼雄の対談集「なるほどの対話」、河合隼雄の「明恵 夢を生きる」以上。
餃子屋で、ビッグ肉まんと焼き餃子を買って帰る。
夜ごはんは、買った餃子、鮭の糟漬け、キャベツと春菊のおひたし、大根のみそ汁。


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